著者
気象庁予報部予報課
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.428-431, 2008-05-31

平成19年の梅雨入りは九州南部を除いて平年より遅く,梅雨明けは南西諸島や九州南部を除いて遅かった.梅雨前線は, 6月中旬にかけて南西諸島から本州の南海上に位置することが多く,活動が活発となった.その後は本州付近に停滞することが多く, 7月中旬にかけて引き続き活動が活発だった.梅雨時期の降水量は,西日本から東日本の太平洋側や東北南部で多く,九州南部ではかなり多かった.奄美,九州北部,東北北部では少なかった. 6月中旬にかけて梅雨前線が本州の南海上に離れて停滞することが多く,四国や九州北部の降水量がかなり少なかった一方で,沖縄では降水量が平年より多くなった. 7月は梅雨前線が本州付近に停滞し活動が活発になったことや台風第4号の影響により,西日本から東日本の太平洋側で降水量がかなり多くなった.また, 9月中旬には台風第11号の影響により東北地方に停滞する前線の活動が活発となり,東北北部を中心とする大雨があった.
著者
豊田 威信 浮田 甚郎 大島 慶一郎 若土 正暁 村本 健一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.117-133, 1999-02-25
被引用文献数
5

1996年と1997年の2月上旬、オホーツク海南西部の海氷域内部において、パトロール砕氷船「そうや」に乗船してアルベドの観測を行った。アルベドは船首部に上向き、下向きの短波放射計を取付けて測定した。同時に、海氷密接度および氷厚を、ビデオ観測データの解析により定量的に評価した。水平スケール数kmを対象とした解析の結果、アルベドと海氷密接度は良い相関が見られることが分かった。回帰式をもとに、海氷のアルベド(密接度100%)は95%の信頼区間で0.64±0.03と見積もられた。従来、極域定着氷上で測定された値よりもやや小さい値が得られたのは、低緯度海氷域内では海水や日射などの影響により、海氷上の雪粒子が成長しやすいためと推定される。観測値の回帰直線からのずれは、危険率1%で太陽天頂角と、危険率5%で氷厚と統計的に有意な相関が見られ、海氷密接度と太陽天頂角を変数とする重回帰式も導出された。重回帰式において、偏回帰係数はどちらも統計的に有意であるが、アルベドは太陽天頂角に比べて海氷密接度とより強い相関関係にあることが分かった。重回帰式と観測値との差異は氷厚あるいは雲量よりも主として海氷の表面状態の違いによって生じたものと推定される。これらの結果から、海氷上の積雪が海氷域のアルベドに及ぼす影響が大きいことが示唆された。一方、dark nilas(暗い薄氷)で覆われた海面上で停船した期間中に得られた短波放射データから、氷厚1〜1.5cmのdark nilasのアルベドは0.10、氷厚2〜3cmでは0.12と見積もられた。
著者
加藤 内藏進 加藤 晴子 逸見 学伸
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.203-216, 2009-04-30
被引用文献数
1

本研究では,加藤・加藤(2006)(KK06と略記)が指摘した4月初め頃の日本列島での急昇温と春を歌った童謡・唱歌に注目し,気象と音楽とを連携させた授業実践を試みた.まず,上記の急昇温の気候学的位置づけについてKK06の結果を要約するとともに,1981-1990年の毎日の地上天気図に基づく解析等を追加して,この時期のモンゴル付近における日々の卓越システムの季節的交代を確認した.次に,春を歌った童謡・唱歌の歌詞を分析した.その結果,春を歌った曲の多くは,二十四節気の春分・啓蟄〜穀雨,すなわち,上述の時期を素材としていることが分かった.以上を踏まえながら,小学校第5学年の児童を対象として,気象と音楽を関連させた研究授業を計3校時分行なった.内容は,日本付近の4月初め頃の急昇温を子供たちが把握し,それを踏まえて歌唱表現学習を行うものである.本論文では,その第1校時目(気象を中心)について,教材準備のための検討点,授業の観察や分析に基づく成果と問題点を報告する.「昇温量」と「気温自体」の混同が一部の子どもたちに見られるなど,指導法の更なる工夫の必要性も示唆されるものの,本事例は,日本の季節の進行と季節感を切り口とする気象と音楽の連携についての可能性を示すものと言える.
著者
石原 正仁
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.563-577, 2012-07-31
被引用文献数
1

2008年8月5日に首都圏では多数の積乱雲が発生し,東京都豊島区雑司が谷では局地的大雨による被害が生じた.第1部(石原2012)ではこの日に首都圏で発生した積乱雲群のレーダーエコーの形態を統計的に調べた.この第2部では,この日大雨警報が発せられた地域に発生した積乱雲を対象として,気象庁の3次元レーダーデータを用いて降雨のピークの時刻と量を直前に予測することを試みた.「上空における降水のコア」,「鉛直積算雨水量」,「エコー頂高度」,「雷放電」,「降水セル強度と鉛直積算雨水量の変化」の5つの指標を検討したところ,各積乱雲においてこれらの手法のうちのいくつかには効果が認められたが,効果の程度や有効な手法の組み合わせは降水セルによって異なった.「上空における降水のコア」は雑司が谷に局地的大雨をもたらした積乱雲においては有効であった.
著者
佐々木 華織 菅野 洋光 横山 克至 松島 大 森山 真久 深堀 協子 余 偉明
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.881-894, 2004-12-31
参考文献数
25
被引用文献数
3

山形県庄内地方に発生する清川ダシの集中気象観測を行い,峡谷出口に強風域が局限される事例(Obs-1)と,全域で強風の事例(Obs-2,3)を観測した.峡谷出口でのパイバル2点観測の結果,東風成分の高度は事例によって異なり,Obs-2では下層200〜400mに最強風帯が,その上空付近には1m/s以上の強い上昇流が発生していた.峡谷出口の風速は,峡谷内の気圧傾度によって加速された,地峡風の風速と同様の傾向であったが,Obs-1ではばらつきが大きかった.付近の高層データから,全ての事例で逆転層が認められた.Obs-1では上流である仙台の逆転層が清川周辺の山脈と同程度と低く,フルード数は0.11であり,峡谷出口付近でHydraulic jumpが発生していた可能性がある.一方,Obs-2,3では仙台の逆転層が高く,フルード数は最高0.58で,強風が平野全域に現れやすい状況であったと考えられる.
著者
永田 雅
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.43-57, 1993-02-25
被引用文献数
11

高解像度3重ネスティングの静力学近似数値モデルによって、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)に沿って発達するメソβスケールの渦列がうまくシミュレートされた。再現された重要な特徴には、直径数1Okmの「目」に似た構造と、それを取り巻くスパイラル状の上昇流の帯が含まれている。再現された渦列は最初、JPCZに沿う1O^<-3>s^<-1>のオーダーの正の渦度が集中した帯の折れ曲がりとして現れる。その折れ曲がりが次第に鋭くなっていき、4-8時間のうちに、ついにはその渦度の帯の谷が巻き込んで、乾いた目とスパイラル状の上昇流の帯を伴った、気圧偏差2-4hPaのメソβスケールの低気圧を形成する。この目および近接した湿った上昇流域は暖気核で特徴づけられる。シミュレートされた渦の、空間スケールと発達の時間スケールの理論との一致、及び、エネルギー論による解析は、渦の主要な発達機構としてバロトロピックシアー不安定を示している。
著者
仁科 淳司
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.309-310, 2002-04-30
著者
須田 芳彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.335-341, 1993-05-31
被引用文献数
1

気温の年々変動に着目して,大雨特性が気温の高低によってどう変わるかを調べるために,暖候期(5〜10月)の平均気温に基づいて地点ごとに温暖年・寒冷年を10年ずつ抽出し,それぞれ10年分のデータから暖候期における総降水量,降水日数,日・時間・10分間単位の確率降水量を求めた.ここでは,推定誤差の小さい確率降水量を得るために標本数の多い日別値データを用いた.温暖年と寒冷年における暖候期の平均気温の差は地点平均で1.1℃であり,ほとんどの地点で総降水量と降水日数は温暖年により少なくなっている.大雨を「総降水量に対する相対量」で定義するならば,大雨の度数は温暖年により多くなっている.確率降水量が寒冷年より温暖年に多い地点は,時間スケールが短くなるにしたがって増えており,これは,温暖年における大雨の特徴として,より短時間の大雨,すなわち「強雨」が多いことを示している.また,北陸地方で温暖年の確率降水量がより多く,南西諸島,四国南部から関東南部までの太平洋惻地域で寒冷年の確率降水量がより多いという地域的特徴が認められた.
著者
高谷 美正 鈴木 修 山内 洋 中里 真久 猪上 華子
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.1037-1054, 2011-12-31
被引用文献数
2

2007年4月28日午後,関東地方は雷雨・突風・降雹を伴う大荒れの天気となり,各地で被害が相次いだ.この事例について,ドップラーレーダー,高層気象観測,ウィンドプロファイラー,地上気象観測の各データおよび被害調査等から解析を行った結果以下のことがわかった.(1)被害をもたらした降水システムは,ボウエコー(弓形のエコー)の特徴を備えていた.(2)レーダーのデュアル解析により,このボウエコーの先端部分に鉛直渦度と水平収束の大きい領域が解析された.この領域の形状と振る舞いは先行研究のサイクロニックなメソサイクロンと良く似た特徴を持っていた.この領域は当初中空(地上2〜4km)に浮いていたが,その後その南西端が地上付近に垂れ下がるような形状となった.この時にその足付近で,低層のPPIデータにマイソサイクロンが2つ検出され,これらは鉛直渦度と水平収束の大きい領域とともに東南東に移動した.(3)2つのマイソサイクロンの内,より南側を通過したマイソサイクロンが,東京湾岸地帯の約18kmにわたる直線上の複数の場所に突風被害をもたらした.低層のPPIデータによる見積りでは,被害場所は,渦の風と渦の移動速度が線形の重ね合わせによって強め合う場所で起きており,風速は最大40ms^<-1>ほどに達したと見積もられる.(4)サイクロニックなメソサイクロンの発生機構として,先行研究の数値実験において,「下降域内を下降する空気塊が,ガストフロントをまたぐ傾圧帯において傾圧効果により水平渦を獲得する.その水平渦がガストフロントに沿って存在する上昇流によって上方に傾けられて鉛直渦度を獲得し,更に延伸することにより鉛直渦度が強められる」というものが挙げられている.この発生機構が実際に働いていることを示唆する解析結果が得られた.(5)被害が最初に起きた時刻の約10分前に,仰角の高いドップラーデータで見ると,ボウエコーの先端部分において動径風の収束が強まっていた.これはマイソサイクロンの前兆現象として突風の直前予報に役立つと思われる.