著者
志村 喬 杉山 範子
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.230-240, 1965-12-25

Frost resistance of nine different varieties of the tea plant was studied in different ways mainly as regards to seasonal change. The following results were obtained. Frost resistance of nine varieties tested is ranked in the following order ; Yabukita, U-22 (triploid) and U-24 (triploid) are very resistant ; Y-1, Y-3, Y-6 and Benihomare moderately resistant ; X-10 and X-12 are slightly resistant. Frost resistance increased with the decrease of water content in leaves, and simultanuously with the increase of osmotic concentration in the leaf cell. Frost resistance increased also with the increase of sugars content. Varieties with leaves containing more total sugars in midwinter were more resistant, although varieties with leaves containing more reducing sugars were not always more resistant. Tannins content in leaves had no definite relation with frost resistance. The increase of frost resistance has no direct relation with the content of total nitrogen and water soluble nitrogen, while water soluble protein increased with the increase of frost resistance, and varieties which contain more water soluble protain in leaves in midwinter are more frost-resistant
著者
大江 夏子 田原 誠 山下 裕樹 丸谷 優 蔵之内 利和
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.169-177, 2004-12-01
参考文献数
25
被引用文献数
6 3

蒸切干し用に開発されるサツマイモ新品種の不正使用や海外流出に対抗する手段を確立するため,加工品である蒸切干し製品から,その原料となった品種を,DNAの多型を基に高精度に判定する技術を開発することとした.転移因子であるレトロトランスポゾンは,植物のゲノムに多数の複製配列が散在している.サツマイモのレトロトランスポゾンRtsp-1のゲノム挿入部位を,葉から抽出したDNAを用い,蒸切干し用新品種候補を含む12品種についてS-SAP(Sequence-Specific Amplification Polymorphism)法により分析した結果,多数の複製配列の挿入と挿入部位の品種間の多型が検出された。品種間で違いが見られたRtsp-1挿入部位の塩基配列を調べ,挿入を受けた宿主側の配列とRtsp-1の末端反復配列間のPCRによって,それぞれの品種について様々な挿入部位における挿入の有無を調べた.その結果,最少5ヵ所の挿入部位のPCRにより,上記12品種の区別が可能であった.蒸切干しイモのDNAは,イオン交換樹脂カラムを用いて抽出することができたが,加工による断片化が進んでいた.断片化した蒸切干しイモのDNAを鋳型にしたPCRにおいても,明瞭な結果が得られ,原料品種の識別が可能であった.染色体の特定部位におけるレトロトランスポゾン挿入の品種間多型をPCRにより判定し品種識別を行う方法は,DNAが断片化した加工品の分析に適する,再現性が高く操作が容易,マーカー数の確保が容易などの利点があり,高次倍数性の作物や加工品などにおける優れた品種識別マーカーとなる.
著者
井上 康昭
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.17-28, 1984-03-01

トウモロコシの一代雑種育種では,一般組合せ能力に対する改良と並行して,特定組合せ能力(SCA)の高い組合せの選定が必要となる。しかし,両親のSCAを適確に予知する方法は現在のところ十分に確立されていない。経験的に,遠縁の組合せ程SCAが高い傾向にあることが知られるため,地理的分布や形態的特性の違いによる分類結果や,育種の系譜を参考にして近縁関係を推定し両親組合せを決定している。SUTOら(1956)は,アジアに分布するフリント種を5つの型に分類した。これにアメリカデント種を加えた6つの型が日本における主た育種材料である。本研究の目的は,これら6つの型の間のSCAについての関係を明らかにし,一代雑種育成における両親決定上の一助にしようとした。 6つの型に属する11の自然受粉品種を選び,それらの間のダイアレル交雑の子実収量を検定した。さらに,ダイアレル分析から得られたSCA効果によって,異なる型の間のSCAについてその相対的大きさを比較した。 その結果,(1)異なる型に属する品種組合せ,特にフリント種とテント種との組合せにおいて収量およびSCA効果が高い傾向にあり,多収一代雑種が得られることが推測された。(2)カリビア型とアメリカデント種との組合せおよびペルシア型と他の型との組合せにおいて高いSCAが認められた。(3)本研究で得られたSCA効果と,従来の分類結果から推定される型の間の近縁関係との間に密接た関係が認められた。そのため,SCA効果に基づいた型の間の近縁関係の推定を試みた。
著者
衣川 堅二郎 谷本 宜隆
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.341-344, 1987-09-01

ラテンアメリカ,ネパール,日本の在来トウモロコシ各35,7および2品種のカルス形成能とカルス生長能を,完熟穀実の胚盤培養によって評価した.培地はMURASHIGE and SKO0G(1962)による組成に1lあたり2,4-D5mg,蔗糖30gおよび寒天8gを加えて用いた,キューバのTuson1とネパールの128A2に高いカルス形成能が,ボリビアのPatillo,コロンビアのPOyaなどに高いカルス生長能がみられた.また,Cateto Sulinoなどではカルス形成能の異たる系統が分離した.どの品種においても植物体は再生しなかった.
著者
桑田 晃
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.27-32, 1964-03-25

木本であるフヨウ(H. mutabilis)(2n=92)と草本であるクサフヨウ(H. moscheutos)(2n=38)との交雑の後代に新しい複二倍体を育成することが出来た。これを「アイフヨウ」(H. muta-moscheutos KUWADA)(2n=130)と命名する。本種の主な特性は次の通りセ'ある。F_1と同様に雑種強勢を示す。茎葉の諸形質は木本のフヨウに薯しく類似する。両親に比し花は大きく,その色は華麗であり,開花期間は著しく長い。花粉稔性高く,花粉粒は両親より大きい。の大きさは両親とほぼ同じである。種子の型はフヨウに類似し,またフヨウと同様に毛茸を有するが,その大きさは長さ,幅,厚さともにフヨウより大きい。種子稔性は両親よりやや劣るが良好である。本種のPMCでは65_<II>が観察され,成熟分裂は特に異常は認められず,根端における染色体数は130であった。
著者
池田 一
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.44-52, 1961-03-25

小麦品種の発芽種子,幼植物,葉身におけるアミラーゼ活力の変異と遺伝について研究し次の結果を得た。1. 発芽種子と幼植物のアミラーゼ活力の間には+0.90,また発芽種子と出穂期における葉身のアミラーゼ活力との間には+0.87の相関係数が認められた。2.この研究の範囲においては,アミラーゼ活力の強い形質は単因子で優性に遺伝した。3. アミラーゼ活力における温度の後作用が認められた。しかしこれは一つの例外を除き1代で消失した。4. 異る土壌型の後作用もまた認められた。そしてこの場合,発芽種子のアミラーゼ活力と同じ土壌に育つた葉身の活力との間の相関係数は+0.74であった。5. 発芽種子のアミラーゼ活力は,主要品種の試料の産地が寒い地方から暖い地方に移動するにつれ,2.41ccから0.35ccの範囲において漸次減少し,その地理的変異は2月の平均気温と密接た関係を示した。以上の結果から,小麦におけるアミラーゼ活力の地理的分布は,温度に対する遺伝的及びそれと同様な傾向をもつ非遺伝的な適応現象であろうと推察した。
著者
平野 寿助 菅 洋
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.107-111, 1963-06-25

(1)秋播性大麦(ハシリハダカとspontaneum nigrum)の完全春化した種子を,温室室で播種し,一定期問,短日(8時間日長)及び長日(24時間日長)下で育て,その後その逆の条件下に移し先週処理の後作用及び目長転換の出穂に及ぼす影響を調査した。(2)短日→長日の場合前処理される短目の日数が増加するほど,播種後出穂迄日数は増加する。しかし長目に移してから出穂迄の日数は,ハシリハダカでは前処理.短日目数の増加と共に減少しH. spontaneum nigrumではほぼ一定で変らなかった。前者は春化後の短日遅延の少ない早生品種に層し後者は短目遅延の多い晩生品種1に属する。(3)長目→短目の場合,前処理される長目の日数が増加するほど播種後出穂迄目数及び短日に移してから出穂迄日数が減少する。長日前処理の増加に伴う出穂迄日数の減少の度合は,H. spontaneum nigrumでは著しく大きくハシリハダカではあまり大きくたい。しかしこの・両者共一定目数長目処理すると,後は短日下においても連続長目下と同じに出穂する様にたる。このことは,一定期間長日処理されると最終葉数が決定し,後は短目にしてもそれが変更されたいことを示すものであろう。その日数はおおむね20目であった。葉数の面からは,大体6〜8日長日処理すれば,後は短日においても,連続長日下と同じ葉数で出穂Lた。この出穂迄日数と葉数とのずれ(20目と6〜8日)は,前長目処理が短いと葉長持に止葉長が著しく長くだり,そのため展開迄日数が増加するためと思われる。
著者
新村 和則 金川 寛 三上 隆司 福森 武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.87-94, 2005-06-01
被引用文献数
8 9

本研究では日本国内で栽培されている水稲うるち品種の中から, 作付け面積の約99%のシェアを有する130品種(好適酒造品種は12品種)を供試品種とし, これらの品種をすべて判別できるマルチプレックスPCRプライマーセットの開発を試みた.供試した原種または原々種について, 供試品種間での多型DNA断片の塩基配列を決定し, 15組のSTS(Sequence Tagged Sites)化プライマーを設計した.これらのプライマーを1組ずつ用いて130品種それぞれについてPCRを行ない, 品種特有のバンドについて確認した.設計した15組のプライマーが互いに干渉しないよう塩基配列やプライマーの組み合わせ, PCR条件などを検討し4セットに集約した.マルチプレックスPCRを行ない, すべての品種を判別できることを確認した.次に, 複数の都道府県で栽培されている12品種を用いて, 「コシヒカリ」, 「ひとめぼれ」, 「ヒノヒカリ」, 「あきたこまち」, 「キヌヒカリ」, 「日本晴」, 「ササニシキ」, 「ハナエチゼン」, 「祭り晴」, 「あさひの夢」について, これら4つのマルチプレックスPCRプライマーセットを用いてPCRを行ない, それぞれの品種において品種内変異が生じないことを確認した.以上の結果から, 本研究に用いたマルチプレックスPCRプライマーセットは, 日本国内で栽培されているイネの品種判別に有効であると考えられる.
著者
芦川 孝三郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.46-51, 1972-02-29
被引用文献数
2
著者
江川 宜伸 田中 正武
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.445-450, 1984-12-01
被引用文献数
2 4

新世界に起原したトウガラシは,4つの栽培種からたる。それらのうち,C.chinense,C.baccatum 及び,C.pubescens の3種は,主として中南米でのみ栽培されているのに対し,C.annunm var.annunm は,世界中の温帯から熱帯にかけて広く栽培されている。その野生型Var.minimum は,合衆国南部,メキシコ,グァテマラから南米のペルー低地に自生している。筆者らは,C.annunm の両変種間の類縁関係を明らかにするため,京都大学による中央アメリカ及び中央アンデス地域の植物探索によって得られた材料を中心に種内のF_1雑種を作出し,その成熟分裂を観察した。その締果,野生型には,相互転座による染色体構造分化が認められ,供試系統をその染色体構造に基づいてA,B及びCの3群に分類することができた。この3群間にみられる多価染色体に関しては,A-B群間,A-C群問の雑種は4価,B-C群間は,6価を生じた。供試系統の多くは,A群に属し,染色体構造に関しては,A型が最も普遍的な型であり,B及びC型は,A型から染色体構造分化により生じたものと思われる。B型の地理的分布は,メキシコ,ボリビアに,C型のそれは,グァテマラである。野生型に見られる核型の地理的分布による大きな変異(PICKERSGILL 1971)から判断すると,野生型には分布の各地で染色体構造分化が起こっている可能性がある。一方,栽培型に一は,構造変異は認められず,供試系統はすべてA群に分類された.なお,我が国対馬在来種もA群であった。本結果並びに栽培型の核型が均一なこと(PICKERSGILL 1971)を考え併せると,栽培型の起原は比較的新しく野生のA型群から起原したと結論される。
著者
丹羽 勝
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.421-428, 1985-12-01
被引用文献数
1

南米低緯度地方に栽培されるダイズ5品種と,日本の2品種を用いて,異なる日長条件下,または異たる播種日で栽培し,開花迄日数と主茎節数の変化を観察し,低緯度地方品種と日本品種の日長反応性を比較した. 第一複葉展開時から植物を12時間,12時間40分,13時間20分,14時間の各日長で処理したところ,開花迄日数および主茎節数は日長時間とともに指数関数的に増加した.日長時間に対する指数回帰から,12時間日長における開花迄日数および主茎節数(N12),開花迄日数および節数の日長による増加率(IR)を推定したところ,品種間に差が見られた. 開花迄日数,主茎節数とも,IRの最も大きい品種は日本のアキセンゴク,最も小さい品種は低緯度地方のIAC-8であったが,IRには低緯度地方品種と日本品種との間には,一定の傾向が見られなかった.一方,N12に関しては,開花迄日数および主茎節数とも,日本の品種は低緯度地方品種にくらべて,小さい値を示した. 供試品種のうち,低緯度地方品種3,日本品種2の合計5品種を用いて,5月21日から8月9日にかけて,20日間隔の異なる播種日で,植物を自然日長下,6時より18時までは30℃,18時より6時までは25℃の温度条件で育てたところ,開花迄日数および主茎節数は播種日が遅くなるにつれて減少した.出芽から開花迄の期間の日長時間を平均したところ,平均日長もまた播種日が遅くなるにつれて減少した. 開花迄日数,主茎節数とも,平均日長に対して指数回帰を行なったところ,よく適合した、各品種について,平均日長が14時間のときの開花迄日数,および主茎節数の値(N14)と,それぞれの形質のIRを推定した.開花迄日数,主茎節数ともIRには日本品種と低緯度地方品種の間には差が見られず,N14は日本品種のほうが小さかった。
著者
森 宏一 高橋 萬右衛門
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.226-238, 1981-09-01
被引用文献数
1

インド型イネ品種"Karalath","Chamock"および"Dalashaita"を日本型イネの検定用系統およびインド型イネの"Surjamukhi"と交雑し,花青素の基本着色遺伝子に関する遺伝分析を行った。これまでのC一A一P遺伝子体系をそのまま適用した限りでは,上記の交雑F_2集団において,両親の着色型から期待される正常分離を示す場合の外に期待外の着色型あるいは分離比を示す場合があった。そこで遺伝機構を説蔓月するために,CおよびP座に新しい対立遺伝子を仮定した。すなわち"Karalath"からはC脱,PKを,"Charnock"からはCBc,Pcを,そして"Da1ashaita"からはC^<BK>およびP^Kたる対立遺伝子を想定した。これらの対立遺伝子と従来の対立遺伝子との優劣関係は次のとおりである。[numerical formula]なお,分布遺伝子P^KはPよりも〓先への分布能カが劣り,P^CはP^Kよりも更に分布能力が低い。上述の遺候子仮説に基づくなら,本実験で供試したほとんどの組合せについて,そのF_2分離を統一的に説明できる。またF_3検定を行った5交雑組合せの内では3組合せでこの遺伝子仮説が支持された。残りの2組合せではF_3系統比に関し適合度が必ずしも高くはなかったが,F_3系統内での分離そのものは期待される分離であった。
著者
丹羽 勝
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.87-90, 1983-03-01
著者
西村 実 梶 亮太 小川 紹文
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.17-22, 2000-03-01
被引用文献数
5

本研究は日本国内の多数の水稲新旧品種を用いて普通期栽培に加えて早期栽培を行うことにより高温環境を設定し, それによって登熟期の高温が玄米の品質に及ぼす影響の品種間差異について検討したものである.良質米率および千粒重はほとんどの品種において早期栽培(高温区)で普通期栽培(対照区)より低い値を示した.良質米率の低下要因の多くは乳白米, 背白米および基白米の多発であった.北陸地域で近年育成された品種のほとんどは, 早期の高温環境においても良質米率が低下しにくい傾向にあることが明らかとなった.これらの品種はコシヒカリ, 越路早生, フクヒカリ, フクホナミ, ゆきの精等であり, いずれもコシヒカリと類縁関係にあるものであった.これは北陸地域における品種の登熟期が7月後半から8月前半の高温期にあたり, その中で品種育成が行われ, 必然的に玄米品質に関して高温耐性の高い遺伝子型が選抜されてきたことによるものと考えられた.旧品種および北陸以外の地域で育成された新品種では, 高温環境で玄米品質が劣化し易いものと劣化し難いものが混在していた.以上のように, 出穂後の高温によって玄米品質が低下する傾向にあり, また, 玄米品質の高温ストレス耐性は, 遺伝的制御を受けているとみられ, コシヒカリの近縁品種で高いことが明らかとなった.
著者
船附 秀行 Suvorova Galina N 関村 潔
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.275-277, 1996-09-01
被引用文献数
3

ソバは,一般的には無限伸育性であることから,収穫適期が決め難く,早刈りして,未熟子実の混入比率が高くなったり,遅刈りして,脱粒子実が増加したりする傾向がみられ,問題となっている.現在まで,ロシアやスロベニアにおいて有限伸育性のソバ変異体が単離され,それらから品種も育成されているが,外国産ソバは,風味が劣るとされており,また,風味に関与する遺伝子も同定されていないことから,外国産ソバから有限伸育性遺伝子を導入した場合,晶質の維持が困難であることが予想される.そこで,有限伸育性のソバ変異体を見出すため,著者らの研究室で育成された品種を含む日本産のソバ8系統を用いてスクリーニングを行った.
著者
海妻 矩彦 平 宏和 平 春枝 福井 重郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.81-87, 1974-04-30
被引用文献数
2

大豆たんぱく質の含硫アミノ酸含量に関する品種間差異をしらべ,その遺伝的性質を明らかにする目的で,1968年と1969年に岩手大学農学部において栽培された55品種を材料とし,たんぱく質含量(マクロ・ケルダール法,N×6.25)および含硫アミノ酸含量の分析(マイクロバイオアツセイ法)を行なった。得られた主要な結果は次のとおりである。1)品種間にみられた変異の巾は,たんぱく質含量で49.1〜34.8%,メチオニン含量で0.96〜0.67g/16gN,シスチン含量で1.22〜0.62g/16gN,合計の含硫アミノ酸含量で2.15〜1.29g/16gNであり,変異係数は,それぞれ,6.2,7.2,14.2,10.0%であった。含硫アミノ酸含量の品種間差異の大きさは,たんぱく質含量のそれと同程度か,もしくは,それ以上の大きさとみられる。2)遺伝力は,たんぱく質含量,メチオニン含量,シスチン含量および合計の含硫アミノ酸含量に関し,それぞれ,58.8,55.1,66.8,66.6%であり,含硫アミノ酸含量の遺伝力は,たんぱく質含量のそれと同等もしくはそれ以上に高い値を示した。3)小袖振,極早生枝豆,極早生はやぶさ,3号早生大豆,Laredoは含硫アミノ酸含量が高く,交配母本として有用である。また,晩生黒大豆や平豆は含量が低く,育種学的研究の材料として興味深い。
著者
遠藤 徹 井原 正昭
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.340-345, 1985-09-01

ゲルを用いるアイソザイム検出に際し,緑葉に対して用いる抽出剤の組成としての緩衝液(0.5M トリスー酢酸 PH7.5),中性洗剤(10% トリトン X-100),塩(0.5M 食塩),酸化防止剤(0.2M アスコルビン酸)およびフェノール吸収剤(ポリビニールポリピロリドン)について,その単独および複合効果を調査した.用いた材料はシダ植物(イノモトソウ)裸子植物(ソテツ,イチョウ,クロマツ,コウヤマキ,ヒノキ,イヌマキ,カヤ),双子葉植物(ツクバネガシ,ヤブニッケイ,ヒメカンアオイ,ツバキ,オオシマザクラ,フジ,マサキ,アオキ,キョウチクトウ)および単子葉植物(ミヤマエンレイソウ, ニホソイネ, ケンチャヤシ)の生葉100mgで,ザイモグラムとして検出した酵素種はパーオキシターゼとリンゴ酸脱水率酵素である. パーオキシターゼの場合,6種の抽出剤に対して少なくとも4群に分類できる.第1群はコウヤマキなどどの抽出剤でも同じようたザイモグラムが得られるもの,第2群は抽出剤成分の種類の増加につれてアイソザイムバンド数が増加するもの,第3群は逆にバンド数が減少するもの,第4群はアオキで6種の抽出剤のいずれを用いても抽出が極めて困難なものなどである.リンゴ酸脱水素酵素の場合は6群に分類できる.第1群はカヤとイネの2種である.第2群はイチョウ1種だが緩衝液を含む抽出剤を用いれば同じようなザイモグラムが得られる.第3群はクロマツなどで中性洗剤を含む緩衝液の抽出剤では同じようたザイモグラムが得られる.第4群は中性洗剤と酸化防止剤を含む緩衝液の抽出剤で同じようなザイモグラムが得られる.第5群は抽出剤の成分数の増加に応じて一般にバンドが増加するもの,第6群はパーオキシターゼの場合と同じくアオキで,用いた抽出剤の組成ではほとんど抽出困難な場合である. 以上の結果から,生体内におけるアイソザイムの存在様式ないし保持機構は植物種ごとに多かれ少なかれ異なり,例えば水でほとんど全部を抽出し得る場合から上記のすべての薬剤を投入しても抽出困難な場合まである.すなわち,アイソザイムにおける分化と同様,その保持機構もまた分化していると推論できる.
著者
山本 俊哉 持田 耕平 今井 剛 土師 岳 八重垣 英明 山口 正己 松田 長生 荻原 勲
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, 2003-03-01

17種類のマーカーを用いて,交雑育種で育成されたモモ9品種,枝変わり2品種,偶発実生由来5品種の合計16の日本のモモ栽培品種の親子鑑定を行った.交雑育種により育成された9品種では,すべてのSSR座において親の対立遺伝子が矛盾なく子供に伝達されていたことから,親子の関係が確認された.枝変わり品種の「暁星」は,原品種の「あかつき」と全く同じ遺伝子型を示したことから,枝変わりであることが示唆された.一方,枝変わり品種とされる「日川白鳳」では,原品種の「白鳳」と比較して,12ヶ所のSSR座で異なる遺伝子型を示した.このことから「日川白鳳」は「白鳳」の枝変わりではないことが明らかとなった.偶発実生由来と考えられている4品種「阿部白桃」,「川中島白桃」,「高陽白桃」,「清水白桃」では,各SSR座で推定親の「白桃」の対立遺伝子の一方を持っていた.これらの結果から,この4品種は,枝変わりではなく,「白桃」の子供であることが示唆された.以上のことから,SSRマーカーは,限られた遺伝資源に由来しているとされる日本の栽培モモ品種の親子鑑定に有効に利用することができた.
著者
池橋 宏
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.367-377, 1977-12-01

集団育種法の利点として,固定が進んでからの選抜の容易さや劣性遺伝子に支配されている形質が後期世代では高率でとらえられることなどが挙げられている。また初期世代のうちに可能な組換えが進行した後で,それを選抜に利用できることも集団育種法の利点と言える。しかしこの点の量的な評価は必ずしも容易ではない。この問題を選抜の具体的な場合に即して次のように設定することができよう。すたわち望ましくたい形質間相関が存在する場合に,無選抜で世代を進めると組換えの進行により形質間相関はどの程度に弱まるか。あるいは有望組換え個体の数は世代と共にどう変化するか。このような問題は常に育種家の関心事である。しかし関係する要因は多く,個々の実験から一般性のある答を得るのは容易でない。シミュレーションはこれらの問題を扱うのに適しており,その過程と結論は作物を栽培して行う実験の指針となるだろう。この論文ではまず組換え値と遺伝相関廉数の関係を通常の最的遺伝子の相加的モデルを基礎に検討し,両者の関数的関係を指摘Lた。次にこれを利用して多数の連鎖した遺伝子の確率的行動をもとにした,一種の2次元の準連続分布を構成し,与えられた組換え値ごとに,世代の進行にともなう遺伝相関係数の変化を求めた。その結果,遺伝相関係数は,大きな確率的変動をともなうため,組換えの進行の尺度としては不適当であるとみられた。一方高頻度の組換えから生ずる個体の数を,組換えの進行の尺度としてとらえると,この数はF_2では極めて少いが,F_4位までに急増することがみられ,とくに連鎖のある場合にこの傾向が顕著であった。これらの結果にもとづいて,F_2での遺伝相関係数が0.3程度となる模型集団について,F_2,F_3もしくはF_4で選抜を開始する選抜実験を試みた。その結果,遺伝的進歩,相関反応および有望組換え個体の数といった指標において,一般的にF_4で選抜を開始した方が有利であると結論された。しかしその有利さは,機会的変動や環境変動などの働きで,必ずしも顕著でないことが推察された。