著者
川守田 智 安西 聡 風間 聡
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.209-220, 2017-07-05 (Released:2017-09-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1 5

ソーシャルメディアを用いて河川関心度の定量評価を行った.Instagramより,川に関連するハッシュタグ(例:#川,#広瀬川)を用いて,データを収集した.テキスト解析,投稿数解析,画像解析を実施し,さらに#川の名前の投稿数をその流域人口によって除した値や川や山について比較した.その結果,次の5つの新たな知見が得られた.1)民間ビジネスやイベントが川の関心を高めている.2)空間利用実態調査の整合性は取れなかった.3)観光資源に恵まれた川は平均より8倍から50倍大きく.観光が河川の関心に大きく貢献していた.4)川において,7月と8月に投稿数が集中していた.また,特定の河川名がみられなく,川の利用者はあまり特定の川を意識せずに利用していた.5)水深の浅い場所において,私服で入れるようなカジュアルな水遊びが人気であった.
著者
伊藤 尚也 津村 悠斗 諸泉 利嗣 三浦 健志
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

近年,気候変動に伴う温暖化や都市部でのヒートアイランド現象を起因とした気温上昇により,熱帯夜や熱中症の増加が大きな問題となっている.気温上昇を緩和する簡易的な手法として,従来から地表面への散水が従来から行われてきた.本研究では,アスファルト面にスプリンクラーを用いて散水を行い,夏季から秋季にかけての気温緩和効果およびWBGTに与える影響を実験的に検討した.その結果,黒球温度,気温,WBGTおよび水蒸気圧に散水効果が見られた.また,同じ条件下では秋季よりも夏季の方が散水効果の大きいことが分かった.
著者
川崎 雅俊 安部 豊 恩田 裕一
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 水文・水資源学会2017年度研究発表会
巻号頁・発行日
pp.99, 2017 (Released:2017-12-01)

強間伐が流出に及ぼす影響を評価する為、隣接する2つの小流域を用いて強間伐の有無による流域比較試験を行った。その上で、林内雨量、表面流量の強間伐前後の変化も踏まえ、強間伐が流出に及ぼす影響発生メカニズムの考察を行った。その結果、強間伐施業を行った流域で総流出量が増加したが、その増分は渇水時に発生しており、豊水時の変動は僅かであった。渇水期に流量が増加した原因として、流域内貯留量、特に渇水時に安定的に水を供給する岩盤中の地下水の増加が推測される。そこで、岩盤地下水の地下水位とのよく相関する先行降雨指数(API)を用いて解析を行った。その結果、強間伐実施後、特に夏期の降雨シーズン後において、同じAPIでも流量が増加する傾向が見られた。この結果は、強間伐による林内雨量の増分が、貯留量、特に岩盤中の地下水貯留量の増加に寄与したことを示していると考えられる。APIに対する岩盤地下水位や流出の応答特性は、地質によって異なることが知られている。本サイトで基底流出と良い相関がみられたAPIの半減期(10日)は、堆積岩サイトと比べて長く、この緩やかな降雨流出応答の特性が、強間伐による林内雨量増を渇水時の流量増に変換した可能性が考えられる。今後は、地質の異なる他流域の観測結果との比較を行い、強間伐による流況の平準化に必要な要素について、検討を試みる予定である
著者
辻村 真貴 安部 豊 田中 正 嶋田 純 樋口 覚 上米良 秀行
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.31-31, 2005

乾燥・半乾燥地域における内陸河川は,流下にともない水面からの蒸発と地下水への涵養により,徐々に流量を減じていくことが一般に言われている.従来こうした河川と地下水の交流関係は,流下に伴う河川流量の変化という見かけの傾向から指摘されることが多く,実証的な検討はなされてこなかった.本研究では,モンゴル東部ヘルレン川の上流部から中流部に至る本流とその流域を対象に,安定同位体トレーサーを用いた水・同位体収支解析に基づき,河川水と地下水との交流関係を検討した.その結果,上流,中流いずれの区間でも河川_-_地下水交流量は正値を示し,河川に対する地下水の流出が生じていることが示唆された.上流区間において1.0 m3/s(1.7 x 10-2 m3/s/km),中流区間において2.6 m3/s(1.1 x 10-2 m3/s/km)の地下水流入量は,水面蒸発量を上回り,また河川流量の10 %から20 %に相当し,無視し得ない量である.
著者
北側 有輝 城戸 由能 中北 英一
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2013

近年,集中豪雨等の極端な気象現象に伴う水災害が多発し,地球規模気候変動による水災害の巨大化や頻発化が懸念されているが,地下水環境への影響評価についての検討事例は国内外を通しても少ないのが現状である.本研究では,今後の適正な地下水利用と持続可能な水資源の確保を目的として,揚水量や涵養量を含む流動特性と水質特性を評価できるモデルと全球気候モデル(GCM)の出力降水を用いて,気候変動が地下水環境へ及ぼす影響評価手法について検討している. 古来より地下水を利用してきた京都盆地を対象地域とし,連続式とDarcy則を基にした飽和平面二次元地下水流動モデルと移流分散式を基礎とした水質モデルを活用し,気象庁気象研究所で開発された超高解像度全球大気モデル(AGCM20)の後期ラン(MRI-AGCM3.2s)における現在気候および近未来気候実験の降水データを用いて地下水位および水質をシミュレーションした.全球気候モデルの空間的再現精度を考慮し,対象領域周辺メッシュの降水量データを入力することにより得た複数の出力結果から,疑似的なアンサンブル予測を行うことにより,地下水環境への影響を不確実性を考慮した確率的情報として表現した. 影響評価手法として,空間的・時間的の2つの観点から統計確率的に表現する手法を検討した.空間的評価手法では全評価対象領域内における期間平均値が一定値以上の水位低下や水質悪化が現れる面積割合,また時間的評価手法では評価対象領域内において一定値以上の水位低下が発生する時間が全解析時間に占める割合をそれぞれ算出して,気候変動による地下水環境への影響を定量評価した.また,アンサンブルメンバーのうち降雪地域を含み降雨特性が大きく異なるメッシュを除いてアンサンブル出力の分散を小さくすることを試みた.空間的評価の結果,超過空間面積率10%となる水位低下は-0.60mであり,年間平均で1.0m以上の水位低下を及ぼす空間は評価空間全体の約3%程度となった.また,時間的評価ではアンサンブル平均を用いた時間的評価により近未来気候の20%超過時間確率は現在気候に比べて-1.7 mの水位低下が拡大する結果となった.しかし,時間的評価手法における分布関数近似が十分でなく,改善の余地がある.
著者
大町 利勝
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.170-179, 2004 (Released:2004-06-01)
参考文献数
4
被引用文献数
7 5
著者
大竹 奈津子 戎 信宏 高瀬 恵次
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2013

樹冠貯留量を推定するために、ヒノキ林における樹冠遮断蒸発の水収支データの解析を行った。樹冠に十分に水分が保留された場合、降雨時における樹冠遮断蒸発の水収支式より貯留変化量がゼロとなり、[林外雨量-樹冠遮断蒸発量]に対する林内雨量の割合を樹冠遮断飽和度とし、それが1であると仮定する。この樹冠遮断飽和度が1になるときの樹冠遮断貯留量Scを算出したところ、平均降雨強度との相関関係が認められ、Scは常に一定ではなく降雨強度の影響を受けて変化することが分かった。
著者
植木 仰 吉川 沙耶花 鼎 信次郎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

国際河川流域は,各流域国の間で農業,工業,生活,環境用水をめぐる争い(越境水紛争)の舞台となってきた.多くは流域国同士の話し合いにより解決する努力がなされてきたが,武力行使による軍事衝突が20世紀の間にアフリカと中東にて7件報告されている.人口増加や気候変動により世界規模での将来の水逼迫が深刻化した場合,稀少となった水資源を確保するために,国家間で政治的対立や武力衝突が頻発するリスクは否定できないため,水逼迫と水紛争の関係性を定量的に分析することは大変重要な課題であると言える.そこで,本研究では全球水資源モデルから推定された水逼迫指標を用いた過去の水逼迫状態や考えられる過去の水紛争要因から国際河川流域における越境水紛争生起確率モデルを構築した.構築されたモデルは概ね良好な予測性能を有すると言える結果となった.しかし,モデル構築に関して仮説の設定や説明変数の選出にはまだまだ検討の必要な課題があり,今後も情報収集を進めて,モデルの改良に取り組む予定である.
著者
木村 雄貴 平林 由希子 木下 陽平
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

全球平均気温は2000年代に昇温傾向が止まり、いわゆる温暖化ハイエイタスの時期になっているといわれているが,陸上気温の高温極値は上昇し続けている.一方, 地球温暖化が進行すると世界の多くの地域で河川洪水の頻度が上昇することがいくつかの研究で指摘されており, 陸上の気温と洪水頻度には強い正の相関があることも指摘されているため, 温暖化ハイエイタスといわれる2000年以降についても世界の洪水の頻度が増加している可能性がある.そこで本研究では,流量観測データや全球河川氾濫モデルによる河川流量再解析データを用いて, 温暖化ハイエイタス期の洪水頻度について解析を行った. その結果,既往の研究で指摘されている通り,陸上の、年最大日平均気温に関しては上昇していることがわかった.また,GRDCの流量観測データと河川流量再解析データによる洪水頻度指標の双方において,20世紀から21世紀に洪水頻度指標が上昇しており, 2000年以降もその上昇傾向が続いていることが判明した.全球平均気温は2000年代に昇温傾向が止まり、いわゆる温暖化ハイエイタスの時期になっているといわれているが,陸上気温の高温極値は上昇し続けている.一方, 地球温暖化が進行すると世界の多くの地域で河川洪水の頻度が上昇することがいくつかの研究で指摘されており, 陸上の気温と洪水頻度には強い正の相関があることも指摘されているため, 温暖化ハイエイタスといわれる2000年以降についても世界の洪水の頻度が増加している可能性がある.そこで本研究では,流量観測データや全球河川氾濫モデルによる河川流量再解析データを用いて, 温暖化ハイエイタス期の洪水頻度について解析を行った. その結果,既往の研究で指摘されている通り,陸上の、年最大日平均気温に関しては上昇していることがわかった.また,GRDCの流量観測データと河川流量再解析データによる洪水頻度指標の双方において,20世紀から21世紀に洪水頻度指標が上昇しており, 2000年以降もその上昇傾向が続いていることが判明した.
著者
田村 隆雄 中内 章浩 小河 健一郎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集 第23回(2010年度)水文・水資源学会総会・研究発表会
巻号頁・発行日
pp.64, 2010 (Released:2010-12-01)

平成21年台風9号豪雨で発生した佐用川洪水について,雨量・水位データを用いた流出モデルパラメータ同定法を使って,水位ハイドログラフの再現,洪水ピーク流量の推定,佐用水位観測所における水位-流量曲線の作成,及び流域の洪水低減機能に関する考察を行った.その結果,ピーク流量は約910m3/s,右岸堤防越流時の流量が780m3/s,流域の表層土壌層は極めて薄く,洪水低減機能の低い森林流域であること等が推察された.
著者
砂口 真澄 土屋 十圀
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.82-82, 2006

近年の都市域における氾濫は,河川からの外水氾濫による地表面氾濫や,都市域に網羅された下水道管路からの噴き出しからの内水氾濫が多発している.東京都の神田川流域では,2005年9月の台風第14号による豪雨で内水氾濫,護岸の決壊による水害が発生した.河川計画の上では治水水準が達成されつつも,内水氾濫に対しては下水道の排水・貯留能力を高めることが課題となっている.一方,ソフト面の対応策として,ハザードマップが作成されているが,町・丁目まで精度の高い浸水区域を想定する必要が高まっている.よって本論では事例研究として神田川流域の小排水区(190ha)を対象に詳細な河川・下水道の浸水メカニズムを数値モデル(NILIM)によって明らかにすることを目的とした. 2004年10月の台風第22号の降雨イベントをNILIMに適応させた結果,対象区の上流側で内水氾濫現象が確認された.このときの最大水深は101cm,浸水面積は0.16haとなった.
著者
牛山 素行
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.381-390, 2002-07-05
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

豪雨時には,住民一人一人がその雨はどの程度激しいのかを理解することが,早期避難などの防災上重要であり,利用しやすい情報の整備が必要である.本研究では,この理解を支援することを目的とし,携帯電話からも参照できる日本全国のリアルタイム豪雨表示システムを開発・公開した(http://www.disaster-i.net/rain/).このシステムでは,全観測所の1時間降水量,24時間積算降水量などが表示され,最新の観測値だけでなく,過去最大値との差も見ることができることが特徴である.災害時などの通信混雑時にも容易にアクセスできるよう,ほぼすべての情報は文字で表示し,グラフも文字(記号)によって作成した.システム公開後の6ヶ月のアクセス状況を集計したところ,トップページのアクセス回数は1日平均306回,最大日で3078回,最多アクセス日の全ページへのアクセス回数総計は21500回であった.これは同じ日の国土交通省「川の防災情報」(www.river.go.jp)のアクセス回数の2%に相当する.また,本システムはいくつかのホームページ評価サイトや新聞に取り上げられており,このシステムはすでに社会的に評価され,実用的なものになっていると言っていい.
著者
高橋 信吾 石川 智士 黒倉 寿
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.185-193, 2005 (Released:2005-04-27)
参考文献数
2

カンボジアの内水面漁業はトンレサップ湖およびその下流のメコン川の氾濫域で特に盛んであり,動物性のタンパク質の供給源として重要である.カンボジアの漁業形態は,大規模漁業・中規模漁業・小規模漁業に大別され,漁獲物の多くは家族漁業等の小規模漁業で捕獲されている.近年,漁業者の増加から漁業者間の軋轢,特に大規模漁業と小規模漁業の間の利害対立が問題となっている.政府は大規模漁業を抑制し,生業的な地域零細漁業を保護する方向で制度の改革を行っているが,地域零細漁業者を主体とする資源管理・環境保護のシステムは十分に普及しておらず,このことが漁業の持続的発展の障害となっている.メコン川の水利用・管理システムの変化は水産資源に大きな影響を与えると考えられるが,資源量推定・変動予測に必要な,漁獲統計等のデーター収集システムも構築されていない.このような現状では,水産資源学的な研究を可能にするための情報収集システムの構築とともに,重要魚種についての生態学的な調査をすすめ,これらの結果を総合して解析を進めることが,資源量の推定,資源変動要因の解明のための現実的な対応と考えられる.
著者
平野 智章 寺嶋 智巳 中村 智博 境 優 青木 文聡 名波 明菜
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.24-39, 2009-01-05 (Released:2009-01-29)
参考文献数
44
被引用文献数
10 9

森林植生の樹種と流域の水流発生機構との関連性を明らかにするために,針葉樹林流域(1.29 ha)と広葉樹林流域(1.28 ha)において水文観測を行った.ヒノキ林プロットでは地表流の流出応答が大きく,個々の降雨ピークに応答して地表流の流出ピークが現れたが,広葉樹林プロットでは地表流の流出応答は非常に小さかった.各プロットともに土壌の最終浸透能(6.4と26.8 mm / 5min)よりも低いと考えられる降雨強度(4.0 mm / 5 min 未満)において地表流が発生したことから,その流出形態はヒノキ林プロットでは根系流(ヒノキ人工林の根系層を流れる選択的な表層流)であり,広葉樹林プロットでは落葉層をわずかに流れるリターフローであると推察された.総降水量100 mm以上の降雨イベント(P ≧ 100 mm)では,各流域の流出応答および‘Non-reacted water’の寄与量が顕著に大きくなり,大規模台風イベント(P:117.4 mm)では流出ピークの40~50 %は‘Non-reacted water’によって構成されていた.また,降雨イベントの規模によって各流域の‘Non-reacted water’の主要な構成成分は異なる可能性があり,大規模台風イベント時の針葉樹林流域では浅い側方流と根系流,広葉樹林流域では主に浅い側方流が‘Non-reacted water’として短期流出および流出ピークに大きく寄与していると推察された.
著者
森山 聡之 中山 比佐雄 平野 宗夫
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2013

平成24年7月に九州北部を襲った豪雨は、福岡県と大分県それに熊本県に大きな被害をもたらした。本研究は、国土交通省が試験運用を行ってるXRAINによる観測データを用いて、この豪雨の解析を試みた。その結果、XRAINはレーダ辺縁部では豪雨による減衰が顕著に観測された。しかし、レーダの中央部付近ではほとんど影響が見られないため、大分県側にもXバンドMPレーダを配置し、減衰を防ぐ事が望ましいと考えられる。