著者
久松 洋介
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

デスリガンドの一種であるTRAILとデスレセプターを介するシグナル伝達は、がん細胞選択的にアポトーシスを誘導するため、副作用の少ない抗がん剤開発のための標的経路として注目されている。本研究は、生体内に存在する亜鉛イオンもしくは鉄イオンを用いて、Zn^<2+>(bpy)_3もしくは、Fe^<2+>(bpy)_3錯生成に基づくC_3-対称性の自己集積型TRAIL様人工デスリガンドの創製を目的として取り組んだ。採用1年目である本年度、C_3-対称性構造を有する自己集積型TRAIL様人工デスリガンドを開発するための配位子の選定を行い、1,10-フェナントロリン配位子に対してデスレセプターとの相互作用部位であるPatchA、PatchBペプチドを導入したリガンドの合成を行った。今後、合成した人工デスリガンドの精製およびTRAIL様活性評価と課題は残っているものの、一定の進展はあったと判断する。さらに、C_3-対称性構造に固定化されたトリスシクロメタレート型イリジウム錯体に関して、種々の誘導体化を行い、特徴的な発光特性を有する新規イリジウム錯体を見出した。この知見に基づき、イリジウム錯体にPatchAペプチドを導入したリガンドを合成し、現在、TRAIL感受性細胞を用いた活性評価に取り組んでいる。ドイツでの半年間の留学では、人工トランスフェクション試薬および4点型双生イオン部位を導入した自己集積型分子の創製研究に取り組んだ。特に後者では、高極性溶媒中で外的な刺激に応答可能な超分子ポリマーの生成に関して有用な知見を得た。
著者
椎名 勇
出版者
東京理科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

エステル合成に代表される脱水縮合反応は有機合成化学において最も基本的な反応の一つであり、古くから数多くの手法が開発されている。しかし、従来知られている脱水縮合反応では、一方の試薬を他方の試薬に対して大過剰に用いる平衡移動反応による手法や、反応温度を高め系内で生じる水を系外に取り除くなどの操作が必要であり、現在でも当量のカルボン酸とアルコールから収率よくエステルを簡便に得る方法は数少ない。(1)筆者は、まず、ルイス酸触媒およびρ-トリフルオロメチル安息香酸無水物の存在下、カルボン酸シリルエステルとアルキルシリルエーテルを室温で反応させると対応するエステルがほぼ定量的に得られることを見いだした。(2)また、他の求核剤を用いて反応を行うことを試み、アルキルシリルスルフィド、フェニルシリルエーテルまたは求核性の低い置換アニリンを求核剤に用いた場合にも対応する活性チオールエステル、活性フェノールエステルまたはアニリドが収率良く得られることを明らかにした。(3)分子内環化反応に適用した結果、ω-シロキシカルボン酸シリルエステルを用いる効率的なマクロライド合成法を開発することができた。(4)これらの反応をさらに簡便かつ有用な手法とするため、遊離のカルボン酸とアルコールをケイ素誘導体に導くことなく一挙にエステルを得る触媒的反応の開発を目的として検討したところ、ビス過塩素酸ジクロロチタンとクロロトリメチルシランから系内で調整される触媒の存在下で円滑に反応が進行し、対応するエステルがほぼ定量的に得られることを明らかにした。(5)上記反応を分子内反応に適用したところ、ビストリフルオロメタンスルホン酸ジクロロチタンとクロロトリメチルシランから系内で調製される触媒を用いることにより、大環状マクロライドが高収率で得られることを見い出し、さらにこの反応を利用し、天然マクロライドであるレシファイオライド類縁体リシネライディック酸ラクトンを92%の収率で得ることができた。
著者
溝口 博
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は,実時間の動画像処理と音響信号処理とを融合させることにより,対象とする人の周りでのみ局所的に音のやりとりができる,新しい自然で非束縛型のヒューマンインタフェースを実現することにある.具体的には,「人の存在を認識」してその人に注意を向け,「聞き耳をたてる」形で音声を拾い,「耳元で語りかける」形で音を聴かせる技術の確立を目指す.今年度は,昨年度に続き「耳元で語りかける」技術に注力すると共に,「人の存在を認識」する技術にも着手した.「耳元で語りかける」技術に関しては,昨年度,直交2軸16台(8×2)スピーカー(SP)アレイを用いスポット状高音圧分布の生成に成功した.ただし,これは一カ所のみであった.この成果を踏まえて,今年度はSP128台(32×4)の大規模SPアレイを構築し,別内容音声の複数箇所同時送出に成功した.すなわち,同時に複数の人の耳元で「それぞれ別の内容を語りかける」ことを可能とした.「人の存在を認識」して注意を向ける技術に関しては,複数台のTVカメラと実時間顔追跡視覚とを組合せ,対象とする人が広い範囲で動いてもそれに追従してその人の位置座標を得ることに成功した.今年度の具体的内容は次のとおりである.1)128チャンネル大規模SPアレイの構築,2)これを用いた別内容音声の複数箇所同時送出実験,および3)複数台カメラと顔追跡視覚との組合せによる広範囲実時間顔追跡実験.1)と2)は「耳元で語りかける」技術の一環である.正方形状配置の128ch大規模SPアレイにより,別内容音声のサウンドスポットを4カ所同時に生成できた.一方,3)は「人の存在を認識」する技術の一環である.複数台カメラと実時間顔追跡視覚とを用いることで,対象人物が動いても,広い範囲でその人の顔を追跡,顔位置の情報を得ることができた.
著者
黄 嵩凱
出版者
東京理科大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究では中央トルコ地域と日本全国約3000ヵ所から採取した自然堆積物に含まれている様々な重鉱物の種類と化学組成を分析し、その情報を産地の情報と結びつけることで考古学と法科学分野試料の起源推定へ応用した。すなわち、試料の重鉱物組成情報からその試料の地質起源を推定し、古代社会の交易の解明や、土を証拠資料とする科学捜査のためのデータベースの構築を目的とした。一方、重鉱物組成による起源推定の結果の検証とその結果を支持できる別次元のデータを得るために、試料中に含まれている特定重鉱物種の化学組成分析あるいはバルク試料の微量重元素組成分析も行った。本論文で同定された重鉱物の種類は20種以上あり、分析数は約5万粒を越え、得られた重鉱物の情報は研究対象とした地域の地質学や地球化学などの分野の研究に対しても重要なデータとなっている。考古学の研究ではSEM-EDSとEPMAによる古代土器の重鉱物分析及び単一鉱物の地球化学分析を行い、各試料中の重鉱物組成及び角閃石の化学組成のデータから如何にそれらの試料の地質起源を高精度に推定ができるかを示した。そして、法科学の研究では新しく開発した最先端の分析技術である全自動放射光粉末X線回折システム(SR-XRD)を重鉱物の分析に応用し、犯罪捜査で被害者の靴や車両などについた微量の土砂から事件に関係する場所を特定するための日本全国の重鉱物データベースの開発を目指した。さらに、高エネルギー放射光蛍光X線分析(HE-SR-XRF)による試料に含まれる微量重元素の組成情報による試料の特性化法も新しく開発した。本研究により、古代土器の重鉱物による産地推定の新たな手法と法科学土砂データベース開発を可能にする新規放射光利用分析技術を確立することができた。
著者
中丸 禎子 川島 隆 加藤 敦子 田中 琢三 兼岡 理恵 中島 亜紀 秋草 俊一郎
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

言語・時代の枠組みを超えた文学の超領域的研究と、教養教育・社会人教育における研究成果の還元モデルの確立を目的に、各研究者がアンデルセン『人魚姫』に内包される諸テーマを緩やかに共有した。個々の研究者が「人魚姫」「世界文学」「教養教育」などのテーマで成果を発表した。また、ブース発表「「人魚」文学を扱う授業の実践報告―多言語文学間の共同研究と教養教育への還元モデル」、シンポジウム「異界との交流」、シンポジウム「高畑勲の《世界》と《日本》」(映画監督・高畑勲氏を招聘)において、共同・連名で成果を発表した。
著者
中村 隆
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

種々のゼータ関数に対して、普遍性、混合普遍性、自己近似性に関する研究を行った。
著者
大塚 英典 星 和人
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

スフェロイド間隔を系統的に制御したスフェロイドパターニング技術を開発した結果、軟骨大型化のために最適なスフェロイド設計指針を確定できた。さらに分化誘導のための添加因子を用いることにより細胞外マトリクスの産生能を長期間維持させることに成功した。これらの検討から最適化されたスフェロイド状態において、再生エレメントとして、スフェロイドの体積にして約10倍という大型化を達成した。次にこの技術と合わせ、スフェロイドをより実際的な移植可能な材形へと展開するためのマトリックス材料の設計と合成を行った。このような一連の実験を統合し、運動器系組織の再生技術として開発を進めた結果、関節軟骨における動物実験において移植する構造体として十分機能する再生エレメントであることを示した
著者
工藤 昭彦 斎藤 健二
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

NiをドーピングしたZnS光触媒が,正孔捕捉剤存在下,可視光照射下でCO_2還元反応に活性を示す光触媒であることを初めて見いだした。NiドーピングZnS光触媒は,可視光照射下でほぼ定常的にH_2とHCOOHを生成した。一般に,光触媒反応ではPtなど助触媒が必要であるが,この反応において助触媒は不要であり,光触媒自身が活性点を有していることが特徴である。カットオフフィルターを用いたNiドーピングZnSによるHCOOH生成反応の波長依存性より,HCOOHが生成し始める波長と吸収スペクトルの立ち上がりが一致した。このことから,NiドーピングZnSによるCO_2還元反応は,Niのドナー準位から伝導帯へのエネルギーギャップ励起によって進行していることが明らかとなった。一方,(ZnGa_2S_4)-(Znln_2S_4)複合体が,正孔捕捉剤存在下,可視光照射下でのCO_2還元反応に活性な光触媒であることを初めて見いだした。主なCO_2還元生成物として,COとHCOOHの両方が得られた。CO_2還元反応の活性は用いる正孔捕捉剤の種類に大きく依存しており,NaPH_20_2を用いた場合に最も高い活性を示した。また,基盤となるZnIn_2S_4ではほとんどCO_2還元反応が進行しないが,それにGaを10%置換したZnGa_<0.2>In_<1.8><S_4>を用いた場合は,CO_2還元反応の活性が飛躍的に向上した。Znln_2S_4にGaが置換されることで,CO_2還元反応に対するドライビングフォースが増加し,活性点が形成されたため活性が飛躍的に向上したと考えられる。
著者
田崎 美弥子 山本 幹男 小久保 秀之 小林 宏
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、喜怒といった対立する情動が混在するNon-Dialecticな東洋圏と混在しないDialecticな西欧文化圏において顔表情認知過程において差異があるかどうかを検証することである。本研究は4つの実験から構成された。実験1では、3名ずつの日本人と中国人との顔表情認知を喜び、怒り、驚き、軽蔑、嫌悪、恐れの顔表情と喜びを基点としてそれぞれの情動への変化する過程の中間表情を示す26枚顔表情刺激を使って、カードソーティングを実施した。また中国人学生には面接インタビューを行った。実験2では、同じ刺激材料を用いて、139名の日本人学生にスクリーンで刺激材料を8秒、白紙を3秒提示することを交互に26回繰り返して、その顔表情認知実験を行った。正答率の分析し、同じ日本人でも日本人の顔表情で正確に識別されるのは、笑い顔であり、「喜び、驚き、怒り」は「恐れ、嫌悪、軽蔑」より識別されやすいことがわかった。また実験3では、日本人と中国人に近赤外線、分光血流計OMN-3000を使い、実験1と2の刺激材料を提示したときの脳の血流変化を測定した。その結果、中国人は右前頭前野腹外側部の血流増加が顕著に認められた。日本人は相対的に血流増加が目立たず、課題負荷が少ないことが推測された。実験4では人種的にはヨーロッパ系であるものの情動表出が明確なラテン系の文化圏にあるブラジル人にとってどのように日本人の顔表情変化が認知されるかを検証した。その結果、喜怒哀楽が激しいブラジル人にとっては、日本人の笑い顔と驚き顔以外は識別が不可能であることがわかった。本研究から、笑い顔はともかくほかの曖昧な顔表情は同じ日本人にとっても難しいこと、さらに同じNon-Dialecticな文化圏であるアジア圏の中国人にも笑い顔と驚き顔以外は識別が難しく、Dialecticな文化圏であるブラジル人にとっては同じ結果が示された。以上から、日本人の曖昧な顔表情は特にほかの文化圏では極めて識別が難しく日本人の海外でのミス・コミュニケーションの一要因になっているのではないかと示唆された。
著者
加藤 耕一
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、農村舞台の保存・活用の実態調査およびその方策を示すことを目的としている。今年度は、3ヵ年計画の初年に当たり、農村舞台の保存・活用に関する基礎調査を中心課題とした。基礎調査は、舞台建築の実測調査および使われ方のヒアリング調査からなり、調査対象地域としては、徳島県を中心としているが、舞台形式に関連性のみられる淡路島(兵庫県)を補足的に踏査した。調査の結果、徳島県に農村舞台が112棟現存していることを確認した。加えて、舞台機構または舞台装置の仕掛けに関して重要と思われる農村舞台(今山、小祖谷、拝宮、府殿、法市)については、復原のための実測および痕跡調査を行い、小祖谷と法市の両舞台が仮設舟底舞台形式(多目的な平舞台から人形芝居専用の舞台形式である舟底舞台へと転換する舞台形式)であることを明らかにした。また、これらの農村舞台調査と並行して、「小屋掛け舞台」と呼ばれる仮設式の舞台を調査した。小屋掛け舞台は吉野川流域および淡路島に分布しており、悉皆的調査には及んでいないが、比較的保存状態のよい小屋掛け舞台の部材を実測し、痕跡調査と併せて組立て方法の聞き取りを行い、小屋掛け舞台の構造および仮設工法を明らかにした。本研究では、地域の人々との共同作業を通して、地域から人的組織を掘り起こし、活用支援のための人的ネットワークをつくることを基本理念としている。平成15年度は、研究者・建築家などの専門家や一般市民らとともに、農村舞台活用支援団体「阿波農村舞台の会」の設立に参加し、組織的に農村舞台調査、保存・活用方法の検討、支援活動をはじめた。平成15年9月22日に復活公演を催した法市農村舞台では、調査および住民への調査報告・説明会を本研究により行い、舞台の修復・復原や公演企画などの作業を、地域住民と阿波農村舞台の会、教育委員会との連携で取り組んだ。
著者
山崎 龍
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

環の中に軸が入って抜けない状態にある分子をロタキサンと呼び、これまで多くの合成法の開発が試みられてきた。ロタキサンに機能を付与するためには、これまで多くのロタキサンにおいて環成分に用いられている軟らかい構造の環を堅い構造とすることで分子全体の構造を規定でき、デザインがしやすくなるのではないかと考え、その合成法確立を目指した。その結果、堅い構造かつ非対称な環(SPM)の合成法確立に成功し、さらに環の中で嵩高い置換基をもった軸同士をクリック反応によりつなげることで堅い環構造をもったロタキサンの合成を行った。
著者
真鍋 恒博 熊谷 亮平 濱 定史
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、建築の内外装下地材料および構法を対象とし、主としてわが国の近代から現代に至るまでの変遷を明らかにした。各種出版物、社史、カタログ等の文献調査、および関係者へのヒアリング調査により、各時代に発売された主な建築内外装下地材料・製品に関する情報を収集した。これらの資料を様々な視点、例えば製品の特徴、発売時期、各時代に製品に求められる性能、社会的背景、および各項目の時代的変化、などから分析し、変遷の全体像を把握した。また、これまでに蓄積された多量の関連資料を再整理したが、これは構法変遷史に関する後継研究に有用なものとなるであろう。
著者
土方 裕子
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

文章を理解するためには,文章内の指示表現が指すものを特定する必要があるが,第二言語 (L2) における照応理解についての研究はあまり行われていない。そこで本研究は,日本人英語学習者の読解中における意味処理の深さと照応理解,動詞特性の関係を調べた。処理時間の測定と文産出課題から,日本人英語学習者は動詞特性を照応理解の際に十分に利用できていない可能性が示唆された。
著者
竹中 正 永田 肇 晝間 裕二
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

近年、環境保全に対する意識の高まりを受け、電子部品におけるPb、Hg、Cd、Cr6+などの有害元素の使用が規制の対象となり、ヨーロッパでは、2006年7月1日からそれらの使用禁止法令(いわゆるRoHS指令)の施行が開始された。本研究では、電子材料の高機能化に重要な役割を果たす酸化鉛(PbO)を含まない環境に優しい非鉛圧電アクチュエータ材料を開発しようとするもので、長年に亘る膨大な基礎的データを基にして、ペロブスカイト型酸化物強誘電体セラミックスを用いて、圧電歪み(アクチュエータ動作)が大きく、かつ、動作温度範囲の広い非鉛圧電アクチュエータ材料を新しく開発した
著者
日比野 直彦
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,鉄道駅整備計画を行なう際には,歩行者行動を分析し,その結果を計画に反映していかなくてはならないという立場から,その方法を議論するものである.まず,駅構内に設置されている保安用監視カメラを模してビデオカメラを設置し,それらから得られたビデオ画像を用い,歩行者データを獲得することを本年度実施した.具体的には,埼玉県春日部市にあり東武伊勢崎線と野田線の乗換え駅である春日部駅を分析対象駅として,駅構内および改札前に20数台ビデオカメラ設置し,ホーム,階段,エスカレータ,改札等の旅客流動を撮影した.撮影時間は,通勤ラッシュ前から夕方の帰宅ラッシュまでの連続した時間である.撮影は,平日1日,休日1日の2日間を行なった.撮影されたビデオ映像を1フレーム毎に画像として分解し,それらの画像に対して,画像処理の技術を援用し,個々の歩行者に着目した軌跡データ,空間利用に着目した密度データ,空間モデュールデータ等を作成すること行なった.本年度の研究成果は,第一に,歩行者行動分析に使用するための乗換え駅におけるビデオ映像を得ることができたこと,第二に,その映像から自動的に歩行者の位置座標,軌跡データ等を得るシステムを開発し,ある程度の精度でデータ取得可能であることを確認したことである.
著者
峯木 茂
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ピレン資化性細菌Mycobacterium sp.H2-5を無機培地でピレンを炭素源として培養し、ピレン分解に関与するジオキシゲナーゼ(ピレン酸化酵素)のサブユニットであるNidAとNidBを取得した。NidBはピレン分解時に特異的であり、大サブユニットNidAと結合してジオキシゲナーゼを構成するとされているので、この遺伝子がピレン資化能のプローブとして利用できそうであった。N末端付近のアミノ酸配列情報から当該タンパク質の遺伝子nidAとnidBを獲得して、塩基配列を決定した。次いで、その配列情報から蛍光標識したプローブを作製し、蛍光in situ hybridization(FISH)解析をする予定であったが、標的となるmRNA量が少ないためにやや難しいと考えられたので、先ずは豊富に存在すると考えられる、16S rRNAに対するFISHを試みることにした。H2-5株のFISHに先立ち、E.coilに対して、Alexa Fluore 488で5'末端を蛍光ラベルしたユニバーサルプローブEUB338およびアンチセンスであるNONEUBを用いてFISHを行った。菌体をパラホルムアルデヒドで固定し、ゼラチンコートしたスライド上に結合させた。次に、上記プローブをハイブリしたのち、蛍光顕微鏡で観察した結果、EUBとDAPIに関して、明瞭なシグナルをうることができた。次いで、TSB栄養培地で純粋培養したH2-5株のFISHを同様な方法で行った。その結果、EUB338とDAPIで強いシグナルが得られたものの、E.coliに比べると不明瞭であった。現在、シリコナイズしたスライドガラスを用いてlysozymeとachromopeptidase処理をしてプローブの浸透性を向上させるべく、実験を継続している。
著者
藤嶋 昭 中田 一弥
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

主な成果は下記のとおりである。・まず、エレクトロスピニング法を行うための出発原料の選択を行った。チタン源と高分子の組み合わせと、それらの濃度比の最適化を行った。さらにチューブの中に充填される流動パラフィンの粘度の最適化も図った。・作製した最高の光触媒活性をもつナノチューブをネットワーク化するために、出発原料にPDMSを添加し、ファイバーを作製した。・抗菌・殺菌試験を実施した。ナノチューブ不織布上に大腸菌を付着させて、菌の増加量をモニターした。最終的に既存のTiO2材料と上記の環境浄化能を比較し、優れた環境浄化性能を有していることを明らかにした。
著者
倉渕 隆 長井 達夫 遠藤 智行 遠藤 智行
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

通風を効果的に利用できる窓の配置が設計段階で把握できることを目的として、住宅地を想定した実験とシミュレーションを行った結果、周りに建物が建っている場合でも、天窓を使うことで、涼しい外気を家の中により多く取り込めるようになることが明らかとなった。また、開ける窓の位置で室内の風の流れ方が変わり、特に天窓を風の出口に使用すると、室内に入った風が部屋全体で渦を巻き、より広い範囲で風が流れることで平均的な風速が高まることが明らかとなった。
著者
大矢 雅則 須鎗 弘樹 渡邉 昇 下井田 宏雄 宮沢 政清 戸川 美郎
出版者
東京理科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

この一年間に亘る研究成果について述べる.数理科学を対象とする領域は多様であるが,その中で情報科学と関連のあると考えられる分野に焦点を当て,それを解析的,特に函数解析や確率解析の手法を用いてできるだけ統一的に展開した.つまり,多様な分野を横に結ぶ″Key″となる概念を見い出し,それによって統一的に様々な分野を扱い,具体的に次のような内容の研究を行なった.1.情報理論の基幹であるエントロピー理論を解析的,確率論的,量子論的に展開し,量子制御通信過程における誤り確率の数学的な一般式を導き,光パルス変調方式の効率を数理的に調べた.2.遺伝子配列の整列化,相互エントロピーを用いた生物の類縁度の定式化による系統樹を作成し,遺伝子の情報論的取り扱いの有用性を示した.3.一般量子系の状態に対して,幾つかのフラクタル次元,及び量子ε-エントロピーを定式化し,それの具体的な力学系への応用を議論した.4.ニューラル・ネット及びシミュレーティッド・アニーリングについて数学的に厳密に定式化を行なった.特に,ニューラル・ネットを用いた最適値問題の解法における解の安定性を保障する幾つかの結果を得た.5.R^<n+>上で定められた非線形力学系の漸近安定解の外部からのノイズの影響について研究を行った.また,負性抵抗を含む回路がストレイキャパシタンスの影響により不安定になるケースについて調べた.6.デジタル回路網におけるバースト型のトラフィック問題を待ち行列モデルを使って解析し,光通信における通信路や交換機バッファーの容量,誤り確率等の最適値問題を数理的に研究した.7.最近のスーパーコンピュータの発達と数式処理のソフトウェアの発展を利用して函数値の高速かつ精密な算法を情報理論的見地から再検討し,組合せ最適値問題や非線形画法などで利用可能な新しい計算手法を開発するための基礎的研究を行なった.