著者
工藤 洋
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.175-183, 2017
被引用文献数
5

<p>アブラナ科のタネツケバナ属(<i>Cardamine</i>)は約200種からなる。日本の農耕地に見られるのがタネツケバナ,オオバタネツケバナ,ミチタネツケバナの3種である。これらの種を対象に,生活史,生態,進化,系統地理,外来植物,形態形成,ゲノムといった様々な観点の研究がなされてきた。本総説では,これまでの研究を概観し以下の点を論じる。①タネツケバナは<i>C. flexuosa</i>とは別種である。②タネツケバナの学名は<i>C. occulta</i> Hornem.である。③タネツケバナは外来種として世界の温帯圏に広がっている。④オオバタネツケバナの学名は<i>C. scutata</i> Thunb.である。⑤オオバタネツケバナは倍数化によるタネツケバナ属多様化の典型例である。⑥日本のオオバタネツケバナ集団には地理的遺伝構造がある。⑦ミチタネツケバナはヨーロッパ原産の外来植物である。⑧ミチタネツケバナのゲノムが決定し,モデル植物としての基盤が整備されている。⑨ミチタネツケバナの雄しべ数は温度に依存して変わる。これらの研究は,近縁種の分類と同定,農耕地への適応,外来雑草の侵入といった,雑草学研究にとって重要な課題を含み,研究の展開が期待される。</p>
著者
山口 裕文
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.73-78, 2016 (Released:2016-08-06)
参考文献数
41
被引用文献数
1
著者
片岡 孝義 小松 良行
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.288-289, 1982-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
11
著者
神宮 字寛 露崎 浩
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.55-62, 2007 (Released:2008-08-09)
参考文献数
16

ガムシ科の甲虫コガムシHydrophilus affinis Sharpは,卵のうを形成する際に生の雑草の葉を利用する。近年,コガムシの個体数の減少が各地で報告され,絶滅危惧種に指定した県が複数ある。筆者らは,コガムシの個体数の減少には,卵のうを形成するために必要な水田内および畦畔雑草の減少が関与していると考えた。そこで,本種の保全を図るためにコガムシの産卵と雑草の関係を調査した。 コガムシは主に畦畔の雑草の葉身を卵のう形成に用いた。平均卵のう数は,水田内区の0.5個/m2に比べて畦畔隣接区で9.3個/m2と有意に多かった。畦畔隣接区で確認された草種の18科40種のうち,11科16種が卵のう形成に利用された。Jacobsの選択指数から,正の選択指数を示す種(ツユクサ,クサヨシなど),畦畔辺によって正あるいは負の選択指数を示す種(ヤナギタデ,イヌタデなど),および負の選択指数を示す種(スズメノテッポウなど)に分類できた。 卵のう形成に用いられた葉身の76%は,畦畔水際から30cmの範囲内に存在し,葉身の切除位置は水面下1cm∼水面であった。葉身の大きさは,長さ23mm∼34mm,幅9∼20mmの範囲に分布した。卵のう内の平均卵数は69∼81卵数を示し,草種ごとに大きな差は認められなかった。以上の結果を基に,卵のう形成に用いる草種の選択性および利用様式について考察するとともに,保全生物学的な観点から畦畔雑草の管理を考えた。
著者
汪 光煕 草薙 得一 伊藤 一幸
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.135-143, 1997-08-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
11
被引用文献数
6 7 5

ミズアオイとコナギの生育並びに種子生産に対する播種時期, 遮光および施肥量などの影響について検討し, 次のことを明らかにした。1) 草丈はいずれの播種時期においてもミズアオイがコナギよりも高かった。主茎葉数は5月までの播種期においては, ミズアオイがコナギよりも多かったが, 6月以降の播種期においてはコナギの方が多かった。2) 種子生産量は, 両草種ともに5, 6月播種で大きい値を示した。3) 各器官への乾物分配率を4月と8月播種で比較すると, 前者では生殖器官への分配が生育後期に集中したのに対して, 後者では, 生育前期より生殖器官への分配が認められた。4) 草丈は両草種ともに無遮光条件では無施肥区が最も低かったが, 遮光が強化されるに伴い, 逆に無施肥区で草丈が最も高くなり, 倍量施肥区が最も低く推移し, 標準施肥区は両者の中間の草丈を示した。5) 種子生産量は無遮光条件では施肥量の増加に伴い, 明らかに多くなった。しかし, 遮光処理区では両草種ともに播種後90日に25%遮光開始の倍量施肥区で種子生産量が最大となった。
著者
須藤 裕子 小笠原 勝 西尾 孝佳 一前 宣正
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.8-14, 2004-03-31 (Released:2009-12-17)
参考文献数
24
被引用文献数
4 3

舗装道路内の縁石と歩道の接合部に形成される路面間隙に成立する雑草植生の生態学的な特性を明らかにすることを目的に, 栃木県宇都宮市内の国道, 県道および市道の植生調査を行った。植生調査は2002年3月18日から4月25日 (春期), 同年10月17日から10月29日 (秋期) に行い, 間隙のサイズと間隙に含まれる土壌のpHを測定するとともに, 草種別の出現頻度, 積算優占度, 生活型および帰化雑草率を求めた。植生解析の結果から, 路面間隙の雑草植生はオランダミミナグサ (Cerastiurn glomeratum Thuill.), ノミノツヅリ (Arenaria serprllifolia L.), エノコログサ (Setaris viridis (L.) Beauv.), コニシキソウ (Euphorbia supina Raf.), ニワホコリ (Eragrostis multicaulis Steud.), オヒシバ (Eleusine indica (L.) Gaertn.), スズメノカタビラ (Poa annua L.) およびヨモギ (Artemisia princeps Pampan.) を優占種, ノミノツヅリを標徴種の候補とし, 種組成の点において水田や畑の雑草植生と明らかに異なることが判明した。また, 路面間隙に出現した雑草種は春期と秋期あわせて25科74種に上り, 路面間隙は植物の生育にとって不適な環境と考えられるにもかかわらず, 多種類の雑草が生育していることも明らかになった。さらに, 路面間隙の雑草の多くは地下および地上に連絡体を作らず (R5), 重力または風によって種子散布を行う (D4) 一年生 (Th) のTh-D4-R5型の雑草であった。
著者
本澤 彰一 松中 昭一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.30-35, 1986-05-26 (Released:2009-12-17)
参考文献数
22

エンドウ葉リーフディスクを用いて, 除草剤 glyphosate の各色素生合成経路への阻害機構を調べた。1. 3種の芳香族アミノ酸は, 植物体内に取込まれタンパク質へと合成されたが, これらのアミノ酸3種の添加では, glyphosate の阻害からの完全な回復はなかった (Table 1 and Fig. 1)。2. 1つの色素生合成経路の前駆体化合物を添加しても glyphosate の薬害からの効果的な回復はなかった。しかし, 3種の芳香族アミノ酸, ホスホエノールピルビン酸及びδ-アミノレブリン酸の5種類全部を同時に添加した場合には, クロロフィル及びアントラキノンの減少の緩和及びシキミ酸蓄積の減少に効果的であった (Table 1 and 2)。3. カロチノイド生合成阻害を作用機構とする除草剤 methoxyphenone 処理によっては, この経路の末端部位の阻害によるフィトエン, フィトフルエン及びζ-カロチンの蓄積とβ-カロチンの減少が認められた。しかし, glyphosate 処理ではこれらの化合物の蓄積は認められず, 明条件下のみでβ-カロチンが減少した。したがって, glyphosate のカロチノイド生合成阻害は, その末端部位ではなく別の部位と考えられる (Table 3)。4. Glyphosate 処理により, 14C-アセチルCoAのクロロフィル, カロチン及びキサントフィルへの取込みが同程度阻害された (Fig. 2)。5. Glyphosate は, 5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼを阻害するのに加えて, 植物色素生合成経路の初期段階を阻害する可能性も考えられる。
著者
鬼頭 誠 奥野 聡子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.349-352, 1999-12-28 (Released:2009-12-17)
参考文献数
10
被引用文献数
4 2
著者
程 岩松 堀内 孝次 大場 伸哉
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.153-160, 2002-09-30
参考文献数
14
被引用文献数
1

植物の他感作用を活用して,イネ科強害草のメヒシバの生育を抑制する目的で,42種類のハーブの抽出液を用いた発芽実験を行い,さらに発芽抑制効果の大きかった数種ハーブについて,植物体砕片を土壌に混入し,それをポットに充填してメヒシバを育成し,その生育抑制効果を調査した。その結果,発芽実験ではバルサムギク,ローマンカミツレ,メボウキ,ミドリハッカ,ラベンダーの蒸留水抽出液とバルサムギク,スイカズラ,メボウキ,アマドコロ(地下茎)のメタノール抽出液が発芽を強く抑制した(第1表)。発芽後初期生育は,スイカズラ,ラベンダー,イチョウ(果皮)の蒸留水抽出液とバルサムギク,スイカズラ,キツネノボタン,ウコン,アマドコロ(地下茎)とイチョウのメタノール抽出液によって顕著に抑制された(第1表)。また,スイカズラとラベンダー砕片を土壌に混入したところ,メヒシバの乾物重と分げつ数は対照区に比べて大きく減少した(第3表)。これらの実験結果は,ハーブ類数種がメヒシバの生育を強く抑制し,他感作用を有する可能性を示した。
著者
浅井 元朗 黒川 俊二 清水 矩宏 榎本 敬
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-10, 2007-03-30
被引用文献数
7

輸入穀物に由来する海外からの雑草種子の非意図的導入とその耕地への拡散が大きな問題となっている。1993〜95年にかけて鹿島港に入港したムギ類,ナタネ等冬作穀物中の混入雑草種子を調査した。21科92種が識別された。81種群,29検体を対象とした除歪対応分析による序列化の結果,アメリカ合衆国産,カナダ産,ヨーロッパ産(ドイツおよびフィンランド),オーストラリア産の調査検体がそれぞれ特徴的な混入種組成を有することが判明した。アブラナ類が最多の25検体から検出され,シロザが23,カラスムギが21,ソバカズラが20,エノコログサおよびタデ類が18,グンバイナズナが17検体から検出された。アブラナ類は5ケ国全ての検体に混入しており,北米,特にカナダ産検体への混入数が多かった。高緯度産(カナダ,ヨーロッパ)検体には日本の温暖地以西では夏生一年草である草種が混入していた。生産国の主要雑草種と検体中の混入草種とはおおむね一致した。日本でも近年ムギ作の難防除雑草となっているカラスムギ,ライグラス類は輸入ムギ類に大量に混入していること,また生産国における輪作作物の自生雑草化に由来すると考えられるアブラナ類が最も多量に混入していることを確認した。
著者
藤井 義晴 古河 衛 早川 嘉彦 菅原 和夫 渋谷 知子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.36-42, 1991-04-08
被引用文献数
10

薬用植物、および香料植物の一部から、他感作用候補植物を、レタスに対する発芽・生育試験とフザリウムに対する抗菌性試験(胞子発芽と菌糸伸長試験)から検索した。その結果、作物や一般雑草よりも高い頻度で、活性の強い他感作用候補植物が得られた。 植物発芽・生育阻害活性も抗菌性もともに最も強かったのは、キンポウゲ科のオキナグサとセンニンソウであった。これらは著名た毒草としてすでに知られており、とくにセンニンソウは牧草地に侵入する有害雑草として良く知られている。 これに次ぐものとして、オオグルマ、フレンチタイム、アンミビスナーガ、ゲッケイジュがあった。ユリ科のニラとニンニクは、水抽出液の抗菌性が、カンゾウとクスリウコンはメタノール抽出液の抗菌性が強かったが、植物生育阻害作用は小さかった。逆にヨウシュヤマゴボウ、ニッケイ、ペパーミントは、抗菌性は小さかったが、植物の発芽・生育阻害が強かった。
著者
須藤 裕子 高橋 優樹 小笠原 勝
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-9, 2006-03-20
被引用文献数
2 5

国道4号線の全区間において,2004年7月27日から7月30日に,約20km間隔に68地点で路面間隙雑草の植生調査を行った。その結果,44種の帰化雑草を含む総計27科102種の雑草を観察した。出現頻度はメヒシバ(Digitaria ciliaris (Retz.) Koeler),ヨモギ(Artemisia princeps Pampan.),セイヨウタンポポ(Taraxacum officinale Weber)の順で高く,生活型組成では一年生・重力散布・単立型雑草が優占しており,このような雑草植生の特徴は2002年および2003年に栃木県宇都宮市で行った調査結果と類似した。一方,道路周辺の土地利用形態を宅地に限定し,岩手県と栃木県小山市以南の雑草植生を比較したところ,メヒシバとニワホコリ(Eragrostis multicaulis Steud.)は両地域にほぼ同じ被度および頻度で出現したが,セイヨウタンポポとナガハグサ(Poa pratensis L.)は岩手県で,エノコログサ(Setaria viridis (L.) Beauv.)とオオアレチノギク(Conyza sumatrensis (Retz.) Walker)は栃木県以南に偏在していた。
著者
伊藤 健次 井手 欽也 井之上 準
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.100-107, 1967-12-25
被引用文献数
5

1) In southern part of Japan, the time of flowering of Artemisia princeps Pamp. is late september to early october. As the results of experiments the flowering was observed under short day (8 hours light), and did not under long day condition (continuous light). 2) Number of head per plant was 2,000〜14,000, and a head consisted of about 15〜17 florets. On the other hand, the rate of fructification of the florets was about 2〜40 per cent, averaged about 20 per cent. From the results, number of seeds per plant was about 5,000〜40,000. 3) About 20 days after flowering, the seeds had an ability of germination, and it reached maximum after about 50 days. This result showed that the seeds had no dormancy. From our observations, it seemed that the seeds germinate from late autumn to early winter and pass through winter season with cotyledonary plants. 4) Effect of temperature on germination of the seeds was as follows: minimum temperature O〜5℃, optimum temperature ; 20〜30℃, maximum temperature ; 35〜40℃. 5) The rate of emergence of cotyledonary plants war good under the soil of 10〜20 per cent soil moisture content, and it decreased with the increase of soil moisture content. However, the seeds were able to germinate in boiled water, and it grown up to 6 leaf stage under the water. 6) The rate of emergence was also affected by the depth of seeding, and it decreased with the increase of the depth of seeding. As the effect of soil compaction of cover soil after seeding, in the plot of 0.1kg/cm^3-compaction 30 per cent of seeds emerged at O. 5 cm-seeding depth and did not emerge at 1.0cm-seeding depth. In the plot of 0.2kg/cm^3-compaction no emergence occured even at the plot of 0.5cm-seeding depth.
著者
二瓶 信男 佐々木 亨 山崎 慎一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.94-100, 1967-12-25
被引用文献数
5 2

(1) スギナの生態について調査した。<br>(2) 胞子の発芽試験を5月の室温で試みた。接種後7日目に一斉に発芽し, 43日後には栄養茎の発生がみられる。<br>(3) 地下茎の発根伸長は4月上旬より始まる。栄養茎の最も繁殖するのは地下30cm以内の地下茎からである。<br>(4) 栄養茎は一節さえあれば発根可能である。スギナの生育はNによつて左右される。pHは7前後がよかつた。発生深度は5~10cmがよい。土性は壌土がよかつたが, 土壌中の養分, pHなども関係すると考えられる。<br>(5) 地下茎の繁殖力は旺盛で, 1年で総重は33~37倍, 長さは165~182倍となる。<br>(6) スギナの防除は, 麦畑の場合, 跡作のない時はスギナ発生期から麦刈取り15日前の間に, a当りリニュロン 10g+2,4-D20g の混合液をスギナの草体に散布すればよい。間作や跡作に大豆, 陸稲がある場合は, 残効の問題から, スギナの発生最盛期頃に散布することが必要である。