- 著者
-
遠藤 正之
- 出版者
- 横浜市立大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1996
1 制吐薬オンダンセトロンとメトクトプラミドのモルモット乳頭筋活動電位に及ぼす影響近年心筋活動電位第三相を形成する遅延整流カリウム電流の抑制がリエントリー型の不整脈に対して抗不整脈作用を発揮するのであるが、逆にその作用により致死的不整脈が誘発されることが明らかとなり注目されている。5-HT3受容体遮断薬であるオンダンセトロンとドパミン受容体遮断薬であるメトクトプラミドはいずれも術後の制吐剤として使用されるが、オンダンセトロンはイヌの心室筋細胞で遅延整流カリウム電流を抑制することが示されている。そこでモルモット乳頭筋の活動電位に対する両薬物の作用を検討した。その結果オンダンセトロン3uMおよび10uMは刺激頻度0.2,0.5,1.0,2.0Hzのいずれにおいても90%再分極における活動電位持続時間APD90を、濃度依存性に延長した。一方メトクトプラミド3uM、10uMは同様の刺激頻度において、APD50,APD90に対し明らかな延長作用は示さなかった。2 炭酸水素ナトリウムのモルモット乳頭筋活動電位に及ぼす影響心肺蘇生時にはしばしば大量の炭酸水素ナトリウムが、代謝性アシドーシスの補正のために投与されるが、本科学研究費に基づく研究で、炭酸水素ナトリウムがモルモット乳頭筋のAPDの延長と静止膜電位の過分極を生じることが明らかになった。種々の薬物を用いた検討から、APDの延長にはナトリウムイオンの増加が、過分極には炭酸水素イオンの増加が関与していることが明らかになってきている。3 冠動脈血流量に対する二酸化炭素分圧の影響冠動脈攣縮等による心筋虚血も麻酔中の致死的不整脈を誘発しうる。本研究ではモルモットLangendorff心を用いて、定圧潅流を行い冠潅流量を測定した。潅流液中の二酸化炭素分圧を40mmHgから80mmHgに上昇させると、血管内皮依存性に一酸化窒素の作用を介して潅流量が増加した。一方二酸化炭素分圧を20mmHgに低下させると、潅流量は約10%減少したが、一酸化窒素合成酵素阻害薬を前処置しておくと、その減少は増強された。