著者
内藤 永
出版者
旭川医科大学
雑誌
旭川医科大学紀要. 一般教育 (ISSN:03878090)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.45-60, 1997-03

出版社版
著者
布村 明彦
出版者
旭川医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

フェンサイクリジン(l-(l-phenylcyclohexyl)piperidine;PCP)は臨床的に精神分裂病に類似した多彩な精神症状を惹起することが知られているが、PCPの精神異常惹起作用の形態学的基盤に関しては十分に検索されていない。本研究は、PCP投与ラット脳の超微形態について検索して精神分裂病様症状が出現する組織病理学的基盤について解明しようとするものである。実験動物として9週齢のSprague-Dawley系雄性ラットを用い、生理食塩水に溶解した10mg/kgのPCPを単回あるいは1日1回、連日4日間反復投与(腹腔内注射)した。また、生理食塩水のみを同様に腹腔内注射したラットを対照群として、各群のラットを最終投与の4〜12時間後にグルタールアルデヒドによって灌流固定した。脳を取り出して後部帯状回皮質から組織片を切り出し、型通りにエボン包埋した。1-μm切片をトルイジン・ブルー染色して光顕的に検索し、超薄切片をウラン・鉛二重染色して電顕的に検索した。PCP投与ラットでは、投与直後から3〜4時間にわたって運動失調、移所運動量増加および常同行動(臭いかぎ、首振り、回転運動などを繰り返す)が認められた。PCP投与ラットの後部帯状回皮質を光顕的に観察すると、胞体内に1〜数個の空胞状構造を有する神経細胞が認められた。同部を電顕的に観察すると、ミトコンドリアや小胞体が拡大・膨化して空胞状構造を形成していた。この変化は、PCP単回投与ラットよりも反復投与ラットにおいて高度であった。PCP投与ラットの帯状回皮質における神経細胞の空胞状変化のメカニズムは不明だが、精神分裂病死後脳の検索においても帯状回の組織変化が報告されており(Benens ら,1987)、本研究の結果は、精神分裂病様症状発現の形態学的基盤を考察する上で興味深い。
著者
布村 明彦 千葉 茂
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

われわれは、酸化ストレスやミトコンドリア異常がアルツハイマー病(AD)の病態に関連することを明らかにしたが、これらの変化がアポトーシスの引き金になり得ることは興味深い。βアミロイド(Aβ)の産生や分解の異常は、ADの病態において中心的役割を果たすと考えられているが、神経細胞内Aβ蓄積と種々のアポトーシス・シグナルとの関連性は明らかにされていない。本研究では、AD剖検脳[10例(年齢60〜87歳);海馬、海馬傍回、および後頭側頭回]を用いて、免疫細胞化学的に神経細胞内Aβ蓄積、酸化的傷害、および種々のアポトーシス・シグナルを検出した・アポトーシスのカスケードにおいて上流に位置するMAPキナーゼ(mitogen-activated protein kinase)ファミリー(ERK、JNK/SAPK、p38)については、錐体細胞でERK、JNK/SAPK、p38の順により広汎に出現していた。また、これらのシグナルの下流で活性化されるカスパーゼ群は、イニシエーター・カスパーゼであるカスパーゼ8および9の出現が錐体細胞で観察されたのに対して、より細胞死に直結したエフェクター・カスパーゼであるカスパーゼ3、6、および7の出現は認められなかった。一方、神経細胞内Aβの免疫反応、とくにAβ42C末端の特異的抗体に対する免疫反応は、いずれのアポトーシス・シグナルよりも広汎に認められ、神経細胞内RNAの酸化的傷害は、Aβ42よりもさらに広汎に認められた。以上のことから、AD脳では、酸化的傷害が引き金となって神経細胞内Aβ蓄積が生じ、その下流で種々のアポトーシス・シグナルの出現が認められるが、アポトーシスを完結に導く後期のシグナルの出現は乏しいことが推定される。AD死後脳で観察される残存神経細胞では、従来知られているアポトーシスの過程がabortiveな段階で停止している可能性がある。
著者
升田 由美子
出版者
旭川医科大学
雑誌
旭川医科大学研究フォーラム (ISSN:13460102)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.56-65, 2001-06-30

出版社版中央管理方式の空腸施設のある大学病院8階病棟,7病室の温度,湿度,気流を測定し,同時に患者の意識調査も行なった.平成12年8月7〜11日の5日間の温度は27.1〜28.2度で,南側病室の温度が高く,湿度は50.4〜53.1%,不快指数は73.6〜76.8と快適範囲内にはなかった.性別,年齢に関わらず70〜80%の患者が昼間の病室を暑い・蒸し暑いと感じており,1/3以上が室内環境を快適ではないと回答した.夏期の病室内環境は快適とはいえず,病棟の空調設備の改善,看護者の積極的な働きかけが必要であった
著者
多田 博
出版者
旭川医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

【目的と方法】腕神経損傷の中でも神経根引き抜き損傷は、脊髄硬膜内損傷であり、その修復は不可能とされる。しかし、本損傷は、節前損傷であるため、脊髄後根神経節及び末梢知覚神経は生存している。私は、末梢神経の切断縫合後にいわゆるmisdirectionが起こり、知覚神経線維が運動神経髄鞘内に迷入することに着目し、本損傷に対して、再建を目的とする筋の支配神経を一度切断し、再縫合することで故意にmisdirectionを起こし、後根神経筋による運動単位を形成させるという実験を試みた。実験動物として250〜300gのラット16頭を用い、腹腔内ネンブタール麻酔下に、腹臥位にて、手術用顕微鏡を用い、無菌的に操作を行った。まず、第4、5腰椎(L4、5)の椎弓切除を行い、一側のL4、5神経根を約1cm切除し、創を閉鎖する(神経根節前損傷の作成)。次に、一方の坐骨神経を露出後、切断し、180度回旋を加えて神経上膜縫合を行う(A群)。処置後、8、12週後に、坐骨神経を露出し、大転子部を刺激点とする前脛骨筋、腓腹筋の誘発筋伝図検査を行う。同時に筋そのものの電気刺激を行い、筋の反応性をみる。前脛骨筋、腓腹筋を摘出した後、その湿重量を測定し、筋及び脛骨、腓骨神経の組織学的検索を行う。コントロールとして、筋前損傷のみの群を8頭作成し(B群)、同様の検索を行った。【結果】処置後8及び12週において、坐骨神経を刺激点とする誘発筋電図検査では、B群と同様、A群においても明らかな誘発電位は得られなかったが、筋の直接刺激において、A群において、筋の収縮がみられた。また、健側と比較した筋湿重量の検索でもA群ではB群に比較し、有意に大きかった。組織学的検索においては両群に明らかな差はなかった。以上の結果より、後根神経筋による新しい運動単位の形成は起こらなかったが、本法が脱神経による筋の萎縮にあ対して抑制的に働いている可能性が示唆された。
著者
矢澤 隆志
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

精巣のセルトリ細胞は、成体において様々な成長因子やサイトカインを分泌して精子形成を支持するのと同時に、胎児期には、個体の性を決定する細胞である。本研究では、in vitroで幹細胞や前駆細胞から、機能的なセルトリ細胞を分化誘導する系を確立し、その分化メカニズムを調べることを試みた。そして、セルトリ細胞の前駆細胞に、SF-1/Ad4BPと2種類の転写因子を導入することにより、セルトリ細胞様の細胞を分化させることに成功した。さらに、この細胞を用いて転写共役因子のPGC-1αが、セルトリ細胞の分化に重要な役割を果たすことを証明した。
著者
岡田 洋子 井上 ひとみ 茎津 智子 菅野 予史季 三田村 保 佐藤 雅子
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、死をタブー視し子どもとの会話を避ける傾向が強い日本社会において、命の大切さや生きること、死についてどのように教え学ぶか、その方略の開発と実践・評価である。対象は協力の得られた小学校の低学年78名、高学年80名、中学生112名の合計270名である。方法は各学年用に作成したDeath-Educationプログラムの実施前および実施後に、「命」「生きること」について原稿用紙1枚程度に記載、提出を願った。分析は提出レポートから(1)コード化を行い、データがどのカテゴリーに属するか(2)サブカテゴリー化(仮説設定過程)を推定し、(3)カテゴリー化を試みた帰納的・記述的方法である。Death-Educationプログラムの作成は、小児看護の立場で行なう目的・指針と認知的発達段階を考慮し作成した。低学年は作成した「命」について考える視聴覚アニメを、高学年は生徒に身近で具体性に富む少年の闘病生活ドキュメンタリーを、中学生は先天性疾患で入退院の経験・障害を有する高校1年生自身による体験談と、骨腫瘍の少年の闘病生活ドキュメンタリーを併用した。倫理的配慮は、中学生には成績に一切関係がない、参加するか否か(途中で出ても)自由である、本人および家族から承諾書にサインを頂き実施した。結果は各学年とも実施前より後の方が1)記載内容が増加、2)一般的知識から感情を伴った表現内容に変化、高学年以上ではさらに3)死と対峙する仲間の闘病生活から(1)そういう仲間の存在をしらないで生きていた自分の発見、(2)健康は当たり前なことではなく、とても大切なことの実感、(3)健康・命の大切さと親への感謝の気持ち、と多くの学び(衝撃)を得ていた。さらに4)死の否定的側面ではなく、生きることに目が向けられていることが確認できた(From Death to Life)。
著者
伊藤 亮 山崎 浩 中谷 和宏 高後 裕 中尾 稔 藤本 佳範 迫 康仁
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究における主要研究テーマは、現在地球規模で流行が深刻化しているエキノコックス症(多包虫症、単包虫症)に関する信頼性の高い免疫診断法(国際標準診断、早期診断、治癒判定法)の開発と実用化である。(1)現在、国際的に最も信頼性が高いと評価されている多包虫症特異診断抗原Em18を遺伝子組み換え抗原(RecEm18)として作成し、その過程でEm18の生化学的特性の解析がなされた。世界各国で別個に検索されてきた診断抗原の中でEm18のB cell epitope活性が最も高いことが判明した(Sako et al.2002.J Clin Microbiol 40,2760-2765)。(2)フランスとのブラインドテストによる共同研究から、RecEm18を用いる血清診断法はフランスにおける多包虫症と単包虫症を100%鑑別できることが判明した(Ito et al.2002.J Clin Microbiol 40,4161-4165)。現在、フランス、スイスにおいて認定された300例以上の多包虫症例の血清学的確認要請を受けている。(3)単包虫症の血清診断法についても遺伝子組み換えAntigen Bを作製した(Mamuti et al.2002.Clin Diag Lab Immunol 9,573-576;Mamuti et al.in prep.)。(4)血清診断上、最も交差反応が高い致死的寄生虫疾患、有鉤嚢虫症に関する遺伝子組み換え抗原を作製した(Sako et al.2000.J Clin Microbiol 38,4439-4444)。血清診断上鑑別を要する多包虫症、単包虫症、有鉤嚢虫症すべてに関する遺伝子組み換え抗原作製に成功し、国際的な評価を得た。現在、合成ペプチド抗原作製を試みている。(5)北海道を中心に、主治医から直接相談を受けた多包虫症疑診例において、Em18抗原を用いる血清検査で多包虫症と他の疾患を術前に100%鑑別し、術前確定血清診断法を確立した。国内での現行の血清検査が確定検査として機能していないことから、Em18を用いる血清検査の導入が望まれる。(6)ミトコンドリアDNA解析により、遺伝子診断法の開発が可能になった。遺伝子解析、遺伝子診断研究も含め、これらの研究成果は現在印刷中を含め国際誌に原著論文総説29編、国際会議録14編、著書5篇として発表した。和文総説、報告書も22編発表した。
著者
吉田 成孝 板東 良雄 村上 公一
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

KLK6はオリゴデンドロサイトに発現するプロテアーゼであるが、そのオリゴデンドロサイト成熟への関与は不明であった。KLK6ノックアウト(KLK6-KO)マウスの解析により、脊髄でのオリゴデンドロサイト発達の一時的な遅延が見られた。KLK6-KOでは脊髄損傷後のミエリン塩基性タンパク質の発現も少なかった。これらの結果から、KLK6はオリゴデンドロサイトの発達に一定の関与をしていることが明らかとなった。
著者
藤枝 憲二 長屋 建 松尾 公美浩
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

<CPHD症例において同定したPIT1β変異体の機能解析>ヒト野生型PIT1β並びに変異PIT1βcDNAの作成と、それらの発現ベクターへのサブクローニングを終了した。今後、供与していただいた野生型および変異型PIT1cDNA発現ベクター、さらにその標的遺伝子であるPRL、GHのプロモーターと併せて、COS7細胞並びにGH4細胞を用いてルシフェラーゼアッセイを行う予定である。なお、他のCPHD3症例に対して同様にPit1β変異解析を行ったが、いずれにおいても変異は認められなかった。<GH不応症例に同定したGH1変異体の機能解析>ヒト成長ホルモン受容体を発現したBaF/GM細胞を用いたヒトGH生物学的活性の測定を行った。低身長児群と正常群の間で生物学的活性/免疫学的活性比に有意な差は認められなかった。今後、この系を用いてGH1変異を有するGH不応症例患者血清中のGH生物学的活性の測定を行い、機能解析を進める予定である。<低身長児を対象とした成長関連遺伝子解析>-2SD未満の低身長児100例を対象にGH1,GHR,IGF1,IGF1R,NPR2についてPCR-ダイレクトシークエンス法を用いて遺伝子解析を行った。その結果、GH1については一例のヘテロ接合性ミスセンス変異(未報告)、GHRについては二例同一の既報のヘテロ接合性ミスセンス変異、IGF1Rでは一例の一塩基挿入(未報告)、そしてNPR2では一例のヘテロ接合性ミスセンス変異(未報告)を同定した。

1 0 0 0 IR DNA鑑定の威力

著者
水上 創 吉田 将亜 斉藤 修
出版者
旭川医科大学
雑誌
旭川医科大学研究フォーラム (ISSN:13460102)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.5-11, 2000-12

出版社版
著者
熱田 裕司 後藤 英司 武田 直樹 松野 丈夫 佐藤 雅規 猪川 輪哉
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

今年度においてはin vivoにおいて神経根由来の異所性発火を観察できる実験モデルを作成し、以下に述べる2種類の検討を行った。実験にはラットを用い、除脳後に後枝腓腹神経より双極電極にて知覚神経を逆行する神経発火活動を導出記録した。この手法によって、腰部神経根が刺激されることに基づいて発生する異所性発火が評価できることを確認した。(1)実験1:髄核投与による異所性発火の発現ラットの第5、6腰部神経根を露出し、尾椎から摘出した髄核を留置した。その後1、2,4週において腓腹神経から異所性発火にもとづく自発性神経活動を導出し、発火頻度を測定した。無処置対照と比較していずれの時期においても発火頻度は有意に増大しており、2週で最大値をお示した。一方、馬尾刺激により坐骨神経で得られた誘発電位を用いて神経伝導速度を測定すると、その値に低下は見られなかった。これらのことから、髄核は神経根に作用して異所性発火を誘発するが、伝導障害を引き起こすことは無いと考えられた。(2)馬尾圧迫による一酸化窒素感受性変化ラット馬尾レべルにおいてシリコンチューブを脊柱管内に挿入し、1週間経過させた馬尾圧迫モデルを作成した。1週間後の観察において、腓腹神経の活動は有意に増大しており、異所性発火が発現していることが確認された。この動物において神経根に一酸化窒素やセロトニンを作用させると、著名な発火増大が見られた。このような変化は馬尾圧迫の無い動物では少なかった。以上の結果は坐骨神経痛の発生機序を理解する上で重要な、髄核の影響、ならびに物理的圧迫と化学的刺激の相互関係、を明らかとしたと考えられた。
著者
牧野 勲
出版者
旭川医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素系の役割とその特性について研究実施計画に沿って検討し、下記の成果を得た。1.赤血球内ケト胆汁酸還元酵素の部分精製と特性に関する検討。酵素の部分精製はBerseusの方法に従って実施し、現在も進行中である。本酵素系の特質については試験管内実験から、(1)至適温度は37〜40℃、(2)至適pHは7.0、(3)ケト胆汁酸の還元能はC3位のケト基にのみ限定される、(4)肝における3αーHSD酵素とは作用が類似するも同一でない、(5)70℃、2分間の加熱で失活することを明らかにした。2.赤血球還元機構を加えた胆汁酸代謝マップの作製。デヒドロコ-ル酸の経静脈負荷試験から検討を加えた。従来デヒドロコ-ル酸はその全てが肝で還元代謝を受け、胆汁中ヘモノハイドロキシ体20%、ダイハイドロキシ体70%、トリハイドロキシ体10%となってい排泄されると考えられて来た。したし本研究によりデヒドロコ-ル酸はその一部が大循環血中で赤血球によりC3位のケト基が還元され、モノハイドロキシ体となり、その後肝に摂取されて代謝を受ける副経路が存在することを明らかにした。その程度は負荷量の10ー20%に及ぶため、本副経路は生理的意義を有するものと判断された。この場合、上記成績はデヒドロコ-ル酸および代謝還元体の肝摂取速度を度外視したものであり、したがって20%以上のデヒドロコ-ル酸が本副経路を経由することが考えられ、現在詳細な検討を行っている。3.赤血球還元機構由来の血中胆汁酸の検討。これ迄施行した血中胆汁酸分析で、末梢血中に3ケト胆汁酸を認めなかった。本所見から腸管内で3ケト胆汁酸が生成され、それが循環血中に流入しても、赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素により速やかに、3αハイドロキシ体に還元されることが推察された。
著者
原渕 保明
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

初めに,鼻性T細胞リンパ腫の細胞の起源を免疫遺伝子学的に解析した結果,本腫瘍の細胞起源としてはNK細胞またはNK様T細胞である可能性が示唆された.また,検索した全症例にクローナルなEBウイル遺伝子が認めたことから,EBウイルスは本疾患の発症に深く関与していることが示唆された(Cancer77:2137-2149,1996).次に鼻性T細胞リンパ腫含む頭頚部悪性リンパ腫について腫瘍組織における細胞接着分子の発現と患者血清中の可溶性細胞接着分子の測定した.その結果,鼻性T細胞リンパ腫の血管内浸潤部位(angiocentric region)ではICAM-1の極めて強い発現が認められた.鼻性T細胞リンパ腫では他の頭頸部悪性リンパ腫に比較して血清中の可溶性ICAM-1が有意に高値を示していた(Ann Otol Rhinol Laryngol 105:634-642,1996).また,ワルダイエル扁桃輪原発悪性リンパ腫について臨床的解析を行った結果,T細胞リンパ腫はB細胞リンパ腫に比較して予後が非常に不良であることが統計学的に証明された(Acta Oncologica 36:413-420,1997).頭頚部原発の上皮系悪性腫瘍については中国医科大学と共同研究を行ったところ,頭頸部悪性腫瘍におけるEBウイルスの関連性には組織型や原発部位だけでなく,人種や地域性によって異なる可能性が示唆された.また,上咽頭癌ではEBウイルス遺伝子・発癌抗原の発現形態,癌遺伝子,癌抑制遺伝子の発現形態,およ臨床像との関連性が認められた(第10回日本口腔・咽頭科学会,1997;第15回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会.,1997;第22回日本頭頸部腫瘍学会,1998).最後に,鼻副鼻腔原発の悪性リンパ腫におけるEBウイルスの検出と細胞型,病理組織型および臨床像との関連性について検討した結果,細胞型または組織型およびEBVの有無による完全緩解率や生存率の有意な変化は認めないが,著明な浸潤破壊性病変を有した例では予後が極めて不良であることが証明された(2nd Asian Research Symposium in Rhinology.Seoul,Korea,November1,1997).
著者
橋本 眞明
出版者
旭川医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

旭川市旭山動物園内屋外非展示エリアにおけるエゾタヌキのテレメトリーでは、冬季2〜3ケ月の絶食中でも体温の最大低下は2℃を超えず、巣篭もりも1日を超えるもが無かった。3月の再給餌までに体重はほぼ半減し、血中脂肪、総タンパク質量、尿素窒素など栄養状態の指標物質に減少が認められた以外には、現状では顕著な変化が捉えられていない。2007年8月末より同園第2子ども牧場建物内にて研究の展示をしている。内容は、冬眠とエゾタヌキの研究を概説したパネルと、テレメトリー送信機を腹腔内に留置したシリアン・ハムスターを冬眠に導入し、低温飼育装置内で冬眠を維持しつつ。その様子と共に体温、心電図のリアルタイム記録をコンピューターディスプレイにより展示した。展示を見た来園者にアンケートを依頼し、これまでに127名からの回答が得られている。主な質問項目の概要は1)内容は興味深かったか、2)生体の内部機構に興味がわいたか。3)展示を持続すべきか、とし、5段階評価(5が最大の同意を表す)を依頼した。来園者数に対し回答者数が少ないのは、同建物内の展示時間が1日1時間であることや、そもそも当施設に立ち寄る来園者が少なく、さらにアンケート回答にまで至る来園者が少ないためと思われる。内訳は小学生21、中学生6、高校生9、大学・専門学校生2、社会人38、学齢前5名(親の代筆)、年齢不詳46であった。年代別では10才未満13、10代35、20代20、30代16、40代5、50代4、60代0、70才以上1、年代不詳33であった。回答数が不十分な年代もあるため、全平均で見ると、それぞれの評点は質問1)4.3、2)4.0、3)4.5。概ね興味深い展示と受け取られ、体内の生理機構に対する興味も触発され、展示を発展的に継続してほしいとの結果であった。展示の表現法には工夫が必要との意見も多く、今後の課題も明らかになった。
著者
池上 将永
出版者
旭川医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、欲求不満状況における対処行動の個人差と前頭前野活動の関連を検討することであった。その結果、報酬の不均衡によって生じる欲求不満状況では、非欲求不満状況と比べて、左右前頭前野の活動が減少する傾向が見られた。また右前頭前野背外側部の活動の個人差には、神経症傾向のような性格特性が関連する可能性が示唆された。欲求不満状況では注意集中の困難が感じられ、この個人差も前頭前野活動の程度に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
河野 透 鈴木 達也
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

クローン病腸管では炎症、潰瘍により粘膜や神経組織に強い傷害が繰り返される。その結果、神経組織で産生される神経ペプチドは顕著に減少し、血流は正常値の半分程度となる。これらの結果から神経再生を保持し、血流に配慮した新たなクローン病腸管手術を考案し、吻合部狭窄が防止できる可能性を明らかにし、大建中湯によるクローン病腸管血流改善、クローン病の病因論的関与が示唆されるTNFα、インターフェロンγ産生を特異的に抑制することを明らかにした。
著者
高後 裕 蘆田 知史 藤谷 幹浩 大竹 孝明 前本 篤男 上野 伸展
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

ヒトおよびマウス腸管を用いた腸内細菌叢の解析から、腸管内とバイオフィルム内の細菌ポピュレーションが異なること、健常人と炎症性腸疾患患者におけるバイオフィルム内の細菌ポピュレーションが異なることが示唆された。宿主由来および腸内細菌由来活性物質の作用解析から、プロバイオティクス由来の腸管保護活性物質が、腸炎による腸管障害を改善することが明らかになった。また、この作用は上皮細胞膜トランスポーターによる細胞内への取り込みや上皮細胞接着分子との結合により仲介されることが明らかになった。以上の研究結果から、プロバイオティクス由来の活性物質を用いた新規腸炎治療開発の基盤的成果が得られた。
著者
沖 潤一 大見 広規 伊藤 淳一 宮本 晶恵 丸山 静男 奥野 晃正 鹿野 誠一
出版者
旭川医科大学
雑誌
旭川医科大学研究フォーラム (ISSN:13460102)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.43-45, 2001

出版社版5歳6ヵ月女児.全身が冷たく意識障害があるとして母親に連れられて受診し,入院となった.入院時には全身的に新旧入り混じった多数の外傷を認めた.低体温の他,血管内凝固症候群を呈していることが検査にて明らかとなった.体温は直腸温で31.7℃と異常な低体温を示した.母親の言動,父親の態度及び不潔な皮膚や爪,低身長,低栄養状態などからネグレクト及び被虐待児症候群と診断した.知的発達の遅延,両親の生い立ち,夫婦関係に問題がることが判明した.児童相談所,保健所に連絡をとり,患児を保護しようと試みたが両親は虐待の事実を認めず住居を変更したため強制的な保護には至らなかった.保育所,小学校,警察防犯課,家庭裁判所,地方法務局とも相談を行った.情緒不安定を理由に児童相談所に収容し,患児が帰宅したくない意思を明らかにし,虚弱児施設に入所し10年以上が経過した