著者
長浜 雄志 佐藤 格夫 Annemie Schols Michael Steiner Christophe Pison
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.795-818, 2013 (Released:2013-06-20)
参考文献数
207

COPDはこれまでは呼吸器疾患としてとらえられていたが、現在では全身の系統的炎症を伴っていることが明らかになった。このためエネルギーバランスがマイナスになりやすく、早期から筋肉量の減少が生じ、筋肉量の減少は全身状態の悪化の危険性と関連している。体重減少が予後に関連する重要な因子であることが明らかになっているが、筋肉量減少はタンパク質を主体とした栄養補給を行い、サイトカイン産生コントロールを目的とした治療も考慮することで、栄養学的に改善しうる可能性がある。これまでの臨床試験では栄養サポートの効果を証明し得たものはないが、呼吸リハビリテーションなどを合わせて行うことで効果的な方法であることが期待される。
著者
赤水 尚史
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.607-611, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
34

末期がん患者の多くは、食欲不振・体重減少・全身衰弱・倦怠感などを呈し、悪液質(カヘキシア)と呼ばれる状態に陥る。がん悪液質は、生命予後やquality of lifeに多大な影響を与える点で重要である。悪液質の特徴は、脂肪組織のみならず骨格筋の多大な喪失を呈することである。このような病態をもたらす要因は、単なる食欲低下とエネルギー消費の増大ではなく、その上流にサイトカインネットワークや腫瘍特異的物質の産生が存在すると考えられている。また、患者の年齢や活動度などによってその病態が修飾されることが最近指摘されている。がん悪液質に関連するサイトカインや腫瘍由来物質の同定とそれらの筋肉や脂肪などに対する作用が分子レベルで精力的に検討されているが、このような研究の進展が新たな治療標的の発見や治療法の開発に結びつくと期待されている。
著者
和田 基 工藤 博典 天江 新太郎 石田 和之 上野 豪久 佐々木 英之 風間 理郎 西 功太郎 福沢 太一 田中 拡 山木 聡史 大久保 龍二 福澤 正洋 仁尾 正記
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.1217-1222, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
20
被引用文献数
2

腸管不全合併肝障害(intestinal failure associated liver disease ; 以下、IFALDと略)は腸管不全(intestinal failure ; 以下、IFと略)の致死的かつ重大な合併症であるが、IF、IFALDの発生数、発症率、死亡率などの実態は知られておらず、今後の詳細な調査、検討が期待される。IFALDが進行し、不可逆的肝不全を来たした場合には肝臓-小腸移植、多臓器移植によってしか救命できないが、国内では依然として小児の脳死ドナーからの臓器提供の困難な状態が続いており、特に小児IF症例におけるIFALDの治療と予防はIF治療における最重要課題である。長期の静脈栄養(parenteral nutrition、以下、PNと略)症例では非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis、以下、NASHと略)来たすことが示され、IFALDの発症には肝臓での脂質代謝異常が関与すると考えられている。IF症例では長期PNに伴う過栄養/低栄養、必須脂肪酸の欠乏など肝臓での脂質代謝異常を来たす要因に加え、腸管細菌叢の異常などを原因とする敗血症、肝臓の循環不全により肝細胞障害を来たし、NASH/IFALDを発症し、重症化すると考えられる。新生児・乳児期のIFでは、胆汁輸送機構の未熟性や腸内細菌叢の異常をより来たしやすいことなどから胆汁うっ滞を主体とするIFALDが問題となり、幼児、学童以降ではNASHを主体とするものが多い。IFALD治療の骨子は、1) 残存する腸管を最大限に利用し、PNへの依存度を軽減すること、2) 個々のIF症例の病態を的確に評価し、適切なPN、経腸栄養(enteral nutrition ; 以下、ENと略)を実施すること、3) 短腸症候群や腸管内容のうっ滞に伴う腸内細菌叢の異常と合併するbacterial translocation(以下、BTと略)、敗血症を最大限に予防すること、である。最近、IFALDに対する魚油由来ω3系静脈注射用脂肪製剤(商品名 : Omegaven®、以下、omegavenと略)の有効性が報告されている。omegavenは(1)胆汁流出の改善、(2)脂肪化の減少、(3)免疫抗炎症作用、といった機序により胆汁うっ滞、肝炎、線維化を軽減すると考えられている。本稿では、当院におけるIF、IFALDの治療経験とomegavenの使用経験、IFALDの病因やIFALDに対するomegavenの効果に関するこれまでの報告を紹介し、IFALDに対する治療の今後の展望について考察する。
著者
中井 由佳 徳山 絵生 吉田 都 内田 享弘
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.1175-1182, 2009 (Released:2009-12-21)
参考文献数
19
被引用文献数
2

本特集では、種々の配合変化の中から、FDAからALERTが出されている、注射用セフトリアキソンナトリウム製剤とカルシウム含有製剤との配合変化に着目して、(1)カルシウム濃度、(2)温度、および(3)振とうの度合いが与える影響について、肉眼的・実体顕微鏡下の観察および光遮蔽型自動微粒子測定装置を用いた不溶性微粒子数 (以下、微粒子数と略す) 測定により評価した成果について述べた。10mg/mLの注射用セフトリアキソン生理食塩溶液10mLに最終のカルシウムイオン濃度が0.5、1、1.5、2、2.5mmol/Lとなるよう2%塩化カルシウム注射液を加え、薬剤が均一になる程度に緩やかに振り混ぜた後、20℃、25℃、30℃の温度条件下に保存した。混合溶液中の微粒子数を光遮蔽型自動微粒子測定装置により計測したところ、微粒子数はカルシウムイオン濃度と経過時間に比例して増加する傾向を認めた。混合直後では、すべてのサンプル中の微粒子数は日本薬局方 (以下、局方と略す) の許容範囲内であったが、混合1時間後では、すべての温度で、カルシウムイオン濃度2mmol/L以上で局方の許容微粒子数を超えた。配合変化に及ぼす温度の影響については温度が高いほど大きい粒子径の不溶性微粒子を実体顕微鏡下確認できた。逆に温度が高いほど微粒子数は少なかった。また、この事実は、沈殿物重量の測定結果と矛盾しなかった。また、振とうを与えることで微粒子数は有意に増加した。体内濃度を想定した1,000μg/mLの注射用セフトリアキソン生理食塩溶液10mLに最終のカルシウムイオン濃度が1.25mmol/Lとなるよう2%塩化カルシウム注射液を加えた溶液中の微粒子数の検討では、微粒子は有意に増加した。上記結果より、カルシウム濃度だけでなく、保存温度や振とうもセフトリアキソンとカルシウムの沈殿に影響を及ぼした。
著者
鍋谷 圭宏 永田 松夫 齋藤 洋茂 滝口 伸浩 池田 篤 貝沼 修 早田 浩明 趙 明浩 外岡 亨 有光 秀仁 栁橋 浩男 河津 絢子 實方 由美 掛巣 孝則 羽田 真理子 福原 麻后 近藤 忠 佐々木 良枝 前田 恵理 吉澤 直樹 内山 友貴 上野 浩明 高橋 直樹 山本 宏
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1299-1305, 2014 (Released:2014-12-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

食道がん外科治療は「高リスク患者に対する高度侵襲手術」であり、特に高齢者では、日本外科代謝栄養学会ESSENSEプロジェクトの基本理念である「侵襲反応の軽減」、「身体活動の早期自立」、「栄養摂取の早期自立」、「周術期不安軽減と回復意欲の励起」を心掛けた手技と管理が必要である。近年、高齢食道がん患者に対する根治切除術も低侵襲化され、「身体に優しい」治療になりつつある。しかし、70歳以上の高齢者では、術後合併症が多い傾向で、食事開始後退院まで時間を要し、経腸栄養継続の意義が高いことが示唆された。高齢者では、oncological(がん治療としての有効性を踏まえた手術選択)、physical(肉体的)、mental(精神的)、social(社会的)な援助が適切に行われ、全人的支援があってこそ、「心にも優しい」術後早期回復が可能になると思われる。そのためには、NST・精神科医や医療ソーシャルワーカーなどを含めた多職種連携が必須である。
著者
藤井 真
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.903-907, 2009 (Released:2009-08-10)
参考文献数
3
被引用文献数
2

南大和病院は2001年にNSTを立ち上げ、現在まで8年間稼動してきている。2004年頃より、病院外での栄養管理の必要性を感じ、ホームNST、サークルNSTへの取り組みを始めた。ホームNST・サークルNSTにおいては、病院から施設へ、施設から在宅へと生活の場が移り変わっても、一連して適切な栄養管理が継続できるように、家族も含め、患者に関わるすべてのスタッフが共通の概念をもち、情報を共有していくことが栄養療法継続の上で重要である。そのためには情報を共有するための媒体の作成が急務となっており、地域密着病院の果たすべき役割は大きい。
著者
葛谷 雅文 深柄 和彦 Agathe RAYNAUD-SIMON Cornel Christian SIEBER Jürgen M. BAUER Stéphane M. SCHNEIDER
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.935-954, 2011 (Released:2011-06-15)
参考文献数
112
被引用文献数
3

高齢者では高頻度で栄養障害がおこりやすく、それが原因で様々な健康障害やサルコペニアを誘発するのみならず、在院日数の延長、生命予後にも関わっている。低栄養の要因に関しては高齢者特有の多くの原因があり、その要因を含めた定期的な栄養評価が必要である。栄養療法に関しても十分な臨床的なエビデンスが必ずしも構築されているわけではないが、早期に人工的栄養療法を含めた栄養学的介入が高齢者の健康障害の予防につながる可能性がある。
著者
宮澤 靖
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.975-980, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
16

高齢者が増え医療も高度化したことで、医療依存度の高い臓器不全の患者が増加している。このような患者は急速に栄養状態は悪化するのが特徴で、栄養とリハビリテーションのチーム医療が求められ、症例によってはその経口摂取が不可能であったり経口摂取そのものが患者にとって不利益になる症例も増加してきた。そのために経腸栄養法施行患者が増加し、長期管理の一つの方法として PEGによってより低侵襲に造設が可能になった。しかし、経腸栄養法は、経静脈栄養法に比して生理的であることが利点であるが「生理的であればあるほどトラブルは少ない」はずである。医療従事者のマンパワー不足や食材費最優先主義が横暴化してきて「人がいないから」という理由で加水バッグ製品の使用や1日1回ないし2回投与という非人道的な投与法を施行している施設がある。本来、経腸栄養法は「患者に対して生理的」な投与法であったが最近では「職員に整理的」なものになってしまっている。本来の正しい認識を我々も再確認して、胃瘻造設患者に対し安全で確実な栄養サポートを引き続き継続するためには、経腸栄養剤を正しく使用することが肝要である。
著者
栗山 とよ子 Rémy MEIER Johann OCKENGA
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.713-722, 2011 (Released:2011-04-20)
参考文献数
47

急性膵炎、慢性膵炎は代表的な膵の炎症性疾患であるが、両者は病態生理、臨床経過ともに異なり、従って栄養管理も異なるアプローチが必要である。急性膵炎では、ほとんどを占める軽症~中等症例の栄養状態に問題はなく栄養治療が必要となることは少ないが、重症例では栄養障害のリスクが高く死亡率や合併症発症率にも関連するため栄養治療は重要である。従来は静脈栄養が主流だったが、膵外分泌刺激に対する安全性や予後改善効果より、最近では経腸栄養に移行してきている。一方慢性膵炎は、膵外分泌腺の進行性喪失に伴う消化・吸収障害が病態の特徴であるため高率に栄養障害を認め、さらに低栄養は死亡率増加にも関与する。したがって栄養管理は疼痛コントロールや膵酵素投与と同様に多角的な治療の一部に位置づけられる。一般に経口摂取に問題はなく栄養カウンセリングが中心で、経腸栄養や静脈栄養の必要性は少ない。なお、急性増悪期は急性膵炎に準じた栄養管理を行う。
著者
石渡 一夫 静間 徹 中澤 博江 盛 英三 福山 直人
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.489-495, 2007

【目的】海藻に含まれるフコイダンは種々の有用な生物活性を持つが、沖縄モズク由来アセチルフコイダンの癌に対する作用は不明である。本研究において我々は沖縄モズク由来アセチルフコイダンの癌抑制作用について検討を行った。<BR>【対象及び方法】動物実験モデルとして、マウス大腸癌細胞移植モデルを用いた。実験群は癌細胞移植後に通常水を飲水させたコントロール群と、通常水に5%フコイダンを混ぜて飲水させたフコイダン群に分け、マウスの体重を経時的に計測し腫瘍量を計測した。腫瘍組織は採取後、組織学的に腫瘍の浸潤とアポトーシス細胞の有無を検討した。<BR>【結果及び考察】マウスの有意な体重減少抑制効果をフコイダン投与群で認め、腫瘍量もフコイダン投与群で有意に低下していた。組織学的にもフコイダン投与群で腫瘍の浸潤が抑制され、癌細胞のアポトーシスも認められた。<BR>【結論】沖縄モズク由来アセチルフコイダンは癌細胞にアポトーシスを誘導し腫瘍発育を抑制すると考えられた。
著者
坂本 芳美 岡 美和子 深田 靖彦 河内 正治
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.3_53-3_56, 2005 (Released:2006-12-27)
参考文献数
5
被引用文献数
3

血清アルブミン値は栄養評価として信頼でき、かつ安定した指標として臨床の場で広く認められている。最近ではRBP (retinol-binding protein)、TTR (transthuyretin : 慣用名prealbumin)、Tf (transferrin) 等の半減期の短いRTP (Rapid Turnover Protein) とともに栄養アセスメント蛋白と呼ばれている。しかし、その測定値において、体位による変動が、臨床上問題になるほど大きいことは、栄養療法を行なう臨床の場ではほとんど知られていない。今回われわれは、体位による変動を健康成人において調査した結果、血清アルブミン値をはじめRTP値が採血時の体位で10%程度の差を生じることが判明し、採血時の体位が無視できないことを確認した。栄養アセスメント蛋白を栄養評価指標として用いる際には、体位、体位保持時間を考慮しなければ誤った判断を下す可能性があると考え、その際の標準体位を決定し、アナウンスする必要があると考える。
著者
加藤 章信 鈴木 一幸
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.1051-1056, 2010 (Released:2010-10-25)
参考文献数
17

肝硬変の栄養代謝異常として蛋白質・エネルギー栄養不良が特徴的である。このうち蛋白アミノ酸代謝異常には経口分岐鎖アミノ酸製剤が用いられ、栄養学的効果とともに有害事象の減少を含めた予後に対する有用性が明らかになっている。
著者
落合 邦康
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.945-952, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
29

膨大な研究により腸内フローラの代謝産物・短鎖脂肪酸 (SCFA) は、生体にとって極めて有益で且つ重要な物質であることは間違いない。近年、慢性炎症性疾患・歯周病が糖尿病などさまざまな全身疾患の誘因となることが各方面で報告され、口腔と全身との関わり広く注目されている。歯周病の主要原因菌である一群の口腔内嫌気性菌は、大量のSCFA、特に酪酸を産生する。酪酸は、高濃度において歯周組織にさまざまな為害作用を及ぼすと同時に、潜伏感染ヒト免疫不全ウイルス (HIV) やEpstein-Barr virusを再活性化し、AIDSや種々の腫瘍発症、がん細胞の転移にも関与する可能性が判明した。内因性感染症や自己免疫疾患研究において、共生細菌体が宿主に及ぼす直接的影響の研究は必須であるが、新たな視点から、SCFAなどの微生物代謝産物の影響を検討することも極めて有意義であると考える。
著者
斎野 容子 三松 謙司 川崎 篤史 木田 和利 吹野 信忠 加納 久雄 佐伯 郁子 和田 裕子 荒居 典子 大井田 尚継
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.945-949, 2012 (Released:2012-06-15)
参考文献数
14

症例は70歳、男性。2007年11月、直腸穿孔及び腹膜炎にてハルトマン手術を施行、2010年8月、腸閉塞の診断で癒着剥離術及び小腸部分切除術を施行した。2010年10月、腸閉塞にて入院し、イレウス解除術及び小腸部分切除術を施行したが、術後3日目に小腸吻合部縫合不全を認め、術後7日目に創部Surgical site infectionによる腹壁創部〓開を認めた。創傷治癒促進と低栄養改善を目的としてNSTが介入し、中心静脈栄養、経腸栄養、食事の併用により適切な栄養管理を行うとともに、CaHMB・L-アルギニン・L-グルタミン配合飲料(アバンド™)1日1袋28日間の経口投与を行った。アバンド™投与後、腹壁創部は順調に改善して投与後28日目にはほぼ上皮化し、縫合不全は投与後20日目に閉鎖し、第67病日に退院となった。低栄養状態を改善した上でアバンド™を投与することは創部〓開や縫合不全部の創傷治癒促進に有効であると考えられた。
著者
佐々木 雅也 丈達 知子 栗原 美香 岩川 裕美 柏木 厚典 辻川 知之 安藤 朗 藤山 佳秀
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.189-194, 2007-06-25
参考文献数
14
被引用文献数
2

【はじめに】クローン病症例の入院時SGAによる評価と疾患活動度、治療のアウトカムとの関連について検討した。<BR>【対象及び方法】2004年1月より2005年12月までに滋賀医科大学消化器内科にて入院治療された27例(男性19例女性8例、平均年齢30.7歳)を対象とした。入院時のSGAは、栄養状態良好(A判定)10例、中等度の栄養障害(B判定)11例、高度の栄養障害(C判定)6例であった。<BR>【結果】CRP値、IOIBDアセスメントスコア、CDAIはB判定群、C判定群で有意に高値であった。TPN施行率、手術施行率もB判定、C判定群で有意に高率であり、在院日数もB判定、C判定群で有意に長かった。<BR>【考察】クローン病入院時SGAによる評価は、疾患活動度とよく相関した。またTPN施行率、手術施行率、在院日数と有意な関連があり、疾患予後の推定に有用であった。
著者
巽 博臣 信岡 隆幸 川崎 喜恵子 竹中 ユキ江 佐藤 香織 高橋 和也 菊池 敦子 角谷 真由美 井山 諭 平田 公一
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.1119-1123, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
5

【目的】スタッフの臨床栄養に関する知識の把握を目的に調査を行った。【対象および方法】2011年4月と11月にアンケート調査を行った。1回目の結果を公表し、2回目の調査までに栄養療法の基礎的な内容のNSTセミナーを行った。【結果】基本項目の正答率 (1回目) は3大栄養素の熱量は52%、6大栄養素の成分は20%、微量元素製剤に含まれる微量元素は11%、急性期の栄養指標は5%であった。略語の意味の正答率はIVH、BMI、NSTについては約5割にとどまり、半数以上の略語が20%以下であった。高カロリー輸液製剤に含まれる栄養成分を理解している医師は50%以下で、経腸栄養剤の特徴は一部を除き10%以下の正答率であった。1回目に比べ2回目にはアンケート回答数が増加し、多くの項目で正答率の上昇傾向がみられた (有意差なし)。【結論】スタッフの栄養に関する基本知識の理解度は低かった。NSTセミナーで臨床栄養の重要性を啓蒙することで、栄養に対する興味や知識の理解度は向上すると考えられた。
著者
下谷 祐子 鎌田 紀子 林 史和 百木 和 十河 光栄 山上 博一 渡辺 憲治 荒川 哲男 塚田 定信 羽生 大記
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.1361-1367, 2012 (Released:2012-12-17)
参考文献数
11

【目的】病態が活動期で入院を要した炎症性腸疾患患者について、NSTによる適切な栄養学的介入を行うことを目的に栄養状態の評価を行った。【対象及び方法】潰瘍性大腸炎患者、クローン病患者に対し、入院時に身体計測、インピーダンス法を用いた身体組成分析、血液検査・血液生化学検査、SGAを用いて栄養学的評価を行った。【結果】入院を要した炎症性腸疾患患者は栄養状態が不良であることが示唆された。特に潰瘍性大腸炎患者は、急激な病状の増悪による炎症反応の亢進や重篤な消化器症状により、代謝の亢進、食事摂取量の低下が起こり、急激に低栄養状態に陥っていると考えられた。【結論】潰瘍性大腸炎はクローン病に比して栄養療法の必要性が低いと認識されがちであるが、急激な栄養状態の悪化のみられる潰瘍性大腸炎患者においても、原疾患の治療とともにNSTを通じた積極的な栄養学的サポートが必要であると考えられた。
著者
寺師 浩人 前重 伯壮 野村 正 宇佐美 眞
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.939-943, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
30

脂質は皮膚を構成する重要成分であり、細胞膜の正常機能維持や免疫に寄与する。従って、創傷治癒機転を把握するためには、脂質の主成分である脂肪酸を理解することが重要である。そのためには、皮膚における脂肪酸代謝、表皮角化細胞や線維芽細胞の脂肪酸組成、さらに脂肪酸と創傷治癒との関係を多角的にみなければならない。脂肪酸は食事 (もしくは内服) と外用から体内に吸収されるわけであるが、正常に吸収・代謝されなければ、迅速な創傷治癒機転が働くことが困難となり、正常皮膚の機能維持も図ることができない。時宜を得た脂肪酸の代謝がなければ正常創傷治癒機転が機能しなくなり、結果として創傷治癒遅延のみならず瘢痕形成にも繋がりかねない。本項では、正常皮膚の脂肪酸組成、創傷治癒過程における脂肪酸代謝、瘢痕における脂肪酸組成、さらには脂肪酸によるケロイド制御の展望について述べる。
著者
竹山 廣光 社本 智也
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.5-10, 2014 (Released:2014-03-21)
参考文献数
32

n-3系多価不飽和脂肪酸 (EPAやDHA) には炎症を抑える働きが報告されてきたが、その作用機序は十分には解明されていない。近年、n-3系多価不飽和脂肪酸から細胞間生合成経路によって産生されるレゾルビンなどの代謝産物が同定された。これらは脂質メディエーターとして働き、炎症の消退に積極的に関わっていることが示された。炎症を強力に収束する作用を持ち、炎症を基盤とするさまざまな疾患に対して効果が期待されている。このような脂質メディエーターの生理活性機構の理解がn-3系多価不飽和脂肪酸の抗炎症効果の解明につながると考えられる。
著者
森山 明美 阿部 典子 山岸 由幸
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.1201-1210, 2014 (Released:2014-10-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は、看護師の栄養管理に関する自己評価尺度を開発することである。【方法】看護師655名を対象に無記名自記式質問紙により行った。調査は再現性評価のため再テスト法を用いた。質問項目は、文献から栄養に関する看護介入を検討し、35項目を作成した。尺度タイプは5段階リカート法を用いた。【結果】回収403名、有効回答は365名であった。因子分析は一般化された最小2乗法を用い、因子数は固有値1以上の基準とした。因子負荷量は0.35以上で因子分析を繰り返した。プロマックス回転の結果、5因子24項目を抽出し「看護師の栄養管理に関する自己評価尺度」と命名した。5因子について各項目内容を検討し、「アセスメントに基づく食事指導」「食事摂取に関する援助」「経管栄養に関する援助」「在宅栄養管理に関する援助」「職種間との連携」と命名した。α係数はα=0.743~ 0.908、再テストは r=0.34~ 0.65であった。【結論】開発した本尺度は信頼性と妥当性を確保したと判断した。