- 著者
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川嶋 周一
- 出版者
- 明治大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
本研究は、欧州統合史研究と国際関係史研究を接合し、20 世紀前半における欧州統合認識の形成と変容を、世界認識との関わりから再検討するものである。具体的には、ベルギーの書誌学者・平和活動家のポール・オトレ、機能主義者、連邦主義者の国際秩序観ならびに欧州統合観を取り上げ、その思想の展開に影響を与えた国際状況の相互関係に焦点を当てることで、欧州統合を20 世紀史の中に位置付けることを最終的な目標とする。2017年度においては、ベルギー、モンス市の文書館ムンダネウムに保管されているポール・オトレの個人文書を調査した。そもそもわが国において、オトレを対象とする研究は書誌学および建築学以外において存在せず、本研究で課題とする彼の国際政治認識に関する史料状況を明らかにすることから始めなければならなかった。個人文書調査において、2000頁に渡る所蔵史料の複写を行った。またこの作業と並行して、20世紀前半、とくに戦間期における連邦主義ならびに国際主義に関する先行研究文献の精読を進め、連邦主義と国際主義がヨーロッパ統合や国際秩序への構想に対して、いかなる思想的貢献や影響を与えているかについて検討を重ねた。その部分的成果として、2018年3月初頭に世界政治研究会(於東京大学弥生キャンパス)で研究報告、報告タイトル「ローマ条約の成立とは何だったのか:三次元統合と20世紀史の中の欧州統合の位置付けをめぐって」を行った。この研究報告の準備の中で、欧州統合を20世紀史の中に位置付けるためには最終的に1957年に成立するローマ条約を終点として検討することの必要性を強く痛感した。当初は、20世紀初頭から戦間期を経て1940年代までを研究対象年代として想定していたが、今後は、1950年代後半まで拡張したうえで、ローマ条約に結実する欧州統合を支えた思想についても解明を進めることとする。