著者
戸川 美郎 須鎗 弘樹 渡辺 昇 下井田 宏雄 宮沢 政清 大矢 雅則
出版者
東京理科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

今年度の研究実績について述べる.エントロピー理論はClausius,Boltzmann,Shannon等に始まり,その後,von Neumannによって,量子力学構築が試みられ,量子系のエントロピー理論が生まれ,現在も様々な分野において,その研究が続けられている.本研究計画においても,以上のような背景にもとづいて,次に示すような研究実績をあげてきた.(1)解がカオス的に境界に漸近する力学系において,境界が存在する相空間上の位相的エントロピーのパラメーター依存性を調べた.(2)画像処理に用いられる回路の安定性の条件を見つけることができた.(3)光通信における誤り確率の定式化並びに相互エントロピーによる変調効率の比較等を行うことができた.(4)ガウス通信過程への相互エントロピーの応用等を論じた.(5)量子系のエントロピーの最大化,ファジーエントロピーの諸性質などについても論じた.(6)遺伝子解析にエントロピー理論を応用するため,2個の生物塩基配列,あるいはアミノ酸列をコンピュータによって,整列化する際,DP matcingを用いたアルゴリズムを提案し,従来の整列化法を比較検討した.(7)また,2個の塩基配列だけでなく,n個の塩基配列を同時に整列化する方法も提案し,その速さ等を従来の方法と比較検討した.(8)RGSMP(Reallocatable Generalized Semi-Markov Process)と呼ばれる一般の待ち行列ネットワークに応用することが出来る確率過程を提案し,その基本的な特性の解析を調べた.(9)RGSMPの定常分布の構造をあらかじめ仮定することにより,RGSMPの状態推移の構造が定常分布にどのように反映しているかを議論した.(10)ポアソン到着を持つ無限窓口待ち行列の系内仕事量のモーメントを計算しバースト型到着モデルへの応用を論じた.(11)率保存則についてサーベイを行うとともに,パルム測度に関する基本的な公式や各種の確率過程の定常分布を特徴づける式などがすべて率保存則より導かれることを示した.
著者
直井 英雄
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

今後の高齢社会の進展にともなって、住居内で車椅子や階段昇降機を使用する高齢者はますます増加するものと思われるが、このような移動用補助機器の使用上の必要寸法に関する既往の知見は、わが国の一般的な住居にはなじまないものであった。本研究は、わが国の高齢者と住居の伝統的な性格から考えて、住居内移動で用いられ補助機器は平面移動については介助型車椅子、階移動については椅子式階段昇降機の可能性が最も高いと判断し、これらに頼って移動する場合の必要寸法を定量的に把握し、設計上の基礎資料として整備しておくことを目的としたものである。実験的な研究の結果、次の結論を得た。まず、介助型車椅子を対象とした実験の結果、壁などへの多少の接触を許容するという条件を付けた上で、有効通路幅80cm以上の住宅での使用が可能であることが明らかとなった。ただし、90度回転する場合は回転後90cm以上の通路幅が必要となること、また、このようなぎりぎりの条件の通路幅の場合、許容できる段差は2cm以下が望ましいこと、などの付帯条件も併せて把握した。一方、椅子式階段昇降機を対象とした実験の結果、一般には、人が乗った状態で使う場合120cm以上,椅子をたたんで使う場合90cm以上の階段幅寸法が必要であるが、住居においていくぶんか我慢して使う場合は椅子をたたんだ状態で76cm以上の幅寸法でよいことが明らかとなった。ただし、階段上下に設ける昇降機と車椅子の間の移乗のためのスペースは、場合によっても違うが100cm〜130cm角程度以上必要であり、住居でよく見られる80cm内外の廊下幅ではかなり無理であることも明らかとなった。
著者
佐竹 彰治
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

光機能性分子であるポルフィリン誘導体を基盤とした複数の超分子システムの開発に成功した。トリスポルフィリン誘導体を自己組織化させると超分子ポルフィリンナノリングが定量的に生成する。この内部にエネルギー受容体をゲスト分子として導入することに成功した。また、6個の安息香酸を有するポルフィリンナノリングを垂直に連結した超分子ポルフィリン組織体の構築にも成功した。これらは人工光合成系への応用が期待される。
著者
伊藤 裕久
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、中世段階に宗教都市として大きく発展した伊勢国宇治山田を主な対象として現存する都市遺構と文献史料によって復原的分析を行い、中近世移行期の都市空間の成立・変容過程について考察したものである。分析の観点として注目したのは、都市共同体を組織し都市建設の主体となった御師集団の居住形態であり、御師屋敷の空間構成と都市空間との関係性について検討を加えている。また同様に御師町を構成した山梨県の上吉田・河口など、他の宗教都市についても比較検討を行っている。御師屋敷の空間構成については、前屋敷をもつ引込路型の御師屋敷群によって構成される中世的な集住形態から、接道型の御師屋敷が街道の両側に並列的に配置され両側町を構成する近世的な集住形態へと移行する過程が解明された。また、前屋敷を構成する町家型を主とした零細御師の集住形態が具体的に復原することで、零細御師の主家-家来関係などの点から、近世において町共同体を越えた広域的な御師集団のネットワークが形成されたいることが明らかとなった。以上から、宇治山田においては、中世郷村から自然形成的に生成された独立性の高い集落群(郷)が連結されることで、中世末には都市の居住領域を濠・木戸門などの構によって明確に区画した中世都市空間としての発達をみせること。そうした中世的達成を前提として、近世初までに中世末の有力御師家を核とした同心円的な空間領域が再統合されることで、表と裏で階層的な住み分けが計られた街道沿いの両側町を基本単位とする並列的な都市空間構造が成立することが判明した。中近世移行期の都市空間構造のもっとも大きな変化はこの点に求められると言える。
著者
小林 酉子
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

チューダー朝初期に王侯貴族のお抱え劇団が誕生してからエリザベス時代に至って商業劇団が最盛期を迎えるまで、この間の演劇がどのような演出の下で、どのような衣装で演じられたかを明らかにした。宮廷饗宴を演じていた俳優たちが宮廷外でも演じるようになると,饗宴衣装が民間の商業劇場へ流れ,ロンドンの市井の劇場でも使用された可能性が高い。本研究では,チューダー朝期を通じての演劇の演出と衣装の変化を追って,英国ルネサンス盛期の商業劇場の舞台がどのような有様であったかを検証した。
著者
寺部 慎太郎
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

我が国の社会基盤整備計画への市民参画が叫ばれて久しく,社会的合意形成を図るために様々な試みが適用されている.しかし,実際の事業段階で「計画を知らなかった」という声が上がることが未だに多い.効果的な情報伝達により,市民の計画に対する興味が励起され,効率的なPI活動がその後の展開できると考えられることから,社会基盤整備計画PIにおける情報伝達の効果測定は重要な課題である.そこで,本研究の目標を,1人でも多くの市民に計画の存在・内容を知らせ,市民の社会基盤整備事業に対する意識向上を促し,市民参画実現を目指す事とする.そして,継続性のある「意識モニタリングシステム」を構築し,その認知度・受容度指標の客観性と,実際の政策の実施過程における有効性を検討するために,調査内容の濃密な比較的小規模の意識調査を設計し,第一次調査を行った.昨年度の分析では,特に市民の特性を調査し,属性に分け,市民が住む対象地域のメディア別特性と影響力を調査し,市民に対し属性別にどのような情報を提供すべきかを明らかにすることに重点を置いた.今年度はその分析をさらに深度化させ,構造方程式モデルを用いてPI要求意思決定モデルを構築した.その結果、PIにおける情報伝達活動として,市報または回覧板による網羅的で定期的な情報発信,新聞地域面でのPR,大都市通勤者向けの鉄道広告を利用したプロジェクトの存在告知などを複合的に活用する事と,事業コスト意識やPIでの意見に対する位置づけの明確化といった点を強調する必要性を示唆することができた.
著者
松田 一朗
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

旧世代の符号化方式で記録された映像コンテンツを、画質を保ったまま効率的に再符号化する技術の開発を行った。主に静止画像および動画像符号化の国際標準であるJPEGおよびMPEG-1方式を対象として再符号化アルゴリズムの実装と検証を行い、既存の映像データの符号量を10~30%削減することに成功した。この結果は、過去に記録された膨大な量の映像資産を、最新の符号化方式に匹敵する効率で蓄積・保存する手法を確立したことを意味する。
著者
中井 泉 真道 洋子 大村 幸弘 吉村 作治 川床 睦夫
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ガラスの古代の東西交易を明らかにするためにポータブルX線分析装置を開発し、美術館や中国、インド、エジプト、シリア、トルコ、クロアチアの現地で出土遺物を分析した。日本の古墳出土ガラスは、インド、タイ、中国などのアジアの国々から伝来したものであることを実証した。また、平等院出土ガラスの分析では、奈良時代の鉛ガラスの製法が平安時代も継続し、新たにカリ鉛ガラスの製法が中国から伝来したことを示した。地中海沿岸諸国における東西交流についても実証的データを得た。
著者
島田 浩章
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

イネの種子形成機構の全体像を分子レベルで把握するため、種子形成期に発現する遺伝子を網羅的に解析した。アンチセンスSPK形質転換体は胚乳形成に異常を起こし、水モミを生じるので、この組換え体を利用して登熟初期に働く遺伝子を調べた。マイクロアレイ実験により、125種の遺伝子の発現に変動が認められ、そのうち顕著な変動を示す遺伝子についてRT-PCRによる発現量の確認と、これらの遺伝子に対するアンチセンス形質転換体の作成を試みた。一方、穂の形態形成異常を示す変異体を利用したマイクロアレイ解析およびディファイレンシャル・ディスプレイー解析を行い、多数の遺伝子発現の変動を見いだした。SUMO1遺伝子はこの変異体で発現量の変動が認められたため、このアンチセンス形質転換体を作成し、表現型を調べた。その結果、SUMOの発現抑制をした形質転換体では穎の消失などの穂の形態異常が認められた。このことから正常な穂の形態形成にSUMOが重要な役割を果たしていることが強く示唆された。この他に、CEN-P類似タンパク質、F-boxタンパク質、GASRタンパク質での発現量の変動が認められた。GASR遺伝子の発現について詳細に調べたところ、この遺伝子は幼穂形成の成長点付近での強い発現が観察された。
著者
辻 孝
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

平成20年度は、細胞操作による歯の形態制御に向けて、上皮・間葉細胞層の接触面積によって再生歯の歯冠の幅と咬頭の数を制御可能であることを示した。平成21年度では、歯の大きさの決定に関わる分子の検索を進め、sonic hedgehogの発現領域と歯冠の幅が相関していることを見出し、歯の形態形成制御において当該分子が制御に関わる可能性を示した(投稿準備中)。さらに平成21年度は、歯の形態形成に関わる遺伝子の機能を利用して再生歯の形態制御の技術開発を目的として、形態制御に密接にかかわる遺伝子の探索を行った。胎齢11-18日の歯胚を用いてAgilent Whole Mouse Genomeアレイによる網羅的遺伝子発現プロファイル解析を行ない、対象となる41,252遺伝子から、歯の誘導と初期発生時期であるPlacode期またはCap期で高発現であり、かつ歯胚発生への関与が知られていない185遺伝子を選出した。再生歯の形態制御に関与する候補遺伝子を解析するため、これらの遺伝子群についてCap期の臼歯歯胚における遺伝子発現をin situ hybridization法で解析した。その結果、歯の形態形成を制御しているCap期のエナメルノットで発現する5遺伝子、歯胚の大きさを決定すると考えられている陥入した上皮で発現する10遺伝子、歯種ごとの形態を制御しているCap期の間葉で発現する6遺伝子、咬頭形成を制御すると考えらえているEarly bell期のエナメルノットで発現する6遺伝子を見出し、歯の形態形成に関与する可能性のある新規30遺伝子を同定した。以上の成果より、本研究課題において歯の形態を制御する細胞操作技術を開発できたと共に、新規遺伝子の機能解析を進めることにより、形態形成制御遺伝子の応用による再生歯の形態制御技術の開発が期待される。
著者
山本 誠
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

サンドエロージョンは,流体中に含まれる固体微粒子が壁面に繰り返し衝突し,壁面が機械的損傷を受ける現象であり,流体挙動,流体中の固体微粒子挙動,壁面形状変化が相互に干渉して起こる典型的なマルチ・フィジックス現象である.また,サンドエロージョンは,各種流体機械にとって致命的な現象として知られている.航空用ガスタービンでは,型式承認時に安全性確認のための砂吸い込み試験が課されており,一定量の砂を吸い込んでもエンジンが健全に稼動することを実証しなければならない.本研究は,航空用ガスタービンの遷音速ファン動翼におけるサンドエロージョン現象を数値的に再現することによって,その発生原因・物理的メカニズムを明らかにすることを目的としたものである.平成20年度は,ファン動翼とともに回転運動する衝撃波を微粒子が通過する際の挙動のモデル化および検証計算を実施した.平成21年度には,3次元動静翼干渉の再現のためにコードを作成し,3次元ファン動翼(NASA Rotor37)に対する検証計算を実施し,コードの健全性を確認した.平成22年度は,さまざまなファン運転条件におけるサンドエロージョン現象を数値予測し,サンドエロージョンの発生状況とサンドエロージョンによる翼性能の低下を明らかにした.
著者
高木 幹雄 本多 嘉明 柴崎 亮介 内嶋 善兵衛 谷 宏 梶原 康司
出版者
東京理科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

1)多数のパソコンをネットワークを介して並列に結合することで,多量のGACデータを効率的に自動処理するシステムを開発し,GACデータの処理を開始した。一年分のデータを約1ヵ月で処理することが可能となった。2)東南アジアを対象にして,ランドサット画像を自動モザイクし,さらにランドサット画像にNOAA画像を組み合わせることで,土地被覆分類をより効率的に,かつ正確に行う手法を開発した。時系列ランドサット画像から土地被覆変化を抽出する作業を行っている。3)土地被覆分類結果や,植生分類結果の現地検証用データとして撮影された地上写真を,ネットワークを介して分散データベースとして構築する為のソフトウェアを開発し,データベース化を行った。これにより,それぞれの撮影者が別個に作成したデータベースを統合的に共有することが出来る様になり,地上写真データを容易に蓄積することが可能となった。4)衛星データから時系列に得られた植生指標を,さらに気温や降水量のデータと組み合わせることにより,植生の季節変化と環境条件(気温,降水量)の空間的,時間的相関関係を明らかにすることが出来た。ユーラシア大陸では,特に寒冷地となる東シベリア地域では,森林が緑となるのが最も遅いものの,落葉するのも最も遅いこと等興味深い発見があった。5)土地の農業生産性推定を基礎とする土地利用変化の推定モデルに関して,そのフレームワークが確立され,タイ国を対象として検証を行った。また,生産性の推定の基礎としてアジア地域で最も重要な穀物である水稲に関する生産性推定モデルを開発した。6)衛星画像から推定される植生指標の信頼性を改善する為に,大気補正手法,地形補正手法などを開発し,実装を行い,NOAAデータから定期的に植生データを作成し,コンポジット画像を作成している。
著者
北村 光司
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

乳幼児の事故を予防するための1つの方法として、保護者の乳幼児事故に関する認知の教育支援がある。これはリスクコミュニケーションの観点から重要な課題である。しかし、従来の乳幼児事故に関する教育支援や情報提供の方法は、書籍やパンフレットによる注意喚起にとどまっており、効果的な方法ではなかった。それは、(1)事故に関する情報を提供するのみという情報の一方通行で終わってしまっており、その情報による効果の検証が行われていないためと、(2)事故に対する認識や考え方は人それぞれによって異なるにもかかわらず、すべての人に一様に同じ情報を発信していたためである。この問題点を解決するためには、情報を提供しながら、ユーザの認知構造の調査や情報の効果の検証を行い、それらの情報をもとに次に提供する情報を適宜選択するシステム、すなわち、フィードバック系をもった情報制御システムが必要となる。そこで、(1)サービスを提供しながらユーザの認知構造や情報の効果を検証するためのサービス統合型センシング機能と、(2)得られたユーザからの情報に基づいて個人適合する機能を特徴とする情報循環システムを提案した。(1)サービス統合型センシング機能に関しては、2005年より(株)ベネッセコーポレーションと共同でWeb上で事故シーンアニメーション動画を提供するサービスを行っており、そのサービス上で保護者が入力した子どもの年齢や発達段階や、動画を見た後に行うアンケートの回答をログデータとして収集し、分析した。(2)個入適合する機能に関しては、保護者が認知していない事故の動画を適切に選択するための手法として、乳幼児の事故に関連するパラメータ(事故の種類、子どもの発達段階、事故に関連したモノ、事故時の子どもの行動など)を特徴量で表現することによって、類似する特徴を持つ動画を選択する手法提案し、保護者20人を対象に検証実験を行い、ランダムに提供するよりも、効果的に認知を向上させることが可能であることを確認した。
著者
松野 健治
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

外部形態が左右相称な動物においても、その内臓器官は、左右非対称性を示すことが多い。本研究では、ショウジョウバエの消化管にみられる明瞭な左右非対称性に注目した。我々は、内臓器官の左右非対称な三次元構造の形成を制御する遺伝的経路を理解することを目的とし、遺伝学的解析手段が駆使できるショウジョウバエを用いた遺伝的スクリーンによって、消化管の左右性に関与する遺伝子を網羅的に同定することにした。消化管の左右性に異常を示す突然変異体のスクリーンを行った。3000系統のトランスポゾン挿入突然変異体を対象としたスクリーンによって、消化管の左右性に異常を示すいくつかの突然変異体の同定に成功した。同定した突然変異体のなかでも、消化管組織の分化には影響がみられず、高頻度で逆位が観察されるものに注目した。このうち、特に有望なものが、souther(中・後腸が同調して80%の頻度で逆位)、hidarikiki(中・後腸が同調して50%の頻度で逆位)、single-minded(前・中・後腸が非同調的に30%の頻度で逆位)、puckered(前胃のみ50%の頻度で逆位)、foregut inversus-1、-2、-3(それぞれ、前腸が30%の頻度で逆位)である。これらのなかでも、souther突然変異のホモ接合体胚では、胚の中・後腸の形態が野生型の鏡像になった(80%の頻度で逆位)。このとき、消化管組織のマーカー遺伝子の発現を調べると、組織分化は正常に起こっていた。southerは、ホモ接合体で生存可能であり、ホモ接合体成虫の外部形態や生存能力には顕著な異常がみられないが、消化管や精巣の左右性が逆転していた(100%の頻度)。southerは、胚発生期の消化管と、変態過程で再構築される成虫の内臓器官の左右性に不可欠であることから、左右非対称性の制御に中心的な機能をはたす遺伝子であると予測している。
著者
永田 肇
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、セラミックレゾネータ応用に求められる性能を十分に満足する材料を、環境にやさしい非鉛系ビスマス層状構造強誘電体(BLSF)セラミックスを用いて開発しようとするものである。BLSFセラミックスの結晶方位を制御することより、セラミックレゾネータの温度安定性を向上させることが出来た。その結果、レゾネータ応用に求められる基本的な性能を満足する非鉛BLSFセラミックスを得た。
著者
武田 健
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

ナノマテリアルは電子材料や化粧品、塗料等様々な製品に汎用されており、今や現代の生活に欠かせないものとなっている。本研究では化粧品に用いられているナノマテリアルの皮膚透過性に関して、信頼性の高い知見を加えることを目的とし、酸化チタン微粒子と単分散モデルである金ナノ粒子を用い、in vivoでマウスにおける皮膚透過性を検証した。健常皮膚だけでなく、炎症皮膚、アトピー性皮膚炎発症皮膚を作成し、その皮膚に対して酸化チタン微粒子および分散性の高い金ナノ粒子、蛍光物質(FITC)を結合させた金ナノ粒子を24時間曝露した。粒子を曝露した皮膚組織の電子顕微鏡観察結果から、酸化チタン微粒子および金ナノ粒子は角質層内部に局在することが明らかになった。また、FITCが結合した金ナノ粒子を曝露した皮膚組織に関しては蛍光顕微鏡観察し、粒子が皮膚表層や毛包内部に局在すること、炎症により表皮を欠損した皮膚部位においては粒子が真皮層内部に侵入することを捉えた。また、真皮層内への粒子透過が確認された炎症皮膚に対して金ナノ粒子を24時間曝露し、その個体の血液内金質量をICP-MSによって測定したが、検出可能範囲内での粒子透過は見られなかった。これらのことからナノ粒子が健常皮膚を透過し、全身循環へ移行する可能性は極めて低いことが示唆された。角質層が剥がれるような皮膚の状態では、ナノ粒子が皮内に透過することが認められた。以上の結果、化粧品中のナノ粒子は健常人の皮膚では健康影響はほとんどないと考えられるが、損傷した皮膚への塗布には注意が必要でることが示唆された。定量的な研究が残されているが、妊娠期に皮下投与した酸化チタンナノ粒子が産仔脳神経系に影響を及ぼす結果を得ており、社会的に極めて意義の高い研究となった。
著者
山下 俊
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

様々な光機能材料の多くは固相状態での反応を活用しているため、高分子固相中での光反応論を確立することは基礎的に重要であると共にも応用的にも重要である。本研究では高分子ナノ自由空間におけるフォトクロミズムなどの化学反応の不均一分布を定量的に解明し、動的自由空間では光反応分子の律速段階のダイナミクスとマトリックスの緩和のダイナミクスの相関で反応性が決まることが明らかになったまた、材料のナノ空間を制御することにより巨視的な構造変化や相変化を誘起することに成功した
著者
小嶋 一浩 日色 真帆
出版者
東京理科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

シーンのネットワークを、特に立体化した都市空間の特性を表す表現法とするために、他の表現法と並行して具体的な対象に適応しつつ検討した。ここでいうシーンのネットワークは、対象地を撮影したビデオ画像をコンピュータを利用して編集し、動きにつれ展開するシーンを網状につなぎ合わせたもので、一部をコンピュータ内に実現し、その概念モデルを模型として実現した。この他に比較に用いた表現法は、雑誌等の印刷メディアに掲載された写真と文章による表現、コンピュータを利用して合成や変形を加えた写真や組写真、ビデオで撮影し編集した数分の映像である。いずれも対象空間の特性をできるだけ表すように表現したものである。対象とした都市空間は、東京の東急文化村(渋谷)、フロムファーストビル(表参道)、代官山ヒルサイドテラス、銀座4丁目交差点、地下鉄乃木坂駅入口周辺、渋谷宮下公園十陸橋、池袋メトロポリタンプラザの合計7箇所であるその結果、都市空間の特性によって有効となる表現法が異なることがわかった。中でもシーンのネットワークは、立体的な視線のやり取りを含んだ複雑な空間の表現に有効であった。さらに、人の動線と相互にやり取りされる視線との絡み合った結節点を複数含んだ都市空間では、ネットワークが特徴的なねじれを示すことがわかり、そのような場合に中間のシーンを省略して簡潔にする方法を探った これらを通して、シーンのネットワークを空間デザインの方法として展開する可能性が示唆された シーンのネットワークをコンピュータ上で実現するには、オーサリングツールを用いて空間体験者がシーンの中で次の場面を選択しながら仮想空間を移動する方法に可能性があることが確認された。その完全な実現は今後の課題となっている。
著者
朽津 和幸
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

イネ培養細胞の細胞質内カルシウムイオン濃度変化や活性酸素種(ROS)生成のリアルタイム測定系を確立し、植物のストレス応答情報伝達ネットワークの分子機構の解明を進めた。植物病原菌由来のシグナル分子を認識し、プログラム細胞死を含む感染防御応答を誘導する初期過程では、ROS生成やMAPキナーゼの活性化に先立ち、細胞質のカルシウムイオン濃度が上昇することが明らかとなり、この過程の上流、下流での制御機構と、機能する複数の因子を同定した。
著者
楳田 洋太郎 田久 修
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、直交変調構成の包絡線パルス幅変調(EPWM)スイッチング動作型送信機について、実験的に初めて電力増幅器を用いた変調精度評価を行った。また、直交変調型EPWM送信機の実質的な電力効率の指標として、復調後信号点における振幅の大きさを表す実効復調電力効率を提案した。さらに、周波数可変で、電力損失、変調精度劣化を抑えつつ、量子化雑音による帯域外輻射を低減するため、180°ハイブリッド電力合成を用いた電力増幅器挿入型トランスバーサルフィルタを提案した