著者
中井 泉 阿部 善也 扇谷 依李 和泉 亜理紗
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々は、これまでに2台のポータブル粉末X腺回折計を開発し、世界各地で考古化学的分析を行いその有用性を実証してきた。そこで、長年の現場分析の経験と世界の開発状況に基づき、高性能の新しいタイプのポータブル粉末回折計の開発を試みた。特徴は、「ポリキャピラリーハーフレンズ」を通して平行X線を試料に照射することで、絵画のような表面に凹凸のある試料でも、非破壊非接触で正しく測定できる点である。検出器は、SDD(分解能125 eV)を導入することで、同一照射点からX線回折データと蛍光X線スペクトルの両方を高いエネルギー分解能で測定できる装置を試作し、エジプトの壁画の分析に応用して成果を得ることができた。
著者
東本 崇仁
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,自らの知識の構造を理解するためには自己の知識構造の可視化が重要であることを背景に,学習者に自己の知識構造の可視化をするための手法であるコンセプトマップを構築させ,個別診断・誤りの可視化シミュレーション学習支援システムを実際に開発した.本来コンセプトマップは知識の可視化において有効であるが,個別診断やモチベーションの低さから修正を行うことは難しく,その点を解決したことが主に本研究の意義である.本システムは,実際に中学の授業の中で利用され,知識の構造化が促進されることが確認された.
著者
小林 酉子
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1570年代からロンドンでは商業劇場が次々と建設され、ルネサンス演劇最盛期を迎えた。その当時、商業劇団は市井の劇場で公演するだけではなく、宮廷や貴族の館、あるいは市の祝祭で役を演じてもいた。本研究は、商業劇団が深く関わったpageantry(野外式典)を研究対象とする。これは royal pageantry(入市式や巡幸)とcivic pageantry(市長就任式等)に大きく分けられる。それぞれの記録を基にpageantry衣装演出の具体像を追って、その意匠が商業劇場舞台に与えた影響を明らかにし、エリザベス朝の商業劇場でどのような衣装演出が用いられたかを検証した。
著者
内田 豊 牧島 一夫 牧田 貢 えの目 信三 小杉 健郎 平山 淳 常田 佐久
出版者
東京理科大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

本総合研究(A)は、現在この分野で世界の先端を行くX線天文衛星「ようこう」の結果を最大限に活かすため、「ようこう」チームを中心として、関連の地上からの光学観測、電波観測等に携わっている研究者達を糾合して、「ようこう」からのX線と地上からの光、電波の情報との比較による研究を国内で深め、またそれにより国際共同研究をさらに進めることを目的とした。まず本研究の目的に沿って、研究者の宇宙研「ようこう」研究センターでのデータ解析活動をサポートし、上記の異なった波長域の研究者の間の研究交流を支援した。また春秋の日本天文学会年会のおりには、総研メンバーおよび関係研究者の集会を持ち、研究情報の交換の機会とした。また平成7年2月7-9日には国立天文台において「太陽および恒星の超高温、高エネルギー現象」研究会(参加者約90名、講演数50)を催し、まとめの研究発表を行った。そして、3年間の最後の年に当たって、3年間の活動のサマリ-にあたる国際会議を国際天文学連合の主催するIAUコロキュームとして行うことを計画、これが幸いに認められ、平成7年5月に幕張において開催された。これにおける日本側の発表はおおむね本総研(A)に関連しているので、これの原稿をもって成果報告に替えさせて頂くこととした。なお、この国際研究会は国際研究集会「太陽大気中の磁気動力学現象--恒星電磁活動のプロトタイプ」の準備のための総合研究(B)にもサポートされている。
著者
阿部 善也
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

最終年度である平成23年度には,まず本研究によって初めてその存在が示された新王国時代ラメサイド期(前13~11世紀)特有のコバルト着色剤に着目し,その起源を解明するための研究を行った。これまでの考古学的研究によれば,ラメサイド期はエジプト国内のコバルト着色剤の利用規模が縮小され,特にガラス着色への利用はほとんど行われなくなったものと考えられてきた。しかし化学的な分析が行われていないだけで,ラメサイド期のガラス工房の一つである"グラーブ"からは有意な数のコバルト着色ガラスが出土していた。そこでグラーブの出土資料に類例が見られるガラス製ビーズ資料について,国内美術館の所蔵資料を対象とした分析調査を行い,本研究で発見したラメサイド期のコバルト着色剤と高い組成的類似性を持つことを明らかとした。すなわち本研究で発見された新しいラメサイド期のコバルト着色剤は,当時グラーブの工房で特徴的に利用されていた可能性が高いと考えられる。これは不明な部分の多いラメサイド期エジプトにおけるガラス生産体制の全貌を解明する糸口となる重要な成果である。コバルト着色剤の研究以外にも,本研究で開発した可搬型分析装置を国内外の様々な文化財資料の非破壊分析調査へと適用した。特筆すべき成果として,初年度より研究を行ってきたMOA美術館(熱海)所蔵の国宝「紅白梅図屏風」について,中央に描かれた川の黒色部分から硫化銀を,銀白色部分から銀箔を検出し,銀箔を敷き詰めてから硫化によって流水紋を描いたという当時の製法を解明することに成功した。この屏風のほかにも,東大寺(奈良)の国宝「執金剛神立像」を対象とした分析調査,エジプト・王家の谷(ルクソール)内のアメンホテプIII世王墓の壁画の非破壊分析による顔料同定など,開発した装置を考古学的にきわめて価値の高い資料へと適用し,考古学的に意義のある成果が数多く得られた。
著者
有安 真也
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

血中循環癌細胞 (CTC) の回収は癌の超早期診断や癌の個別医療化につながる。しかし、現状では CTC の検出に留まり、無傷での回収は実現されていない。そこで本計画では、癌細胞の大きさを利用したサイズ選択マイクロ流路と光切断反応を利用した光応答性抗体修飾シリコン基板を作製した。本計画で作成した光応答性抗体修飾シリコン基板は、基板上の抗体により、細胞混合液からモデル細胞を選択的に捕捉可能であり、その後、光照射によって、細胞を生きたまま回収できることを明らかとした。
著者
久松 洋介
出版者
東京理科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

TRAILは、細胞膜上に発現するデスレセプター(DR)に結合し、がん細胞選択的にアポトーシスを誘導する。本研究では、Ir錯体にDR結合性ペプチドを導入した化合物を設計・合成し、がん細胞に対する細胞死誘導活性評価とイメージングを行った。その結果、Jurkat細胞を用いた染色実験で、DR5結合性ペプチドを導入したIr錯体由来の緑色発光が、DR5を発現する細胞膜上で観察された。さらに、フローサイトメーターを用いて、Jurkat細胞、Molt-4細胞、K562細胞に対するIr錯体の結合量を評価した結果、DR5発現量と相関性が示唆された。現在、細胞死誘導活性の向上を指向し、化合物の最適化を検討している。
著者
松野 健治
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

Notch情報伝達系は、細胞間の直接的接触を介した情報伝達に機能しており、細胞運命決定、形態形成、恒常性の維持に重要な機能をはたしている。ショウジョウバエdeltex遺伝子は、Notch情報伝達系を正に制御しており、その遺伝子産物は、Notchの細胞内ドメインに結合する。我々は、これまでに、Notch情報伝達系を構成する新規な遺伝子の同定を目的として、deltex突然変異体と遺伝的相互作用を示す新規突然変異体を、遺伝的スクリーンによって検索した。その結果、Notch情報伝達系を構成する新規遺伝子候補の突然変異体として、narutoを同定した。narutoの原因遺伝子をクローン化した結果、narutoは、DEAH-box RNAヘリカーゼをコードしていることを明らかにしている(未発表)。本研究では、Narutoの発生過程における機能を明らかにするために、まず、narutoをホモにもつ突然変異体胚の表現型を解析した。naruto突然変異ホモの胚では、中枢神経系の発生異常が観察された(未発表)。また、UAS/GAL4システムを用いた、Narutoのin vivo強制発現系の作出に成功している。いろいろな組織で、Narutoを過剰発現させた結果、複眼や翅脈細胞に特異的な異常が誘発されることを明らかにできた(未発表)。DEAH-box RNAヘリカーゼによる特異的な細胞分化プロセスの制御は、本研究で始めて見出された。Narutoの生化学的機能を明らかにするために、大腸菌を用いて、組換え型Narutoタンパク質断片を合成し、これを精製した。Narutoタンパク質断片を抗原として、抗Naruto血清を調製した。抗Naruto抗体を用いた免疫染色法を用いて、ショウジョウバエ培養細胞やin vivoのNarutoタンパク質を検出したところ、Narutoが細胞質タンパク質であることを明らかにできた。
著者
松本 和子
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

キプリングを中心に彼とその周辺作家の小説に登場する男性性が弱体化した人物の検証を通じて、当時、時代を支配していた帝国主義の理想とは乖離した人物が描かれる事例が散見することが確認された。そして、多くの場合、そうした登場人物は作者から断罪されるどころか理解をもって描かれており、大英帝国の衰退と、帝国主義の隆盛の狭間を生きることを余儀なくされた作家の内面を探る切り口になり得る可能性が見出せた。
著者
中井 泉
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

文化財のオンサイト分析用ポータブル蛍光X線分析装置を開発し、国内外の遺跡・社寺・美術館等において、出土ガラスや収蔵ガラスのその場分析を行い、日本の古代ガラスの組成的変遷を解明した。また、西アジアから東アジアまでのユーラシア大陸各地のガラスの組成と比較し、古代世界におけるガラスの西から東への流通について考察した。顕著な成果は、日本のガラス工芸の最高傑作である東大寺法華堂不空羂索観音菩薩の宝冠(国宝)のガラスの全容を解明し、日本の古代ガラスの変遷から宝冠を理解できたことと、今まで、未解明であったキルギス、ラオス、カンボジアのガラスを現地で分析し、日本のガラスとの関連を明らかにできたことである。
著者
中曽根 祐司
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

研究代表者は、Zr基バルクアモルファス合金の疲労特性及び強変形部における結晶化等、このアモルファス合金に特有な破壊現象を解明してきた。本研究では、その過程で発見した同合金の破壊時の発光現象機構の解明を目的として、同合金のせん断試験および疲労試験を行い、デジタル画像相関(DIC)法による破断時のひずみ分布の測定、発光現象起点の同定を行った。その結果、せん断破壊の起点のせん断ひずみは3.5%に達し、最大ひずみが生じた箇所から発光現象が開始、せん断破壊の進行とともに破面のシェアリップ部の摩擦により順次発光が生じたものと推察された
著者
小島 尚人
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、同時多発型・斜面崩壊危険箇所評価支援を目的として、リモートセンシングを導入した誘因広域逆推定アルゴリズムを構築し、その活用方法を示したものである。研究成果は以下の2つの項目に大別される。①平成24年度:斜面崩壊形態別(表層崩壊、深層崩壊、地すべり)・誘因逆推定アルゴリズムの構築、②平成25年度:源頭部斜面崩壊危険箇所評価支援を目的とした誘因逆推定アルゴリズムの構築。構築したアルゴリズムを通して得られる「誘因影響図(誘因逆推定図間の差画像:感度分析)」を用いれば、複数の崩壊形態間の誘因影響を同時に分析でき、同時多発型・潜在危険斜面の広域推定支援策の一つとして寄与できることを示した。
著者
東 達也
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

先天性副腎過形成症 (CAH) をはじめとする先天性代謝異常症の精密検査法の確立を目標に,マーカー分子の特徴的部分構造を多点で認識し,超高感度・高選択LC/MS/MS分析を実現する誘導体化=多点分子認識ESIラベル化法を開発した.さらに本法の臨床試料 (濾紙血,尿,唾液など) 分析への応用性を評価したところ,CAHに加えて,長鎖3-ヒドロキシアシル-CoA 脱水素酵素欠損症や潜在的ビタミンD欠乏症診断において良好な結果が得られた.
著者
小林 進 鈴木 孝洋
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

キラルイミドを不斉補助基として用いるジアステレオ選択的反応は、複雑な骨格を有する標的分子の不斉合成において重要な手段として国内外で活用されている。本研究では本申請者がこれまでに開発した二種類のアルドール型反応に関し、(1)ビニロガス向山アルドール反応の改善、(2)不斉3級アルコールを含む1,2-ジオールの立体選択的合成法については、基質一般性の検討、(3)これらの方法論を活用した生物活性天然物の不斉合成への応用を行った。
著者
伊藤 裕久 栢木 まどか 杉山 経子
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、伝統都市の祭礼空間(巡行路・祭礼拠点の構成など)が、都市空間の形成・改変に対して、どのような変容過程をたどったかを文献史資料と現状の祭礼調査によって解明するものである。主な調査研究対象として取り上げた江戸・東京の神田祭、福岡の博多祇園山笠では、とくに近代・現代都市化過程において、伝統的な祭礼空間が、断絶的な都市空間の改変を修復しながら連続的に変化することで、地域社会の歴史性の継承や地域コミュニティの持続・形成に重要な役割を果たしたことが明らかとなった。
著者
須川 修身
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

消防設備安全センターの「音声警報のあり方連絡会」が既に警報用シグナルの作成条件として下記の6条件を提示しており、これに基づいて女声による予報、男声による警報音が作成され、実際に一部の高齢者施設では火災を報知する音声として使用されている。【警報用シグナルの作成条件】(1)注意喚起を引く感じであること。(2)音のとおりが良いこと。(3)適度に緊張する感じであること。(4)あまり不安な音としてせき立てないこと。(5)耳障りな音でないこと。(6)ありふれた音でないこと。これらの条件を考慮し、これに高齢在館者に避難の呼びかけを行う「音」を組み合わせて音-音声-音を聞かせて、その認識の良否を直接面談によって5段階方式で評価した。また、呼びかけの「音」についても30種の中から予備的な評価で選別し、火災など異常状態を報知するにふさわしいものを選び、上記の音声との組み合わせを行った。多くの施設ではナースの音声は女声であるため、異常事態になったても親しみのもてる、耳に馴染んだ女声で呼びかけを行ってもらいたいという評価があると同時に、異常時であるとの重大さを認知するには普段とは異なる男声が望ましいとも評価も同様にあり、いずれも報知内容が明確で火災場所がイメージしやすい伝え方で伝達する事が肝要である。異常時を知らせる音質としては、火災のイメージと結びつきやすいサイレンなどの認知が高いが、これは今まで受けた訓練や日常的・経験的な「すり込み」に依るためである。火災を知らせる音(あるいは音声)は、すり込みになっている事が決定的要因である。このため「音(報知音)」を小中学の頃から消防訓練とともに聞かせ、強固な「すり込み」を行って高齢化した場合においてもこれが生かせるようにしておく必要があることが判った。
著者
赤倉 貴子 東本 崇仁 古田 壮宏
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は、非同期型eテスティングシステムにおいて、受験している時間全てにおいて個人認証を行うことができる方法論を開発することであった。テスト受験中、問題を読んでいる時間はディスプレイ方向(カメラ方向)を見てと考えられるため、この時間は顔認証を行い、解答を書いている時間は筆記認証をする方法論を提案した。筆記認証については、文字をパーツに分解することにより、少ない登録文字で多種多様な文字の認証ができる方法論を開発した。また、顔認証は、テスト問題が次の問題に移動した直後が最も精度が高いこと、さらに頬杖をついたりするため、顔認証は目より上で行うことが適切であることを実験的に確認できた。