著者
小林 勝 土屋 修一 平野 廣和 山田 正
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.10-10, 2005

近年,関東平野では夏季の夕方に集中豪雨が頻発する.著者ら1)はこれらの集中豪雨発生要因の解明を目的とし,関東平野各地において大気観測を行い,海風が水蒸気及びエアロゾル輸送に与える影響を明らかにしてきた.本稿は,その一環として2005年4月26日に関東平野西部で発生した降雨域の移動と雨域内の風の場,及び上空の風との関係について解析したものである.以下に得られた知見を示す.1)降雨域の瞬間降雨強度が強くなると,その移動速度も増加した.2)VVP法を用いて算出した降雨域内の風の場は,降雨域の移動方向とほぼ同方向であった.3)降雨域の高度は4km程度であり,高度1.5km付近において瞬間降雨強度が強かった.4)降雨域の通過とともに水平風速が約8m/s程度増加し,その後風向が北に変化した.
著者
山田 拓也
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.255-262, 2019-09-05 (Released:2019-10-08)
参考文献数
1

イラン・イスラム共和国は中東の乾燥地帯及び半乾燥地域に位置している.1968年以降の降水統計を見ると,イラン全国の年平均降水量の過去50年間平均は,約248 mmである.しかしながら,年平均降水量は減少傾向を示しており,年平均降水量の近10年平均は約220 mmと,11 %程度減少している.これに伴い利用可能な水資源量も減少傾向にある.一方人口は増加の一途をたどり,1950年頃には3,000万人を下回っていた人口が2019年現在では約8,000万人を上回っている.加えて,都市化の進展や農業活動の活発化などにより水需要は著しく高まり,年間の水資源量のうち86 %を人間活動で使用しているなど,高度の水ストレス状態となっている.この結果,国内の様々な地域において恒常河川が間欠河川へと変化し,また社会活動における水の不足を補うために地下水位が継続的に低下している.このように,イランにおける水資源の管理に関する問題は,将来的なイランの社会経済活動の安定性や持続可能性に関わる非常に重要な問題となっている.本稿では,このようなイランの水資源管理が抱える課題について述べる.
著者
山浦 大和 小川 進
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 第20回(2007年度)水文・水資源学会総会・研究発表会
巻号頁・発行日
pp.65, 2007 (Released:2008-04-03)

16-19世紀,南米ボリビアのポトシ(Potosi)銀山(正称セロ・リコ・ポトシ)では,銀の精錬に大量の水銀が使用され,鉱山周辺は深刻な水銀汚染に見舞われた.そこで本研究では,水銀生産量と衛星データの流域解析から水銀汚染地域を特定し,スペイン統治時代のポトシ銀山における水銀汚染のリスク評価を定量的に行った.その結果,汚染地域がボリビア国境とアマゾン川の流域界まで達し,ポトシは文明崩壊の危機に瀕していた可能性が認められた.
著者
近藤 純正
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.1-13, 1990-12-01 (Released:2009-07-23)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1
著者
土屋 雄大 柳沢 佳奈子 中村 未来 岡 泰道
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.95-95, 2010

東京都区部では合流式下水道の敷設率が高く,降水時に未処理汚水が公共水域に放流されている.その結果,公共水域の水質汚染は深刻化しており,それは,東京都の歴史的・文化的に貴重な史跡である江戸城の濠においても例外ではない.そのため,江戸城外苑濠(内濠)では水質改善を目指し,過去幾度も水質調査が行われてきた.しかしながら,江戸城外濠(以下,「外濠」)においては,未だに十分な対策が施されていないのが現状である.本研究では,こうした外濠の水環境改善を目指し,水質改善の適切な手法を見出すことを目的とする.ここではその端緒として,水質改善を進める上で基礎となる水質調査をおこなった。その結果では、外濠は富栄養化の特徴を有しているなどの考察が得られた。
著者
北 祐樹 ⼭崎 ⼤
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
pp.35.1743, (Released:2022-05-13)
参考文献数
32
被引用文献数
3

国や自治体が整備する洪水ハザードマップは広く利用される一方で,水系ごとに洪水ハザードマップを個別作成することの大きな時間とコストが課題である.本研究では,グローバル河川氾濫モデルCaMa-Floodによる広域シミュレーション出力から日本の1000年確率規模の想定浸水域を作成し,公的なハザードマップと比較することで,モデル出力をハザードマップとして活用する可能性を議論する.再解析流出量を入力としてCaMa-Floodで計算した水位を極値解析して1000年確率規模の水位を得,高解像度の地形データでダウンスケールして想定浸水域図を作成した.得られた想定浸水域を公的ハザードマップと比較すると,バックウォーターによる浸水や分岐河道での浸水域が概ね表現されていた.一方で,上流からの越水や集水域境界を跨いだ流れで生じる浸水が一部表現されないという課題が確認され,CaMa-Floodで作成した想定浸水域内に含まれる人口は公的なハザードマップに比べ29%少なかった.グローバル河川氾濫モデル出力が洪水ハザードマップとして一定の精度を持つことを確認し,ローカルな洪水リスク評価への活用などの可能性を示した.
著者
平林 由希子 山田 果林 山崎 大 石川 悠生 新井 茉莉 犬塚 俊之 久松 力人 小川田 大吉
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.175-191, 2022-05-05 (Released:2022-05-06)
参考文献数
23
被引用文献数
2

アジアやアフリカの途上国などの洪水リスク情報の整備が不十分な地域で企業が事業展開する際は,グローバル洪水モデル(GFM)で作成した広域洪水ハザードマップが活用される.本報では企業実務で活用されている既存の広域洪水ハザードマップを比較し,それぞれ浸水域や浸水深の差異の要因をモデル構造や入力データに着目して分析した.その結果,低平地の浸水パターンは標高データの精度に左右されること,洪水防御情報の反映方法がGFM 間で大きく異なることが判明した.また,大きな湖に接する河川区間では背水効果,デルタ域では河道分岐の考慮が,それぞれ現実的な浸水域分布を得るのに必要なことが示唆された.これらの特徴を踏まえてハザードマップ選択のフローを用途ごとに整理した.全ての業種や目的に共通して利用を推奨できるマップは存在しない一方で,各マップの長所短所を一覧にすることで,ある程度客観的に使用すべきマップの優先順位を決められることが分かった.この知見は有償プロダクトを含む他リスクマップ使用を検討する場合にも拡張可能であり,企業実務において説明性の高い適切な浸水リスク評価を実施する上での基礎的な情報となりうる.
著者
仲吉 信人
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.238-250, 2016-07-05 (Released:2016-08-17)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本解説は,個人の動線に沿った微気象変化,およびそれに伴う人体生理応答を計測・評価する都市生気象学の新たな研究手法について紹介するものであり,本手法の根幹技術であるウェアラブルな気象・生理計測システム,およびそれを用いた都市街区での被験者実験に焦点を当て報告する.ウェアラブル計測システムは,微気象因子として全ての熱環境因子(気温,湿度,風速,短波・長波放射),生理因子では皮膚温度,脈拍,活動量指標,温熱感覚を計測する.微気象因子のうち,風速,短波・長波放射量は本手法のために開発した新センサ,グローブ風速・放射センサを用い評価する.本手法の応用例として,2011年8月22-24日にかけ岐阜県多治見市の都市街区にて温熱生理実験を実施した.本計測システムにより,AMeDASなどのルーチン観測網では評価できない街区微気象の局所性が可視化され,また微気象に対する生理応答に性差・体格差といった明確な個人属性の影響が見られることが確認された.都市の微気象評価や生気象研究における本手法の有用性が示された.
著者
永瀬 禎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

近年,日本ではゲリラ豪雨による被害が続出している.これはゲリラ豪雨の予測が難しいためである.そこで本研究ではゲリラ豪雨の際に高い確率で発生する雷に着目した.雷によって正確な位置でのゲリラ豪雨を予測できれば,被害が軽減されることが予想される.本研究では雷の探知装置に大阪大学所属の河崎善一郎教授のグループが発明したVHF波帯広帯域デジタル干渉計を用いる.また降雨観測レーダーには国土交通省が管理しているXバンドMPレーダーを使用する.探知された雷およびレーダーエコーをGrADSというソフトを用いて二次元の一つの図に表し,それらの間の相関を目視で確認して調査する.ただし,現時点では雷と豪雨の相関関係で未解明な点が多くいきなりゲリラ豪雨の予測をすることは困難と考えられるため,まずは豪雨と雷の相関関係の調査を研究の第一歩とする.そこからゲリラ豪雨の予測につながるようにしていく.本研究の結果として豪雨の発生地点の移動先に雷が発生していることがわかった.また雷雲は高層の風の影響を受けやすいこともわかった.ただし,雷が最初に発生した地点からほぼ移動しないなど未解明な点が多く見られたため正確な位置での豪雨の発生位置を予測することはまだ難しいと考えられる.今後は高さ方向も考慮に入れた三次元の図を作成し,そこからゲリラ豪雨と雷の新たな相関関係を模索していくことが必要であると考えられる.
著者
山本 太郎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2015年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100061, 2015 (Released:2015-12-01)

日本近海で発生する多くの台風は,北海道に接近するまでに勢力が衰えたり進路がそれたりするため北海道では本州ほど台風被害は多くないが,近年H15年日高豪雨やH18年豪雨など台風による大雨被害が発生し,さらに道東方面の河川で台風が主要因の洪水が増加している状況もある.これらを踏まえこれまで北海道に接近または到達した台風の特徴として経路と降雨分布の傾向を調べた. 1961年以降2014年までの54年間に発生した台風について,北海道に接近した台風を抽出し接近するまでのルートと中心気圧の変化の傾向を整理した.北海道の接近した台風のうちほぼ6割の台風が日本海ルートで接近し,残りが本州縦断ルート,太平洋ルートから接近している.北海道に接近した台風のうち中心が北緯30度を気圧980hPa以下で越えた台風の北緯40度を越えたときの中心気圧を整理すると,1961年以降54年間の平均でみれば,北緯40度を越えた時の中心気圧は日本海ルートでは986hPaに対して太平洋ルートでは981hPaと低く,太平洋ルートで北海道に接近する台風は接近する台風の割合は少ないが中心気圧が低いままで接近することが多いことが示された. 北海道に接近した台風について北海道の通過コースを区分し,そのうち1991年以降に北海道に接近した台風から北緯40度を中心気圧980hPa以下で越えた台風を抽出し,アメダス降雨量を整理した.日本海寄りのコースを通過した台風では,函館や苫小牧,稚内など道南・道央・道北で降雨量が多いが,雨量としては80mm程度でそれほど多くなく50mmにも達しない程度の場合も多い.これに対して主に太平洋寄りのコースを通過した台風では帯広や釧路,北見など道東で総雨量100mmを超えることも複数回発生しており,近年北海道を通過した台風では道東が主に影響を受けていることがわかった.
著者
勝山 正則
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.3-5, 2020-01-05 (Released:2020-02-06)
参考文献数
3

森林流域に形成された湿地における水文生物地球化学的過程について検討した論文「勝山正則, 伊藤雅之, 大手信人, 谷誠 (2018) 森林流域に存在する渓畔湿地内の水文生物地球化学的過程とその表流水質に与える影響, 水文・水資源学会誌, 31, 178-189. DOI: 10.3178/jjshwr.31.178.」に2019年水文・水資源学会論文賞が与えられた.本稿は当該論文の背景や経緯とその後を記述するものである.
著者
小田 僚子 神田 学
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 第21回(2008年度)水文・水資源学会総会・研究発表会
巻号頁・発行日
pp.141, 2008 (Released:2008-11-28)

首都圏に隣接する東京湾は,海陸風循環という形でヒートアイランド現象や集中豪雨といった都市大気環境問題に影響を及ぼしていることが指摘されているが,海陸風循環の駆動力となる海表面温度の時間スケールの短い変動傾向については,詳細には理解されていない.そこで本研究では,約1年間に渡って,東京湾の海表面温度および海上気温の直接多点観測を実施した.日較差に着目した結果,東京湾は,湾奥ほど浅く熱容量が小さいことから,年間を通じて湾奥ほど日変化(日較差)が大きく,その傾向は夏季ほど強いことが示された.なお,降雨がある場合は,季節を問わず,湾内全域で日較差はほぼ一定となるが,降雨がない場合は日射強制力に依存した季節変動を示す.また,日較差は風速にも依存し,夏季の晴れた日は風速が弱いほど日較差が大きくなる(約2.2℃)ことが示された.
著者
山中 大学
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.189-200, 2019-07-05 (Released:2019-08-09)
参考文献数
63

インドネシア「海大陸」は真の大陸に比べ遥かに長い海岸線をもち,これに沿って日周期海陸風と共に生じる世界最強の雨雲が解放する潜熱は,日射(-日傘効果)と赤外放射(-温室効果)の差を埋めている.この地球保温機構は,同時に保水機構であり,それらと共に陸海空三重境界の不連続を回避する仕組の一つとして作られた生物圏や,その内部に派生した人類圏の生命維持機構でもある.特にスマトラ・カリマンタン両島の海岸の低湿地林とその遺骸蓄積が作る泥炭地は多量の炭素を固定しており,それらの輸出用農作物プランテーション化に伴う乾燥やエルニーニョ・ダイポールモード期に多発する火災延焼は地球温暖化の要因となっている.如何にして気候・生物・人類を共存させていくかを国際的・学際的に考えねばならない.
著者
皆川 裕樹 増本 隆夫
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

気候変動の影響により豪雨規模の強大化が予想され、特に排水が困難な低平地域においては将来的に洪水や農地湛水等の被害リスク増加が懸念される。対応策の検討に向けて、これらの影響を定量的に評価することが重要である。一方、実際の豪雨被害の発生リスクやその度合いには、雨量とともに降雨波形の違いも密接に関係すると考えられる。そこで、解析の入力豪雨について様々な内部波形パターンを想定することで、被害の発生リスクの変化を定量的に評価した。本手順では、影響を評価するために構築した排水モデルに、模擬発生法によって作成した様々な降雨波形を持つ豪雨を入力することで影響を評価する。現在と将来の総雨量値は、これまでの成果より220 mm/3dおよび270 mm/3dと仮定した。それぞれの雨量値について、総雨量は一定で降雨波形の異なるデータを300パターン模擬発生させ、そのすべてを入力し解析を行った。得られる300個の解析結果のうち水位がある基準を超える割合を抽出し、その雨量に対する被害の発生リスクとして評価する。これを現在と将来で比較することにより、気候変動による影響を評価した。対象地区内の排水が集中する潟のピーク水位に注目すると、将来は現在と比較し大きな水位の出現頻度が増加しており、同地点で規定されている氾濫危険水位を超過する確率は現在で17%であるのに対し将来では32%と、15%のリスク増加となった。また、水稲の減収に関連する水田の湛水時間(30cm以上)を指標として農地被害の発生リスクを評価した。各水田の平均湛水時間を比較した結果、雨量の増加に対して脆弱な水田地区が推定でき、特に潟周辺や干拓により造成された低標高部の水田において湛水時間の増加が予測された。 このように、模擬発生法を活用することで様々な降雨パターンを想定でき、内部波形に注目した低平地排水への気候変動影響評価が可能となった。今後は、排水計画の見直しも視野に入れ、想定される対応策の検討とその効果を具体的に評価することが課題となる。
著者
沖 大幹 芳村 圭 キム ヒョンジュン ゴドク タン 瀬戸 心太 鼎 信次郎 沈 彦俊
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.61-61, 2007

地下水、土壌水分、積雪水量などの陸水貯留量の変化は陸域水収支の特に季節変化を考える際には非常に重要である。最新のデータに基づき3種類の独立の手法で推定された大河川の総陸水貯留量の季節変化を相互比較し、それらの間の対応を検討した結果を報告する。
著者
泉 宏和 風間 聡 沢本 正樹
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.67, 2005

日本全域における積雪水量,積雪深,全層積雪密度分布を日単位で推定した.使用データは気象データ,衛星データ,標高データである.積雪水量の推定には降雪モデルと融雪モデルから構成されるSWEモデルを用いた.毎日の降雪量の推定はAMeDASデータを用い,重みつき距離平均法により補間した.また,融雪量の推定はdegree-day法を用い,融雪係数を決定することで行った.融雪係数の決定には,JAIDAS画像から積雪の有無を抽出した積雪マップを用いた.さらに,積雪深の推定には雪自身の重さによる圧密を考慮したモデルを用いた.その結果,積雪が平年並みの年における積雪深の推定精度は良かったが,多雪年における積雪深の推定精度に課題が残った.そして,AMeDASの日最深積雪データとの検証から,日本全域という広域における積雪特性を把握し,降雪_-_融雪過程を概ね推定することができたといえる.
著者
西脇 隆太
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

2008年7月の兵庫県都賀川での災害を皮切りに,近年我が国ではゲリラ豪雨と呼ばれる局地的大雨が多く報告され,これによる災害が問題となっている.このゲリラ豪雨は時間スケールは1時間未満,空間スケールは約数kmと時間・空間共にスケールが非常に小さな現象なので,災害の軽減には1分1秒でも早い情報提供が重要になってくる.そこでこのような災害を監視のするために国土交通省は2010年にXバンドMPレーダ網を導入した.XバンドMPレーダは従来から行われてきた低仰角観測だけでなく立体観測も行っており,この観測結果を用いて地上で豪雨になるよりも早い時刻での降水セル(タマゴ)の探知及び3次元的な追跡が可能となった.しかし,探知したタマゴ全てが発達するわけではないので,探知したタマゴが豪雨をもたらす危険性があるかという判断を早期に行う必要がある.そこで本研究は,早期に探知したタマゴが発達するか否かをできる限り早期に判断することを目的とし,その危険性予知の指標として積乱雲の気流による渦に着目する.着目理由としては,積乱雲の形成に伴う上昇気流が存在すると水平渦が立ち上がり,積乱雲内に鉛直方向に軸を持つ鉛直渦が形成され,空気塊は回転しながら上昇していく.積乱雲の発達は断熱過程で,渦位は保存されるので,上昇気流によって引き伸ばされた空気塊は時に大きな渦度を生み出し,それによって周囲の水蒸気が積乱雲内に取り込まれ凝結する.そしてその時の熱エネルギーが上昇流の加速に大きく寄与している.以上のことから,渦度が大きいほど積乱雲は発達すると考えることができる.また,渦解析では,XバンドMPレーダから得られるドップラー風速を用いて降水セル内の大小2つの渦の渦度を推定した.1つは2km程度の直径を持つメソγ渦,もう一つは局所的な渦であるミクロ渦である.これら2つの渦とタマゴの危険性との関連を定性的に検討したところ,メソγ渦はタマゴの探知時刻から16分ほど遅れるもののメソγ渦が存在すれば必ず地上で豪雨がもたらされていることから確実な指標として有効性が示唆された.一方ミクロ渦はタマゴの探知時刻から約6分後にその存在が確認され,早期の予知としての有効性が示唆された.また,今後は解析事例を増やしさらに検討していくとともに,タマゴの早期探知,自動追跡との融合による一連のゲリラ豪雨予報システムの構築に取り組んでいく.
著者
瓜田 真司 齋藤 仁 中山 大地 泉 岳樹 松山 洋
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.114-114, 2010

本研究では、気象庁が開発した土壌雨量指数を用いて、日本全域を対象に、2001-2008年の土砂災害発生危険性を明らかにした。2001-2008年の土砂災害発生危険性には地域差があり、1年間に何度も危険性を高める雨が降った箇所もあれば、この8年間に一度も土砂災害の危険性が高まらなかった箇所もあった。<BR> 牛山(2005)では、暖候期降水量から推定される極値降水量が観測されていない地域を豪雨空白域として抽出している。その豪雨空白域における土砂災害発生危険性を調べたところ、新潟・山形県境付近、富山県中央部、近畿地方中部と種子島南部は豪雨空白域であり、対象期間(2001-2008年)の土砂災害発生危険性も高まっていなかった。すなわち、これらの箇所では、今後の大雨の際に土砂災害発生危険性が高まる可能性が示唆される。
著者
Pavetti Infanzon Alicia Tanaka Kenji Kotsuki Shunji Tanaka Shigenobu
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2014年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.100006, 2014 (Released:2014-12-01)

Paraguay had dense forest cover until the 1970s but due to agricultural expansion, the country lost almost two thirds of its Atlantic forest (Huang et al., 2007). Such landscape transformation is believed to influence regional climate because it alters surface-atmosphere interactions . This research aims to reproduce past surface parameters for Paraguay and apply them to investigate the impacts of land use change in November rainfall. For this, the AVHRR NDVI data series (1981-2006) and SPOT Vegetation product (1999-current) were correlated to adjust the AVHRR product in order to reduce sampling errors. These surface parameters, along with vegetation scenarios for the 1990s and 2000s, were then used in meso-scale numerical weather prediction model (CReSiBUC) to perform two sets of simulations for November 2006 -2011 to assess the potential regional impacts of land cover change on precipitation during November and the mechanisms that may lead to variations in regional climate.