著者
高岡 宏行
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.193-217, 1977
被引用文献数
3 18

南西諸島から得られたブユ属18種類のうちこの第3報ではアシマダラブユ亜属に含まれるSimulium (Simulium) arakawae, S. (S.) sakishimanese, S. (S.) japonicum, S. (S.) quinquestriatum, S. (S.) suzukii, およびS. (S.) rufibasisの6種について報告した。これまでS. (S.) fenestratumとされていた種は原記載と異なるため新種名S. (S.) sakishimaenseを提唱した。また沖縄本島, 奄美大島および徳之島に分布するtuberosumグループの種は同一種で日本各地のS. (S.) suzukiiと形態上の差異が認められないことから沖縄本島を模式地として記載されたS. (S.) ryukyuenseおよび奄美大島より記録されたS. tuberosumはS. (S.) suzukiiのシノニムと思われる。本諸島より初記録のS. (S.) quinquestriatumは種子島, S. (S.) rufibasisは屋久島のみから, さらに, S. (S.) arakawaeはこれら両島および甑島より見いだされた。
著者
加納 六郎 杉山 悦朗
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.43-48, 1983
被引用文献数
3

ルソン島(フィリピン)およびネパールより, センチニクバエ属に属するニクバエの2新種を見出した。ルソン島より得られたものをカブレラセンチニクバエBoettcherisca cabrerai, ネパールより得られたものをネパールセンチニクバエBoettcherisca nepalensisと命名し, おのおのの形態, 特徴を記載した。センチニクバエ属に属する既知種11種の検索表を付した。
著者
小松 謙之
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.337-339, 2020-12-25 (Released:2020-12-17)
参考文献数
21

小笠原諸島父島にてフタテンコバネゴキブリを採集した.この記録は,小笠原諸島において初めての報告となる.
著者
山口 杲
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.173-180, 1960

1958, 1959両年度にわたり, 京都市北区において, タケノホソクロバArtona funeralis(Butler)の生活史を, 野外観察と飼育実験の両法によつて追究した.結果を以下に要約する.1.本種は1年間に3世代を営み, 第3世代の蛹態で越冬する.2.越冬蛹は5月中旬〜6月中旬に羽化, 産卵し, 第1世代は5月下旬〜7月中旬, 第2世代は7月下旬〜9月上旬に営まれ, 第3世代は10月下旬に蛹化して越冬にはいる.3.卵期間は各世代間にあまり差がなく, それらを平均すれば7.3日であつた.各世代の平均孵化率は, それぞれ85%, 80%, 80%であつた.4.幼虫期は5令で, 各令の平均所要日数は, 第1世代の第1令5.8日, 同第2令5.3日, 同第3令5.2日, 同第4令6.1日, 同第5令7.4日, 第2世代ではそれぞれ, 4.7日, 4.0日, 4.9日, 6.0日, 8.4日, 第3世代ではそれぞれ, 5.5日, 6.6日, 8.9日, 7.9日, 11.5日であった.全幼虫期間の平均所要日数は, 第1世代29.8日, 第2世代28日, 第3世代40.4日であり, 蛹化率は夫々55%, 65%, 57.5%であつた.5.前蛹期は第1世代1.1日, 第2世代1.1日, 第3世代2.2日, 蛹期はそれぞれ11日, 11日, 187日(越冬)であつた.羽化率はそれぞれ, 47.5%, 56%, 11.5%であつた.6.雌成虫は原則として羽化後1日経つてから交尾し, さらに1日経過してから産卵する.成虫期の寿命は雌1〜6日, 雄1〜9日, 平均寿命はそれぞれ3.5日, 4.0日であつた.雄は雌より1〜2日早く羽化する.7.卵はタケ或いはササの葉裏に整然と並べて産みつけられ, 卵数は第1世代20〜182(平均90), 第2世代20〜268(平均140), 第3世代26〜145(平均81)であつた.8.幼虫は第1〜2令は完全な集団をなして行動し, 第3令に達すると分散し始め, 第4, 第5令では概ね単独に生活する.9.蛹化は腐竹, 腐木の内側, 板塀, 軒先等で行われ, まゆは濃褐色, 扁平楕円形の薄い蝋質の板で, 皿を伏せたような形に蛹を被う.10.本種幼虫が野外でイネを食害する例を観察したし, また飼育室内でも本種成虫はイネの葉に産卵し, それから孵化した幼虫はイネを食べて終令に達し得ることが確認された.11.以上の他, 成虫の交尾習性, 幼虫の移動性, 眠性, 卵内発生に及ぼす湿度の影響等を観察記載した.
著者
中田 圭亮
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.189-194, 1976
被引用文献数
1 3

1. 1973年6月30日より1974年6月29日までの期間, 札幌市北区屯田防風林においておよそ15日間隔で捕鼠を実施し, 野鼠に寄生するツツガムシ類について調査した。2.捕獲した野鼠5種239頭よりツツガムシ科3属4種41,961個体をえた。その中, タミヤツツガムシNeotrombicula tamiyaiは道央よりの新記録であった。3.アラトツツガムシの季節消長は一般的に, 春季の大きな発生の山, 盛夏季の下落, 秋季の小規模な山, 冬季の低レベル発生と考えられよう。タミヤツツガムシの消長は, 根雪中と終雪直後にピークをもつ二山型であって, 本州のそれと山の大きさ, 時期において相違がみられた。4.アラトツツガムシに関して, エゾヤチネズミとミカドネズミ間でみられた寄生数の相違は両者の生息場所以外の要因に求められるべきである。5.アラトツツガムシとタミヤツツガムシは耳介内に, サダスク・ガーリェプツツガムシとヤマトツツガムシは鼠体後半部に寄生する傾向がみられた。6.植生の単純化に伴いツツガムシ種類数の減少と特定種の寄生数の増加の傾向がうかがわれる(表3)。
著者
谷川 力 沢辺 京子 山内 雅充 石原 新市 富岡 康浩 木村 悟朗 田中 和之 鈴木 悟 駒形 修 津田 良夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.31-33, 2015
被引用文献数
5

国内で感染したと推定されるデング熱患者が千葉市で2014年9月8日に確認された.翌日,患者宅周辺を対象としてヒトスジシマカの成虫防除を実施した.防除対策の対象範囲は,航空写真を利用して住宅地周囲の植栽や蚊成虫の潜伏場所を検討し,患者の家を中心とする半径100メートルの円内および近隣の公園とした.殺虫剤の散布前に6カ所で8分間の人を囮にしたスイーピング法によってヒトスジシマカ成虫の密度を調べたところ平均2.8頭であった.密に茂った藪や生け垣など大きな成虫潜伏場所に対する殺虫剤散布には動力噴霧機を使用し,7%エトフェンプロックス水性乳剤を50倍希釈し,500 ml/m<sup>2</sup>で散布した.狭い空間や物陰,小さい植栽への散布にはハンドスプレイヤーを利用し,フェノトリンを50倍希釈し,50 ml/m<sup>2</sup>で散布した.さらに,公園周辺の排水溝にはフェノトリン含有の液化炭酸ガス製剤を1 g/m<sup>2</sup>で散布した.その結果,散布直後にはヒトスジシマカの密度は平均1.2頭に減少していた.
著者
伊藤 靖忠 元木 貢 川島 次郎 服部 正策
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.251-254, 1981
被引用文献数
6 1

Warfarin and scilliroside were administered orally to the wild roof rat, Rattus rattus, captured in Tokunoshima Island where the control with rodenticides was considered to have been scarcely done. Ten days' administration of warfarin resulted in LD50 of 35mg/kg and single administration of scilliroside resulted in that of 1.2mg/kg, suggesting the susceptible level to these chemicals of this species in Japan. On the other hand, the roof rats captured at several buildings in Tokyo where it has been difficult to control the species with these chemicals, were allowed to feed 0.025% warfarin powdered bait. One of the rats captured at Shinjuku survived for more than 70 days, suggesting that resistance to this rodenticide has developed in the urban area.
著者
中川 宏
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.164-168, 1959

The Mallophagan genera Dennyus and Eureum, which infest only swifts or Apodi, are found on the large white-rumped swift, Apus pacificus pacificus (LATHAM) from Japan. The genus Dennyus from the Japanese swifts has been previously known by two species, Dennyus truncatus UCHIDA, 1926 (nec OLFERS, 1816) and Takamatsuia major UCHIDA, 1926 and recently I redescribe and figure the latter as a subgenus of Dennyus (see NAKAGAWA, 1959). The genus Eureum, which is extremely rare in collecting, is still an unknown genus from Japan. My best thanks are due to Drs. K. ASANUMA, S. UCHIDA and Prof. H. SAWADA for their guidance and encouragement. I am equally thankful to Mr. M. HASEGAWA and Dr. Th. CLAY for their generous help during the preparation of this paper. The material examined have been collected through the co-operation of Messrs. T. TAKADA and T. KAWAI. The specimen is in the author's collection.