著者
赤堀 誠 光本 孝次
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.683-695, 1977-11-25
被引用文献数
1

本報告では,モデル実験を通して,乳牛集団の遺伝的改良に影響を及ぼす要因の評価によって,乳量の遺伝的改良を効率的に為し遂げる育種システムの検討を試みた。モデル実験の変数として,次の7つの育種仮説値を用いた。a)種雄牛頭数,b)種雄牛年間更新率,c)更新種雄牛当たりの候補種雄牛頭数,d)候補種雄牛当たりの娘牛頭数,e)雌牛集団内の能力検定比率,f)雌牛集団の年間更新率,g)候補種雄牛を生産する種雄牛頭数それらの育種仮説値によって,4,608個の育種システムが推定された。結果は次のようであった。1)種雄牛更新率の増加は,候補種雄牛総頭数の増加をもたらし,ΔG_Y(年間遺伝的改良量)を増加させた。検定容量が小さい時,種雄牛更新率は,20%と25%でΔG_Yを最大にした。2)候補種雄牛頭数が,10頭から20頭に増加される時,ΔG_Yの増加は,最大となった。候補種雄牛頭数の増加は,娘牛頭数が減少される時,必ずしもΔG_Yを増加させなかった。3)娘牛頭数が,20頭から30頭に増加される時,ΔG_Yの増加は,最大となった。各種雄牛頭数の育種システムにおいて,娘牛頭数の増加はΔG_Yを増加させた。4)候補種雄牛父牛頭数の増加は,ΔG_Yを減少させた。5)雌牛集団の一世代当たりの近交退化率は1%以下であった。6)各育種システムにおいて,世代間隔は大差なく,ΔG_Yの差に殆んど影響を与えなかった。7)種雄牛頭数の増加はΔG_Yを著しく減少させた。8)ΔG_Yのおおよそ80%が種雄牛の選抜からもたらされた。9)交配率の減少はΔG_Yを減少させた。10)検定率の増加は著しいΔG_Yの増加をもたらした。育種仮説値は,相互に関連し,ΔG_Yの決定に関与している。それゆえ,それらの関連を考慮し,乳牛集団内の遺伝的資源を有効に利用しうる育種システムを検出することが乳牛集団の遺伝的改良を促進するであろう。
著者
藤野 安彦 伊藤 精亮 正井 博之 藤森 正宏
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.917-925, 1978-06-20
被引用文献数
5

1.Acetobacter Mから脂質成分を抽出し,ケイ酸カラムクロマトグラフィーとケイ酸薄層クロマトグラフィーで各脂質クラスを分離した。これらを薄層クロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー,マススペクトロメトリーに供し,構造解析を行った。2.全脂質の構成脂肪酸は,約90%がシス-バクセン酸から成っていた。3.全脂質を薄層クロマトグラフィーに供すると,少なくとも15個のスポットが検出された。この主成分はリン脂質で,ホスファチジルコリンが最も多く,ついでホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールであった。4.この菌体脂質の著しい特徴として,比較的多量のテルペノイドおよびアミノ脂質が検出されたほか,少量のセラミドが検出された。5.テルペノイドの主成分は,ホーパン-22-オールとC_<35>-ペンタサイクリックテルペンアルコールであった。6.アミノ脂質の主要タイプは,オルニチルタウリン脂質3-(パルミトイル)-オキシパルミトイル-オルニチル-タウリン,オルニチン脂質3-(パルミトイル)-オキシパルミトイル-オルニチンおよびリゾオルニチン脂質3-オキシパルミトイル-オルニチンであった。7.遊離セラミドは単一の分子種N-2-オキシヘキサデカノイル-スフィンガニンから成っていた。
著者
三宅 勝 小野 斉 大塚 信明 中川 忠昭 千葉 一夫 渡辺 順一 加納 隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.394-414, 1967-03-31

著者等は牛舎施設,乳牛管理,牛舎内気象状況と繁殖成績ならびに疾病発生との関連性を究明するため,十勝地方において多頭数飼育を実施している上芽室生産組合共同牛舎,中札内村新生共同畜舎および帯広畜産大学付属第1農場牛舎において実態調査を行なった。調査期間は昭和39年3月から40年2月までの1年間で,これを第I期(春,4月),第II期(夏,7月),第III期(秋,10月),第IV期(冬,1月)に分け,それぞれの期間中1週間ずつ牛舎にとまりこみで上述の調査を行なった結果,次のような成績を得た。1.牛舎施設,乳牛管理,飼養および飲料水について換気施設の不完全,手入れの不充分および運動場の狭隘のほか,上芽室にあっては搾乳前2,3搾りを捨てないこと,ミルカーのかけ過ぎ,および飲料水はアンモニア性窒素が多く飲料不適であったこと,中札内にあっては敷わらの不足,削蹄の不完全,運動場に汚水の潴溜等の欠陥が指摘された。2.牛舎内気象状況(1)気温……すべての地区とも最高は7月,午後0〜6時のもので上芽室では22.7±4.1℃,中札内では22.2±4.0℃,畜大では26.3±3.1℃であった。また最低は1月で,上芽室では午前6〜12時の2.2±4.0℃,中札内では午後0〜6時の4.7±3.0℃,畜大では午後6〜12時の1.0±3.2℃であった。3地区とも牛舎内温度の多くは至適温度内にあった。(2)湿度……最高は上芽室,中札内では1月,午前0〜6時で,それぞれ94.2±2.6%,94.0±6.0%であったが,畜大では4月,午前6〜12時の90.0±7.4%であった。なお前2者では冬期間夕方より翌朝にかけ湿度は95%を越える日が多かった。最低は上芽室,中札内では4月,午後0〜6時で,それぞれ55.4±1.4%,61.0±13.9%であり,畜大では10月,午後0〜6時の62±12.9%であった。(3)乾カタ度……最高は上芽室では4月,午前9時の11.71±2.84,中札内,畜大では1月で,それぞれ午前9時の11.77±2.69,午前3時の12.9±1.40であり,最低は上芽室では7月,午後9時の7.31±1.60,中札内,畜大では10月で,それぞれ午後9時の7.07±1.85,午前9時の9.4±0.36であった。(4)炭酸ガス量……最高は上芽室では4月,午前3時の0.16±0.024%,中札内,畜大では1月で,それぞれ午後9時の0.26±0.106%,午前3時の0.12±0.095%であり,最低は上芽室,中札内では7月,午後9時で,それぞれ0.06±0.001%,0.05±0.017%で,畜大では10月,午前3時の0.03±0.004%であった。3.繁殖成績について1〜4ヵ年間の上芽室,中札内および畜大における平均受胎率はそれぞれ96.4,88.3,90.3%,受胎効果は1.55,207,1.71回,受胎牛の平均空胎期間は3.69,4.33,6.12ヵ月であった。4.疾病について上芽室,中札内では趾間腐爛,乳房炎の発生が多かった,このほか上芽室では二等乳の発生が多く,12月には全産乳量の30%におよんだ。なお7月行なった分房別異常乳調査では,上芽室で,13.9%,中札内では11.9%に発生が見られた。以上のことから上芽室,中札内の多頭数飼育牛舎にあっては,繁殖成績は良好で仔積の生産は順調であるが,乳房炎,異常乳,二等乳および趾間腐爛の発生が多く経営を困難にさせている。これらの疾病発生は牛舎内の換気不良,高温度,乳房管理あるいは削蹄不良等に原因しているように思われる。
著者
小野山 敬一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.173-178, 1987-06-30

北海道大雪山系然別地域の東と西ヌプカウシヌプリ山において1979年5月,6月,7月,9月と1981年9月に各々標高900〜1250mと720〜1210mの間で捕殺わなと一部シャーマン型トラップ(900-910m)によって小哺乳類を採集し,垂直分布を調べた。3科4属7種が捕獲された。エゾトガリネズミとオオアシトガリネズミは標高900m付近で殆どが得られた。ミカドネズミは720〜1020m,ヒメネズミは780mから山頂,エゾアカネズミは720mから山頂のあいだで捕獲され,カラフトアカネズミは東ヌプカウシヌプリ山頂付近(1230m)で1個体だけ得られた。両山の900m付近ではエゾシマリスが捕獲された。ミカドネズミとエゾアカネズミが800mから900mで多かった。エゾヤチネズミは捕獲されず,その理由としてミカドネズミとの種間関係が示唆された。ナキウサギは870mから1250mの間で姿や鳴き声により確認された。
著者
門平 睦代 織田 銑一 酒井 健夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

2年間の研究期間中の研究対象地域は、1)愛知県(名古屋大学農学部付属農場周辺)、2)千葉県(農業共済家畜診療部門管轄地域、3)北海道(十勝支庁周辺)の3箇所であった。研究最終目的は、生産から販売までの「食の安全」の輪を、農家(生産者)レベルで確実なものとするための家畜飼養管理基準の構築である。しかし、農家毎に問題の種類も程度も異なるので、一律な家畜飼養管理基準での現場への対応は実践的ではない。そこで、この課題では、パイロット研究として、生産者のニーズを的確に把握し、その解決策を家畜保健所などの公共機関の職員(外部者)と農家が一緒になって探る過程が、問題の解決、ひいては生産性の向上へとつながることを提示することが重要な役割を持つ。共同研究者である堀北氏が所属する千葉県農業共済家畜診療部門との連携が十分に機能し、数々の事例を分析することができた。具体的には、2年目の後半に取り組んだ家畜保健所・コンサルタント事業を利用した活動では、参加型手法を使い、従業員全員で問題点を明確にし、解決策を提案し実践したところ、2ヶ月間という短期間に、搾乳頭数が増加し乳量が目的に達成したのに搾乳時間,は短くなり、乳房炎などの疾病発生数が減少し、仕事の連携が改善したという事例を生み出した。薬などの有害物質や資金を使わずに、農場内のコミュニケーション不足、獣医学的知見の一方的な指導、関係機関間の不十分な連携という問題点を改善したことによる成果である。つまり、「食の安全」に関連した健康的な管理飼養問題の解決方法の一例が提示できたわけである。千葉農業共済では上記の活動を平成18年度より正式な業務と認めた。今後は、堀北氏を中心にさらなる事例研究を全国レベルに拡大する。「ポジテイブ制度」など規制が増える昨今、生産者との協力関係を軸とした飼養管理基準の構築が急がれる。
著者
柳川 久 馬場 まゆら
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

十勝の農耕地帯の孤立林には多様な鳥類が生息しており、孤立林の鳥類多様性は周辺の景観構造から大きな影響を受けていることが明らかになった。記録された鳥類群集を樹洞営巣性、地表営巣性、樹上営巣性という3つのグループにわけ、各グループの個体数を説明する局所・景観要因を特定するための統計解析を行った結果、3 グループすべてで周辺の景観構造の重要性が示された。具体的には、樹洞営巣性鳥類の個体数は孤立林周辺に森林が多いほど多くなり、地表営巣性および樹上営巣性鳥類の個体数は孤立林周辺に自然草地が多いほど多くなることが分かった。また本調査地の孤立林には、生態系ピラミッドの頂点に位置する猛禽類(ハイタカ、ノスリ)も数多く生息しており、多数の孤立林においてこれらの営巣が確認された。
著者
宗岡 寿美
出版者
帯広畜産大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本年度は調査の最終年度にあたるため,調査事例の少ない十勝地方を対象として,水田地域における農業用水(畑作流域河川)・水田排水および畑作地域における雨と雪の水質成分について調査した。また,釧路・根室地方における酪農流域河川の土地利用と水質環境についての経年調査をもとに,北海道東部の畑作・酪農流域河川の水質水文的評価に供した。なお,本研究では,主として窒素とリンを指標として評価・考察を進めた。まず,水田地域における農業用水(畑作酪農流域)はT-N濃度≒0.41〜3.7mg/L,T-P濃度≒0.11〜0.5mg/L,一方,水田排水はT-N濃度≒0.24〜5.0mg/L,T-P濃度≒0.06〜0.54mg/Lとなり,施肥・代かき直後を除いて,水田は河川水質を汚濁するものではないと考えられる。帯広畜産大学構内における降水中の窒素・リンについてみると,降水量は1170.0mm,T-N濃度=0.55mg/L,T-P濃度=0.021mg/L,pH=5.8であり,降水からの窒素のインプットはT-N=643.5kg/km^2・yである。酪農流域河川の水質濃度は,酪農流域・改修河川の2流域でT-N濃度=1.36mg/L・1.64mg/L,酪農流域・自然河川ではT-N濃度=1.03mg/L,林野流域・自然河川ではT-N濃度=0.29mg/Lとなった。北海道東部における畑作・酪農流域河川の水質環境を保全するとき,汚濁負荷発生源の除去・抑制が優先課題となる。しかし,汚濁負荷発生源が同程度の場合には,自然河川が有する水質浄化機能や河畔域の緩衝帯による汚濁物質の河川への流入抑制効果などを積極的に発揮すべく,土地利用を再構築していくことが必要であろう。
著者
本江 昭夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.107-112, 1987-06-30

1)1983年4月にエゾノギシギシとナガバギシギシの稚苗を圃場に移植し,踏圧回数,土壌の締め固め処理,刈取り回数にたいする両種の生育反応を2年間にわたって調査した。2)刈取り処理が個体あたりの総乾物生産量にもっとも大きく影響した。これにたいして,踏圧と土壌の締め固め処理の影響は小さく,また,これら3処理にたいする両種の生育には差をみとめなかった。3)エゾノギシギシは播種当年に花茎を抽出したのにたいして,ナガバギシギシは根生葉のみで推移した。また,刈取りの回数が多くなると,両種において根生葉の割合が増加した。4)刈取り後の再生力はエゾノギシギシの方がナガバギシギシより良好であり,これが,エゾノギシギシの草地雑草としての重要な特性であると推察された。
著者
山下 忠幸 三須 幹男 山本 志郎 寺田 弘 石井 祥之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.27-"42-2", 1963-12-25

いわゆるホモの不妊の原因を形態学的に明らかにする目的で,東北海道の3ミンク飼育場で蒐集したホモ3種類の合計50個体および対照としての3品種の合計33個体の尿生殖器についてまず肉眼的観察を行ない,次のような成績をえた。1)一側の泌尿器に異常が認められた個体に,同時に同一側の生殖器にも異常が認められたもの(尿生殖器異常群)がNAMRのHomo Sapphire3例中1例(33.3%)およびHomo CCPastel19例中7例(36.9%),またTAMRのHomo Sapphire21例中3例(14.3%)に発見れた。2)一側の生殖器にのみ異常が認められるものがNAMRのHomo CCPastel19例中2例さ(14.3%)に観察された。3)対照としての3品種33例および品種不詳の500剥皮屍体には尿生殖器あるいは生殖器の異常なものは1例も発見できなかった。4)尿生殖器異常群の肉眼的異常所見として,一側の腎臓欠損とこれにともなう腎脈管および尿管の欠如,さらに泌尿器異常側の腹部潜在精巣あるいは精巣上体,精管の欠如が観察され,これら異常の出現様式によって尿生殖器異常群を3型に分類した。5)生殖器異常群の2例中1例は左側の腹部潜在精巣と同側の精巣上体,精管を欠如していたもので,他の1例は右側の鼠径部潜在精巣を示していたものである。6)尿生殖器の異常側の出現頻度には差がみられなかった。7)ミンクの正常腎は左右ほぼ同様の形態を示し,一般に菜豆形を呈する。8)ホモにおける一側腎臓欠損例の他側残存腎は個体によって長径,幅径,厚径それぞれの増加率で異なるために,一律な形態を示さなかったが,形態のいかんにかかわらず残存腎は正常腎のほぼ2倍の重量増加を示すものが多かった。9)ミンクの精巣は採皮時期において蜿豆豆形を呈するが,繁殖期においては長径が短径および厚径に比べその増加率が著しく大である結果,厚い丸味を帯び,あたかもラッキョウ様の形態をとるようになる。10)ホモの精巣は他品種の精巣に比べ極めて発育が悪く,採皮時期,繁殖期ともホモの精巣は他品種の精巣の約1/2の重量を示すに過ぎなかった。11)ミンクの精巣は対照,ホモとも左精巣が右精巣より重いものが多かった。
著者
福井 豊 武藤 浩史 石川 尚人 寺脇 良悟 小野 斉 家倉 博
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.33-41, 1982-11-25

本研究は,黒毛和種未経産牛57頭について,A群26頭は24時間連続観察,B群の31頭は1日30分の2回観察を22日間行った。調査項目は,1日の発情頭数,22日間の全発情頭数,発情開始時刻,発情持続時間,乗駕および被乗駕回数,1日の発情頭数による発情行動の変化(Sexually-Active Group),牛群内の社会的順位,天候および気温と発情行動との関係についてである。A群において,26頭中23頭(88.5%),延25例,B群において31頭中23頭(74.2%),延26例の発情が確認された。B群の発情観察時間で,A群の発情発見結果を24時間連続観察と比べると,1例見逃したのみであった。発情開始時刻は乗駕および被乗駕行動とも夜(18:00〜06:00)に開始したものが半数以上であった(乗駕行動:56.5%,被乗駕行動:52.0%)。発情行動は全例において乗駕行動で始まり乗駕または被乗駕行動で終了した。その内,乗駕-被乗駕-乗駕の発情行動パターンが観察されたのは23例中17例(73.9%)であった。乗駕行動から被乗駕行動へ移行する時間差は6時間03分±5時間26分であった。発情持続時間は,被乗駕行動の継続時間では19時間13分±6時間37分であり,全発情行動の継続時間では27時間06分±9時間47分であった。単独で発情を示した牛の発情持続時間は,同時に2頭似上発情を示した牛と比べて短く,乗駕および被乗駕回数も少なかった。牛群内の社会的順位と発情行動および発情持続時間との間には有意差は認められなかった。また,天候や気温についても明らかな関係は見られなかった。本研究から,1日30分の2回観察(06.00と18.00)の発情観察により,ほとんど全頭の発情牛を確認できた。しかし,発情開始時刻,発情持続時間,乗駕および被乗駕回数は個体やSexually-Active Groupの構成により変化すると思われた。
著者
藤巻 裕蔵 鷹股 昌子 佐藤 文
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 自然科学 (ISSN:09193359)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-46, 1994-10-07
被引用文献数
1

帯広市の半自然条件の草原(A)と農耕地(B)で,1977-1981,1983-1986年の繁殖期にノビタキの巣92例を調べ,繁殖生態について明らかにした。ノビタキの繁殖地への渡来は4月中旬で,雌でやや遅いことがあった。成鳥の再渡来率は雄で52%,雌で19%,最も長期にわたって生存が確認されたのは,雄で45か月,雌で33か月であった。造巣開始は早い例では4月28日,遅い例では7月11日で,造巣期間は4-10日,平均5.3日であった。営巣場所は前年の枯草が覆いとなるような地上であったが,地上15-19cmの草上に造られた巣が2例あった。巣密度と巣間距離は,Aで0.8-1.0巣/ha,50-163m,平均110m,Bで0.4-0.5巣/ha,50-321m,平均179mであった。ただし同一つがい(または雌雄の一方が同一個体)の1・2回目(やりなおしも含む)繁殖の場合は,Aで22,68m,Bで17-132m,平均69mであった。第一卵産卵日のピークは5月上旬と6月下旬-7月上旬であった。毎日1卵ずっ産卵され,最終卵の産卵後に雌による抱卵が始まった。抱卵期間は12-14.5日,平均13.6日,1腹産卵数は3-7卵,平均が前期繁殖(第一卵産卵日5月31日以前)で6.3卵,後期繁殖(第一卵産卵日6月1日以後)で5.6卵であった。ふ化した巣の割合は85,4%で,ふ化しなかった例には,巣の放棄、卵の消失、捕食または草刈による巣破壊,カッコウの託卵があった。1腹雛数は1-7羽,平均が前期繁殖で5.8羽,後期繁殖で4.5羽であった。育雛期間は11-15日,平均13.4日であった。巣立ちした巣の割合は92.3%で,育雛期間中の死亡例には,雛の捕食と消失,ウシによる巣破壊大雨による雛の死亡があった。1巣当たりの巣立幼鳥数(巣立直前の雛数)は,1-7羽,平均が前期繁殖で5.7羽,後期繁殖で4.4羽であった。巣立ち後5-8日で幼鳥は草上に姿を現わすようになり,この頃の幼鳥数は巣立ち時の40-90%に減少していた。巣立ち後10日目頃まで給餌をうけ,30日目頃の幼鳥数は巣立ち時の17-50%になっていた。ふ化率(ふ化数/産卵数)は前期繁殖で82.7%,後期繁殖で66.9%,巣立率(巣立幼鳥数/ふ化数)は前期繁殖で81.4%,後期繁殖で89.7%,繁殖成功率(巣立幼鳥数/産卵数)は,前期繁殖で67,3%,後期繁殖で60%であった。繁殖期間は4月下旬-8月中旬で,1回目の繁殖に成功したっがいのうち約70%は2回目の繁殖をし,その間隔(第一卵の産卵日の間隔を基準とする)は46日であった。1つがいが1繁殖期に巣立たせる幼鳥数は6.5羽であった。
著者
小野 決
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.277-316, 1982-08-25

著者は1970年以来北海道におけるブユの分類学的研究を行なうため各地で多数の材料を採集飼育し,更にその習性特に吸血性について獣医学との関係を検討した。それらを要約すれば下記の通りである。1)北海道で1976年までに12種のブユが知られていたが,著者の調査により更に19種のブユが追加され,現在計31種のブユが北海道に産することが確認された。その19種の内訳は14新種,1新亜種が著者によって記載され,日本未記録2種が再記載され,北海道未記録2種が報告されている。2)分類学上,ハルブユ亜科,ハイイロオオブユ族を新らたに創設した。3)家畜に来襲吸血する種名の確認されたブユは次の通りである(表V参照) : オオブユ,キアシオオブユ,アオキツメトゲブユ,アシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ,クロアシマダラブユ,スズキアシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ。この内アシマダラブユはその最盛期(6月上,中旬)に放牧中の牛馬にはげしく来襲吸血つる最も重要な種である。4)ダイセンヤマブユは山羊に来襲吸血することが観察されたが,牛馬,人体に来襲することは観察されてしない。5)人体に来襲吸血する種名の確認されたブユは次の通りである(表V参照) : オオブユ,アオキツメトゲブユ,ニシジマツメトゲブユ-晩春。キアシオオブユ,キンイロオオブユ,アポイキアシオオブユ,アシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ-初夏。ホロカアシマダラブユ,スズキアシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ-晩夏,初秋。この内アシマダラブユは発生量が多く最もはげしく人体に来襲吸血する。6)キタクロオオブユ,ダイセツハルブユは高山地帯で群飛するが人体から吸血することは稀であり,恐らくこれらは鳥類から吸血するものと思われる。
著者
泉本 勝利 岩原 良晴 三浦 弘之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.187-196, 1983-11-30

食肉の脂質酸化の測定について精度の高い条件を見出すため,2種のマロンアルデヒド(MA)測定法,すなわち抽出法および蒸留法によるチオバルビツール酸(TBA)値測定法を比較検討した。得られた結果は次のとおりである。1)抽出法において,加熱中に著しい脂質酸化が起こり,反復抽出によってもTBA値は減少しなかった。そのため食肉中の真のMA量は測定できなかった。挽肉よりもMAの抽出性を良くするために,試料を均質化したが,黄色い物質の出現によりTBA値を測定する538nmの吸光度は挽肉よりも低くなった。2)蒸留法において,加熱中に脂質酸化が起こり,これはブチルヒドロキシトルエン(BHT)を加えても完全には抑制できなかった。回収試験において,溶液中のMAは肉のMAに較べ,より速く,完全に蒸留された。そこで,食肉からMAが抽出される速度は非常に遅いと考えられた。食肉のMA回収率測定のために,1,1,3,3-テトラエトキシプロパン(TEP)もしくは1,1,3,3-テトラメトキシプロパン(TMP)を肉に混合する方法は,真の回収率が得られないことを示唆した。3)蒸留法は抽出法よりも優れていた。しかし加熱中に脂質酸化が起こった。精度の高いTBA値を得るためには,蒸留法の改良もしくは加熱をしない方法の開発が必要と思われる。
著者
松井 高峯 牧野 壮一 石黒 直隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

羊のスクレイピー、牛の海綿状脳症(BSE)、およびクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)に代表される伝達性海綿状脳症(プリオン病)の病原体(プリオン)は病原体特異的な核酸を持たないことから、遺伝子型別および抗原型別は病原体型別には応用できない。しかしプリオンは生物学的性状あるいは生化学的性状によりある程度区別可能である。そこで本研究では、日本の羊スクレイピーの病原体に多様性("株")が存在するか否かを明らかにするための一連の実験を行なった。また、プリオンの多様性を規定するPrP以外の宿主の遺伝的要因についても検討を加えた。我が国で過去10年間に日本で発生した羊スクレイピーの11例を選抜し、マウスに接種して伝達性と羊脳内に蓄積したPrP^<Sc>の蛋白質分解処理抵抗性を調べた。その結果、使用した11例のスクレイピーは生物性状および生化学性状の異なる3群に分類された。つまり日本には複数のスクレイピー病原体が存在することが明らかとなった。本研究のような多数の羊スクレイピーを材料としてその性状を詳細に比較検討した研究はこれまでに英国で報告があるのみで、日本では本研究が初めての例である。本研究で得られた成績は、日本に存在するスクレイピー病原体が動物種を越えて牛や人間に感染する危険性を評価するための重要な知見となる。人ではアポリポプロテインE(ApoE)の特定の遺伝子型が、アルツハイマー病の危険因子であり、またCJDの病型に関与することが示唆されている。そこで本研究では、羊スクレイピーにおいてApoEが病型や病原体株の多様性に関与するか否かを検討した。まず羊ApoE遺伝子をクロ―ニングして塩基配列を決定した。次に羊ApoE遺伝子の多型を調べた結果、羊には3種のApoE遺伝子型があることが明らかとなったが、羊ApoE遺伝子の多型とスクレイピー病原体の生物性状および病型に関連は認められなかった。
著者
佐藤 孝則 丹後 輝人 芳賀 良一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.149-157, 1981-05-15

繁殖に関する研究のなかで,現在あまり知られていないエゾシカの分娩生態について調査を行った。分娩の徴候として観察された外観の変化と行動は,腹部の下垂,乳房の肥大,外陰部の腫張と弛緩,尾の上げ下げ,速歩行動,呻き声,著しい威嚇であった。また1日あたりの脱糞と排尿の頻度は,分娩が近づくにしたがって増加を示し,特に分娩の前日で一番高い値を示した。分娩の順序は以下のとおりで,娩出陣痛,羊膜の突出と破裂,胎児の前肢と頭頸部の出現,出産,臍帯の摂取,後陣痛,粘液の流出,後産の排出と摂取とつづいた。3頭の雌ジカは林に隣接する牧草地内で出産を完了した。出産するとすぐ母ジカは新生児を絶えまなく,かつ力強くなめ始めた。新生児の最初の動きは頭部を振ることであった。
著者
ミラー マービン
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第II部, 人文・社会科学篇 (ISSN:03857735)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.60-78, 1973-03-30

現代活躍している文学作家あるいは現代劇作家たちの中に,よく宗教的テーマを取り上げている人がいることはたびたび指摘されている。ある時は聖書のイメージをそのまま借り,ある時は神学的用語を利用することもある。この論文の目的は,アメリカの一流劇作家のアーサー・ミラーが書いた「転落の後に」と,旧約聖書の創世記1章から4章までにでてくる人間の本質に関する教えやイメージを比較することにある。創世記にあるイメージのほとんどが主人公のクェンティンと彼の2番目の妻になったマギーとの間の会話に現われてくる。弁護士クェンティンが妻と娘の待つ家へ帰る途中,初めて彼女に会った時の彼の励ましのことばが彼女のために新しい生活の出発点になった。その結果,マギーは彼を神々のように見るようになった。ふたりの関係の進行と,創世記に記述されている誘惑の進行の中に,ほとんど同じ段階が見られる。つまり,どちらも哲学的レベルからしらずしらずに全く好色の誘惑へという段階を辿っている。結婚して間もなく,新しい妻マギーを憎むようになった原因は,自分の心の中の悪から生まれてきたものであることを彼は認めた。妻の死を望んでいることに気がついた時,自分は恐ろしい人間であることが初めてわかってきた。これは彼ひとりの問題ではなく,全人類が彼のように悪を持っていることがこの劇の重要点のひとつだと思う。「転落の後に」にある救いは,最後の場面に次のようにまとめて書かれてある。「人間とは危険な存在だと!-今でもぼくはこの世界をふたたび愛し,生きぬく確信をもっている。-やはり転落の後に,原罪を背負い,多くの死に当面した後に,真に知りうるのだ。-殺そうと思うことは殺すことではない。しかし,恵まれた勇気をもって,もしも現われ出るならば,それに立ち向うだろう。そして愛のきざしによって家族の邪魔者に対するように,これを許す。くり返し,くり返し,永遠にか?-」(アーサー・ミラー全集第III巻,226〜227ページ,菅原卓訳,早川書房)結論に至る過程の背景には,聖書的・神学的イメージが流れていると言える。その結論にも聖書の教えに似たような点が少なくともふたつある。ひとつは救いの希望,いまひとつは,人間の救いが実現されるために人間と神との協力が必要であることである。しかし,一方ではクェンティンが自分の悪の全責任を負って,自分の力でその人間性の醜さを絶えず許すという決心がでてくるが,聖書による救いとは程遠い。悪の問題の最終的解決は,人間の外側からでないと不可能であることを聖書は絶えず教えている。すなわち,全人類の救いは神から(つまり,人間の外側からきた)イエス・キリストを通してしか得られないと聖書は主張するが,クェンティンによる解決はこれと全く対照をなしている。
著者
品川 森一 平井 克也 本多 英一 見上 彪 小沼 操 堀内 基広 石黒 直隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

1.PrP遺伝子に関連する制限酵素切断断片の多様性:日本で飼育されている羊のスクレイピ-の感受性に関わる遺伝的な背景は知られていない。潜伏期及び感受性に関係するPrPの遺伝子に関連した染色体DNAの制限酵素切断断片に多様性(RFLP)が認められ、このRFLPのパターンと潜伏期あるいは感受性の間に関連があることが明らかにされている。日本の羊におけるRFLP型の調査と特定の型とスクレイピ-の関連の有無を検討した。日本各地から集めた羊の組織から染色体DNAを分離し、EcoRIあるいはHindIIIで消化したDNA断片を羊のPrPコード領域をプローベとしてSouthern Hybridizationを行なった。日本の羊はI〜VIの6型に分けられた。またI〜III型は英国で報告された型と一致していた。スクレイピ-の羊18頭の型はI型に8頭と集中しており、一方II型とVI型は、正常な羊128頭で見られる頻度に比べて低く、抵抗性であることが示された。さらにスクレイピ-感受性にかかわる遺伝学的な背景を明らかにするために、地方別のRFLP型の分布を161頭の羊で調べたところ、ある程度の地域差が認められた。2.PrP^<Sc>検出によるスクレイピ-汚染状況の調査:1988年から1993年までに北海道、東北、関東および中部地方から集めた主にサフォーク種の羊197頭の脳、脾臓およびリンパ節からPrP^<Sc>の検出を行った。そのうち北海道の16頭および他地域の2頭からPrP^<Sc>が検出されたが、後者も北海道から導入された個体であった。このことから、日本では現在なおスクレイピ-の汚染は北海道に限局していることが示唆された。しかし北海道外で発生を見た地域では、その地域での伝播が起きていないことが確かめられるまで、中枢神経症状を示した羊があれば詳細に検索する必要があろう。また北海道からの羊の移動および有病地(国)からの導入は慎重を期す必要がある。
著者
富張 瑞樹
出版者
帯広畜産大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究では、犬の悪性黒色腫における免疫寛容誘導因子Gpnmbに関して、その遺伝子配列を解析するとともに、Gpnmb mRNA発現量が著しく高い犬悪性黒色腫細胞株が存在することを明らかにした。また、悪性黒色腫の自然発症犬では、GpnmbのmRNA発現量がすべての症例(n=4)において増加しており、他の免疫寛容誘導因子と比較して最も高い発現量を認めた。これにより、Gpnmbの犬悪性黒色腫における発現動態が初めて明らかにされるとともに、免疫寛容誘導因子として主要な役割を果たしていることが示唆された。
著者
細川 和久 三宅 勝 小野 斉 佐藤 邦忠 上田 晃 田村 哲 金子 五十男
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.617-635, 1977-11-25
被引用文献数
1

1.北海道根室半島およびその近隣地域で,昭和39から50年度までの間,発毛不全を主徴とする先天性ウシ奇形,59例が観察された。2.奇形は,すべて4〜7月に受胎したウシの中から発生し,かつ,放置すると長期在胎になり,子ウシは分娩後生存不能であった。3.奇形は,肉眼的には発毛不全のほか,矮小肢,球節部の熊脚状,歯肉で被われた歯,下垂体の欠如あるいは形成不全,体格矮小,組織学的には,下垂体腺葉の形成不全,副腎における髄質の欠如と皮質三層の分化不明,および皮膚毛根の発育不全などの異常を呈していた。4.この奇形は放牧地に繁茂しているバイケイソソを妊娠牛が摂取したたために発生したものと疑われたので,4頭の妊娠初期のウシに乾燥したバイケイソウの茎および葉を14日間から74日間給与したが奇形は発生しなかった。