著者
藤部 文昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.7-18, 1998-01-31
被引用文献数
23

16年間(1979〜1994年)のアメダス資料を使って東京とその周辺の降水量・降水頻度分布を統計的に調べるとともに, それ以前の資料も使ってこれらの経年変化を調べ, 都市効果の有無を検討した. その結果, 以下のことが見出された. (a)降水量・降水頻度は, 東京都心〜山の手では正偏差(=周辺よりも多い), 東京湾岸では負偏差である. (b)降水量の正偏差は暖候期の正午〜夕方に大きい傾向があり, これは主として強い降水(≧5 mm/時)による. (c)bの傾向は都心で最も明瞭である. 都心では経年的にも午後の降水の比率が増加している可能性がある. (d)山の手では降水全般の頻度(≧1 mm/時あるいは≧1 mm/日)にも正偏差があり, 降水日数の経年増加傾向が認められる. これらのうちbとcは都市ヒートアイランドによる対流性降水の増加を反映している可能性があるが, a〜dがすべて都市効果によるものとは考えられず, 都市効果については慎重な見極めが必要であることが指摘された.
著者
齋藤 智興 木村 富士男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.541-549, 1998-07-31
参考文献数
15
被引用文献数
22

関東中部域における夏期の対流性降水の日変化を, 東京レーダーの7.5分間隔データとアメダスデータを用いて調べた.解析は, 1994年と95年の7, 8月の中から総観規模擾乱による降水がなかった88日間を対象とした.この両年は暑夏年で, 対流性による降水が頻発した.解析方法は, 時別降水頻度分布をレーダーデータで作成し, 時刻および地域による頻度降水分布の相違を追跡した.また風分布との関連も考察した.その結果, 山岳域では午後に降水頻度が高まる時間が平地よりも早く, 特に日光周辺・奥秩父周辺の2地域で顕著であること, また19時頃に関東平野北西部の山麓で急激に降水頻度が高まることを見い出した.また, 沿岸・海上では午前中に降水のピークを持ち, 陸上では午後に持つことは以前から知られていたが, これをレーダーデータを用いて明らかにすることができた.さらに, 関東平野内でも降水頻度大が現われやすい所があることがわかった.
著者
高橋 劭 鈴木 賢士 織田 真之 徳野 正巳 De la Mar Roberto
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.509-534, 1995-06-15
被引用文献数
4

西太平洋における大気・海洋結合系国際観測プロジェクト(TOGA-COARE)の一環として西太平洋赤道域マヌス島(2°S,147゜E)で21個のビデオゾンデを飛揚、降水機構の研究を行った。観測は1991年11月24日〜12月5日と1992年11月20日〜12月9日の2回にわたり行われた。観測期間中多くの異なった雲システムが発達、それらの出現は水蒸気の高度分布に著しく依存し、台風による水平風の変動が水蒸気分布に大きな影響を与えていることが示唆された。降水系には2種あり、強い降雨をもたらすレインバンドでは"温かい雨"型で雨の形成が行われ、厚い層状の雲では小さい霰の形成が活発に行われていた。0℃層で霰の雪片が初めて観測された。降雪粒子分布がカナトコ雲や台風の層状雲内でのものと著しく異なることから、観測された厚い層雲はレインバンドからの延びた雲ではなく0℃層以上での一様な大気の上昇で形成されたのかも知れない。他の熱帯域と比較して氷晶濃度が赤道で極端に少なかった。
著者
浅野 正二 内山 明博 塩原 匡貴
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.165-173, 1993-02-25
被引用文献数
4

1991年および1992年の1月から4月の期間に筑波(36.05゜N,140.13°E)において、大気柱に含まれるエーロゾルの光学的厚さ(AOT)の波長分布を多波長サンフォトメータを用いて測定した。1992年に観測された大気柱のAOTは、1991年に比べて0.1〜0.2ほど大きかった。この違いの主な原因は、1991年6月に起きたピナトゥボ火山の大噴火に起因する成層圏エーロゾルの増大と考えられる。成層圏エーロゾルによる光学的厚さは1992年2月に最大であり、この値は1982年12月に観測されたエルチチョン火山の場合の最大値を超えた。AOTの波長分布から大気柱内エーロゾルの粒径分布を推算した。成層圏エーロゾルに対するAOTから、約0.6μmのモード半径および0.05より小さい有効分散値をもつ一山型の狭い分布が、ピナトゥボ火山性エーロゾルの粒径分布として推定された。この一山型の狭い粒径分布は、ビショップ光環のシミュレーションから推定された粒径分布(Asano,1992)と合致する。
著者
藤吉 康志
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.207-210, 2007-03-31
著者
遠峰 菊郎 川端 隆志 瀬戸口 努
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.155-168, 1998-04-25
参考文献数
23

青森県三沢漁港において、係留ゾンデとドップラーソダーによる霧の観測が1993年6月15日から7月11日にかけて実施された。これらの観測期間の中で、長時間継続した霧として7月7日夕刻から次の日の正午まで継続した例と短時間の霧として7月6日6時から13時までの例が詳細に解析された。その結果、雲頂は霧が進入する約2時間前にCTEIから見て安定になり、霧が消散する直前に中立から不安定になることが分かった。
著者
山下 順也 石原 正仁
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.539-547, 2005-07-31
参考文献数
7
被引用文献数
2

2004年8月29日から31日にかけて各地に大きな被害をもたらした台風第0416号に伴う上空の風の場を, 局地的気象監視システム(WINDAS)を構成する各地のウィンドプロファイラが観測した.各ウィンドプロファイラで観測されたデータによって, 九州では直立していた台風の中心付近の回転軸が緯度の増加とともに進行方向前方に傾斜し, さらに北海道では中緯度トラフとの結びつきが強まるといった, 温帯低気圧化にともなう中心付近の風の場の構造の変化を捉えることができた.
著者
櫻井 渓太 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.7-22, 2008-01-31
参考文献数
23
被引用文献数
1

竜巻発生近傍(発生前後2時間以内,半径50km以内)のレーウィンゾンデデータ(55事例)とJRA-25長期再解析データを主に用いて,日本の竜巻発生環境場の実態を統計的に調査し,シビアストーム発生のポテンシャルを示す既存のパラメータについて,その診断基準が日本ではどの程度有効かどうかを考察した.K指数(Ki)と対流抑制(CIN)の頻度分布から,他の大気安定度パラメータに較べて,両パラメータの有効性が高いことがわかった.また,水平風の鉛直シアーに関するパラメータではストームに相対的なヘリシティ(SRH)が有効な指標であることが再確認された.複合パラメータに関しては,対流有効位置エネルギー(CAPE)の有効性が低いために,どの複合パラメータも実用面で問題がある.このため,KiとSRHの積で定義される新しい複合パラメータ(KHI)を提案し,環境場の事例解析により検証を行った結果,米国と比較すると日本では対流圏中層が湿潤で下層の鉛直シアーが大きい,ミニスーパーセルの発生環境場で竜巻被害が起こることが多いと考えられる.KHIのシビアストームの検出率は高いが,上層の寒冷渦に起因する竜巻の事例等では検出が難しいことも示唆された.
著者
岩崎 博之 武田 喬男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.733-747, 1993-12-25
被引用文献数
7

1986年7月13日から15日にかけて観測された梅雨前線帯を移動する長寿命雲クラスターの事例解析を行った。大陸上で出現した雲クラスターは東シナ海を移動し、東経130度付近で北と南の雲群に分かれた。移動速度の遅い南の雲群の内部では、新しい積乱雲群が既存の積乱雲群の西方40-80kmに形成されていた。各積乱雲群の内部では、更に、既存の積乱雲の西方約15kmに新しい積乱雲が連続的に形成されていた。移動速度が低下した南の雲群の内部では、異なる二つのスケールで対流雲の形成が起きていた。活発な対流雲に起源する北の雲群は対流雲が消滅した後も10時間以上長続きした。東経135度付近での鉛直レーダの観測から、この雲群には融解層と複数のストリークが認められた。東経140度付近では中層から上層に対流不安定が存在し、傾圧性の強い総観規模の上昇流域に位置していた。この"対流雲"に起源する雲群は梅雨前線帯を移動するにつれて"層状雲"に変化したと考えられる。
著者
岩崎 博之 大林 裕子
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.695-705, 1998-09-30
参考文献数
24
被引用文献数
12

関東地方に雹をもたらす積乱雲の発生・発達過程についての基礎的な知見を得ることを目的として, 群馬県に雹をもたらした積乱雲(以後, 単に積乱雲)の出現特性を降雹調査データとレーダデータを用いて調べた.その結果, 次の特徴が見い出された.(1)1989年から1996年までの46降雹日の内, レーダエコーと対応できた降雹報告が71事例(39降雹日)認められた.(2)山岳域では日射の強い14時〜16時の時間帯に降雹をもたらす積乱雲の発生頻度が高い.それに対して, 3方向を山岳域に囲まれた半盆地域では, 日射の強い14〜16時と日射が弱まった18〜19時の2つの時間帯に積乱雲が発生する傾向にあった.北関東地方に卓越する熱的局地循環が積乱雲の発生する時間帯に影響すると考えられた.(3)移動方向が急変する積乱雲が認められ, それらは等高線に沿って移動することが多い.(4)降雹後, エコーの形態がライン状に変化する5つの積乱雲が認められた.エコーの形態がライン状に変化した領域は, 半盆地域と平野部の境界に対応する群馬県と埼玉県の県境付近に限られ, その時間帯も19時〜21時に限られていた.
著者
Chen George Tai-Jen
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.959-983, 1994-12-25

1981-86年の5-6月における客観解析データ、可視および赤外雲画像、雲頂温度を用いて、アジアモンスーン域での、大規模な大気循環を研究した。流線関数、速度ポテンシャル、風の発散成分、対流インデックスと水蒸気場を解析した。これらの要素の半月平均の分布を示し、華南および台湾における梅雨入り前(5月1-15日)から梅雨明け後(6月16-30日)にいたる、大規模循環場の変化の特徴を明らかにした。さらに対流活動が活発・不活発な季節と前線を選び出し、大規模循環場の年々変動と季節の中での変動を検討した。得られた結果は以下のようにまとめられる。(1)華南および台湾における梅雨は、5月16-31日に南シナ海での夏の南西モンスーンの開始と同時に始まる。(2)深い対流域、ITCZ、および亜熱帯高気圧の北上は、華南および台湾での梅雨明け後(6月16-30日)に、梅雨前線帯が楊子江および日本付近で、準定常的な位置をとるのと同時に起こる。同時に北東インドからビルマにかけての地域で、下層の低気圧が上層の高気圧を伴う、準バロトピックなモンスーン循環システムが形成される。(3)活発な梅雨季は、北方の(傾圧的な)システムの南下と、梅雨地域での水蒸気収束が特徴的である。不活発な梅雨季ではその逆の状況となる。(4)活発と不活発な梅雨前線とでは、主に下層の循環が異なっている。活発な梅雨前線はベンガル湾および熱帯西太平洋起源の南西モンスーンを伴う一方、不活発な梅雨前線は、太平洋高気圧からの南東風または東風を伴っている。高い水蒸気量、強い水蒸気流束とその収束が、活発な前線に伴ってみられる。(5)活発な前線がより頻繁に出現する時は、活発な梅雨季となり、不活発な前線が多い時は、不活発な梅雨季となる。
著者
村上 茂教
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.601-603, 1995-08-31
被引用文献数
2