著者
松尾 定憲 天野 定雄 櫻井 健一 榎本 克久 阿部 英雄 小倉 道一
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.175-178, 2006-04-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

症例は16歳女性。15歳頃より神経性食思不振症を指摘され, 拒食と過食を繰り返していた。過食し, 通常は自ら嘔吐していたが, 来院前日過食後は嘔吐できず腹痛出現したため, 近医受診し加療目的に当科へ紹介受診となった。来院時, 腹部は著明な膨満を認め圧痛, 腹膜刺激症状を認めた。腹部単純レントゲン, 腹部CT検査では大量の残渣のため骨盤腔まで拡張した胃を認め, 少量の腹水も認めた。経鼻胃管を挿入するも内容の吸引が不十分であった。以上より急性胃拡張, 胃穿孔の疑いにて緊急手術を施行した。開腹所見としては残渣による著明な胃の拡張を認め, 広範囲に筋層の断裂を認めた。胃内容をドレナージし, 筋層の断裂は漿膜筋層縫合にて修復した。術後経過良好なため術後16日目に経口飲水開始し, 術後25日目より経口摂取開始した。その後も全身状態良好で術後32日目に退院となった。
著者
長谷川 拓男 小川 匡市 市原 恒平 青木 寛明 又井 一雄 吉田 和彦 矢永 勝彦
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.648-653, 2017 (Released:2018-08-30)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

症例は57歳男性.下痢,発熱,腹痛を主訴に入院となった.急性腸炎の診断で保存的治療を行ったが,第5病日に腹膜炎症状が出現し緊急開腹手術を行った.開腹所見では盲腸から横行結腸まで浮腫状で著明に拡張し腸管壁は脆弱化しており,結腸亜全摘術+回腸人工肛門造設術を行った.術後は敗血症性ショックによる急性循環不全,呼吸不全に陥り人工呼吸器に装着し集中治療室で治療を行った.術後3日目に糞便の顕微鏡検査でアメーバ性大腸炎と診断され,メトロニダゾールの投与を開始した.その後,全身状態は急激に改善し,術後49日目に軽快退院した.アメーバ性腸炎は近年日本においても増加傾向である.診断に難渋する下痢,腹痛症例に対し本疾患を念頭におき診療を行うことが重要であると考えられた.
著者
田口 大輔 上田 正射 池永 雅一 谷田 司 高 正浩 家出 清継 津田 雄二郎 中島 慎介 松山 仁 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.133-137, 2021 (Released:2022-04-30)
参考文献数
21

症例は19歳,女性.右下腹部痛のため,近医を受診し,急性虫垂炎を疑われ当科へ紹介された.腹部単純X線像で右下腹部に高吸収陰影を認め,腹部単純CTで虫垂根部より1cm末梢側虫垂内の輪状の高吸収陰影と,その末梢側虫垂の腫大を認めた.虫垂結石を伴う急性虫垂炎を疑い,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.切除標本内に14mm大の虫垂結石を認めた.術後経過は良好であり,術後2日目に退院した.虫垂結石を伴う急性虫垂炎は稀であり,穿孔や膿瘍形成のリスクが高く,重症化しやすいとされている.本症例は受診時の炎症は軽度であったが,虫垂結石を有すると考えられたことから早期に手術を行った.抗菌薬が発達した近年では保存的に軽快が得られる急性虫垂炎の症例も多いが,虫垂結石を伴う虫垂炎の場合は重症化のリスクが高く,積極的に手術を考慮する必要があると考えられる.
著者
西村 泰司 渡辺 晃秀 森川 泰如 李 哲洙 一ノ瀬 義雄 栗田 晋 近藤 幸尋
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.265-268, 2018 (Released:2019-04-30)
参考文献数
8

精巣囊胞は稀な疾患である.症例は74歳男性透析患者で血便と下腹部痛の精査中に施行したCTで偶然に両側精巣囊胞を指摘され当科を受診した.超音波検査では単純性精巣囊胞に特徴的な,辺縁が整で明瞭,内部エコーはなく均一に低エコーであり,腫瘍マーカーは陰性で,burned-out tumorに特徴的な転移性腫瘍を認めなかったため両側単純性精巣囊胞と診断し,穿刺や精巣摘除術は施行せず経過観察となった.本邦における単純性精巣囊胞は自験例を含め24例のみの報告であったため,貴重な症例と思われたので若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
菊池 真維子 中島 政信 室井 大人 高橋 雅一 山口 悟 佐々木 欣郎 土岡 丘 加藤 広行
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.176-181, 2019 (Released:2020-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

食道癌根治切除術は他の消化器癌手術と比べ侵襲の高度な手術となり,不整脈などの術後合併症が重篤化することもしばしばで周術期管理は特に重要である.当科にて右開胸または胸腔鏡下での食道癌根治切除術を施行した症例中,術中および術後に120回/分以上の頻脈性不整脈の発現を19例に認め,術前から心電図異常を認め(p=0.0001),循環器疾患の既往を認めた症例(p=0.0061)で有意に頻脈性不整脈の発生を認めた.当科では頻脈性不整脈に対する治療の中で,19例中12例に短時間作用型β1選択的遮断薬である塩酸ランジオロール投与を行っており,12例に対する後方視的な検討を行った.塩酸ランジオロール投与により10例(83.3%)が洞調律への改善を認め,全例に血圧低下や呼吸状態の悪化は認めなかった.投与基準に従った食道癌周術期における頻脈性不整脈に対する塩酸ランジオロール投与は副作用を生じることなく安全に投与可能であり,術後成績向上の一助になると思われる.
著者
矢野 佳子 平林 邦昭 木野 茂生
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.807-816, 2020 (Released:2021-12-31)
参考文献数
41

症例は71歳女性.遷延する発熱と体重減少を主訴に近医受診.腹部超音波にて右腹部に腫瘤を指摘され,当院紹介受診となった.来院時,37℃台の発熱とCRPの上昇を認めたが,腹部症状の訴えはなかった.腹部CTにて上行結腸に7cm大の造影効果を伴う腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では,上行結腸に巨大な粘膜下腫瘍を認め,生検を施行するも質的診断は困難であった.抗生剤にても解熱せず,他に感染のfocusは認めず,右半結腸切除術を施行した.術後はすみやかに解熱し,炎症反応は正常化した.病理検査では,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(Inflammatory myofibroblastic tumor:IMT)と診断した.IMTは筋線維芽細胞の増殖と炎症細胞の浸潤が著明な腫瘍で,肺が好発部位であるが大腸原発は稀である.今回われわれは,上行結腸のIMTを経験したので,自験例も含め本邦ならびに海外報告例54例を検討した.
著者
利野 靖 湯川 寛夫 山田 六平 佐藤 勉 稲垣 大輔 藤川 寛人 長谷川 慎一 大島 貴 吉川 貴己 益田 宗孝 今田 敏夫
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.62-66, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
9

【目的】十全大補湯は病後の疲労倦怠,食欲不振,貧血に処方される漢方薬の一つである.再発胃癌の抗癌剤治療中の白血球減少,貧血,食思不振に悩んでいた症例に十全大補湯を処方したところ改善した症例を経験した.そこで胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で十全大補湯を処方した症例をretrospectiveに解析し,抗癌剤の副作用の発現率を検討することとした. 【対象と方法】進行再発胃癌の診断で抗癌剤治療を施行した症例で31例に十全大補湯を処方した.抗癌剤の副作用発現と,十全大補湯の副作用について検討した. 【結果】十全大補湯が不味くて飲めない症例が1例.17例の血液毒性では,11例(64.7%)でGradeの低下がみられ,有効と判定した.10例の非血液毒性(食思不振,倦怠感など)では,7例(70.0%)で効果がみられた. 【結語】抗癌剤治療の副作用に十全大補湯は有効であることが考えられた.
著者
高塚 聡 新川 寛二 貝崎 亮二 藤原 有史
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.1096-1101, 2012 (Released:2013-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
4 2

Mohsペーストは塩化亜鉛を主成分とする外用剤で,皮膚科領域の悪性腫瘍に用いられている.今回われわれは,Mohsペーストが著効した局所進行乳癌の1例を経験したので報告する.患者は70歳代女性.2009年7月左乳房腫瘤を主訴に当院を受診した.左乳房に悪臭と大量の滲出液を伴う10cm大の腫瘍を認め,生検で硬癌と診断された.FEC療法を開始したが定期的な通院が困難で,2011年5月に腫瘍からの出血のため入院した.入院後よりMohsペーストによる処置を開始した.腫瘍からの出血は速やかに消失し,滲出液や悪臭も減少した.約1カ月後腫瘍は自然に脱落した.その後全身転移のため2011年11月永眠するまで,quality of life(QOL)は良好に保たれた.Mohsペーストは局所進行乳癌患者のQOLを改善するだけで無く,積極的な局所治療の1つになりえると考えられた.
著者
鈴木 文武 岡本 友好 船水 尚武 伊藤 隆介 藤岡 秀一 矢永 勝彦
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.906-910, 2014 (Released:2015-10-30)
参考文献数
16

症例は70歳男性.繰り返す胃潰瘍で近医加療中,腹部CT検査にて膵体部に58mm大の腫瘤を指摘され,当院紹介受診となった.潰瘍部より2度の生検が行われたが,いずれも良性の診断であった.血液生化学検査では,CEA14.1ng/ml,CA19-9 45U/ml,AFP 507ng/mlと腫瘍マーカーの上昇を認めた.当院の腹部超音波検査では,膵体部に内部不均一で比較的境界明瞭な等~低エコーの腫瘤として描出された.超音波内視鏡下穿刺吸引生検の結果,低分化腺癌を認めた.膵悪性腫瘍の診断にて膵体尾部切除,リンパ節郭清を行った.術中に胃前庭部に漿膜側へ突出する腫瘍を認めたため,幽門側胃切除術を併施した.術後病理組織診断では,胃はAFP産生腫瘍であり,膵の腫瘤は胃癌の転移リンパ節であった.以上,膵腫瘤が発見契機となったAFP産生胃癌膵周囲リンパ節転移の切除例を経験した.膵腫瘤性病変にAFPの上昇を伴った場合は,胃の十分な精査が肝要と考えられた.
著者
出口 幸一 西川 和宏 岩瀬 和裕 川田 純司 吉田 洋 野村 昌哉 玉川 浩司 松田 宙 出口 貴司 田中 康博
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.1186-1190, 2013 (Released:2014-12-25)
参考文献数
18

症例は85歳,男性.2006年に胃癌に対し幽門側胃切除術を施行された.術後補助療法としてUFTを1年間施行した.2009年7月に左副腎転移,傍大動脈リンパ節転移が判明し,化学療法を開始し一旦は腫瘍縮小を認めた.しかし徐々に腫瘍が進行し2011年7月には右副腎転移が出現した.2012年1月に誤嚥性肺炎を発症し入院した.入院後倦怠感悪化,食欲不振,難治性低Na血症,高K血症,好酸球増多症を認めた.当初癌性悪液質による症状を疑ったが,副腎不全も疑われたため,迅速ACTH負荷試験を施行し,Addison病と診断した.hydrocortisonの投与を開始したところ,症状の著明な改善を認めた.癌末期に副腎不全が発症した場合,症状が癌性悪液質によるものと酷似するため鑑別が困難である.両側副腎転移を有する担癌症例では,副腎不全を念頭におき,積極的に内分泌的検索を行うことが重要である.
著者
荒井 淳一 黨 和夫 生田 安司 内藤 愼二 岡 忠之
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.234-238, 2010 (Released:2011-04-25)
参考文献数
15

症例は68歳,女性.腹部腫瘤を主訴に受診した.腹部左側に弾性硬,辺縁整,可動性不良の巨大な腫瘤を触知した.CT,MRI,腹部エコー検査にて後腹膜に左腎下極に接する8×6cmの分葉状の腫瘤を認め,左腎は水腎症を呈していた.後腹膜に発生した脂肪肉腫の診断で腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は黄白色調・弾性硬であった.腫瘍組織は,lipoblastを有しlipoma様パターンを呈する分化型脂肪肉腫の組織とlipogenesisを失った紡錘形異型細胞の錯綜増生から成る悪性線維性組織球腫様の組織が共存しており,病理組織学的に脱分化型脂肪肉腫と診断した.
著者
山根 貴夫 宮島 綾子 八田 一葉 藤田 俊広 曽我 直弘 亀岡 信悟
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.952-956, 2017 (Released:2018-12-28)
参考文献数
23

今回われわれは一般的な治療に効果を認めなかった下痢型の過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)を有する虫垂炎患者に対し虫垂切除を行うことによりIBSの症状が改善した2例を経験した.症例1は47歳の男性,元来1日平均10回の水様便を認める下痢型IBSであった.今回心窩部痛を主訴に受診,急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後より1日1~2回の普通便となりIBSが改善した.症例2は42歳の女性,心窩部痛を伴う1日平均3回の軟便~水様便をきたす下痢型IBSであった.今回右下腹部痛を主訴に受診,急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後より2日1回の普通便となりIBSが改善した.医中誌で検索しうるかぎり虫垂切除により下痢型IBSが改善した報告例はなく,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
三宅 謙太郎 高川 亮 諏訪 雄亮 茂垣 雅俊 舛井 秀宣 長堀 薫
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.827-832, 2014 (Released:2015-10-30)
参考文献数
10

はじめに:術後の段階食は慣習として行われてきたものであり,味の満足度も高くないため必ずしも必要ではないとされているが,胃切除後の症例を検討した報告は少ない.目的:食事内容の満足度向上と,在院日数短縮のために導入した幽門側胃切除後に全粥で開始するパスの有用性を明らかにする.対象と方法:幽門側胃切除術を行った204症例を段階食群(A群)104例と全粥開始群(B群)100例に分け,A群は術後5日目に3分粥,B群は術後5日目に全粥で開始し,2群間の術後在院日数,合併症などを比較検討した.結果:術後合併症発生率に有意差は認めず(A群vsB群:19%vs20%,p=0.889),短期の予後栄養指数では有意差を認めなかったが,アンケート調査の満足度も高く術後在院日数はB群で2日短縮した(12日vs10日,p<0.01).結語:幽門側胃切除術後に全粥で経口摂取を開始することは,安全であり,患者満足度の向上,在院日数短縮に寄与すると考えられた.
著者
沖 一匡 笹原 孝太郎 岸本 浩史 吉福 清二郎 高橋 裕輔
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.135-139, 2012
被引用文献数
1

84歳,女性.近医にてS状結腸軸捻転の疑いにて当院へ救急搬送となった.大腸内視鏡にて軸捻転解除を試みたが,解除困難で,緊急手術となった.手術所見ではS状結腸軸捻転は存在せず.大網が横行結腸に癒着し,横行結腸の狭窄と穿孔を認めた.悪性疾患による結腸狭窄,穿孔と判断.結腸切除施行し,盲腸と下行結腸に人工肛門を造設した.免疫染色の結果,Calretinin(+),HBME-1(+),EMA(+),CEA(-)であり,悪性中皮腫と診断された.病歴聴取でアスベストの暴露歴はなく,術後の胸部CTにて明らかな胸膜壁肥厚は認めなかった.悪性中皮腫の頻度は全悪性腫瘍の約0.2%程度で,約20%が腹膜に生じる.特異的症状に乏しく,多くの症例で腹水貯留を来すが細胞診による正診率は低く,最終的には組織生検を施行し,診断する.今回われわれは,腹部膨満,急性腹症に対する緊急手術で発見された腹膜悪性中皮腫を経験したので若干の文献的考察を加えここに報告する.
著者
小林 照忠 中川 国利 月館 久勝 遠藤 公人 鈴木 幸正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.197-202, 2013-04-30
参考文献数
11

目的:腹腔鏡下虫垂切除術(Laparoscopic appen-dectomy:以下,LA)の有用性について検証した.方法:当科で手術を施行したLA 154例,開腹虫垂切除術(Open appendectomy:以下,OA)86例を,病理組織学的所見による炎症程度に基づいてカタル性,蜂窩織炎性,壊疽性に分類し,臨床的事項について比較検討した.結果:LAとOAでは手術時間に差はなかったが,術後合併症,特に創感染はLAがOAに比べて有意に低率であった.特に壊疽性では,その傾向が顕著であり,術後の絶食期間や在院期間もLAで有意に短縮していた.結語:LAはOAに対して,壊疽性のような高度炎症例においても術後合併症が有意に少なく,急性虫垂炎に対するLAの有用性が示唆された.
著者
北濱 圭一郎 吉川 貴久 田島 佑樹 竹ノ谷 隆 尾戸 一平 矢部 信成 村井 信二
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1065-1070, 2018 (Released:2019-12-27)
参考文献数
34

症例は82歳女性,下腹部痛を主訴に受診した.下腹部に著明な圧痛と反跳痛があり,CT所見と併せて小腸絞扼性イレウスを疑い緊急手術の方針とした.腹腔鏡で骨盤内の血性腹水と子宮を穿通した子宮内避妊具(IUD:intrauterine device,以下IUD)に嵌頓した回腸を確認した.直視下で絞扼の原因となったIUDの環状部分を切離し回腸の絞扼を解除した.絞扼された回腸は完全に壊死しており,回腸部分切除を行った.術後経過良好で術後第8病日に退院した.本症例のIUD子宮穿孔の原因は,子宮萎縮とその後の子宮収縮が最も考えられた.小腸がIUDに嵌頓して生じた絞扼性イレウスは非常に稀である.高齢女性が避妊していた時代は輪状閉鎖型IUDを用いる例が多かったが,現在では使用頻度が減ったため医療者側も想起しにくくなっている.IUD挿入や抜去歴の聴取が重要になる.