著者
瀧下 洋一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.167-175, 2009-03-31
被引用文献数
6
著者
藤部 文昭
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.671-680, 1996-10-31
参考文献数
21
被引用文献数
13

台風移動時の風速分布を与える各種の計算式を比較検討し, 以下の点を指摘した. (1)力学的な観点から見れば, 台風と一緒に動く座標上の傾度風を求める方法が最も合理的であると考えられる. (2)その解は, 台風静止時の傾度風に(KC+G)/(K+1)の補正をすることによって近似できる. ここでCは移動速度, Gは一般風である. Kは遠心力とコリオリ力の比であり, 台風中心からの距離の関数である. (3)一方, 流跡線上の傾度風バランスや, 変圧風に基づく方法は, 発想は興味深いものの計算結果の妥当性には疑問がある. なお台風の中心付近ではK≫1であるため, 風の非対称性は一般風ではなく台風の移動によって生ずる.
著者
渡部 浩章
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.807-812, 2008-10-31
被引用文献数
1

2004年9月29日09時には台風第21号が九州南部にあった.三重県付近は台風本体の影響を直接は受けていないが,下層の暖湿気塊が流れ込みやすい状態であり,尾鷲では29日の朝から昼前を中心として豪雨となった.2kmおよび5kmの水平分解能の気象庁非静力学モデルを用いて,豪雨をもたらした降水システムが強化された要因を調べた.数値実験の結果は,紀伊山脈南東斜面における発達した降水システム,尾鷲付近における地上の一様な東風,高度1.5km付近の南東風をよく再現した.山岳の影響により海岸線付近から山岳東斜面で対流が活発であった状況の中で,東からの降水セルの合流とともに尾鷲付近で降水システムの組織化と発達がみられた.このとき,さらに厚さ約400mの下層冷気塊によって下層収束が強化された結果,この降水システムが急激に発達し,80mm/hをこえる激しい豪雨をもたらしたと考えられる.
著者
鈴木 博人
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.333-350, 2012-05-31

本研究では,気象庁と鉄道の日降雪深データを用いて,北海道から山陰にかけての日本海側地域と北海道から中部にかけての太平洋側地域を対象に,再現期間が2年以上の日降雪深の大雪の出現頻度について,経年変化とその要因に関する解析を行った.大雪の出現頻度は,北陸では1950年代から2000年代にかけての減少傾向と,1980年代後半における減少側へのジャンプが有意水準5%で有意である.一方で,他の地域では大雪の出現頻度に有意水準5%で有意なトレンドやジャンプは検出されなかった.また,対象地域全ての冬期平均気温,冬季東アジアモンスーン指標(MOI),および北極振動指標(AOI)には1980年代後半にジャンプがみられ,冬期平均気温は対象地域全てにおいてMOIおよびAOIとの相関が有意水準5%で有意である.これから,冬期平均気温のジャンプにはMOIやAOIのジャンプが関係していると考えられる.大雪の出現頻度は,多くの地域において冬期平均気温,MOI,およびAOIとの相関が有意水準5%で有意である.これらの相関は,北陸で高く,他の地域で相関が低いか,相関がない傾向にあり,この傾向が最も強いのが冬期平均気温である.さらに,大雪が出現した日の日平均気温は,北陸では降水が雪と雨になる割合が50%ずつになる気温をわずかに下回る気温領域に集中する傾向が強く,大雪の出現頻度は気温の変化に敏感に応答すると考えられる.これから,北陸における大雪の出現頻度の減少側へのジャンプには,降水が雪と雨になる割合が50%ずつになる気温と地上の気温が近い地域において,MOIやAOIといった大気循環のジャンプの影響を受けた冬期平均気温の上昇側へのジャンプが大きく影響していると考えられる.
著者
澤田 岳彦 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.305-314, 2010-05-31
被引用文献数
2

1996年から2006年までの典型的な夏季静穏日を抽出して,北海道の熱的局地循環に伴うGPS可降水量の日変化傾向を調査した.北海道の日平均可降水量は,オホーツク海沿岸で29〜32mm,渡島半島で24〜26mmと,東部で高く西部で低い分布を示した.対照的に,日平均地上混合比はほぼ逆の分布であった.熱的局地循環の発達に伴って,熱的低気圧が15時に最盛期を迎え,18時頃に可降水量偏差(日平均値からの偏差)が極大となるが,その極大域は石狩山地の南東側に偏っていることが見出された.また,夜間においても可降水量が相対的に高い領域が北海道東部を覆っていた.主な要因として,北海道上空で終日卓越する北西寄りの一般風によって,山岳上空に集積した水蒸気が風下側へ輸送されていることが示唆された.
著者
森 征洋
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.33-41, 1996-01-31

瀬戸内海地方中央部の多度津,高松, 岡山における海陸風と気圧場との関係について調べた. 3地点とも海陸風の発生しやすい気象条件の場合, 海風には2つの卓越風向が見られた. この2つの海風の型と海面気圧場との間には密接な関係があり, 海面気圧場から計算される地衡風の風向が, 東北東-西南西の線で二分される円の北半円にあるときには1つの海風の型が, 南半円にあるときにはもう1つの海風の型が対応している. どちらの型の海風が発生するかは地衡風の風向に非常に敏感で, 半円の境界のところでは, 1方位異なると, 海風の型も異なる. 高松では, 地衡風の風向がこの境界付近にあるとき, 海風にもう1つ別の卓越風向も見られた.
著者
山田 二久次 関根 義彦
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.995-1000, 1997-10-25
被引用文献数
3

日本東岸における春季(1967〜86年、3〜5月)において、100m水深5℃の等温線緯度で定義される親潮第一分枝南限緯度の年々変化と、北太平洋上の500hPa高度場の関係を解明した。高度場については、北太平洋領域でEOF解析をし、第1・第2成分と親潮南限緯度のラダ相関を解析した。その結果、親潮の南限緯度と500hPa高度のEOF第1成分との間に、3力月遅れ(大気が先行)で有意な相関があることを見いだした。500hPar高度のEOF第1成分の空間パターンはアリューシャン低気圧の南下を示している。なお親潮の南限緯度は、EOF第2成分とは有意な関係はなかった。親潮の南下が著しい年の冬には12月から2月まで、北太平洋の30〜50゜Nでの海水温か負偏差となる。この時海面水温負偏差域の北部では、風の応力ベクトル偏差は西向きで、風の応力が弱まっている。したがって、この温度低下は潜熱・顕熱フラックスやエクマン輸送の増加では説明できず、アリーシャン低気圧の南偏に伴う亜寒帯循環の南下に伴うものであることが示唆された。