著者
天池 孝子 光本 孝次
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.565-589, 1970-11-25

鶉の免疫遺伝学的研究として,免疫操作の確立と,同種免疫抗体の産生および再生,そして,その性質を明らかにし,遺伝的分析も試みた。1.鶉の血球抗原に対し良質の自然抗体を得ることは困難で,抗体は存在しないか,存在しても,その力価は非常に低いと観察された。2.抗鶉家兎血清を使用して,おおまかに鶉個体を識別することも可能である。3.同種免疫抗体では,抗原量を生理食塩水2%で0.5ccを4〜5回,つづいて5%,0.5〜0.7ccを3〜5回,3日隔で直接静脈内に免疫操作で,力価約64倍の抗血清を得た。4.同種免疫抗体のホールプラスチック板の凝集精度は試験管法のそれに比して,はるかに低いと観察された。5.鶉同種免疫血清は,Coombsテストや酵素処理法で,一価抗体の産生が観察されなかった。6.同種免疫血清の吸着操作には,最適抗原量は5〜10%の範囲,吸着時間は90〜120分で行なわれた。7.AT1血清に対する雛鶉の抗原性は1週齢で発現すると推察される。8.二つの遺伝子座位の存在が推定され,それぞれは複雑な抗原因子を支配していると推察され,.複対立遺伝子の存在が考えられる。9.現在までにAT1,AT2,AT3,AT4,AT5,AT6,AT7,AT8,AT9血清が作出され,AT3血清はAT8血清において完全に再生され,他も同様に,ほぼ再生されうる。
著者
本江 昭夫 平田 昌弘 稲村 哲也
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中国の半乾燥草原では、砂漠化が進行しており、特にヤギによる過放牧が砂漠化の主要な原因である。ヤギがおもに飼育されているところは、開発の歴史が古く、人口も多いので丘陵地帯の斜面の大半は畑になっていた。ヤギが放牧できる草原は、ほぼ垂直に切り立っている斜面だけであった。逆に、開発の歴史が浅く、人口も少ないところでは、丘陵地帯の緩やかな斜面の多くは草原となっており、そこでは主にヒツジが放牧されていた。
著者
玄 学南 山岸 潤也
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は異種抗原発現用新規原虫ベクターの構築と組換えワクチン開発への応用を目指して実施する。本年度に実施した研究内容と得られた研究成果は以下の通りである。1. 過年度に異種抗原発現用ネオスポラ原虫ベクターを構築し、トキソプラズマ原虫ワクチン候補遺伝子TgSAG1の発現(Nc/TgSAG1)に成功した。2. 今年度はまずNc/TgSAG1をBALB/cマウスに接種し、TgSAG1に対する特異抗体反応を誘導することを確認した。特異抗体のサブクラスを調べたところ、Th1型優勢免疫が誘導されていることが示唆された。また、Nc/TgSAG1を接種したマウスにおいてはIFN-γの産生がベクターのみを接種した対照群と比べ有意に高いことが示された。なお、IL-4の産生には対照群と比べ有意な変化がなかった。3. 次に、Nc/TgSAG1にて免疫したマウスに致死量のトキソプラズマ原虫を接種したところ、約80%のマウスが生残した。これらの結果より、異種抗原発現用原虫ベクターは次世代型ワクチン開発に新しいツールを提供しうることが示唆された。
著者
本江 昭夫 喜多 富美治 岩下 有宏 工藤 麻紀子
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.197-201, 1996-06-26
被引用文献数
1

ムラサキモメンズル倍数体とそれらの雑種の形態の特徴を調査した。植物体を1993年には圃場で,1994年には温室で育成した。野生集団に比べて,栽培集団の方が,草丈,茎の直径,茎あたりの乾物重はあきらかに高かった。1葉あたりの小葉数は野生集団で13〜15枚であったが,それ以外の集団では20〜23枚であった。野生集団の2倍体より,それらの雑種の方が長い花序を持っていた。また,花の長さ,旗弁の幅,翼弁の長さ,小葉の長さ,花粉粒の体積において,5倍体の方があきらかに大きい値を示した。中国の2倍体と日本の4倍体について,同一の種として分類すべきと思われるが,今後さらに研究する必要があろう。
著者
金山 紀久 永木 正和 石橋 憲一 伊藤 繁
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、(1)フードシステム(以下FSと略)に援用可能な複雑系経済理論の検討、(2)複雑系経済理論を援用したFSの時間的構造変化の過程の解明、(3)複雑系経済理論を援用したシステム環境の変化と空間的構造変化の過程の解明、の三つの課題を設定して研究を行った。第1の課題に対する研究では、複雑系の考え方に基づく経済理論を背景にFSを捉えることの必要性を明らかにした。具体的には、「ゆらぎ」と「創発」の考え方をFSの研究に援用することの意義を明らかにした。第2の課題に対しては、牛乳・乳製品のFSと小麦のFSを分析対象として取り上げた。牛乳・乳製品のFSでは、雪印食品の食中毒問題が、経営状況の悪化の過程で停電を引き金にして起こっているが、発生要因を確定できるような単純系ではなく、従業員のメンタルな側面など複雑系のもとで起こっており、このような複雑系下においても食品の安全性を確保するシステムの必要性を明らかにした。また、北海道の加工原料乳の製造は牛乳のFSの「ゆらぎ」をシステム内に緩和する働きを持っており、加工原料乳制度は、その働きをサポートする制度であることを明らかにした。小麦のFSでは、これまでの食糧管理制度が、原料生産者と実需者の関係を断ち切るよう形で生産者を保護しており、需給のミスマッチを発生させていた。FSは原料生産者、加工業者、流通業者、消費者の各主体によって形成され、一つの主体だけではシステムを形成できず、一つの主体だけ単独に存続できるような制度はシステム上問題である。しかし、つい最近まで制度設計者にその認識が希薄であったことを明らかにした。第3の課題に対しては、食品工業の立地変動を分析対象とし、食品工業の立地変動に内生的な集積力があることを確認した。また、FS内での創発によって生まれ、ゆらぎをもたらす技術について、化工澱粉を取り上げ、その特性と冷凍食品への利用について整理した。
著者
中川 允利
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.221-225, 1991-11-30

潜熱移動を伴わない濃縮法として注目されている逆浸透法を醗酵液中の希薄なイタコン酸カリウムを酸として1(g-H_2IA/dl)より約10まで濃縮するのに適用することを検討した。使用した酢酸セルロース膜は、食塩を99%以上分離するタイトな膜で,窒素ガス加圧下で操作された。(1)イタコン酸として1(g-H_2IA/dl)含有するイタコン酸,イタコン酸水素カリウムおよびイタコン酸カリウムの純溶液を容量で9倍迄濃縮したときの分離率の範囲は,濃縮倍数の増加と共に増し遊離酸で60-70%,酸性塩で90-95%および中性塩で99%以上となった。(2)イタコン酸カリウム純溶液の濃縮の過程で,透過液流束が0になったときの,操作圧(kg/cm^2)と溶液濃度(g-H_2IA/dl)は,それぞれ,50と8.6,75と11.5および100と15であった。(3)純および醗酵液中のイタコン酸カリウムの濃縮過程では,塩の分離率は変わらなかったが,透過液流束は,醗酵液では純溶液の約1/2に低下した。なお,あらかじめ限外濾過した醗酵液でも透過液流束の低下は避けられなかった。
著者
今井 晋哉
出版者
帯広畜産大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

形成期の近代ドイツ市民社会における「市民的公共」の正と負の両面の解明を目指し、今年度は1840年代のハンブルクを例に、市民的公共の担い手としての啓蒙主義的市民結社「パトリオット協会」と、同結社の援助・指導の下、活動を始めた初期の「労働者教育協会」との相互関係を直接の対象として、文献・史料の蒐集・分析に取りかかった。この間、ハンブルクの文書館・図書館への史料情報の照会、先方からの返答など、発注段階での手続きに思いの外時間がかかり、注文した史料のなかには、なお現地でフィルム化を進めてもらっている最中のものもあり、したがって、今年度内における原史料の入手については計画通りいかなかった面もあるが、一方公刊史料や各種研究・参考文献については、本補助金のおかげで非常に充実した蒐集を行うことができた。パトリオット協会自身による協会史や労働者教育協会会員による新聞への寄稿などを読み進むうち、教育協会の活動についての両協会の交渉過程で鮮明になっていった両者の対立においては、協会構成員の経済的地位の相違に起因したという側面よりも、直接にはむしろ、行われるべき教育を、技術・職業教育や市民として修得すべき生活道徳の面に限定しようとするパトリオット協会と、歴史や社会問題についての講義や討論会をも求める教育協会の手工業職人との間の、教育プログラムをめぐる対立の方が中心的であったことが明らかになってきた。現在、この論点を中心とする論文の原稿を執筆中である。また、教育協会に参加した多様な「労働者」の状況を探るため、19世紀初め以来の社会下層民の、とりわけ手工業職人の状況についても勉強にも取り組んだ。この過程で、社会経済史学会からの依頼もあり、裏面の通り、ドイツにおける労働者階級形成を主題とする近年の歴史研究の動向についてまとめた論考を執筆、発表することとなった。
著者
東条 衛 岡村 太成 石橋 憲一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.357-364, 1975-06-10

生あんを球状に成形して寒冷外気により凍結させ,次の実験結果を得た。1)直径30mmと45mmの球状生あんを,風温-6.0〜-25.0℃,風速0〜13.0m/sの条件下で凍結させた結果,-1℃から-5℃までの凍結所要時間は10〜60minであった。2)凍結所要時間から求めた平均熱伝達率h_mは近似計算により次の式で示される。(h_mD)/λ=2+0.89R_e^<1/2>P_r^<1/3>但し1.4×10^3<R_e<4.4×10^4
著者
竹内 宏治 井熊 武志 高橋 裕司 匂坂 慶子 高澤 俊英
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.103-107, 2001-06
被引用文献数
1

フェノール-硫酸法(80%(w/w)フェノール試薬使用)は、ペーパークロマトグラフィーによって分離された少量の糖類を定量するためにDubois等[Dubois,M.,Gilles,K.A.,Hamilton,J.K.,Rebers,P.A.,and Smith,F. 1956. Anal. Chem. 28:350-356]によって開発されたが、最近は5%(w/v)フェノール試薬を使用する改良法[Hodge,J.E. and Hofreiter,B.T.1962. Methods in Carbohydrate Chemistry vol.1,pp.380-394]が広く用いられている。我々は、カラムクロマトグラフィーによって分離されたごく少量の糖類を定量するためにHodge and Hofreiter (1962)の方法を高感度定量法に改良した。Hodge and Hofreiter法と比較すると、我々の高感度定量法は、再現性はほぼ同程度であるが、約10倍感度が良くなり、マイクログラムレベルの糖を定量でき、非常に優れた方法である。更に、フェノール-硫酸法において、濃硫酸の添加は注意深く行わなければならず、そして又時間を要する操作であるが、我々の改良法では、硫酸の使用体積を大幅に減少させたために、多数のサンプルを同時に処理でき、硫酸添加後の操作の危険性が減少し、実験操作性が大きく向上した。
著者
玄 学南 山岸 潤也
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は東南アジアにおけるダニ媒介性動物原虫感染症の流行実態の解明と予防対策の確立を目指して実施する。本年度に実施した研究内容と得られた研究成果は以下の通りである。1. 昨年度に引き続きタイ国北部地域における牛のマダニ媒介性原虫感染症の流行実態を調べた。計200頭の牛の血液サンプルを採集し、全DNAを抽出した。ウシバベシア原虫特異PCR法を用いて、血液サンプル中の原虫DNAの検出を行ったところ、Babesia bovisとBabesia bigeminaの陽性率がそれぞれ12%(24/200)と21%(42/200)であった。この結果より、ウシバベシア症はタイ国北部地域広く流行しており、本症の制圧対策は当地域の牛の生産性向上に重要であることが示唆された。2. フィリピンマニラ周辺地域における牛のマダニ媒介性原虫感染症の流行実態を調べた。計250頭の牛より血液サンプルを採集し、全DNAを抽出した。ウシバベシア原虫特異PCR法とウシタイレリア原虫特異PCR法を用いて予備実験を行ったところ、2種類のウシバベシア原虫(Babesia bovisとBabesia bigemina)と1種類のウシタイレリア原虫(Theileria orientalis)DNAが高率に検出された。これらの結果により、フィリピンマニラ周辺地域の牛にはマダニ媒介性バベシア原虫とタイレリア原虫感染症が高率に流行していることが示唆された。
著者
沢田 壮兵
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.95-101, 1984-12-25

十勝地方に適したサイレージ用トウモロコシ品種の早晩性にっいて,帯広の過去33年間(1951〜1983年)の気温から検討した。サイレージ原料の適正な植物体乾物率は25〜35%とされている。戸沢(1981)が報告した乾物率が30%になるのに必要な播種からの単純積算温度を用いて,早中晩生の各品種を5月10,15および20日に播種した場合に,いつ絹糸を抽出し,乾物率が30%になるかを求めた。その結果,早生種は5月20日までに播種すると約70%の年で,帯広の平年初霜日である10月4日までに乾物率が30%となった。これに対し,晩生種は5月10日に播種しても,乾物率30%となる日は33年間のうちわずかに3年のみであった。中生種を5月10日に播種した場合には,初霜日までに乾物率30%となる年の割合は36%であった。無霜期間が短かくて,初霜の早い十勝地方では,中晩生種は生体収量は高いものの,熟度がすすまないため,栄養収量は低く,良質のサイレージ原料を得ることは困難である。従って,十勝地方でのサイレージ用トウモロコシ品種としては早生種の栽培が望ましいと考えられた。
著者
仲口 勉 西島 浩
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.640-665, 1971-05-30

本文は1966年に行なわれたBombus schrencki (Hymenoptera : Apidae)の1群における外役蜂ポピュレーションの外役飛翔活動に伴う巣からの出入の観察記録をできるだけ量的に分析して得られた諸結果の報告である。1.外役蜂ポピュレーション密度は8月下旬には10個体前後であったが,その後しだいに増加し,9月中旬に45個体前後になってピークを示し,以後はしだいに減少した。2.活動開始時刻と終了時刻については,前者が非常に大きな個体変異を持っていたのに対し,後者のそれは小さかった。8月下旬〜9月初旬では開始時刻の早い遅いに関係なく,終了時刻がほぼ一定であるのに対し,9月中旬では同じく終了時刻の個体変更が小さいながらも開始時刻の早い遅いと終了時刻のそれとの間には逆相関的傾向が見られた。3.日の出時刻と最上位個体の活動開始時刻,および,日の入時刻と平均活動終了時刻の間には,正の相関関係が認められた。4.9月以降においては早朝の巣外気温の低下が外役飛翔活動を妨げた。その臨界点は林床付近においては10℃前後であった。5.活動開始時刻と日齢の関係については次の諸傾向が認められた。1)初認日の出現時刻は遅い。2)やがて順位が上がり,早いものでは数日後に上位を占めるようになる。3)その後しばらくの間(おそらく2週間前後),比較的安定した位置を保持する。4)さらに高齢になると再び順位が下がる。6.外役飛翔活動密度の日周消長は,群の飛翔活動が始まってから9時頃までは密度が比較的ゆるやかに増大し,その後ずっとほぼ一定の活動密度を維持するが,日の入時刻の1時間ぐらい前から急激に減少した。7.花粉採集活動の比率の日周消長は早朝はほとんど0で,7:00〜8:00から急激に上昇し,その後夕方まで高い値を維持した。8.単位外役飛翔時間の分布は採集タイプや観察日にかかわりなく,平均よりモードがかなり左にずれ,右すそが長く伸びた分布型を呈した。9.単位外役飛翔時間は季節の進行につれて,しだいに長くなった。10.単位外役飛翔時間の採集タイプによる差については,9月初旬までは花粉荷を持っていた場合のほうが長かったが,9月中旬には差はなかった。しかし,9月中旬でも風が強い気象条件の日には,花粉採集の能率が低下するため差が現われた。花粉荷を持ち込まない場合の飛翔時間には,このような気象条件の影響はなかった。11.1個体1日当りの平均外役飛翔回数は8月下旬の15回前後から,9月中旬の7回前後まで漸次減少した。12.1個体1日当りの平均外役従事時間は8月下旬から9月中旬まで,ほぼ昼間の時間の変化に平行して,500分から400分前後までのゆるやかな減少カーブを描いた。13.外役蜂の仕事への固執性はかなり強いことが示唆された。14.群全体としての花粉荷を持ち込まない外役の割合は,季節の進行につれて,20%前後から40%前後まで増大した。15.9月中旬に花粉採集能率を低下させた風の強い気象条件は採集タイプに対しては影響を与えなかった。16.外役蜂ポピュレーションにおける,P,PN,Nの組成は季節の進行につれて最初はPが圧倒的に多いが,しだいにPNおよびNの割合が増大した。17.単位巣内滞在時間の分布はモードが左端のほうにあり,右すそが長く伸びた型を呈した。18.単位巣内滞在時間は8月末にピークのある山型の季節的変化を示した。19.8月末を除き,花粉採集蜂のほうが長く滞在するという現象が原則的に認められた。20.働蜂により自巣の幼虫や蛹が巣外に捨てられる現象が数回観察された。
著者
土谷 富士夫 松田 豊 辻 修
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

寒冷・少雪の気象条件にある十勝地域では融雪期において、凍結した土壌が完全に融解するまでの期間、凍結層が土中に残存し不透水層となり、融雪水や降雨によって土壌浸食の発生が多く、問題となっている。本研究では、寒冷、少雪である十勝地域における農地造成地、草地造成地を主な対象として現地調査、人口降雨装置による土壌侵食実験、傾斜枠試験、降雨係数の算出解析等を通して、農用地造成圃場における侵食実態、凍結土壌の浸食メカニズム、侵食予測等について検討したものである。本研究で得られた主な知見をまとめると以下のようになる。融雪期間における造成農地の土壌侵食は、圃場面よりもそれに付帯する法面において侵食被害が多く発生していることが明らかとなった。また法面方向による土壌侵食の危険性は、北向き法面が南向き法面と比較して融解時期、法面土層中に凍結層の残存する期間が長く、かつ積雪も日陰のため多く残存し、その危険性の高いことが明らかとなった。人工降雨装置を使用した凍結融解繰り返し斜面の土壌浸食実験の結果より、凍結融解繰り返し斜面では、どの勾配においても凍結融解の繰り返し回数が増加するとともに流亡土量の増加が見られ、勾配が急になるほどこの傾向が強くなることが明らかとなった。傾斜侵食観測枠を設置し土壌侵食実験を行った結果、積雪期間における降雨係数の換算係数を求めると、北斜面で7.0、南斜面で10.2となった。これより十勝勝地域のような寒冷少雪であり、土壌凍結の深い地域の融雪期における土壌侵食の危険性が非常に高いことが明らかとなった。
著者
福島 道広
出版者
帯広畜産大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

(1)未利用動物資源である北海道産アレチマツヨイグサ種子油の脂肪酸組成はそれぞれリノール酸が71%及びγ-リノレン酸が13.7%占めており,市販の月見草油がリノール酸71.7%,γ-リノレン酸9.2%であったのに対し,γ-リノレン酸が4.5%高い値を示した.n-6脂肪酸のα-リノレン酸はアレチマツヨイグサ油には含められていなかった.(2)ラットへのコレステロール負荷条件下での短期投与(6週間)及び長期投与(13週間)実験の結果,短期投与では投与期間を通して成長阻害はみられなかったが,長期投与では月見草油,バイオγ-リノレン酸,紅花油,パーム油及び大豆油より体重増加量は減少した.血液中の総コレステロール濃度は短期及び長期投与の両方ともアレチマツヨイグサ種子油投与区で他の投与区より有意に低下した.また,悪玉コレステロールのLDL-コレステロール濃度も同様に低下した.アレチマツヨイグサ油は肝臓においてコレステロール濃度が短期投与及び長期投与ともに低下傾向を示した.糞便中へのステロール排泄量は,短期投与では各投与区間に変化はみられなかったが,長期投与ではγ-リノレン酸23.1%含んでいるバイオγ-リノレン酸油が他の投与区より有意に増加した.(3)各植物油脂を投与したラットの肝臓におけるHDL及びLDLの主要アポタンパク質であるアポA-1及びアポBのmRNAレベルには大きな差はみられなかった.また,血液中からのLDLの取り込みを担うLDL受容体のmRNAレベルについても変化はみられた.◎未利用資源として,リノール酸71.0%,γ-リノレン酸13.7%含むアレチマツヨイグサ油のラットへのコレステロール代謝を検討した結果,γーリノレン酸を9%含む月見草油と同様,短期投与(6週間)及び長期投与(13週間)ともに強いコレステロール低下作用を示した.以上,アレチマツヨイグサ種子油にはラット生体内のコレステロールを低下させる機能がみられた.その作用機序はコレステロール負荷条件ではコレステロール合成・代謝及びアポタンパク質への影響ではなかった.
著者
石黒 直隆 松井 章
出版者
帯広畜産大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は、遺跡から出土する古代犬の骨に残存する微量な遺伝子を効率良く増幅し古代犬を遺伝子面で復元し、現生犬から構築したデータベースと比較することにより日本在来犬の起源と成立過程を解析することである。本年度は以下の成績を得た。1)残存遺伝子の増幅法の開発:長い埋蔵期間中、遺跡から出土する骨には土壌中の成分が多く浸み込み、それがPCR反応のインヒビターとなっている。古代犬の骨から効率に古ミトコンドリア(mt)DNAを分離・増幅する為には、このインヒビターを取り除くことが大切である。これまでの検索で、骨中のPCRインヒビターを取り除くには0.5MEDTAによる骨粉の洗浄が最も有効であること、また長期間の洗浄後、プロテネースKにて骨粉中の蛋白を消化することが最も増幅率を高めることが判明した。2)遺跡出土の犬骨からの古mtDNAの増幅:これまでに縄文時代、弥生時代、古墳時代、オホーツク文化時代の遺跡から出土した145本の古代犬の骨より残存遺伝子を分離・増幅した処、74本(51%)の骨より198bpの塩基配列を得た。得られた配列を現生犬のデータベースと比較した処、ハプロタイプM5型とM10型は関東以北の地域に、またハプロタイプM2型は西日本から東北地方まで広く分布していた。一方オホーツク文化期の遺跡からはM5型の犬が多く検出され、オホーツク文化期の古代犬は遺伝的に均一であることが明らかとなった。これらの成績は、古代犬が縄文時代からかなり多様性に富み、その分布には地域性があることを示し、人の移動や分布を知る上で、貴重な資料を提供するものとして期待される。
著者
佐々木 基樹 山田 一孝 遠藤 秀紀
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、ニホンザル、これら4種の霊長類と4種のクマ科動物、ジャイアントパンダ、マレーグマ、ホッキョクグマ、ヒグマの後肢の可動性を、CTスキャナーを用いて非破壊的に観察した。その結果、4種の霊長類とジャイアントパンダ、マレーグマの2種のクマ科動物において、足根骨の回転とスライドによる足の顕著な回外が確認された。さらに、霊長類において、第一趾の屈曲に伴う第一中足骨の内転が4種の霊長類全てに確認され、オランウータン、ゴリラ、ニホンザル、チンパンジーの順でその可動域は大きかった。また、ゴリラやチンパンジーでは第一中足骨は足の背腹平面で内転しており、上下斜め方向に可動面を持つ他の2種の霊長類とは可動様式が異なっていた。足根骨の回転とスライドによる足の回外は、木登りに対する形態学的適応と考えられる。また、第一中足骨の足の背腹平面で内転は地上性適応の一環と考えられる。さらに、その可動性がチンパンジーで小さかったことから、チンパンジーがより地上性適応しているものと推測される。
著者
大原 久友 浦上 清 石井 格 瀧ケ平 武昭
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.32-43, 1969-09-30

著者らは,日本のいろいろな環境条件下において適応した搾乳器を選択し,その性能を明らかにするために機械搾乳に関する一連の研究を実施している。今回はスウェーデンアルファラバル会社において製作された旧型のP77と新型のHP87の搾乳に及ぼす影響について比較研究した結果について報告する。この研究は,冬季間においてバケット型とミルキングパーラーにて用いたパイプライン型の搾乳器について実施したものである。その結果を要約するとつぎのごとくである。1. P77とHP87型のものについて比較した結果は表のごとくである。以上のように,HP87で搾乳するときはP77に比してバケット型で乳量が14%,ミルキングパーラーのパイプライン型で10%,それぞれ増加した。特に,HP87を用いた時には後搾りの乳量がかなり低減した。[table] 2. HP87を用いた時には,搾乳に要した時間が極端に短縮された。このようにミルカーの種類と後搾りおよび搾乳のための所要時間とはきわめて関係が深い。ミルキングパーラーにおけるパイプライン型の場合もバケット型の場合と同様である。3. 1分間あたり搾乳に対する産乳量は時間が進むとともに変化するが,一般的にいうと搾乳を始めてから1〜2分後に最高となり,この間に3〜3.4kgの牛乳が流出される。4.比較的大型な酪農場におけるHP87,P77と国産搾乳器による搾乳の所要時間および残乳量を調査すると,HP87の性能はきわめて高く,機械搾乳に要する所要時間も短縮され残乳量もきわめて少なくなった。以上のごとく,新しい型式のHPミルカーはバケット型でもパイプライン型でも産乳量を多くし,機械搾乳に要する時間を短縮せしめ,著しく残乳量を少なくする上に効果があることが確認された。
著者
伊藤 精亮 藤野 安彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.817-824, 1976-06-25

1.アルファルファの遊離ステロールとステロールエステルの主要な構成ステロールは,β-シトステロールであった。ステロールエステルの主要な構成脂肪酸はパルミチン酸,ラウリン酸およびミリスチン酸であった。2.アルファルファのトリグリセリドの脂肪酸は,リノレン酸,リノール酸およびパルミチン酸が主なものであった。トリグリセリドの1位と3位の脂肪酸組成は類似していて,比較的飽和脂肪酸が多く,これに反して2位はほとんど不飽和脂肪酸によって占められていた。
著者
本江 昭夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.253-258, 1985-11-20
被引用文献数
2

1983年に本学のガラス室においてポットを用いた実験を2回行った。5月28日-6月29日には密度を1.1,1.4,1.7とした土壌においてシバムギを播種し生長を調査した。7月9日-9月14日には播種後25日目より20日間接触処理を行い,さらに,土壌密度が0.94,1.2,1.4となるように踏圧処理を行い,播種後66日目に生長を調査した。土壌の締め固め処理により,見かけ上の土壌密度と貫入抵抗との間に高い相関関係を認めた(Fig.1)。締め固めた土壌では対照区に比較して,播種後32日目の草丈,葉数,個体あたり乾物生産量はそれぞれ54-70,82-91,15-33%に減少した(Fig.2)。播種後45日目の草丈,分げつ数,個体あたり乾物生産量は,対照区に比較して接触処理区ではそれぞれ56,239,85%に相当した(Fig.3)。また,踏圧処理後の生長について,草丈の相対値は予め接触処理を加えた区では104%,対照区では95%であった。同様に,分げつ数はそれぞれ148,102%,個体あたり乾物生産量はそれぞれ92,89%であった(Fig.4)。このように,予め接触処理が加えられて形態形成反応を示した個体では踏圧に対する抵抗性が若干高まった。
著者
西島 浩 小野 泱
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.505-511, 1963-07-10

北海道における吸血昆虫に関する研究の1部として,糠平におけるマダラヌカカ類の季節的消長について,1959〜1962年間ライト・トラップにより調査を行ない,次のことを知った。すなわち,1)同地において認めたヌカカは,Culicoides属の9種で,それらのうちC. crassipilosisおよびC. comosioculatusの2種は北海道新記録種である。2)これらのヌカカ群集の優占種はC. sinanoensisである。3)この種の夜間活動性は日没直後から約2時間後までが最も旺盛である。4)季節的消長曲線において単峰型を示す種は,C. kibunensis,C. aterinervisおよびC. dubiusであるが,前2種は8月上旬においてピークを示す。5)同曲線において双峰型を示す種は,C. sinanoensis, C. obsoletus, C. crassipilosisおよびC. pictimargoである。