著者
小林 秀明 大成 尚
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.17-23, 1989-04-15

近年, 多種少量生産文野におけるフレキシブルな生産を指向した工場一貫自動化システムとして, FA生産システムが急増している.このようなシステムでは, 初工程への投入制御によるライン稼働率の向上が重要であり, 生産変動に即応して短時間でリスケジュール可能なフローショップ・スケジューリングの実用解法を提案する.本スケジューリングは, 総所要時間を最小化する投入順序を決定するもので, 各機械間の中間バッファに制約があり, ジョブ間の追い抜きのないフローショップを対象としている.本スケジューリングは, (1)全工程を最大負荷機械の後で2分割し, Johnsonルールを適用する.(2)(1)で得られたジョブの配列を部分的に並べ替え, 各機械ごとのブロッキング時間と遊休時間を最小化するジョブの配列を求める, という2段階の処理を行うことにより, 短時間で精度の高い近似解を得るヒューリスティック・アルゴリズムである.
著者
玉之内 直 猿渡 康文
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.382-389, 2004-02-15

本論文では, 政策資産配分を策定するための最適化モデルを構築した.政策資産配分とは, 厚生年金基金が資産運用を行う際に作成する, 資産配分のベンチマークである.政策資産配分の策定にあたっては, 年金運用の目的が加入員に対する安定的な年金給付を行うことであることを考慮しなければならない.本研究では, 政策資産配分の持つ実務的な意味と, 運用上の制約を考慮したモデルを作成した.提案するモデルは, 非線形制約を含む最適化問題である.これに対し筆者らは, 問題の構造を利用した実用的な解法を提案し, 最適解の近似値を算出した.また, 数値実験により, 提案する解法によって得られる解の実務への適用可能性を検証した.
著者
山本 祐子 圓川 隆夫
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 = Journal of Japan Industrial Management Association (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.143-152, 2000-06-15
被引用文献数
8

多くの産業が成熟期を迎えた今日, 企業は既存顧客の維持に重点を置いている.その一環として顧客満足度(CS)の測定は基本であり, 多くの企業が, 満足度を高めることで顧客が再び買いたいと思う意志や行動であるロイヤリティを高めようとしている.しかし, そこには「ロイヤリティ=CS」という前提が暗黙の内に存在しており, これが顧客心理を反映しているかは実際には疑問が残る.そこで本研究は, 顧客がロイヤリティを決定付ける要因の構造をアンケート調査により検証し, 「ロイヤリティ=CS」という関係の妥当性を探ることを目的とする.その上で, CSがロイヤリティに及ぼす影響の程度や傾向を複数の製品・サービスについて検討する.
著者
澤 貢 宇賀神 博 大久保 堯夫 芳賀 繁
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.202-210, 2001-10-15
被引用文献数
5

本研究の目的は運転時間の長さが運転士に及ぼす影響について, 妥当さと簡便さを併せもつ新たな質問票を開発することである.研究方法は一継続作業時間が100分, 200分並びに400分のシミュレータによる列車運転作業実験に適合した主観データを用い, 負担評価に表れた因子を分析するとともに, 抽出した各因子とパフォーマンスおよび生理・心理反応との関連性を検討した.実験課題は運転時刻表にしたがい最高速度140km/hの運転を行うことであり, 1区間23分の周回路線を5周, 9周または17周することにより, 運転時間が約100分, 200分, 400分となるように設定した.被験者は20歳から24歳の男子大学生計19名とした.研究の結果, 作業経過に伴う自覚感として, (1)眠気・疲労, (2)負担に抗する努力, (3)あき・集中困難の3因子の重要性を指摘した.「眠気・疲労」と「あき・集中困難」は作業継続に伴う蓄積された負担の抽出に, 「負担に抗する努力」は注意や努力の心的エネルギーの抽出に有効である.現場への適用を容易にするために, 前記3因子を代表する項目を各々2個, 計6項目からなる質問票を作成し, 提案した.
著者
松尾 哲子 村田 厚生
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.190-203, 2011-10-15

2007年9月の敬老の日に総務省が発表した65歳以上の高齢者数は,2,744万人であり,総人口に占める割合は21.5%となり,人口数,比率とも過去最高になっている.一方,居住域の郊外への転移やモータリゼーションの影響によって,郊外を中心に巨大な駐車場を備えた大型ショッピングモールが乱立し,さらにインターネット販売,カタログ通販やインターネット注文で,最寄りの店から品物を配達するネットスーパーも活発になり,地域の商店街は人通りも減少し,空洞化に歯止めがかからない.しかし,商店街は車を運転できない地域の高齢者や生活弱者の生活必需品購入の唯一の生活ライフラインである.本研究では,九州の玄関口である,福岡県北九州市若松区と戸畑区の2ヵ所の商店街の来街者のアンケート調査研究に基づき,今後の高齢者など生活弱者のライフラインとしての商店街の維持や地域活性化を促すための施策について検討する.
著者
岩本 英久 梶原 康博 滝 聖子 関 洲二
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.208-217, 2007-08-15

技能の伝承や保存のために,技能者の動作をモデル化し,その動作の特徴を明らかにすることは重要なことである.本研究では,技能者による動作のモデルとして,技能伝承訓練段階であっても,患者の生命に危険を与えてはならない外科手術における運針動作を対象にする.運針動作のモデル化は,外科医の運針軌跡を4種類のパターンに設定し,ロボットで再現することによって行う.運針動作の特徴は,縫合針の軌道と運針後の軌跡を比較するとともに,持針器に加わる回転トルクを測定して考察する.その結果,縫合針円に沿った運針パターンは,軌道と軌跡の差および回転トルクを最小にできることが示された.実際の手術現場では,縫合針円よりも深い運針を行っているので,縫合針円より深く補正する運針パターンの中で比較すると,縫合長さの中央で深く補正する運針パターンが軌道と軌跡の差が小さく,回転トルクの小さい運針であった.
著者
小田 哲久
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.135-145, 1998-08-15
被引用文献数
5

本論文は, ファジィ論理の真理値(Truth Value)を多次元に拡張した論理体系を提案する.本提案は, FCR法(Fuzzy-set Concurrent Rating Method : ファジィ多項目並列評定法)という, 心理測定法における応答の矛盾度を表わす指標に理論的意味を与えるために提案されたもので, 命題の真理値(Truthfulness : T)と偽値(Falseness : F)を独立次元とみなす.類似のアイデアに, 向殿・菊池の「拡張区間真理値モデル」があるが, 本提案では, TとFの直積空間としての超論理空間(Hyper Logic Space : HLS)を設定する.HLS上で論理演算を定義することで, 向殿らのモデルとは別の形の否定演算が導かれた.その論理代数系は, クリーネ律を満たし, 演算の結果が理解しやすい.HLSは, 矛盾への洞察を助け, また, より高次の超論理空間への拡張の道筋を示している.
著者
高原 康彦 飯島 淳一 劉 学平 ミゲル バレラ・ムリジョ
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.320-329, 1991-12-15

問題状況をかかえたユーザの意思決定を真に支援するDSSとして提案したactDSSの枠組みで, 生産管理における主要問題と考えられる, 能力計画問題, 生産計画問題, スケジューリング問題を三つの部分問題とする総合的生産管理問題の解決を支援するDSSを構築した.ここで構築したシステムは, 数値処理と記号処理を有機的に結合する枠組みを提供し, ユーザとシステムの共同作業による問題解決というDSSの思想に一歩近づこうとしたものである.また, 環境の変動に対処できるようなシステムを構築するために, 従来主に研究されていた二階層のモデルにさらに適応層を加えた, 3階層のモデルを実現している.
著者
曹 徳弼
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.372-379, 2000-10-15

需要の変動はトレンド(線形と非線型), 周期変動(季節変動含む), およびばらつきに分類することができる.トレンドや周期が一定である場合には予測モデルを用いてそれを抽出することができ, ばらつきは安全在庫で対処すればよい.また, トレンドや周期がダイナミックに変化する場合には予測モデルを逐次修正する方法と安全在庫をダイナミックに変化させる方法が考えられる.本研究では予測モデルの修正(予測モデルの再同定, バラメータの再推定, 再学習など)に手間がかかことや, バイヤス発生の確認が遅れることなどを考慮し, 予測モデルを逐次修正する方法の補助的な方法として, 過去一定期間における予測誤差の平均とばらつきに基づいて安全在庫をダイナミックに変化させる方法を提案した.提案法の有効性を検証するために本研究では, 単段階在庫システムにおいて移動平均法に基づいて需要予測を行う発注点方式を対象に, 異なる4つの需要パターンのもとで, 需要が安定していることを想定して安全在庫を計算する方法(方法A), 理想的な予測手法を想定して安全在庫を計算する方法(方法B), および予測のバイアスの存在を無視して安全在庫を計算する方法(方法C)など3つの方法と, 平均在庫水準および欠品率を評価基準に比較実験を行った.その結果, 需要のパタンが変化する場合には提案法がA, C両方式に比べて平均在庫をそれぞれ50%近く削減し, 提案法の有効性が示された.また, B方式は提案法より平均在庫が少なく, パターンの変化を素早くキャッチする予測手法の確立が大変重要であることを確認できた.
著者
新里 隆 郭 偉宏
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 = Journal of Japan Industrial Management Association (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.164-173, 2011-10-15

最適な安全在庫量を求めることは,在庫管理の重要な課題の1つである.しかしながら,これまで相関を含んだ需要に対する最適な安全在庫量を独立を仮定した既存手法を用いて決定することに対する数学的な保証がされていない.つまり過去の売り上げの影響を受けやすいトレンド商品に対する最適な安全在庫量を導き出す強力な手法を理論的に開発する必要がある.そこで本研究では大偏差原理を用いて,相関を含む需要に対する最適な安全在庫量についての新しい解析方法を提案する.さらに情報科学や統計的学習理論などで重要な役割を果たすレート関数の性質を用いて,最適な安全在庫管理に関する提案手法の有効性を保証する.また我々の手法の有効注はいくつかの需要分布により確認することができ,一般性を失うことなく先行研究で得られた手法よりもタイトな安全在庫量を推定することもできる.
著者
宗澤 良臣 梶原 康博 大崎 紘一
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.17-28, 2007-04-15
被引用文献数
2

日本の開発製造型のものづくり体制を支援し,発展させるためには,生産現場の高度な技能を効率よく継承し,定着させるための技能者,素材,工具の動き,力関係,感覚等の分析,表示手法の開発,科学的な技能指導者の養成法,技能訓練者の訓練体制等の技能訓練システムの確立が2007年問題とも絡んで急務となっている.本論文では,技能者の技能を作業中の素材,工具,身体部位の3次元空間内での方向を,3次元座標系の3軸回転角度から分析し,表示する手法の開発を行っている。3次元空間内の位置座標を用いて動きを表現する研究は多数行われているが,さらに座標値に3軸回転角度による方向を3軸ベクトルとして加えることにより,動きを完全に表示することが可能となる.そこで,基準座標系内における部位の方向を計測するセンサー座標系の3軸回転角度からセンサー座標系の3軸単位ベクトルを回転角-回転軸変換行列から求める.そして,各軸の単位ベクトルの要素の2乗和が1となる性質を用いて2次元座標系に表現するための2次元表現グラフを提案する.2次元表現グラフでは,3次元座標系の8象限を2つの2次元座標系で示している.そして,センサー座標系の軸単位ベクトルから,設置した部位の方向を2次元表現グラフで表示することができる.そして,岡山県の伝統工芸である備中神楽面の制作作業において,技能者が工具を使って面を彫る作業を,素材,工具,上肢の部位の方向,及び相隣る部位間での軸単位ベクトルの関係から提案した分析,表示手法により,数量的な技能基準を求めることができた.
著者
片山 直登 春日井 博
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.69-75, 1988-06-15

自動車等の交通量の増大に伴う交通渋滞の緩和に対して, どの道路区間を建設すれば最も効率よく交通需要を処理できるかという最適道路網建設問題がある.この問題は, 一般的には非線形コストをもつ多品種流ネットワークデザイン問題と知られている.この問題の厳密解を求めるのは非常に難しく, 従来の研究では大規模な道路網建設問題に対する適用に問題が残されている.本研究では, 非線形整数計画問題として定式化したこの問題に対して効率的な三つのヒューリスティック解法(貪欲解法, 双対解法, ローカルサーチを用いた解法)および分枝限定法による解法を提案し, これらの解法を組み合せることによって規模の大きな道路網建設問題に対しても適用可能で効率的な解法を提案する.また同時に建設順序問題に対する効率的なヒューリスティック解法も提案する.
著者
平塚 三好 大澤 紘一
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.145-152, 2009-08-15
被引用文献数
1

The innovation speed in the fields of information communications and electronics is exceedingly fast. For this reason, in the case that patent trolls intentionally delay a claim for damages for companies that infringe on patents, it is likely to be difficult for the companies to recover from damage caused by the delay, even if the delay period is for one or two years. The Japanese Civil Code provides a statute of limitations of three years to exercise one's rights. This, however, differs from the realities of the technology, in which the delay of a year or two matters materially. Considering a U.S. doctrine that is an effective defense to exercise rights with unreasonable delay, we herein propose flexible limitations to such delayed conduct in preparation for events should patent trolls appear in Japan in the future.
著者
藤川 昇 松井 正之
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.54-64, 2010-06-15
被引用文献数
1

産学官連携による技術移転・事業化に際し,成功要因を分析することはきわめて重要であるが,これまで定性的な事例報告が多く,要因についての数理的な検討はなされていない.本研究は,まず,売上げ実績があるため「成功」として官公庁が公開している100事例を用い,成功要因の実証的分析を行った.次に,その成功要因をもとに,多変量解析による分析を加え,シーズとニーズのマッチング等コーディネートの基本機能とシーズの魅力を高める付加価値向上機能の貢献度,およびコーディネータの現状の姿を明らかにしたほか,産学官連携のモデル化を試みた.その結果,技術移転・事業化の成功率を上げるための効果的なマネジメントの手がかりを得るとともに,コーディネータ育成の方向が示された.
著者
森 李 梶原 康博 大崎 紘 宗澤 良臣
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.37-45, 2001-04-15
被引用文献数
1

省人化工場内の安全確保のためにモニター画面上の画像から作業員を識別するための模様の認識, 姿勢の認識, および作業員が危険の程度を知らせるための画像処理による判別の容易な合図動作とその認識手法を提案する, まず, 省人化工場の出入口において入退室する作業員を認識するために, 作業着に付ける模様を提案し, 画像処理により模様を識別するための特徴量および判別規準を設定する.次に, 作業域内の作業員および搬送車等の対象物を差分処理により検出し, 移動または静止状態であるかを面積の変化率から, 作業員または他の設備であるかを領域の複雑度から判別する.作業員が静止している場合には, 姿勢および合図を認識する.姿勢は立位, 座位および臥位姿勢について, モニター画面上での作業員の外接長方形および面積に基づく特徴量を定義し, その判別規準を設定する.作業員からの合図としで"停止せよ", "危険", "助けを求む", "作業完了またはOK"等を画像処理による認識の容易な動作で表現し, その認識を行う方法を提案する.
著者
野渡 正博 直井 知与 阿久津 正大
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 = Journal of Japan Industrial Management Association (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.172-179, 2006-06-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

本研究では,経営シミュレーション演習のなかで各チームの構成メンバーが行う集団意思決定時のチームワークに着目し,チームワーク評価因子間の関連性を集団過程としてとらえ,時系列的に考察している.それらの集団過程を開始時点,中間時点,終了時点の3時点でアンケート調査による階層構造として解析し,それらの認識過程と差異を確認することを研究目的としている.結論としては,以下の仮説が採択された.仮説1:「チームワークに対する認識の平均値は,終了時点の方が開始時点よりも高い(平均値の比較).」仮説2:「チームワークに対する認識の緊密性は時系列的に変化し,終了時点の方が開始時点より強い(主成分分析の因子負荷量による比較).」仮説3:「チームワークに対する認識の階層構造は時系列的に変化し,終了時点の方が開始時点より明確な階層構造となる(クラスター分析のデンドログラムによる比較).」
著者
徳山 長
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.360-367, 1976-03-31

個別生産工場(発電プラントや一般産業用プラントのシステムおよび制御機器, 構成機器を生産する)における能率管理システムの革新事例を紹介する。たんに能率管理の局面のみでなく, 現場管理の実体と, 生産環境の変質(品質保証の重視, 技能育成と伝承の必要性, 班長の改善力向上, 等々)を十分加味し, 管理方式の見直しを図った。おもな革新点は(1)管理者(とくに係長)の率先力の発揮, (2)班長の自主性と改善力の発揮, (3)能率管理の視野の拡大と方式の改善, (4)標準時間の純化と時間管理の改善, である。新方式導入後6ヵ月で約6〜22%の生産性向上の成果をえた。加えて, 個別生産工場の将来の生産方式を想定するに, 「標準時間」のあり方について私見を述べる。
著者
松井 正之 高橋 義久
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.262-272, 2004-12-15
被引用文献数
1

SCM時代の到来によって, 需給マネジメントに関する関心が高まっている.我々は, 需給マネジメントのeラーニング開発を行い, その過程で需給対応のマネジメント問題としてそのマッチングのあり方に関心をもった.本論文では, 需要にマッチした良い生産計画とは何かを考えさせるeラーニング法を開発して, そのなかで有効な決定規則を与える松井のペア行列表に基づいた(N, α)戦略マップを提案している.これは, 経済性に基づいて, 最適な平滑化定数α(出力変数)と基準在庫量N(入力変数)の最適な組み合わせを与える.その結果, 需給マネジメントでは, 予測情報の正確さがすべてではなく, 頑健性の重要さを示している.
著者
坪根 斉 松浦 春樹
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-12, 1995-04-15
被引用文献数
8

柔軟性という言葉は文字通り現在の流行語であり, 企業が市場の競争下で対処するための重要な鍵として認識されている.本文は文献を通して以下のことを明らかにする.(1)主に製造/技術の分野から生起したいろいろな柔軟性の概念を調査する.(2)いろいろな観点から柔軟性のタイプを分類する.(3)環境の不確かさと柔軟性のニーズとの相互関係を明らかにする.(4)柔軟性の高い生産システムを計画・設計・実施するための概念的な方向付けを行う.
著者
住吉 和司
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.356-361, 1980-03-31

需要が季節的に変動する商品が数多く存在するにもかかわらず, そのような季節商品の最適な生産方法に関する研究は意外に少なく, 本研究では, まず定時生産(定時間内勤務体制による生産)をとりあげ, 一般的な季節変動をする季節商品に対して, 利益を最大にするための生産と販売に関して成り立つ基本原則を明かにした, そして, これらの諸原則を適用して最適に生産方法が決定される手順を示した.ついで, 残業生産(定時生産をオーバーして, ある一定時間以内で残業が可能な勤務体制による生産)が許される場合に成り立つ諸原則を明らかにし, それらを用いて最適な生産方法が決定されることを示した.