著者
山口 晃人
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.2_161-2_184, 2021 (Released:2022-12-15)
参考文献数
33

民主政論者は、知識や能力に応じて意思決定への影響力を不平等に分配する 「智者政 (epistocracy)」 を否定し、意思決定への影響力を平等に分配する 「普通参政権 (universal suffrage)」 を擁護している。その一方で、ほとんどの民主政論者は、子どもには有権者として必要な能力が欠けていることを理由に、参政権を大人に限定することを容認している。 本稿では、民主政論者が智者政による能力に基づく政治的影響力の不平等分配を批判しながら、能力に基づいて子どもの参政権を否定することは、一貫性を欠いていると論じる。子どもの参政権剝奪を正当化可能な理由は能力以外にないと考えられるため、民主政論者は、以下の2つの道のいずれかを選ばなければならない。1つは、あらゆる能力による区別に反対し、子どもを含めた真の普通参政権を支持する道である。もう1つは、民主政の理念型から逸脱することを受け入れた上で、大人のみの普通参政権を支持する道である。本稿は更に、前者の道を選び、子どもに参政権を認めることが民主政論者にとって大きな負担にはならないことを示すとともに、後者の道を選んで、大人のみの普通参政権を支持する場合の難点を指摘する。
著者
淺野 良成
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_256-2_279, 2020 (Released:2021-12-15)
参考文献数
33

本論文では、日本の有権者が外交・安全保障イシューを重視する条件を、置かれた情報環境に注目して検討する。近年、選挙で外交・安全保障を重視する有権者が増加傾向にある。一方で、日常生活で実感し難い対外関係を重視する人たちの特徴について、投票行動研究は十分な説明を用意していない。また、マスメディア研究ではしばしば、有権者の関心はメディアの報道総量の多寡が規定するとされるが、その説明力は必ずしも高くない。しかし、外交問題が直接経験し難い分野である以上、その重視度と情報環境が無関係だとも考えにくい。そこで本論文では、報道総量の多寡とは異なる側面から情報環境を取り上げ、選挙で外交争点が重視される条件付けを検討する。具体的には、メディアが外交・防衛問題の報道で取り上げるアクターの党派的な偏りへ注目する。分析の結果、報道対象が与党へ偏った新聞に接触した場合、有権者は外交・安全保障に関わる主要政党の主張をより幅広いスケール中で認知し、選挙でも外交・安全保障問題を重視する傾向を確認した。
著者
酒井 大輔
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2_295-2_317, 2017 (Released:2020-12-26)
参考文献数
57

本稿は, 引用分析 (Citation Analysis) の手法を政治学史研究に適用し, 日本政治学史の把握のための新たな分析方法と論点を提起するものである。ここで引用分析とは, 文献間の引用―被引用関係の集積から知見を引き出す方法をさす。従来, テキストの質的分析が主流であるこの分野において, アプローチ上の制約から十分検討されていない論点が残されている。そこで, これらの論点を検証するため, 引用分析という量的アプローチを試みる。本稿では, 戦後刊行された70冊の政治学教科書の引用データをもとに, 日本政治学史についての通説を検証した。先行研究によれば, 日本政治学史には二つの転換, すなわち1945年の戦前・戦後の断絶と, 1980年代のレヴァイアサン・グループの登場による転換があったとされてきた。本稿の引用分析の結果, こうした二つの転換は確認されたが, しかし先行世代への引用の傾向について, 二つは対照的な特徴があることが判明した。この結果は, 政治学史研究における引用分析の有効性を示すものといえる。
著者
安高 啓朗
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1_57-1_79, 2017 (Released:2020-07-01)
参考文献数
51

世界金融危機後も依然として強い影響力を保ち続けているネオリベラリズム (新自由主義) の持続性は, 近年の研究における一つの焦点となっている。本稿は, ネオリベラリズムがどのように危機後も生き延びたか, またオルタナティヴな構想が真剣な議論の対象とならないのかについて, 行為遂行的効果という観点から考察する。経済社会学における行為遂行性論と, 「経済による政治の脱魔術化」 としてのネオリベラリズムというW・デービスの定義にもとづいて, 本稿では経済的な尺度が自律した政治的思考を抑圧する形で成立するネオリベラリズムが, 観念の次元で政策を規定するだけでなく, 市場の諸装置にまで及んでいることで半ば自然化されていることを論じる。そこでは, 経済学自体が統治メカニズムの一部となることによって, 経済合理性や道具的理性に合致しないものは規範理論として退けられる。行為遂行性をめぐる政治は, ネオリベラリズムの下では常に非対称的な関係の中でしか行われないのである。
著者
境家 史郎
出版者
日本政治学会
雑誌
日本政治學會年報政治學 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_236-1_255, 2013
被引用文献数
1

In the late 1980s, Ikuo Kabashima empirically showed that uneducated voters in rural areas were more likely to participate in elections in postwar Japan unlike other developed democracies. He argued that this participation structure was the key to Japan's postwar super-stable party system and rapid economic growth with equality. This paper reexamines this well-known "political equality" thesis. The analysis of survey data covering the period from 1958 to 2009 shows that the participation structure shown by Kabashima existed only in the 1970s-80s or the golden age of the 1955 system. The study then explores why the structure changed in the 1990s comparing data from the 1980s and 2000s. The analysis suggests that rural political networks became weaker and the political efficacy of urban educated voters increased over the past 20 years, which resulted in rural voters' lower turnout and educated voters' higher turnout in recent elections.
著者
勝又 裕斗
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.1_368-1_392, 2020 (Released:2021-06-16)
参考文献数
21

選挙制度は有権者の選好を議席に変換する重要な制度である。戦後日本においては衆議院、参議院、そして、地方議会の選挙に至るまで中選挙区制が採用されてきた。55年体制においてほぼ全期間で絶対多数を維持した自民党は、この選挙制度による恩恵を受けていたのであろうか。これに対して既存研究では、中選挙区制において大政党だけが候補者擁立戦略の問題に直面するため、中選挙区制は大政党にとって不利であると指摘された。後続の研究は自民党がこの課題を克服できたのか否かを巡って論争してきたが、これらの研究の多くが政党の得票率を所与として分析を行ってきたため、得票率自体が中選挙区制の影響を受けるという重要な視点が見落とされてきた。中選挙区制によって各政党の得票率がどのような影響を受け、それがどのように議席数に反映されたのかを分析した結果、自民党が総合的に少し議席を減らしたのに対し、社会党は総合的に大きく議席を減らしたことが明らかになった。中選挙区制は第二党である社会党に不利にはたらくことで結果的に自民党に有利にはたらいてきたのである。
著者
吉田 徹
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_37-2_54, 2020 (Released:2021-12-15)
参考文献数
90

ポピュリズム研究は、ポピュリスト政治家の戦略や言説に着目するもの、有権者意識・投票行動に焦点を当てるもの、政治経済的動態から説明するものなどに分類される。ただし、それぞれの研究潮流では、通時的・歴史的な文脈は必ずしも考慮されておらず、時々の選挙や政党組織における支持構造や有権者の属性、その主観的態度などが、いわゆるポピュリズム政治といかに結びつくのかを検証したものが多い。本論は、こうしたポピュリズム研究の潮流における政党組織・政党システム研究に、歴史的原因をかけあわせてポピュリズム生成の原因を探る。すなわち、1. 既存の社民政党による新規の合理的戦略によって、2. 支持動員構造が変容したため、3. 右派ポピュリズム政治の台頭を招いたと主張するものであり、具体的には、現代フランス政治を対象に、断続的に与党の座にあったフランス社会党と、西欧において最も成功したと称されるに至った極右ポピュリスト政党たる国民戦線の1980年代から90年代までの支持構造を分析することで、上記の動態的変化を跡付ける。
著者
上川 龍之進
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.2_134-2_155, 2012 (Released:2016-02-24)
参考文献数
16

It is generally thought that large companies have a more powerful influence on policy making than citizens’ groups in contemporary Japan. In 2006, however, it was decided that the maximum interest rate should be lowered, which the groups aiding victims of consumer lending asked for but which the consumer loan companies strongly opposed. How did ‘weak’ citizens’ groups win against ‘strong’ large firms? Through analyzing this case, this article examines the political influence of large corporations and citizens’ groups.   This article is organized as follows. To begin with, it traces the history of regulations on the maximum interest rate. Next, it depicts the political process of abolishing the ‘gray-zone’ interest rates in 2006. Finally, it examines the resources of the consumer loan companies and the success factors of the groups aiding victims of consumer lending by comparing this case with the case of ‘defective cars problem’ analyzed by Hideo Otake.
著者
前田 幸男
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1_215-1_235, 2013 (Released:2016-07-01)
参考文献数
44

This paper provides a long overdue update on changes in the ways major news organizations conduct and report on public opinion polls. Scholars argue that cabinet approval ratings are far more politically significant than in the past as a consequence of the electoral and administrative reforms in the 1990s. It is now a widely shared premise that public opinion polling results exercise a large influence on the behavior of public officials and legislators. However, while many pollsters and academics debate the role of public opinion polling in public affairs, very few substantiate their claims with basic facts such as the number of opinion polls conducted by major news agencies and how reporting on polls has changed over time. Compiling data from news stories on polling from Asahi Shimbun and Yomiuri Shimbun, I argue that changes in polling practices and reporting are partly responsible for the increasing influence of public opinion polling on government.
著者
山口 晃人
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_100-2_124, 2020 (Released:2021-12-15)
参考文献数
32

政治哲学において、政党は長らく注目されてこなかった。政党が民主主義論の研究対象として前景化されたのは、ここ十年ほどのことである。本稿では、近年の政治哲学における政党研究の主要な議論を再検討することで、立法過程における議会政党の存在意義を明らかにすることを試みる。その結果明らかになるのは、政党は情報提供者として立法過程に不可欠であるが、最終的な意思決定者であるべき積極的な理由を持たず、むしろ政党が最終的な意思決定者になるべきではない一応の理由が存在するということである。その上で、既存の選挙制議院 (選挙院) に加え、無作為抽出された一般市民からなる抽選制議院 (籤院) を設置する選挙院・籤院構想を提示し、それによって政党が意思決定者となることに伴う問題を回避できることを示す。
著者
善教 将大
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_163-2_184, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
47

本稿の目的は, 政党支持の規定性, 具体的には長期的党派性の投票行動に対する影響を検証することである。政党支持の規定性は, これまで多くの研究者が議論してきた安定性とは対照的に, ほとんどその妥当性に関する検証作業が行われていない。本稿では実験的手法を用いて, 行動意欲とは異なる長期的党派性は, 政党ラベルや候補者要因が投票行動に与える効果をどの程度条件付けるのかを分析することで, 政党支持の規定性の検証を試みる。大阪市および近畿圏在住の有権者を対象とするサーベイ実験の結果, 長期的党派性は政党ラベルの因果効果を常に高めるわけではないことが明らかとなった。この知見は, 政党支持は規定的であるという通説的見解に疑義を投げかけるものであると同時に, 有権者における政党支持の 「揺らぎ」 を示唆するものでもある。
著者
山本 圭
出版者
日本政治学会
雑誌
日本政治學會年報政治學 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.2_267-2_287, 2012

This paper aims to re - think the relationship between populism and democracy, and clarify that populism can hold some advantages for democratic societies. In order to do this I shall, first of all, make a survey of some arguments that have dealt with this relationship, and show that they face a difficult antinomy. I will then argue that the primary reason for this dilemma resides in "two strand theory" in the concept of modern democracy. <br>&nbsp;&nbsp;Secondly, this paper focuses on theories of "radical democracy" to indicate how and why recent democratic theories move closer to populism. After reviewing some representative theories of radical democracy, I shall pick up Ernesto Laclau's political theory on populism, as his thought provides an appropriate example of the encounter between democracy and populism. Finally, through these considerations, I will attempt to clarify "the democratic utilities of populism."
著者
鈴木 一人
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1_56-1_75, 2019 (Released:2020-06-21)
参考文献数
21

主権国家システムと資本主義システムは近代のシステムの両輪として発達した。しかし、ニクソンショックによって変動相場制へと移行したことで自由な資本移動が可能となり、それが主権国家の自律的な経済財政政策を困難にさせるようになってきた。開放経済の下では資本移動の自由と安定した為替と自律的な金融政策の三つが同時に成立しないトリレンマが起こるが、ニクソンショックを契機に加速するグローバルな資本移動が所与のものとなり、不安定な為替に耐えられない多くの国は実質的な自律性を失っていく。また深刻な債務危機に陥った国家はIMFによるコンディショナリティによっても自律性を失っていく。自律性を失いながらも法的な主権を維持し続ける国家は、自らの自律性を回復させる運動として、他国に対する排他的な政策、すなわち保護主義的ないしポピュリスト的な政策を取るようになる。しかし、そうした排他的な政策もそれを実行する能力の有無によって不平等な状況が生まれ、法的な平等性は維持されながらも実質的な自律的統治能力の不平等性が生まれる状況になっている。
著者
木村 正俊
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.2_50-2_69, 2009 (Released:2013-02-07)

Between the 1950s and 1970s the world politics was dominated by revolutionary movements in the Third World and the hero of the age was Che Guevara. The Palestinian liberation movement emerged in that era. This article analyzes the evolution and devolution of the Palestinian liberation movement by regarding it as one of the revolutionary movements in the Third World.   After discussing general arguments over revolutions in the World Politics, this article treats the development of the Palestinian liberation movement and the change in its attitude toward armed struggle. Armed struggle by the Palestinian national movement and regional politics in the Middle East influenced each other. Armed struggle by Palestinian guerrilla groups stimulated the 1967 War, which resulted in changes in their attitude toward armed struggle and the shift in the agent of liberation.   The Palestinian Revolution encouraged the Lebanese Civil War. The coalition group between the Palestinian liberation movement and Lebanese progressive groups was opposed to the Lebanese conservative groups. The 1982 War had a crucial effect on the fate of the Palestinian Revolution.
著者
板倉 孝信
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_285-2_311, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
32

本稿は政治・社会史的なアプローチから, 英国の所得税廃止論争の再検討を試みたものである。1815年にナポレオン戦争が終結すると, 翌16年には英国議会で戦時所得税の存廃をめぐる激しい論争が展開された。これに際して, 所得税廃止を要求する大規模な請願運動が行われた結果, 与党トーリーが多数を占める下院で, 政府提出の所得税延長法案は否決された。本稿では, 従来看過されてきた他税種との関連性を重視することで, 先行研究とは異なる角度から所得税廃止論争を分析した。まず筆者は, この論争が所得税延長への反対だけでなく, 対仏戦争中に強化された多くの戦時増税への不満から生じた点に着目した。その上で, 請願運動における言説を分析し, 戦争中から蓄積されてきた納税者の不満が, 終戦後に一挙に表面化する過程を追跡した。さらに筆者は, 所得税廃止を主張する富裕層と麦芽税廃止を主張する中間層以下が, 減税要求に関して緊密に連携した点に注目した。その上で, 以前は別々に展開されてきた両者の請願運動が融合したため, 減税要求が激化したことを指摘した。
著者
金子 智樹
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1_202-1_224, 2018 (Released:2021-07-16)
参考文献数
53

日本は長年 「新聞大国」 と称されてきたが, 新聞発行部数は近年になって急速に減少しており, 市民の政治参加に対する影響が懸念されている。本稿は, 新聞の中でも特に地方紙に注目し, 異なるリサーチデザインを用いた2つの分析を行うことで, 「地方紙普及率の低下は有権者の投票参加に悪影響をもたらしている」 という中心仮説を検証する。1つ目の分析では, 鹿児島県の地方紙である鹿児島新報が2004年参院選の直前に突然廃刊されるという自然実験的事例に注目し, 鹿児島新報の普及率が高かった地域ほど, 2004年参院選において投票率が相対的に低下したことを示す。また2つ目の分析では, 2001年以降の6回の参院選における都道府県別投票率と新聞普及率のパネルデータを用いて, 都道府県や時点の固定効果などの変数を統制してもなお, 地方紙普及率が投票率と統計的有意に正相関していることを明らかにする。地方紙普及率が低下することで有権者が政治や選挙に関する有用な情報に接触する機会が減ってしまい, 投票参加が抑制されると考えられる。
著者
塩沢 健一
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.2_203-2_224, 2009

In a "yes or no" type referendum, people are forced to choose "all or nothing" on a specific issue. However, voting for "yes" or "no" may not be the optimal behavior for those who have neutral attitude toward the issue. In this paper, I analyze the degree to which the choice set of "yes or no" is adequate for referendums and the degree to which referendums can work as a policy-making device for discovering the "will of the people." The data is based on a mail survey conducted in Iwakuni City of Yamaguchi Prefecture.   Although Iwakuni voters "disapproved" of transferring extra forces from an-other base to Iwakuni by an overwhelmingly large margin in the referendum, respondents were divided when I asked them a question that included a choice that considering the financial benefits brought about by presence of U.S. forces. The case of Iwakuni suggests that the "will of the people" cannot be settled with a single balloting and that using a referendum is not necessarily the most appropriate approach when an intermediate solution is available.
著者
網谷 龍介
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_78-2_98, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
33

本論文は, 議会制デモクラシーをめぐるわれわれの理解について, 歴史的な視点から再検討を行うものである。現在, 民主政の経験的研究においては, 「競争」 を鍵となるメカニズムとするのが通例である。本論文はこのような想定を相対化し, 「競争」 ではなく政党による社会の 「統合」 と, そのような政党が多数決を行うためにうみ出す 「妥協」 が, 20世紀ヨーロッパの議会制民主主義の核となるメカニズムであった可能性を指摘する。具体的には, まずオーストリアの国法学者ケルゼン (H. Kelsen) の民主政論が検討され, 20世紀政党デモクラシーの理論的存立構造の一つのモデルが提示される。そして, 彼の議論が単なる理論にとどまらず同時代の現実の政治制度や政党における議論にも対応物を持つことが明らかにされる。現状分析に持つ含意としては, 制度のみでは担保できない社会的 「統合」 のような諸条件に民主政の機能が依存していることが示唆される。
著者
吐合 大祐
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1_293-1_315, 2018 (Released:2021-07-16)
参考文献数
63

選挙制度は政治家の再選戦略に影響を与えるのか。多くの先行研究が, 選挙区定数が議員の再選戦略の一環である選挙区活動や議会内行動に対し影響を与えると指摘してきたが, 実証的証拠は不十分である。本稿は, 「選挙区定数が大きくなるにつれ, 当選に必要な得票率が低下するため, 政治家はより特定の有権者から支持を得るために分配政策を志向すること」 を主張する。本稿は日本の都道府県議会を対象とし, 議員の関心分野を委員会所属から把握する。分析結果より, 選挙区定数の大きい選挙区から選ばれた議員ほど, 建設や公営企業などの分配政策を管轄する委員会へ, 定数の小さい選挙区から選ばれた議員ほど, 総務や財政などの一般政策を管轄する委員会へ所属する傾向にあることが示された。
著者
藤村 直史
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_99-2_119, 2016 (Released:2019-12-10)
参考文献数
46

政党は, 政治資金, 政府・議会・党の役職, 選挙区への利益誘導など, 所属議員の当選に資する複数の資源をもっている。本稿は, 政党資源として, 党首の選挙期間中の候補者訪問に焦点を当て, 政党執行部が党の議席を増加させるために, どのように党内の資源を所属議員に配分するのかを検討する。日本の参議院議員選挙における内閣総理大臣の候補者訪問の分析から, 政党執行部は, 制度や文脈に応じて議席を増大させられるように資源を配分していることを明らかにする。より具体的には, 政党執行部は, 政党投票に依存している候補者や, 当落線上にある候補者に対して, より頻繁に総理大臣を訪問させていることを示す。本稿の知見は, 制度や文脈のもとで, 政党が合理的な選挙戦略を採用し, かつ総理大臣の人気が所属候補者を当選に導く重要な資源であることを提示する。