著者
河原 武敏
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.13-18, 1993-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
2
被引用文献数
1

平安鎌倉時代の植栽管理については, 主として作庭書や発掘調査などから論じられてきたが, 本研究は更に古記録のほか, 生活描写の色濃い日記・随筆・説話・物語・絵巻などから資料を収録して考察することとした。その結果,(1) 管理担当の職名。(2) 植栽の維持作業には, 清掃とその時間帯・植物の手入れ・剪定・植替え・伐採・草焼き。(3) 庭園植物の繁殖には, 株分け・挿木・接ぎ木・播種。(4) 植栽の保護施設には, 柵囲い.植桝・霜除け・控木の存在が明らかとなった。
著者
進士 五十八
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.73-78, 1984-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

Agingは古びることの意・本論は日本庭園の精神的特質の代表的側面とされてきた“わび・さび”の現代的解釈をAging概念を導入することによって次のように結論した。モンスーン知戻高温多楓土下では自然材が時間経過によってAgingがかかり, 風化変質腐朽してゆく“さび”の語源にその意味が含まれるようにこれを日本的風土文化の美意識は評価した。時間美としてのAgingは西洋庭園意匠に人工の廃墟が用いられたように造園の本質的要素でもある。
著者
赤坂 信
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.232-247, 1991-02-28 (Released:2011-07-19)
参考文献数
73
被引用文献数
1

ドイツ郷土保護連盟の設立 (1904) の歴史的背景と社会的動機を探り, 連盟の改称が提起されるまでの四半世紀間の活動内容及びその変遷を明らかにすることを目的とした。郷土保護運動の当初の段階は近代的発展によって郷土の風景や生活習慣が消失していくことに対する抗議や救済が主目的であった。やがて保護育成の対象は郷土の空間の構成するモノから郷土を担うヒト (Volk) へ移行する。すなわち望ましい民族の育成が課題となっていく。
著者
渡辺 達三
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.19-24, 1993-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
48
被引用文献数
1

わが国前近代のハスの観照の歴史的な変遷をみ, 1) 上代では, ハスへの観照がみられるが, 中国からの影響の大きい, 女性, 恋愛などの寓意性をもった人事中心のものであること, 2) 中古では, ハスの植物や生態などの特性がよく観察され, それを基礎にした植物や, 釈教, 人事上の事柄について観照されていること, 3) 中世では現実的, 実践的な性格を強め, ハスは環境との連係を強め, 空間, 時間, 音響などの再構成された, 複合的な事象の中で, それらとの連関において観照されていること, 4) 近世では, 前代の現実的指向, 環境との連係の傾向をいっそう強め, その植物や生態等の特性に即したものとなり, 釈教的な観照はほとんどみられなくなっていること等をみた。
著者
外村 中
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-14, 1992-08-10 (Released:2011-07-19)
参考文献数
66
被引用文献数
3 3

『作庭記』にいう枯山水は, はたして, 日本独自のものだろうか。本論は, 日本, 韓国, 並びに, 中国の古代庭園に関する文献や, 考古発掘資料の代表例を比較検討することにより, 『作庭記』にいう枯山水の源流は, 中国の古代庭園に見出し得るのではなかろうかと考える理由を明らかにしたものである。
著者
内山 正雄
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.215-220, 1982-02-18 (Released:2011-07-19)
参考文献数
23
被引用文献数
3

都市公園法が成立するまでの学会, 官界, 社会等の情勢, 並びに成立要件を跡付けながら法律制定の基本的背景を分析する。
著者
小野 佐和子
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.93-103, 1984-10-15 (Released:2011-07-19)
参考文献数
38
被引用文献数
1

近世都市における住民のレクリェーション研究のひとつとして幕末の江戸で行われた花見のあり方を考察した。その結果, 下層町人を主体とする行列・仮装・滑稽劇をその特徴に認め, 当時の花見が, 演劇的装いのもとに笑いを通じて民衆の想像力を解放する働きを有しており, 花見の場が民衆の笑いと変身の空間であるとする知見を得た。
著者
渡辺 達三
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.193-208, 1992-12-25 (Released:2011-07-19)
参考文献数
13

松平定信は致仕後, 自らを楽翁と号し浴恩園の整備を進め, そこにハスの品種を多数集め, それを観賞し, 蓮譜『清香譜』を完成させている。それまでは, ハスの品種観念も曖昧で, 品種数も数種とり上げられているたすぎなかったが, 『清香譜』では九十余種記載されていたといわれ。蓮譜史上, 画期的な意義を有する。しかし, その『清香譜』は戦後, 散逸し, その実像は明らかでない。また, 翁のハスの観賞についても, その実態についてはほとんど知られていない。そこで, 本稿では, 楽翁のハスの観賞の態度・あり様について, また, その大きな事績である『清香譜』について考察するものである。
著者
板川 暢 一ノ瀬 友博
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究(オンライン論文集) (ISSN:1883261X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.32-38, 2018-05-09 (Released:2018-05-23)
参考文献数
24

We investigated the migration range of Calopteryx atrata Selys (Odonata: Calopterygidae) using the mark and recapture method in Akuwa River and Ooka River which run through the urban area of Yokohama City, Kanagawa Prefecture, Japan. 286 individuals were marked and released at four spots, and 64 marked individuals were recaptured after several days. Initial findings showed that the maximum total migrant distance was 1319 meters, and the average was 323 meters. The individuals that migrated upper stream were more than those in the lower stream, and the migration range to upper was significantly longer than to the lower. Secondly, we analyzed the factors that promote or stunt the migration of C.atrata by GLMM with random effect. Results showed that survival days from release, the area of lower riverbed and coverage of shade were positively correlated with total migration distance. Meanwhile, the coverage of three types of the aquatic plant commonly had a negative correlation with the total migration distance. Also, the coverage area ratio of forest around rivers partly promotes the migration distance of C.atrata, if values of factors were added up in a more wide range from the release spot. The study’s results showed that continuously establishing preferred riparian habitats with aquatic vegetation and a conservation of forests close to rivers enhance C.atrata’s large migration and expanded habitats.
著者
真田 純子
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
日本造園学会 全国大会 研究発表論文集 抄録 平成16年度日本造園学会全国大会
巻号頁・発行日
pp.14, 2004 (Released:2004-09-01)

東京保健道路計画について、まずその成立過程を明らかにし、保健道路の発案者が北村徳太郎であることを明らかにした。次に北村の公園道路、慰楽地、自然観、風景術に関する考え方を整理したうえで、保健道路の路線説明を分析した。その結果、保健道路は東京市郊外のよい風景を有名無名問わず見せ、紹介する役割を持っていたこと、またそのため、保健道路は単独で完結した施設ではなく、そこを利用すること、周囲との環境などとあわさって始めて施設として意味をなすことがわかった。
著者
宮城 俊作
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.97-102, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1

アメリカ合衆国の環境芸術のなかで, 特にランドスケープ・スカルプチュアと称されるカテゴリーの作品を対象に, 技法的な側面におけるランドスケトプデザインへの影響を考察した。敷地の特性を読み取り, それを観察者と同一の観点から知覚させる操作や機能を要求されることによって生じる諸条件を止揚しつつ, より次元の高い作品として完成度をたかめてゆくプロセスは, そのままランドスケープデザインのアナロジーとして理解される。これらは, 敷地状況の読み取り方と表現媒体の幅を拡張することによって, 近代ランドスケープデザインの枠組の中に取り込むことができるものである。
著者
岡崎 文彬
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.32-39, 1972-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
6

The Taj Mahal is surely one of the most beautiful pieces of architecture in the world, but we should not overlook the garden that was once beautifully created by Shah Jahan for the memory of his beloved queen Mumtaz Mahal.Compared with the original plan, the garden has changed through the ages, but if we observe the garden carefully, we can still recognize the original spacial design of the garden. The marble tank which is placed in the center of the garden especially breaks the simplicity of the large plain garden.
著者
岩崎 寛 井上 紗代 山本 聡
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
日本造園学会 全国大会 研究発表論文集 抄録
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.21, 2006

インテリア雑貨としての植物を健全に生育させる管理条件を明らかする目的で、流通量の多い観葉植物5種を用い、異なる環境下で一定期間管理し、その生育の差異を光合成速度・SPAD値・葉量・枯死率などから比較した。その結果、光条件の違いが草丈・葉量などの成長量に大きく影響し、潅水頻度の違いはその個体の枯死率を左右することが認められた。その影響の度合いは種類によって異なり、ドラセナ・サンデリアーナとドラセナ・マッサングアナは、どの試験区においても比較的管理が容易であるといえた。フィカス・プミラは潅水よりも光条件の違いが生育や生理機能に影響を与える傾向がみられた。逆にフィットニアは、こまめな潅水管理を施せば環境に関係なく一定の生育が見込まれた。クロトンは設置環境および潅水管理、共に配慮しなければ枯死させてしまう可能性が非常に高いことがわかった。
著者
野口 学 田畑 貞寿
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.271-276, 1991-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
4
被引用文献数
1

夜間利用を考慮した公園や緑道の設計計画の諸要因を導き出すためには, 夜間における公園利用者の行動, 意識等の適切な評価が必要である. 本研究では調査対象地として日比谷公園 (東京都), 山下公園 (横浜市), グリーンパーク遊歩道 (武蔵野市) を取り上げて, 直接面接法によるアンケート調査と公園平面図等による図上計測を行い考察した. その結果, 夜間利用を考慮した公園や緑道の設計計画の諸要因において重要な位置を占める要因は, 「樹木被覆地率」と「照明計画」等であることが明らかになった.
著者
野島 義照 沖中 健 小林 達明 坊垣 和明 瀬戸 裕直 倉山 千春
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.115-120, 1992-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
5
被引用文献数
8 9

建築物の壁面につる植物を被覆させることによる夏期の壁面温度の上昇抑止効果を把握するための測定実験を行った。簡易建築物の南側につる植物で覆われた壁面とつる植物のない壁面とを設け, 壁面温度, 壁面での熱流の経時変化を, 晴れた日, 曇りの日, 晴れた日で室内は冷房, という3種類の異なった条件の日に計測した。そのうち1日の計測では, つる植物の葉からの水分の蒸散量, 地際の幹での樹液流速の計測, 熱赤外線ビデオカメラを用いた南側壁面全体の表面の温度分布の画像撮影をも行った。壁面の緑化により壁面の最高温度を約10℃低下させることができること等が確かめられた。また, 日中, 壁面緑化による壁面温度の低減量が大きくなるにつれて, 葉からの蒸散量も大きくなる傾向が見られた。
著者
高橋 理喜男
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.2-8, 1974-03-20 (Released:2011-07-19)
参考文献数
28
被引用文献数
5

The development of municipal parks in Japan commenced in 1873, when the Decree of DajOkan (the Central Government) for establishing parks as recreational place was published. It can be easily imaged that the new government was terribly rushed with a great many difficulties both in domestic and diplomatic fields and could not afford to be deeply concerned in such a “trivial” matter as recreaton for people. Consequently, it is natural to recognize some alien influences, direct or indirect, upon the preparation of the said Decree.The Decree called forth echoes all over the country and numerous parks were born in a mere ten years. Most of them, however, were based on traditional recreation places having scenic deauty and on grounds of shrines and temples or changed from castle sites. And there were some cases that could not obtain wide favor among people owing to being far from the urban area.
著者
瀨古 祥子 福井 亘 濱田 佳奈
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究(オンライン論文集) (ISSN:1883261X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.7-10, 2015-12-09 (Released:2016-01-29)
参考文献数
16

This paper will examine citizens’ thoughts on the pavement/curb failure by street tree roots in urban area of Kyoto city. The problem is a street tree root growth that rift up and break many pavements and curds. Through some questionnaire, this paper can know they have various thoughts on the problem. Citizens feel that street having the failures is not safe for their daily life. They also think the failure is not good for trees and the townscape. Some experts point out the size of planting plots and the wide of sidewalk is too small for street trees. This study also researches the incidence rate of the failure. We chose some main streets to this research. The sites of this research are 4 main streets running north-south in Kyoto city. All species of street trees for the research is maidenhair tree. As a result, people living in front of a street has the highest rate of the failure has stronger opinion on the problems than other cases. About 49% of them want to improve the condition of sidewalk and planting plot, and about 58% of them feel that the pavement/curb failure by street tree roots is not safe for walking. Improvement of comfortable sidewalk for street trees and people is required.
著者
宮城 俊作
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.96-101, 1990-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
26
被引用文献数
1

1980年代にはいって新たな展開を模索しはじめたアメリカ合衆国のランドスケープデザインに関して, その背景をなすものとして, 環境芸術, 特にアースワークの作品群と作家の主張を位置づける。広大な風景の中での空間とスケールの表現, 人間の知覚と行動を媒体とした作品の完結性, 生態学的倫理と制作を通じて土地改良を目指す態度のあいだに生起する葛藤, さらには制作のプロセスそのものを作品化する試み, 以上4つの側面からその潜在的影響を考察することができる。ランドスケープアーキテクトによる試行的なデザインには, こうした潜在的影響のもとで, 芸術家の制作に社会性を付与してゆこうという意識が内包されている。

2 0 0 0 OA 美しい風景を

著者
瀧 光夫
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.290-291, 1992-03-27 (Released:2011-07-19)
参考文献数
3
著者
橋本 佳延 石丸 京子 黒田 有寿茂 増永 滋生 横田 潤一郎
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究(オンライン論文集) (ISSN:1883261X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.69-76, 2012 (Released:2012-08-10)
参考文献数
63
被引用文献数
1

Miscanthus sinensis grasslands can be dominated by dwarf bamboo such as Pleioblastus chino var. viridis after abandonment, leading to decrease diversity in the communities. We investigated the effect of mowing on recovery of grassland species richness and cover, and overall species composition over three years. Two treatments were tested: mowing above ground vegetation every autumn and mowing above ground vegetation every autumn with selective cutting of P. chino var. viridis in the first summer. The number of grassland plant species increased slightly under both treatments, although M. sinensis did not return as the dominant species in either treatment after the restoration. The addition of selective cutting of P. chino var. viridis resulted in greater cover of M. sinensis and higher richness and cover of grassland species. These results show that selective cutting of P. chino var. viridis in summer enhance the effect of management for restoring grassland species diversity in long-abandoned semi-natural grassland communities.