著者
堀江 直樹 小山 夕美 山本 典子 大竹 朗
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.176, 2011

【目的】<BR>当地域では平成20年11月より脳卒中地域連携パスが導入され,当院は回復期病院としての役割を担っている.パス導入以前に比べ在院日数は短くなっているが,諸般の理由により長期入院となる症例がある.今回,入院長期化した群と短期群とで比較検討し,若干の考察を加えたので報告する.<BR>【方法】<BR>平成20年11月から平成22年11月までに当院に入院した脳卒中パス患者135例(平均在院日数72±29.4日)の中から,在院日数100日以上の患者21例(以下長期群:121.1±15.7日)と在院日数40日以内22例(以下短期群:33.5±5.1日)について以下の項目を検討した.<BR>検討項目:年齢,NIHSS(入院時,退院時),下肢Br.Stage(入院時,退院時),B-ADL(入院時,退院時),退院時Barthel Index(以下BI),家族構成,復職及び家事復帰.<BR>【結果】<BR>年齢は長期群65.6±10.7歳,短期群75.5±11.7歳で差があった.NIHSSは,入院時は長期群8.0±5.0点,短期群2.3±1.9点.退院時は長期群5.6±4.4点,短期群1.5±2.2点であり,脳卒中は長期群が短期群に比較し重症であった.下肢Br.stageは長期群では入院時にstageIII以下の割合が62%,退院時は38%であった.短期群では入院時・退院時共に5%と変わらず,長期群は短期群に比較し麻痺が重度であった.<BR>ADL評価のB-ADL(退院時)は,長期群4.0±4.1点,短期群2.0±3.3点で差があったが,BIは長期群68.1±29.4点,短期群が81.6±24.1点と短期群に軽症の傾向があった.家族構成については老老介護,一人暮らし,二人暮らし,三人暮らし以上について検討したが両群で特徴は見られなかった.復職及び家事復帰に関しては両群共に3例ずつあり,差は無かった.<BR>【考察とまとめ】<BR>入院長期化した症例は,年齢が若く,機能面,ADL面ともに重症であった.家族構成に関しては介護力の不足などが影響するかと考えられたが,両群間で差は無かった. 当院では入院時に長期入院を防止するためにハイリスクスクリーニングシートを使用し,早期からMSWの介入を行っている.しかしそのような対策を行っていても,入院長期化してしまう症例がある.当地域は山間部で多雪の地域を有し,雪の影響により退院時期が延長することもあり,地域的な特色も影響していると考えられた.
著者
北野 守人 柳井 孝介
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【はじめに】<BR>東京都高等学校野球連盟(以下都高野連)からの依頼を受け、合同練習(以下練習)、壮行試合及び日米親善野球 東京選抜ロサンゼルス遠征(以下遠征)におけるメディカルサポート(以下MS)を実施した。そこで、遠征における活動内容を報告し、今後の課題を考察する。尚、発表するにあたり都高野連の同意を得た。<BR>【対象と目的】<BR>東京都の高等学校から1・2年生の選手20名を平成23年度 秋季東京大会の結果を参考に都高野連の役員会にて選抜。練習(4日間)、壮行試合(2試合:日大三高 全国優勝メンバー、東都1部リーグ 選抜チーム)及び遠征:平成23年12月23~31日(4試合)に参加した選手20名を対象に実施。理学療法士は、対 東都1部リーグ 選抜では2名、遠征等は1名参加。遠征のMS目的は、1.傷害・障害予防2.感染予防3.時差ぼけ対策4.体調管理の4点を挙げ、対策・準備・対応を進めた。<BR>【結果】<BR>MSを行なった選手は20名中17名、内容別件数は延べ143件(練習・壮行試合:41件、遠征:102件)。内訳は、アイシング70件、野手コンディショニング17件、テーピング15件、外傷14件、今後の指導9件、投手コンディショニング7件、体調管理指導4件、栄養指導3件、処置3件、生活指導1件であった。身体部位別件数は196件(練習・壮行試合:51件、遠征:145件)で練習は肩・肘関節、遠征では肩・肘関節だけでなく手指・股関節・大腿・下腿も多かった。<BR>【考察】<BR>1)感染予防:機内では感染対策としてマスクの配布・着用を実施。遠征2日目に選手1人が喉痛を訴えたので、全選手に夜間用のミネラルウォーターを2本に増加、うがい薬・マスクを2日分配布。乾燥防止に就寝前に浴槽への湯張りを指示。その後、感染の悪化・発症はなかった。2) 介入件数・選手との会話の増加:遠征に入ると介入件数・選手との会話が多くなり、食事量が少ないと声も挙がったため夜食にバナナを2本配り対応。遠征では肉料理が多かったため摂取カロリーは足りていたと思われるが、野菜・米が少ないことから腹持ちがしなかった可能性が考えられた。3)野手コンディショニング介入回数増加:遠征時の平均湿度18%のグランドは非常に固く、芝生がない捕手・内野手への疲労が蓄積したと予測した。尚、介入した全選手は日米親善試合には復帰した。<BR>【海外遠征の課題】<BR>食事・設備改善だけでなく綿密な遠征日程を把握した上で僅かな時間をどのように有効活用をし、選手のケアにあたるか検討の必要性を感じた。また、遠征後に選手・監督から感謝の言葉を頂いたが、個人的な技術等へのスキルアップを更に図っていきたい。最後に、遠征に帯同させて頂き都高野連・米国の役員に対し心より感謝を申し上げます。
著者
大塚 貴司 伊藤 貴史 石井 健史 寺島 優
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-024, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】回復期病棟の脳卒中片麻痺者(以下,片麻痺者)は,車椅子での生活を余儀なくされている.そのため入院中の片麻痺者は活動量が低下することが予測される.廃用症候群の予防という観点からも,片麻痺者自身が車椅子を駆動し移動することが重要である.しかし,片麻痺者の車椅子駆動は非麻痺側のみで行われ,麻痺側の運動が得られにくいことに加え,非対称性の姿勢を助長するデメリットがある.関矢らは,麻痺側の下肢も使用する足漕ぎ車椅子を用い,歩行速度の改善,下肢交互運動獲得が可能であることを示唆している.そこで,今回,足漕ぎ車椅子を使用し麻痺側の筋活動を向上させることにより,麻痺側の下肢機能へどのような影響を及ぼすか一症例にて検討することとした.【方法】本症例は,被殻出血により右片麻痺を呈した60 代男性であった.Brs:上肢Ⅱ・下肢Ⅲの運動麻痺を認めていた.運動性失語を認めるが指示理解良好であった.入院時の移動能力は,モジュラー型車椅子を使用していた.研究デザインをABA法とし,通常の運動療法前に自主練習として,病棟にて方向転換を含む車椅子自操を10分間,A期はモジュラー型車椅子,B期は足漕ぎ車椅子とし,各期間7日間施行した.アウトカムとして,車椅子走行距離,下肢荷重率,FACTを施行した.本研究はヘルシンキ宣言に沿って対象者の倫理的配慮を行った.【結果】結果は,走行距離(7日間の平均):A期52.9m,B期300m,A’期116.3mであった.下肢荷重率(Kgf/Kg)とFACT(点)(初期/ A期後/ B期後/ A’期後)は, 0.26/0.27/0.33/0.27および7/8/13/13であった.【考察】今回,足漕ぎ車椅子駆動を行った結果,下肢荷重率・FACTの上昇を認めた.ペダリングにより座位での麻痺側足底への荷重率が増大し静的座位バランスが安定したと考えた.これにより座位における支持基底面内の重心移動が可能になったと考えた.病棟における足漕ぎ車椅子駆動は麻痺側下肢の筋収縮を促し廃用症候群の予防,座位でのADL拡大に寄与すると考えた.
著者
北郷 仁彦 戸坂 友也 村山 尊司
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.10, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】 今回、左視床出血で反対側の右上下肢に小脳性の運動失調を呈した症例を経験したのでその症候を分析し報告する。 【症例】 70代、男性、右利き。診断名:左視床出血。現病歴:仕事中に右片麻痺出現にて救急搬送。保存的加療を行い麻痺は徐々に改善。発症から1カ月後、当センター転院。なお本症例には発表について文書にて説明し同意を得た。 【結果】 <発症2ヵ月後>画像所見:左視床外側部および左放線冠に低吸収域。神経学的所見:意識清明。コミュニケーションは日常会話レベル可能。錐体路徴候;深部腱反射は右上下肢亢進。運動麻痺はBr-stage右上下肢V。体性感覚は表在覚、深部覚とも左右差なし。協調性検査は右上肢は鼻指鼻試験、Arm stopping testで陽性、リーチ動作全般に企図振戦が見られた。右下肢は足趾手指試験、踵膝試験で陽性。体幹はRomberg sign陰性で、動作時の動揺も認められなかった。神経心理学的所見: MMSE 16/30点。病識あり。動作所見:移乗動作では右上肢で支持物を把握するときに振戦が見られた。食事場面ではスプーンが口唇に近づくにつれ振戦が大きくなり食物のこぼれが見られた。歩行は右下肢の振り出し時に運動失調が認められT字杖軽介助レベルであった。 【考察】 視床損傷による運動失調は視床外側部に位置する後外側腹側核(以下VPL)や外側腹側核(以下VL)に起因すると言われている。VPL損傷では感覚性の運動失調、VL損傷では小脳性の運動失調を呈する。視床損傷による小脳性の運動失調は視床性運動失調と言われ、さらに運動失調と同側に運動麻痺を伴うとAtaxic hemiparesis(以下AH)とされる。しかしVPLとVLは隣接するため視床損傷で小脳性の運動失調のみ出現することは極めて少ない。 本症例は左視床出血を発症し右上下肢に企図振戦などの運動失調が見られたが、感覚障害を伴わなかった。このことからVL損傷に起因する視床性運動失調と推察された。また右上下肢に運動麻痺も見られることからAHであると推察された。本症例はVL損傷により小脳性の運動失調が生じるという諸家の報告を裏付ける結果となった。また退院時の屋内移動手段は下肢の運動失調により杖歩行が自立に至らず、歩行器歩行であった。 【まとめ】 運動麻痺と同側肢に運動失調を呈すると運動麻痺に重複され運動失調が見逃されやすい。運動麻痺と運動失調の重複は予後に影響する可能性がある。画像所見や臨床症状から運動失調の存在を見逃さないことが重要で今後症例を積み重ね予後予測や治療方法について検討していく必要がある。
著者
井所 拓哉 山鹿 隆義 栗原 秀行 篠原 純史 秋山 淳二 石黒 幸司
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.272, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】 National Institute of Health Stroke Scale(NIHSS)はt-PAの適応判断に用いられ,また在院日数や転帰,ADLとの関連性が報告されており急性期脳卒中リハビリテーションにおいて有用な包括的評価尺度である.しかし,ADL予後予測への応用を検討した報告は少なく,NIHSSからどのように判断するかは定かではない.本研究の目的はNIHSSを用いた急性期評価からADLの中でも重要な歩行自立の予後予測精度,判別基準について検討することである.【方法】 対象は2010年1月から10月に入院した脳卒中患者69例(平均年齢69.9±12.1歳,男性45例,女性24例,脳梗塞39例,脳出血30例).脳卒中病変がテント上以外,病前ADLがmodified Rankin Scale≧3,リハビリテーション治療継続に影響を与える重篤な合併症を有する者は対象から除外した.発症3日以内のNIHSSと急性期または回復期病院の最終退院時のFunctional Independence Measure(FIM)移動項目(歩行)の得点を後方視的に調査した.データの取り扱いについては,当院における個人情報管理の指針を遵守した. 統計学的解析として,歩行自立度はFIM歩行6点以上を自立群,5点以下を非自立群に分け,これら2群を従属変数,NIHSSおよび属性データ(年齢,性別,脳卒中病型,麻痺側)を独立変数としてロジスティック回帰分析(強制投入法)を行った.またNIHSSによる歩行自立の予測能を調べるためにROC曲線(Receiver Operating Characteristic Curve)を作成し,予測精度の指標であるROC曲線下面積(Area Under the Curve:AUC),カットオフ値を求めた.【結果】 対象者の急性期,回復期病院を合わせた入院期間は平均71.9±50.8日,NIHSSは中央値5(範囲1-39),歩行自立群は46例(66.7%)であった.ロジスティック回帰分析の結果,NIHSSのみが歩行自立の可否に関連する有意な独立変数であった(P = 0.0001).ROC曲線から求められたAUCは0.854(P = 0.009),Youden indexで算出した歩行自立のNIHSSカットオフ値は≦9(感度91.3%,特異度78.3%)であった.【結論】 脳卒中患者における発症早期NIHSSからの歩行能力の予後予測について検討した.ROC曲線解析より得られたカットオフ値から歩行自立可否を判別することで,概ね良好な予測精度を有することが示された.NIHSSは発症早期からの予後予測として歩行自立を判断するための評価尺度として有用と考えられた.
著者
川井 祐美子 吉本 真純 坂田 佳成 天野 喜崇 金子 貴俊 宮本 梓
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-058, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】先行研究において,足関節背屈運動に伴い遠位脛腓関節(以下,DTFJ)が離開することや足関節内反捻挫による不安定性がDTFJの離開と関係すると報告されているが,足関節背屈に伴うDTFJの離開距離については明らかになっていない.本研究の目的は,足関節の前方不安定性がDTFJ離開距離に与える影響を明らかにすることである.【方法】対象者は大学生30名(左右合計60肢)とした.評価項目は,足関節背屈可動域,背屈0°のDTFJ離開距離,最大背屈位のDTFJ離開距離,前方引き出しテスト(以下,ADT)とした.DTFJ離開距離の測定は超音波断層撮影装置(TOSHIBA社製Nemio XG SSA-580A)を使用した.計測後,最大背屈離開距離と0°離開距離の差(以下,開大距離)を算出した.統計処理は足関節背屈0°のDTFJ離開距離および最大背屈位のDTFJ離開距離と足関節背屈可動域との関係性についてピアソンの積率相関係数を用いた.有意水準は5%未満とした.【倫理的配慮】所属施設の倫理委員会にて承認を得た.参加者に十分な説明を行い,書面にて同意を得た.【結果】ADTは陰性48脚(以下,陽性群),陽性12脚(以下,陰性群)であった.陽性群,陰性群ともに背屈0°離開距離と開大距離の間に有意な負の相関を認めた(陰性群:r=-.34.p<.05,陽性群:r=-.73,p<.05).陰性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な正の相関を認めた(陰性群:r=.47,p<.05)が,陽性群最大背屈離開距離と開大距離の間に相関を認めなかった.また両群とも開大距離と背屈可動域の間に有意な相関を認めなかった.【考察】陰性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な正の相関を認めたが陽性群最大背屈離開距離と開大距離の間に有意な相関を認めなかった.この要因として足関節前方不安定性による距腿関節のマルアライメントが背屈に伴うDTFJの開大に影響していると考えられる.よって陽性群においてDTFJ開大制限が生じていること示唆された.
著者
朝倉 彩 小出 慧
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-002, 2020 (Released:2020-01-01)

【目的】90度側臥位では臀部体圧が上昇するとされ、褥瘡予防の姿勢には適さないが、臨床上必要となることがある。先行研究において股関節や膝関節角度により背臥位や30度側臥位の体圧が変化することが報告されており、90度側臥位においても股関節角度を変化させることで体圧は増減するか検討した。【方法】対象は健常成人男性10名(24.1±1.5歳)を対象とし、測定体位は右90度側臥位、計測項目は右大転子部の体圧および全身接地面積とした。両側股関節屈曲位(以下、両側屈曲位)と、クッションを用い左股関節内外転中間位とし、右股関節屈曲0から20度とした肢位(以下、左下肢除圧位)に設定し、股関節屈曲角度を30度、60度、90度に設定した。体圧測定には、体圧検知センサSRソフトビジョン全身版(住友理工株式会社)を使用した。 統計処理は、3回の測定の平均値を代表値とし、同じ角度での両側屈曲位と左下肢除圧位のそれぞれの差を対応のあるt検定を用い検討した。解析には統計ソフトウェアSPSS(IBM社製)を使用し、有意水準はそれぞれ5% 未満とした。本研究はヘルシンキ宣言に則り実施した。【結果】大転子部の圧は、左下肢除圧位は両側屈曲位と比較し屈曲90度でのみ、有意に減少した(p<0.05)。【考察】90度側臥位にて非接地側の股関節屈曲角度を増加させると、下肢の質量中心が体幹質量中心から離れることで骨盤の接地側への回旋モーメントが生じ、下肢にかかる荷重量が増加したと考えられる。両側屈曲位では左下肢の荷重を右下肢で支えるため、大転子部の体圧が増加したと考えられる。左下肢除圧位では、右下肢にかかる荷重はクッションにかかる。そのため体圧が減少したと考えられる。以上から、90度側臥位を行う際は、非接地側の股関節を屈曲させるほど対側下肢に荷重が移り、それをクッション等で支える事で大転子部の体圧が軽減できることが示唆された。
著者
大関 勇人
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.338, 2011

【はじめに】<BR>今回,当訪問リハにて脳出血重度左片麻痺,高次脳機能障害を呈した症例を担当する機会を得た.本症例では基本動作,移乗動作獲得と共に生活範囲の拡大を目指した.その経過について若干の考察を加えて報告する.<BR><BR>【症例紹介】<BR>58歳男性 脳出血後遺症(左片麻痺) 要介護3 高次脳機能障害像(左半側空間失認,易疲労性,易怒性,注意障害等)が認められる.キーパーソン.妻 2009年10月発症. 2010年6月自宅退院後,訪問リハ開始.<BR><BR>【初期評価】<BR>左片麻痺(Br.Stage上肢・手指I下肢II)感覚は表在・深部覚ともに重度鈍麻.机上テストは異常なし.動作時の左上下肢の忘れ著明.注意の持続困難や易怒性等が見られる.Barthel Index35点.<BR><BR>【経過】<BR>2010年6月,訪問リハ開始(週2回).ポータブルトイレ・ベッド等の移乗時転倒頻回.基本動作も介助量多い.基本動作,移乗練習中心にアプローチ開始.妻にも介助方法を指導した.<BR>易疲労性や注意持続困難のため,こまめな休憩や動作の反復練習を行った.動作時の左上下肢の管理や車椅子のブレーキのかけ忘れが見られたため,簡単な言葉で口頭指示するよう工夫した.その結果徐々にブレーキのかけ忘れが軽減,転倒の頻度減少.移乗動作が監視レベルに改善し,活動範囲も拡大した.<BR>2010年8月,ケアプランの見直しを行ない訪問リハの頻度を減らし1時間以上2時間未満の通所リハを導入した.<BR>2011年1月,車椅子ブレーキのかけ忘れはほぼ改善.左上下肢の管理も良好となる.その後再度ケアプランの見直しを行ない現在は週1回の訪問リハビリ.週4回のデイサービスを利用中である.四点杖歩行軽介助で10m可能.Barthel Indexは60点に向上.<BR><BR>【考察】<BR>本症例は重度の麻痺,高次脳機能障害の影響もあり動作獲得に時間を要した.具体的には,動作の反復練習や声かけなど中心にアプローチを行なった.また,同時に家族指導も行ないコミュニケーションを図った.この取り組みが移乗動作の改善・左側への注意力向上及び在宅生活の安定につながったのではないかと考える.<BR>生活の安定と共に,ケアプランの見直しを行い活動範囲の拡大を目的に通所リハを導入した.その結果,定期的な外出の機会増加や一定のリズムで生活を送ることにつながった.高次脳機能障害に対しては身体機能面のみでなく生活環境についてもアプローチを行う事が大切であると考える.<BR> 本症例は50代と年齢も若いため在宅生活の拡大を図るとともに社会参加の拡大も今後の課題である.今後も生活動作のアドバイスや家族指導などを継続して行ない生活をサポートする必要があると考える.
著者
斎藤 広志 小尾 尚貴 山田 祐子 竹内 大樹 兼岩 淳平 多田 智顕
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-025, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】超音波検査は体表から触知できない深層を可視化でき、患者へ与える負担が少ない検査法である。 今回肩挙上時に疼痛を訴える肩関節周囲炎患者に対して、理学療法評価に超音波診断装置を用いて機能評価、治療介入を行った症例を経験したので報告する。【症例】40代女性。2018年12月更衣動作で受傷し、右肩関節周囲炎と診断。【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に沿い発表目的を説明し同意を得た。【初期評価】右肩ROM自動屈曲100°他動屈曲160°外転90°であった。整形外科的テストはNeer Test陽性。上腕骨頭の超音波動態評価で、肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。Horizontal Flexion Test 陰性であった。肩甲胸郭機能はElbow Push Test陽性。 MMTは肩甲骨外転・上方回旋3肩甲骨下制・内転3であった。JOAスコア67点であった。【理学療法経過】超音波動態評価で肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。また、結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。評価上から肩甲胸郭関節機能障害を認めた。以上評価結果から肩甲胸郭関節機能障害から肩峰下インピンジメントが生じていると判断して、肩甲胸郭関節機能に対し理学療法を実施した。理学療法プログラムは前鋸筋トレーニング、小胸筋ストレッチ、側臥位で肩関節外転運動を実施した。 4週間理学療法を実施し、右肩ROM自動屈曲175°外転170°に改善した。Neer Test陰性、超音波動態評価の肩関節外転時の肩峰と大結節の衝突も消失した。MMTは全項目で改善を認めた。肩挙上時痛消失し、JOAスコア97点と改善した。【考察】超音波動態評価から上腕骨頭の動態を可視化することで、肩甲胸郭機能に対しての治療を立案でき、疼痛と可動域が改善したと考える。
著者
齋藤 里美 齋藤 幸広 濱野 俊明 高関 じゅん 畠中 佳代子(OT) 加藤 理恵(ST) 友井 貴子 内田 賢一
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第25回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.23, 2006 (Released:2006-08-02)

【はじめに】膝蓋骨骨折に対する骨接合術を施行した患者における経過と機能の変化を把握する目的で、調査検討を行ったので報告する。【対象と方法】対象は2002年4月以降、当院にて外傷性の膝蓋骨骨折に対する骨接合術を施行した患者28例(男18女10、平均年齢54.7歳)である。 診療録より、各症例の骨折型、手術日、理学療法(PT)開始日、膝関節可動開始日、荷重開始日、退院日、退院時膝関節可動域、退院時移動能力を調査した。【結果】骨接合術後、PT実施計画に大幅な変更無く退院した例は28例中24例だった。骨折型は腰野の分類で、単純横骨折型8例、第3骨片型が9例、第4骨片以上多骨片型(多骨片型)が7例であった。手術日~PT開始日までは平均1.9日、退院日までは平均24.0日であった。 PT開始日より術側膝関節伸展位での股・膝関節周囲筋の筋力増強、非荷重での立位・歩行を行った。膝関節可動域の回復に合わせて術側下肢の自動介助運動を追加したが、関節運動を伴う積極的な筋力増強は退院時まで行わなかった。 膝関節可動域については、単純横骨折型と第3骨片型では全例で術後1週以内に開始したが、多骨片型では術後1週以内が4例、残りの3例は術後2週以降の開始となった。 部分荷重負荷での歩行は単純横骨折型と第3骨片型では1例を除く16例で2週以内に開始した。多骨片型では4例は2週以内に開始、2例はギプス固定後早期に開始し、残りの1例は5週の安静となった。 24例のうち3例は、手術後ギプス固定が必要となった。うち2例が多骨片型の骨折であり、バイク乗車中の受傷であった。 退院時にギプス固定をしていなかった22例の膝関節屈曲角は平均120°であった。120°に達しなかったものは第3骨片型で9例中3例が100°~120°、多骨片型では6例中2例が90°未満であった。 退院時移動能力は、独歩が9例、T字杖歩行が4例、片松葉杖歩行が6例、両松葉杖歩行が3例、その他2例であった。 一方、28例中4例は在院中に再手術の適応となった。1例は術後10日で転倒し再骨折となった80歳男性で、再手術後2週で部分荷重負荷を開始し、30日後膝関節屈曲角130°でT字杖歩行退院となった。3例は術後早期の画像所見にて骨片脱転が認められ、うち2例は当院で再手術を施行した。術後15・28日後にギプスシーネ下にて部分荷重負荷・関節可動を開始し、43・44日後にそれぞれ片松葉・T字杖歩行にて自宅退院となった。尚、退院時膝関節屈曲角は70・90度であった。【まとめ】膝蓋骨骨折に対する骨接合術を施行した患者について調査検討を行った。再骨折や骨片脱転などで再手術となる例もあった。
著者
林 友則 保木本 崇弘 樋口 謙次 中村 高良 木山 厚 堀 順 来住野 健二 中山 恭秀
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.P-9, 2020

<p>【目的】急性期の脳卒中診療において、早期から退院の可否や転院の必要性などに関しての転帰予測が求められる機会は多い。現在までの脳卒中転帰予測に関する報告の中で、急性期の転帰予測をフローチャート形式にて示した報告は少ない。そこで本研究では、決定木分析を用いて初回理学療法評価から転帰予測モデルを作成することを目的とした。</p><p>【方法】対象は2012年7月から2015年4月までに当大学附属4病院に入院し理学療法が開始された脳梗塞,脳内出血患者496名とした。開始日が発症当日または発症後1週間以上経過している対象59例を除いた438例(男性315 例,女性123例,年齢69.3±13.0歳)を対象とし、退院群163名と転院群275名の2群に分類した。理学療法開始日数、NIHSS、GCS、上田式12段階片麻痺機能検査(以下、12グレード法)、ABMS各項目、年齢、病態(脳梗塞、脳出血)、性別、就労の有無、キーパーソンの有無、同居家族の有無、家屋環境をカルテおよび評価表より収集した。それらを独立変数として、退院、転院を従属変数とした決定木分析を実施した。統計解析ソフトはRを使用した。</p><p>【倫理的配慮】本研究は当大学倫理委員会の承認を得た上で、ヘルシンキ宣言に遵守して行った。</p><p>【結果】退院に関しては、NIHSSが3未満である場合(85 %)、そして、NIHSSが3以上であっても、12グレード法が9以上かつABMSの立ち上がりが2以上の場合(69 %)が退院となる決定木が得られた。転院に関してはNIHSSが3以上、12グレード法が9未満の場合(81%)と、NIHSSが3以上、12グレード法が9未満かつABMSの立ち上がりが2未満の場合(64%)が転院となる決定木が得られた。</p><p>【考察】退院の転帰予測には、NIHSSの点数に加え、分離運動の可否、立ち上がりの安静度が影響していると考える。今回の決定木による転帰予測モデルは、急性期の脳卒中診療において臨床的な判断基準を示すことが可能であり、転帰予測に有効であると考えられる。</p>
著者
大高 知世 野口 涼太
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.88, 2011

【目的】<BR> H22年度の診療報酬改訂により、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)における「休日リハビリテーション提供体制加算」が新設された。それに伴い、回復期病棟で365日体制をとる病院が増えてきている。当院でも、H22年4月より導入しているが、365日体制によるリハビリテーション(以下、リハ)の効果判定はまだ少ない。そこで今回、365日体制前後の単位数・在院日数・Functional Independence Measure(以下FIM)・転帰を比較し、今後の365日体制における課題検討に役立てたい。<BR>【方法】<BR> 対象はH21.4.1~12.31(53例:男性27名,女性26名,平均年齢74±12.1歳)及びH22.4.1~12.31(59例:男性27名,女性32名、平均年齢76±11.3歳)の期間中に当院回復期病棟に在院していた脳血管障害患者である。なお、前者がリハ日数5.5日/週である365日体制前群(以下、前群)、後者がリハ日数7日/週である365日体制後群(以下、後群)とする。両群について、1人1日当たりの単位数(総単位数/在院日数)・在院日数・各月毎のFIM増加数(運動・認知・総得点)・入院時から退院時までのFIM増加数(運動・認知・総得点)・転帰をカルテより後方視的に情報収集した。それぞれウェルチのt検定、もしくはマン・ホイットニ検定による統計学的処理により365日体制前後群での2群間比較を行なった。<BR>【結果】<BR> 1人1日当たりの平均単位数(前群3.0±1.1,後群3.9±0.9)では前群より後群が有意に多く(p<0.05)、平均在院日数(前群136±34.8,後群123±35.6)では前群より後群は有意に少なかった(p<0.05)。また、1ヶ月毎のFIM増加数において前群より後群で比較的大きい値を示す傾向にあるが、統計学的な有意差は認められなかった。入院時から退院時までのFIM増加数(前群18.1±17.1,後群31.6±21.6)においてのみ、後群で有意に大きい値を示した(p<0.05)。転帰は前群(自宅67.9%,老健18.9%,療養11.3%,他1.9%)と後群(自宅57.6%,老健23.7%,療養11.9%,他6.8%)で有意差はなかった。<BR>【考察】<BR> 今回、提供単位数の増加や在院日数の短縮、FIM増加数の向上がみられ、365日体制下でのリハ提供における有用性が示唆された。今後、在宅復帰率の向上を図るため、実用的なADL能力の獲得に向け、リハ提供体制だけでなく技術・知識等における更なる質の向上が課題であると考える。
著者
久保田 悦章 市川 遥 杉山 矩美 吉野 涼太 法山 徹
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.O-19, 2020

<p>【目的】脳卒中患者の歩行自立可否は転帰先を検討する上で重要であり、患者本人や家族も自立を望んでいる事が多い.先行研究では回復期病棟入棟時の運動機能から,歩行自立に関連する要因を検討しているものは多いが認知機能を含めて検討したものは少ない.本研究では,回復期病棟入棟時の基本属性や運動及び認知機能から歩行自立に関連する要因を検討した.</p><p>【方法】当院回復期病棟に入棟した脳卒中患者84名を対象とした.調査項目は年齢,性別,病型,麻痺側,発症後日数,入棟時NIHSS,mRS,Br.Stage,基本動作能力,FIM総得点,運動得点(mFIM),認知得点,及び下位項目,退院時移動とした.退院時移動(歩行)が6点以上を自立群,5点以下を非自立群とし単変量解析を行った.その後従属変数を歩行自立可否,単変量解析で有意差を認めた項目を独立変数とし多重ロジスティック回帰分析を行った.採択された変数はROC曲線を用いcut off 値を求めた.単変量解析はt検定,Mann-whitneyのU検定,χ<sup>2</sup>検定で実施し,有意水準はp=0.05とした.本研究は当院企画運営委員会の承認を得て行った.</p><p>【結果】自立群は43名(男28,女15),非自立群は41名(男14,女27)であった.歩行自立群と非自立群の単変量解析において,年齢,麻痺側,発症後日数を除く項目に有意差がみられた.多重ロジスティック回帰分析では,性別,mFIMが採択された(判別的中率81.0%).有意な独立変数は性別(OR3.46.95%CI1.19-10.04, p<0.05),mFIM(OR0.94.95%CI0.91-0.96, p<0.01)であった.歩行自立のcut off値はmFIM46点(感度81.4%,特異度75.6%, AUC0.88)となった.</p><p>【考察】脳卒中患者の歩行自立には性別,入棟時mFIM が関連していることが示唆された.性別は,平均年齢が女性で高かったことが影響したと思われた.mFIMはADL全般を反映しており,歩行の自立においても重要な因子であることが考えられた.また,cut off値の精度については比較的良好であり,歩行の自立において臨床上の指標となり得る可能性が示唆された.</p>
著者
板場 一訓 今井 正義
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.307, 2011

【目的】<BR>スポーツにはスポーツ特有の姿勢(フォーム)があり競技中の姿勢制御の熟達は精巧なパフォーマンスを決定する。本研究ではスポーツの中でも特に野球の重心制御の特徴を足圧中心の変化から検討することである。<BR>【方法】<BR>対象は、野球選手(以下:B群)、運動習慣のない男性(以下:C群)の10名とした。また、利き脚は右脚である。課題は、重心動揺計(GS-11・アニマ社製)を使用し、裸足で開眼と閉眼で1分間の両脚立位・左右片脚立位保持をそれぞれ3回施行し、単位時間軌跡長、単位面積軌跡長、左右方向・前後方向の最大振幅を算出した。統計処理は、One-way ANOVAを適用し多重比較検定にTukey Kramer法を適用し有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】<BR>B群、C群の左右の片脚立位において、単位面積軌跡長、左右方向最大振幅、前後方向最大振幅は、それぞれ閉眼時に比べ開眼時は有意に短かった。B群・C群間の比較では、C群に比べ、B群が有意に短かった。単位時間総軌跡長は、B群は、左右片脚立位において、開眼時、閉眼時共に有意差はなかった。しかし、C群は、右片脚立位では有意差はなかったが、左片脚立位で開眼に比べ閉眼が有意に短かった。<BR>【考察】<BR>B群は利き脚に比べ非利き脚関係なく足圧中心がコントロールされ、C群は利き足での開眼・閉眼は左右差なく重心動揺をコントロール行っているが、非利き脚では重心動揺が増加している。野球は投球動作やバッティング動作など不安定な状況でのパフォーマンスが求められ、足底からのフィードバック制御、フィードフォワード制御がより必要になる。また、足底からのフィードバックに加え、足部周囲や他関節からの体性感覚・固有感覚からのフィードバックが必要であるため、競技の特性上、体性感覚系をより活性化させていることが考えられる。野球に限らず直接地面と接する競技では足部が安定することで身体運動軸が安定し、運動の伝達効率が改善され重心位置のコントロールが行いやすくなり、下肢、骨盤、体幹、頸部の筋が効率よく反応し、高いパフォーマンスを発揮しやすい状態になっているものと考える。<BR>【まとめ】<BR>野球選手は高いパフォーマンスを発揮するために運動習慣のないものに比べ、高度な姿勢制御を行っている。
著者
久喜 絵理 桑垣 佳苗 吉野 恭正
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.239, 2011 (Released:2011-08-03)

【目的】うつ病があるとリハビリテーション(以下,リハ)は滞り,予測通りにはADLが向上しにくい.また,うつ病には波があり躁期と増悪期がある.今回,うつ病を有する右膝蓋骨骨折の患者を担当し,入院中にそれぞれの時期を経験したので,以下に報告する. 【方法】カルテ記録より経過を追い考察をする.本症例には発表の了承を得ている. 【結果】2010年4月4日自宅の庭で転倒,右膝蓋骨骨折を受傷,同日入院.翌日より術前リハ開始.4月15日観血的整復固定術施行,翌日より術後リハ開始.4月22日骨折部の転位あり,4月27日再度観血的整復固定術施行.翌日より右膝関節運動禁忌にて術後リハ再開.5月6日骨折部の再転位あり.右膝関節伸展位でのギプス固定にてリハ介入継続.この頃から消極的な発言が聞かれ始めた為,リハ介入時間を統一した.5月17日よりルジオミール投薬開始.この頃から他者依存や危険行動が目立ち始めた.7月1日ギプス固定からニーブレースへ変更.大声,暴言も著明となり明らかなうつ病の増悪と意欲・発動性の低下が認められた. 7月14日精神科受診にて炭酸リチウムが減薬となった.病棟での問題行動は続いていたが,言動や表情がやや改善されてきた.7月30日主治医より,自宅退院かそれ以外か決めるよう説明がされた.8月5日自宅への試験外出以降,リハ意欲の向上を認め,病棟生活の質も向上した為,リハ介入時間を再度統一した.9月4日介護サービス導入にて自宅退院となった. 【考察】うつ病患者は意欲を持ちにくく,意欲が安定して継続しない為,リハは難渋しやすい.生活の中にパターン化・習慣化された行動を取り入れることが効果的とされている為,介入時間と訓練内容を一定化させた.生活範囲の狭小化に伴う流入刺激の減少にて,うつ病が増悪するとされている為,病棟での安静度や歩行練習量を増減させた.更に本患者は他者依存が強かった為,口頭指示のもと監視下でのADL動作練習を行い,病棟へ伝達した.うつ病治療薬の効果は,投与後1~2週間で発現する.本患者はうつ病増悪後,専門医により抗躁薬が減薬された.リハ意欲が伺え始めたのは減薬9日後であり,病棟生活も含め快方を認めたのは減薬23日後であった.薬効が現れ始めた頃に自宅への試験外出を行ったことで, 今後の見通しが定まり,心理的相乗効果が精神状態を安定させたと考える. 【まとめ】うつ病には波がある為,投薬状況と患者の言動や精神状態の観察と照合が必要と考える.また,身体能力と精神状態に応じて,運動負荷や課題の難度調整が必要である.
著者
渡部 幸司 稲垣 麻以 澤端 秀久
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.135, 2017 (Released:2019-04-03)

【目的】随意運動に伴う予測的姿勢制御については多く報告されている。それらは主に四肢の運動に関する報告であり、口腔の運動に関する報告はみられない。そこで本研究は、挺舌運動に予測的姿勢制御が伴うかを調査する目的で、健常成人の足圧中心軌跡を測定した。【方法】実験協力者は33.5 ± 6.0 歳( 平均±標準偏差) の健常成人12 名であった。課題は、開口位での挺舌運動20 回とした(メトロノームを使用して50 回/ 分の速さ)。測定肢位は足幅が第2 中足骨間15cm となる立位。重心動揺計(ANIMA 社製)を使用して足圧中心軌跡を計測し(サンプリング周期33msec)、その映像をビデオカメラにて録画した。静止立位時の前後足圧中心位置を基準とし、録画映像より挺舌のタイミングを計り、挺舌の前後500msec の前後足圧中心軌跡の平均値を算出した。なお、協力者には本研究の概要を説明し、書面にて同意を得て行った。【結果】12 名の足圧中心軌跡平均値の波形は、挺舌開始の165msec 前に最も後方重心となり、231msec 後に最も前方重心となった。【考察】四肢の運動時の足圧中心軌跡は、運動前100 ~200msec に運動方向と反対側へ移動すると言われている。舌の重さと移動距離は非常に小さいが、挺舌運動でも四肢と同様の足圧中心軌跡をたどることが示唆された。【理学療法研究としての意義】本研究により、舌の運動時に予測的姿勢制御が伴うことが示唆された。立位等におけるバランス障害の評価や治療の際には、四肢体幹の他に舌の運動も考慮する必要があるだろう。
著者
山室 慎太郎 田島 泰裕 雫田 研輔 荻無里 亜希 高橋 友明 畑 幸彦(MD)
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.22, 2012 (Released:2012-11-07)

【目的】腱板断裂手術例において肩関節周囲筋群の筋スパズムが原因で術後早期の後療法がスムーズに進まない例をしばしば経験する.しかし筋スパズムの臨床成績に及ぼす影響について言及した報告はほとんど無い.今回,われわれは術後に筋スパズムが出現しやすい大胸筋に注目し,大胸筋のスパズムが臨床成績及ぼす影響について調査したので報告する.【対象と方法】対象は腱板修復術後に大胸筋のスパズムを認めた22 例22肩とした.術前と術後2週で大胸筋の筋活動量と筋硬度および肩関節の運動時痛と可動域を測定した.大胸筋の筋活動量は背臥位で術側手関節を前額部にのせた状態で表面筋電計Noraxon社製Myosystem1400Aを用いて10秒間測定し,積分値(μV×秒)を算出した.大胸筋の筋硬度は前述の測定肢位でTRY ALL社製NEUTONE TDM-NI/NAIを用いて同一点を3回計測し,平均値を求めた.肩関節の運動時痛はVisual Analog Scaleを用いて測定した.肩関節可動域は屈曲,外転,水平屈曲,水平伸展および90°外転位外旋方向の各角度を測定した.なお、大胸筋の筋活動量と筋硬度の術前と術後2週との間の比較はウィルコクソン符号順位和検定を用いて行い,大胸筋の筋硬度と肩関節の運動時痛または可動域の間の相関はスピアマン順位相関係数を用いて行い,危険率0.05未満を有意差ありとした. 【説明と同意】本研究の趣旨を十分に説明して同意を得られた患者を対象とした.【結果】大胸筋の筋活動量と筋硬度はともに術後2週時が術前より有意に高かった(P<0.01,P<0.01).また,術後2週においてのみ,大胸筋の筋硬度と肩関節の運動時痛との間に中等度の正の相関を認め(r=0.43,P<0.05),大胸筋の筋硬度と屈曲角度との間に強い負の相関を認め(r=-0.63,P<0.05),大胸筋の筋硬度と90°外転位外旋角度との間にとの間に中等度の負の相関を認めた(r=-0.48,P<0.05). 【考察】大胸筋の筋活動量と筋硬度は術後早期に高くなっており,筋硬度と運動時痛は正の相関をしており,さらに筋硬度と屈曲角度および筋硬度と90°外転位外旋角度は負の相関をしていた.したがって,術後早期の運動時痛が肩関節周囲筋群のスパズムを引き起こし、結果的に関節可動域制限につながると考えられるので,腱板断裂術後早期の後療法は疼痛を誘発しないように軟部組織の伸張を図ることが重要であると思われた.【まとめ】術後2週の運動時痛が大胸筋の筋スパズムを引き起こし筋活動量や筋硬度を増加させ,結果として関節可動域を制限すると思われた.
著者
平田 史哉 稲垣 郁哉 小関 博久 財前 知典 関口 剛 大屋 隆章 多米 一矢 松田 俊彦 平山 哲郎 川崎 智子
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【目的】<BR>臨床において明らかな外傷がないにも関わらず手関節痛をきたし,日常生活を大きく制限されている症例を多く見受ける.これらの症例の特徴として安静時に尺屈位を呈していることが多い.尺屈の主動作筋である尺側手根屈筋は豆状骨を介し小指外転筋との連結が確認でき,双方の筋が機能的に協調することは既知である.小指外転筋は小指外転運動や対立機能,手指巧緻動作に関与し,筋出力低下に伴い手関節周囲筋群の筋バランスの破綻に繋がると考える.そこで尺側手根屈筋との連結がみられる小指外転筋の筋出力低下を,尺屈位で補償し小指外転筋機能を代償しているのではないかと仮説を立てた.そこで本研究では手関節を中間位,尺屈位の二条件にて,各肢位の小指外転運動(以下AD)時における小指外転筋及び手関節尺側筋活動の違いについて表面筋電図を用いて比較検討した.<BR>【方法】<BR>対象はヘルシンキ宣言に沿った説明と同意を得た健常成人6名12手であった(男性5名,女性1名:平均年齢28.6&plusmn;3.77歳).測定肢位は端座位とし,上肢下垂,肘関節90度屈曲,前腕回外位にて計測した.前腕を台に置き,他動的に中間位,尺屈位を設定し各肢位でADを行った.尺屈位は手関節掌背屈が出現しない最大尺屈位と規定した.被検筋は小指外転筋(以下ADM),尺側手根伸筋(以下ECU),尺側手根屈筋(以下FCU)とした.各被検筋に対して5秒間の最大等尺性随意収縮を行い,安定した2秒間の筋電積分値(以下IEMG)を基準として各筋におけるAD時の%IEMGを算出した. 統計処理には,対応のあるt検定を用い,中間位,尺屈位における各筋のAD時の%IEMGに対して比較検討を行った. なお有意確率は5%とした.<BR>【結果】<BR>尺屈位においてADM,ECUの活動に有意な増加を認めた(ADM:p<0.01 ECU :p<0.01).しかし,同肢位ではFCUの活動に有意な増加は認められなかった.<BR>【考察】<BR>本研究によりFCUの活動増加を伴わない手関節尺屈位においてADMの活動が有意に増加することが示唆された.ADMは豆状骨から起始し,近位手根骨列と機能的に協調する.手関節尺屈位において,豆状骨は三角骨と共に橈側へ滑り,かつ尺側近位へひかれる.これにより豆状骨の腹側部に起始するADMは中枢へ牽引され筋張力により豆状骨が安定し,ADMの筋活動が向上したと考える.これらのことから日常生活を尺屈位で過ごすことでADMの筋出力を補償しうる可能性があるのではないか.<BR>【まとめ】<BR>手関節尺屈位が手関節筋群に影響を与えることが示唆された.ADM筋出力低下は,代償的な手関節尺屈位をもたらし,手関節構成体にメカニカルストレスを与える可能性が示唆された.また肘関節,肩関節への影響も考慮した追加研究を行う.
著者
北村 望美 鍋島 雅美 君塚 実和子 平井 竜二 山北 令子 鈴木 康仁 木村 黎史
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第36回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.2, 2017 (Released:2019-04-03)

【目的】上腕骨外側上顆炎( 以下上顆炎) は, 短橈側手根伸筋を主体とする上腕骨外側上顆の伸筋付着部障害とされている.しかし病態は不明確な点が多く, 長期化する症例や再発する症例を多く経験する. この経験から, 上顆炎患者と健常者の間に身体特性の違いが影響していると考え, 両者の関節可動域の比較, 検討を行った.【方法】対象は上顆炎患者11 名22 肢( 男7 名, 女4 名, 平均年齢58.8 ± 11.5 歳) の上顆炎群及び, 上肢に既往の無い健常者11名22肢(男7名,女4名,平均年齢53.5±15.2歳)のControl群(以下C群)とした.上顆炎群患側(右9肢,左2肢),健側(右2肢,左9 肢)に合わせ,C群患側(右9肢,左2肢),C群健側(右2肢,左9 肢)を比較対象とした.関節可動域の測定項目は肘(屈曲,伸展),前腕(回外,回内),手(掌屈,背屈,橈屈,尺屈)とし,自動と他動をそれぞれ測定した.上顆炎群とC 群の患側・健側可動域をMann-Whitney のU 検定を用いて有意差を求めた( 有意水準5%未満).【倫理的配慮, 説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に準じ, 事前に対象者に研究の目的と方法, 個人情報の取り扱いについて説明し, 同意を得た.【結果】患側自動回外では上顆炎群(85 ±10°),C 群(92.7±17.3°)と上顆炎群が有意に低値を示した(p <0.05). 患側他動回内では上顆炎群(87.3 ±12.3°),C 群(92.3 ± 7.7°)と上顆炎群が有意に低値を示した(p <0.05). 健側自動回外では上顆炎群(82.7± 27.7°),C 群(92.7± 17.3°) と上顆炎群が有意に低値を示した(p <0.05).【考察】上顆炎群は患側自動回外・他動回内, 健側自動回外に有意差を認めた. 自動回外で制限がみられた事から, 上顆炎群は回外筋等の主動作筋の機能低下により, 補助筋である手根伸筋の負荷が増大している可能性が考えられる. また, 回内の制限因子である輪状靭帯, 外側側副靭帯には上顆炎の要因である短橈側手根伸筋が起始し, 更に回外筋等と共同腱となり付着している事から, 上顆炎に関与する筋や靭帯の影響を受けている可能性が示唆された.