著者
小林 篤 中村 浩志
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.69-86, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
37
被引用文献数
4

亜種ライチョウLagopus muta japonica(以下ニホンライチョウ)の生活史を生活環境が厳しい冬期間も含め年間を通して理解することは,世界の最南端に分布するこの亜種の日本の高山環境への適応や生活史戦略を明らかにし,温暖化がこの鳥に与える潜在的な影響を理解する上で重要である.本研究では,群れサイズやその構成,標高移動,観察性比の季節変化などを年間通して調査し,その生活史の変化や特徴が日本の高山環境の特徴とどのように対応しているかを明らかにするための調査を乗鞍岳で実施した.群れサイズおよび群れの構成,季節的な標高移動,観察された個体の性比は,繁殖地への戻り,抱卵開始,孵化,雛の独立,越冬地への移動により,それぞれ季節的に大きく変化することが示された.それらの変化は,高山環境の季節変化と密接に関係しており,ニホンライチョウの生活史は,日本の高山環境の季節変化と密接であることが示唆された.また,冬期にはすべての個体が繁殖地である高山帯から離れ,森林限界より下の亜高山帯に移動していたが,雄は森林限界近く,雌は雄よりも繁殖地から遠く,標高の低い場所にと,雌雄別々に越冬していることが明らかにされた.さらに,ニホンライチョウでは,外国の個体群や近縁種でみられる育雛期に繁殖した場所より雪解けの遅い高標高地への移動は見られないが,日本の高山特有の冬の多雪と強風がもたらす環境による積雪量の違いと雪解け時期のずれが,同じ標高の場所での育雛を可能にしていることが示唆された.年間を通して実施した今回の調査結果から,ニホンライチョウの生活史の区分は,従来の繁殖期の「なわばり確立・つがい形成期」,「抱卵期」,「育雛期」の区分に加え,非繁殖期は「秋群れ期」と「越冬期」に分けるのが適当であることが指摘された.ニホンライチョウは,行動的にも生理的にも日本の高山環境に対し高度に適応しているが,日本では高山の頂上付近にしか生息できる環境が残っていないため,この種の中で最も温暖化の影響をうける可能性の高い個体群であることが指摘された.
著者
中川 優奈 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.133-143, 2017
被引用文献数
4

近年,都市の鳥類多様性に関する注目が高まってきている.河川は鳥類の群集構造に大きな影響を与えうる環境であるにもかかわらず,都市の鳥類多様性にどのような影響を与えるのか,定量的に評価された例は少ない.そこで本研究では,函館市内を流れる亀田川において,上流から下流にかけて,およそ1 kmごとに河川付近に調査地点を設定し,それぞれの地点で見られる鳥の種数と個体数を,繁殖期と越冬期の2つの時期で調査した.ここから,上流下流のどこで種数が多いのか,それらが季節によって異なるのかを検証した.調査の結果,河川沿いと住宅地では,繁殖期,越冬期ともに,河川沿いの方が有意に種数が多かった.このことは亀田川のような河川の存在が都市の鳥類の種の多様性を高めていることを示している.河川沿いにおける種数は,繁殖期には上流ほど種数が多いのに対し,越冬期では逆に下流の方で種数が多かった.これは繁殖期にはカッコウをはじめとした山に近い上流側の環境で繁殖する鳥が多く見られたのに対し,冬季はカモ類が流れの緩やかな下流の環境を利用したためと考えられた.このような種数の多さが季節によって逆転するということは,面積の影響が強くでる孤立した緑地と河川では都市の生物多様性に与える影響が異なっている可能性を示している.
著者
藤田 剛 土方 直哉 内田 聖 平岡 恵美子 徳永 幸彦 植田 睦之 高木 憲太郎 時田 賢一 樋口 広芳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.163-168, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
29

アマサギは人に運ばれることなく急速に分布拡大した例とされるが,分散や渡りなど長距離移動には不明な点が多い.筆者らは,茨城県で捕獲されたアマサギ2羽の長距離移動を,太陽電池式の人工衛星用送信器を使って追跡した.2羽とも,捕獲した2006年の秋にフィリピン中部へ移動して越冬したが,その内1羽が翌春に中国揚子江河口周辺へ移動し,繁殖期のあいだそこに滞在した.そこは,前年繁殖地とした可能性の高い茨城県から1,900 km西に位置する.この結果は,東アジアに生息するアマサギにおいて長距離の繁殖分散を確認した初めての例である.
著者
中川 優奈 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.133-143, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
31
被引用文献数
4

近年,都市の鳥類多様性に関する注目が高まってきている.河川は鳥類の群集構造に大きな影響を与えうる環境であるにもかかわらず,都市の鳥類多様性にどのような影響を与えるのか,定量的に評価された例は少ない.そこで本研究では,函館市内を流れる亀田川において,上流から下流にかけて,およそ1 kmごとに河川付近に調査地点を設定し,それぞれの地点で見られる鳥の種数と個体数を,繁殖期と越冬期の2つの時期で調査した.ここから,上流下流のどこで種数が多いのか,それらが季節によって異なるのかを検証した.調査の結果,河川沿いと住宅地では,繁殖期,越冬期ともに,河川沿いの方が有意に種数が多かった.このことは亀田川のような河川の存在が都市の鳥類の種の多様性を高めていることを示している.河川沿いにおける種数は,繁殖期には上流ほど種数が多いのに対し,越冬期では逆に下流の方で種数が多かった.これは繁殖期にはカッコウをはじめとした山に近い上流側の環境で繁殖する鳥が多く見られたのに対し,冬季はカモ類が流れの緩やかな下流の環境を利用したためと考えられた.このような種数の多さが季節によって逆転するということは,面積の影響が強くでる孤立した緑地と河川では都市の生物多様性に与える影響が異なっている可能性を示している.
著者
Johanna P. Pierre Shelly M. Boss Cynthia A. Paszkowski
出版者
日本鳥学会
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.161-168, 2005 (Released:2005-12-25)
参考文献数
40

We compared foraging behavior of Bufflehead (Bucephala albeola Linnaeus) and Common Loon (Gavia immer Brünnich) on eight lakes in harvested and unharvested boreal mixedwood forest in northern Alberta, Canada. For one summer before (1996) and two summers after (1997, 1998) forest harvesting around three of the eight lakes, we recorded the duration of Bufflehead and Common Loon dives. After logging, forested buffer strips 100 m-wide separated cut-blocks from lakes (‘harvested lakes’). ‘Unharvested lakes’ were surrounded by ≥450 m of undisturbed forest throughout the study. There were no detectable differences in dive duration between harvested and unharvested lakes for Bufflehead or Common Loon. Correlations between environmental variables (water clarity, fish biomass, depth) and the duration of Common Loon dives were not significant. However, the duration of Bufflehead dives differed between lakes, unrelated to forest harvesting. The duration of Bufflehead dives was negatively correlated with water clarity but was not significantly correlated with fish biomass. While our study shows that the foraging behavior of Buffleheads was affected by lake conditions, the utility of aquatic birds as indicators of the effects of forestry on western boreal lakes remains unproven.
著者
浦野 栄一郎
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.109-118, 1990-03-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
22

一夫多妻の雄と番ったオオヨシキリAcrocephalus arundinaceusの雌同士が,なわばり内でどのように共存しているかについて検討した.調査は1980-87年に石川県河北潟干拓地で行った.一夫多妻第二雌の定着は第一雌の産卵~抱卵期に多くみられ,両雌の産卵開始は平均14.1日ずれていた.新しい雌が定着する時期は,雄が活発にさえずっている時期に対応していた.また第二雌は,なわばり内の第一雌の巣からより離れた所に営巣する傾向があり,平均巣間距離は21.0mだった.定着したばかりの雌と先住雌との間では,争いが頻繁にみられた.雌の定着の時間的ずれは,(i)番い形成•造巣期に雄のさえずりが不活発になることと,(ii)雌同士の反発とによって生じるものと考えられる.雌同士の反発は,第二雌の営巣場所選択にも影響しているであろう.
著者
Bhoj Kumar ACHARYA Lalitha VIJAYAN
出版者
日本鳥学会
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.131-140, 2017 (Released:2017-08-08)
参考文献数
78
被引用文献数
17

We examined the vertical stratification of birds in relation to foliage in different vegetation types along an elevation gradient in Sikkim, Eastern Himalaya, India. We used variable-width point count methods for sampling birds spread across 20 transects along an elevation gradient from 300 m to 3,800 m above mean sea level. We estimated species richness, abundance and Shannon-Weiner diversity (H′) of birds in seven height categories (0 m, 0-5 m, 5-10 m, 10-15 m, 15-20 m, 20-25 m and >25 m). Foliage structure and complexity of vegetation was assessed along all transects following Erdelen (1984) and Jayson and Mathew (2003). Birds displayed distinct vertical stratification in terms of species richness, abundance and diversity in Sikkim. Overall, maximum species richness (231) was observed at 0-5 m height followed by 5-10 m, 10-15 m and the ground layer (0 m). There was no significant difference in stratification pattern among elevation zones. Each height class harboured distinct species composition of birds with low similarity among height categories. We observed maximum foliage concentration within 10 m height from the ground, and the trend was consistent in all of the zones. Correlation analysis revealed significant positive relations between foliage abundance and species richness, abundance and diversity of birds. Results of this study have highlighted the significance of under-storey or sub-canopy vegetation in maintaining and conserving avifaunal diversity in the Eastern Himalaya.
著者
黒田 長久
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.18, no.84, pp.Plate1-Plate2, 1968-03-20 (Released:2008-12-24)
著者
Masaoki Takagi Takema Saitoh Noriyuki Yamaguchi Hiroto Okabe Isao Nishiumi Masayoshi Takeishi
出版者
日本鳥学会
雑誌
ORNITHOLOGICAL SCIENCE (ISSN:13470558)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.53-59, 2015 (Released:2015-02-18)
参考文献数
19
被引用文献数
7

A nest of the Ryukyu Scops Owl Otus elegans was found on Okinoshima (Okino Island), Fukuoka Prefecture, Japan (34.24°N, 130.10°E), in the Tsushima Strait, on 28 July 2013. The breeding pair and their three owlets were caught and their identity confirmed genetically using the BOLD System for COI in the mitochondrial genome. Their calls and external morphological measurements also accorded with what is known of the species. We estimated that at least 23 territorial males inhabit the Island. Okinoshima lies 490 km beyond the previously known northern limit of the species' distribution.

1 0 0 0 OA 蛇ト鳥ノ爭

著者
鶉ノ家
出版者
日本鳥学会
雑誌
(ISSN:00409480)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.31-32, 1916-12-31 (Released:2009-02-26)
著者
北村 俊平
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.25-37, 2015
被引用文献数
1

鳥類は地球上のさまざまな生態系において,多様な生態系サービスを担っている.本総説では,鳥類による花粉媒介と種子散布についての知見をまとめた.動くことのできない植物にとって,花粉媒介と種子散布は自らの遺伝子を広げる数少ない機会の一つであり,多くの鳥類が花蜜や果実を餌資源として利用している.自然実験を利用した研究から,花粉媒介者や種子散布者である鳥類を喪失することで,実際に植物に花粉制限が生じ,更新過程が阻害されている事例や群集レベルでも種子散布が機能していない事例が明らかになってきた.現段階では例数は少ないものの,鳥類による種子散布の経済的価値を評価した研究も行われている.スウェーデンの都市公園では,公園内の優占樹種であるコナラ属の種子散布者であるカケス1ペアの経済的価値は,人間が種子の播種や稚樹の植樹作業を行った場合にかかる費用に換算すると58万円から252万円に相当する.一方,鳥類は優秀な種子散布者であるがゆえに外来植物の分布拡大を促進する負の側面も知られている.これまで見過ごされてきた鳥類による花粉媒介や種子散布の情報を蓄積していくことで,それらの生態系サービスをうまく活用する方策,ひいては鳥類を含む生物多様性の保全に結びつけていくことができるのではないかと期待される.
著者
内田 博
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.25-32, 1986
被引用文献数
7

(1)1968-84年に,埼玉県中央部の比企•武蔵丘陵を中心とする森林で4種のタカ類(サシバ,ハチクマ,オオタカ,ツミ)の観察を行ない,そのうちサシバ,ハチクマ,ツミの3種の巣の周辺でスズメとオナガが繁殖しているのを確認した.しかし,オオタカには,そのようなことは見られなかった.<br>(2)サシバの巣の周辺では,丘陵内ではふつう見ることのないスズメが数番いひんぱんに観察され,サシバの巣から数mの範囲内に巣をつくり繁殖してい虎.調査した11巣中,スズメが見られたのは9例で,合計9巣が確認された.スズメの見られた時期はサシバの繁殖時期と一致し,5月中旬から7月初旬にわたった.<br>(3)ハチクマの巣の周辺でもスズメが見られ,繁殖した.調査した6巣中,スズメが見られたのは4例で,2巣が確認された.<br>(4)ツミの巣の周辺では,一群のオナガが観察され,周辺数10mの範囲内に複数の巣がつくられた.調査した10巣中,8例でオナガが長期間観察され,オナガが巣の周辺に見られないとされた残りの2例でもオナガがツミの巣の林に短時間現われた.オナガの見られた8例の場所では,合計7巣のオナガの巣が確認された.<br>(5)オオタカの場合は,調査した19巣の付近で繁殖する鳥は見られなかった.
著者
平井 克亥 柳川 久
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.166-170, 2013 (Released:2013-11-21)
参考文献数
20

北海道十勝平野において,ノスリButeo buteoの営巣パターンおよび営巣場所の特徴を調べた.調査期間中にノスリが営巣した場所は33ヶ所であった.ノスリは他の猛禽類の古巣にも営巣した.営巣木としてノスリにもっとも多く利用された樹種はカラマツLarix kaempferiであった.非営巣場所と比べて,営巣木は林縁からより離れた位置にあったが,それ以外の森林構造には営巣場所と非営巣場所違いはみられなかった.本研究の結果,ノスリの営巣場所の選好性は比較的弱く,このことが他種の古巣を利用した営巣や,カシワ林からカラマツ林へと主要な営巣環境をシフトすることを可能にしたと考えられた.その結果,十勝平野のノスリの営巣数は回復傾向にあるのかもしれない.
著者
高田 賢一郎
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.112-113, 2009-05-01 (Released:2009-05-20)
参考文献数
5
著者
濱尾 章二 宮下 友美 萩原 信介 森 貴久
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.139-147, 2010-10-20 (Released:2010-11-08)
参考文献数
28
被引用文献数
1 7

東京都心の隔離された緑地である国立科学博物館附属自然教育園において,冬季に捕獲した鳥の糞に含まれる種子を分析した.また,種子を排泄した鳥種の口角幅と採食されていた果実の直径を計測し,比較した.8種の鳥の糞から9種の植物種子が見出された.特に,ヒヨドリHypsipetes amaurotis,ツグミTurdus naumanni,メジロZosterops japonicusが93%の種子を排泄していた.これら3種は生息個体数も多かったことから,重要な種子散布者になっていると考えられた.種子は1種を除き,調査地内に見られる植物のものであったことから,調査地内外での種子の移動は少ないものと考えられた.鳥は口角幅より小さな果実を採食している場合もあれば,大きな果実を採食している場合もあった.ルリビタキ Tarsiger cyanurus,メジロ,アオジEmberiza spodocephalaでは,口角幅の最大値よりも果実直径の最小値の方が大きなイイギリIdesia polycarpaを採食していた.口角幅を超える大きさの果実を採食していたのは,結実期を過ぎていたことや都市緑地であることから,果実の選択が制約を受けていたためである可能性がある.
著者
MUNECHIKA Isao NOZAWA Kohei SUZUKI Hitoshi
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.133-138, 1999
被引用文献数
2

ヤマドリ属とキジ属の分類は定かではなく,1つの属とする説と分離独立させるとする2つの説があり,いまだ論争が続いている.ヤマドリ属(genus <i>Syrmaticus</i>)の分類学的位置づけを確定するため,キジ属(genus <i>Phasianus</i>)および両属に近いとされるコシアカキジ属(genus <i>Lophura</i>),カンムリキジ属(genus <i>Catreus</i>)の類縁関係について <i>Cyt-b</i> 遺伝子配列の比較から検討をおこなった.<br>1)ヤマドリと2)オナガキジと3)カラヤマドリ•ビルマカラヤマドリ•ミカドキジと4)ウチワキジ•エボシキジ•ニホンキジがそれぞれクラスターを形成した.分類学的位置づけが論議されているエボシキジ(Cheer Pheasant)はニホンキジ(Green Pheasant)のクラスターに含まれ,ヤマドリ属(genus <i>Syrmaticus</i>)よりもむしろキジ属(genus <i>Phasianus</i>)に近かった.
著者
LEISLER Bernd BEIER Josef HEINE Georg SIEBENROCK Karl-Heinz
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.169-180, 1995
被引用文献数
13

ドイツのBavariaにある養魚池群のオオヨシキリ個体群において一夫多妻繁殖のいくつかの側面について調査した。18年間に得られた、少なくとも片親が色足環で個体識別されている428巣の記録を分析の対象とした。<br>対象となった雄の数の15年間の平均は30羽/年で、そのうち11.3%は一夫多妻、13.9%は独身だった。<br>一夫多妻の第一巣では第二雌の巣よりも10日早く産卵が始まった(Fig.1)。<br>繁殖結果の統計値をTable1にまとめた。第二雌の巣立ち雛数は一夫一妻雌よりも低かったが(相対成功度は0.79)、同時期に一夫一妻だった雌とは有意に異ならなかった(相対成功度は0.85)。繁殖集団に加わることのできた巣立ち雛の割合は第一雌の雛がもっとも高かったが、一夫一妻の雛と第二雌の雛とでは有意差はなかった。したがって、一夫多妻のいき値モデルを排除することはできない。<br>雄の配偶ステータスには年齢が影響し、年長の雄がより高い割合で一夫多妻になる(Fig.2)。年齢と雌の配偶ステータスとには有意な相関はなかった(Fig.3)。雄の最年長記録は11歳、雌は10歳だった。<br>雌による配偶者選択における雄の質となわばりの質との相対的な重要性を知るために、29雄(一夫多妻4羽、一夫一妻22羽、独身3羽)を対象に、判別分析を用いて3種類のなわばりの特徴と11種類の雄の特徴(身体的な形質、年齢、さえずりのレパートリー数、攻撃性、ホルモンレベル)を分析した。一夫多妻を予測するもっとも有効な基準となるのは、開水域に面したヨシ原の縁が長いこと、攻撃性が弱いこと、さえずりのレパートリー数が多いことであった(Table2,Fig.4のaxis1)。第二の判別軸に沿っては3群の雄が十分に分離されていないが、この軸は若齢、短い翼と総排泄腔突起、レパートリー数の少なさおよび黄体形成ホルモン(LH)のレベルが低いことを表している。ヨシ原の縁の長さは営巣場所としてだけでなく、採食生態上も重要なのかもしれない。一夫多妻雄の攻撃性の低さは、それらが早い時期に渡来することとテストステロンのレベルの季節的減退によって説明できるだろう。<br>結論は次の3点である。(1)一夫多妻が生じることの説明を、以前の論文で支持された「だまし仮説」に求める必要は必ずしもない。(2)本調査地は一夫多妻のための生態的条件に関して最適な場所とは言えないが(不自然に多い魚のために餌供給が抑えられている、一夫多妻の頻度もやや低い、1雄とつがう雌数が2羽を越えることはほとんどない、雛の餓死がやや頻繁に生じる)、雌による積極的な配偶者選択を可能にするのには十分な、繁殖条件の予測可能な差異が存在するようだ。(3)雌は雄の特徴となわばりの質の両方を基に配偶者を選んでおり、雄•なわばり双方の要因には正の相関がある。
著者
梅田 直円 岡ノ谷 一夫 中村 和雄 古屋 泉
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.9-16, 1993-03-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
10

ムクドリによる農作物の被害は年々増加する傾向にあり,効果的な防除法の開発が望まれている.ムクドリがどんな刺激を嫌うかを条件反応の抑制効果によって定量化することを目指して,ムクドリをオペラント条件づけの手続きで訓練できるかどうか試みてみた.実験に使った3羽のムクドリすべてにキーつつき反応を学習させることができ,そのうち2羽は間欠スケジュールで安定した反応をするようになるまで訓練することができた.キーつつき反応に及ぼす種々の視•聴覚刺激の効果を測定することで,効果的な追い払い法の開発に寄与できるであろう.