著者
井原 縁
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.441-446, 2001-03-30
参考文献数
23
被引用文献数
3 1

現在の「国民公園」京都御苑では,御苑造成時から共存している「皇室苑地」と「公園的利用の場」という2側面に基づく二律背反的な要素が多数共存しており,この内包する要素の多様性こそが個性といえる。本研究では,まずその個性が形成された京都御苑の歴史的経緯を辿り,その後,「御所透かし」という特殊な技法が,その個性を守っていくうえで非常に重要な要素のひとつであることを考察する。「御所透かし」は,「皇室苑地」という側面に付与される要素であると共に「公園的利用の場」という側面にも寄与する要素であり,時代を経て継承されてきた重要な文化財的要素であると共に松の手入れという景観構成要素でもあるからである。
著者
北村 信正
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, 1953-10-15
著者
佐々木 邦博 米林 由美子 平岡 直樹
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.419-422, 2001-03-30
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

長野市松代町は城下町であり,水道網が発達していた。武家屋敷において庭園の水を隣家から隣家へと流す泉水路が存在し,現在でも一部ながら残されている。江戸時代における泉水路の形成過程,その範囲,その用途を明らかにするのが本研究の目的である。対象地は上級武家屋敷地であった殿町とした。真田家文書などの水道絵図から分析すると,次の結論が得られた。中水道が江戸時代中期頃に形成され始め,後期には泉水路として水系を形成する。殿町にはほとんどの家に泉水路が流れ,主に生活用水として,後期には部分的には養魚池の給水源としても用いられていた。その範囲はおそらく松代城下町全体に及んだのではないかと推測される。
著者
橋本 亜矢子 斎藤 庸平
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.465-468, 2004-03-31
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

Street lighting delays autumnal leaf coloring and the leaf fall of some kind of deciduous trees. This phenomenon was reported in 1990 for the first time. However there is little information about the lighting conditions, which causes this phenomenon. The aim of this research was to clarify the degree of the light, which causes abnormal leaf coloring and the leaf fall, and to acquire fundamental knowledge for better lighting design to make roadside trees' growth condition and streetscape well. The investigation was performed on roadside trees, Liquidambar styraciflua, from November 16 in 2002 to January 11 in 2003. It was found that lighting of more than 201ux influences autumnal leaf coloring and the leaf fall, and especially lighting of more than 2001ux influences more greatly. Based on the results, recommendations for lighting in urban streetscape are discussed.
著者
本中 真
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.195-207, 1991-01-25
被引用文献数
1

山口県萩市の萩城跡内に遺存する東園庭園は18世紀に作庭された庭園であるが,「聚遠」と名付けられた館の東軒先からは東南方向に城郭外の山脈を望見することが可能であったという。また,後に増築された御殿も眺望を意図した中2階造りの構造を持っていた。この小論では,とりわけ後者に注目し,C.G.を用いて御殿からの眺望景観の復原を行うとともに,そこにおける眺望行為の形式と眺望景観の性格について明らかにした。
著者
高橋 理喜男 前中 久行
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.24-37, 1977-02-20
被引用文献数
2 3

自然環境の管理保全の目標に適合したレクリエーション利用の適正密度基準を求めるため,奈良公園若草山の自然草地を研究対象として,レクリエーション利用密度と草地植生の群落的形質との生態的関連性を解析した。もっとも利用者の集中する春秋2季のうち,1973年1月初旬の休日2日間をえらび,地上各出入口において,30分単位で入退山者数を記録するとともに,合計6回にわたって,草地における滞留者の分布状態を空中写真によって捉えた。その結果を25mメッシュに切った1/2500の地形図上に,各撮影時刻毎にメッシュ当り利用密度分布図を作成した。利用密度と植生タイプとの関連性を,空間的広がりの中で考察していくためには,利用密度階級によって分けたメッシュ群が,ある程度安定した恒常性をもっていることが条件となる。その点を「平均相対利用密度」を用いて検証を試みた結果,空からの調査回数が少いため若干のフレを伴っているけれども,恒常性の条件をほぼ満たしていると判断された。一方,春と秋の2回にわたって植物社会学的植生調査を実施し,草地の群落的組成を明らかにするとともに,その空間的配分を示す植生図を作成した。さらに利用密度との比較検討ができるように,1つは相観タイプにより,もう1つは群落タイプによって,それぞれメッシュ単位から成る植生図に編成した。相観タイプについては,ススキ優占草地とシバ優雨草地とがメッシュ内に占める被度の割合に応じて,ススキ型,シバ型それぞれ3種類と裸地化型の計7タイプを設定した。また群落タイプの方は,ススキ群落を除外し,ススキ群落からシバ群落への移行帯を特微づけているチカラシバ型と,シバ草地を形成しているネズミノオ型,典型シバ型,ギョウギシバ型の4タイプに分けた。そこで,年間を通じて,入山者の最も多いクラスに属する11月3日の,しかも最高滞留者数を記録した13時の5,512人を基準にして,前述の「平均相対利用密度」階級を具体的な利用密度階級に換算して植生タイプとの比較を試みた。その結果,ha当り20人以下の利用密度にとどめておく限り,ススキ草原としての景観的存続は保証され,400人ぐらいまでなら,ススキ優占がつづく。しかし,500人を境として,シバ型へ転向し,900人を超えると典型的シバ草原が成立する。さらに,1,300人以上になると,激しい踏圧によって裸地化の前駆相ともいえるギョウギシバ型がとって代ることになる。
著者
俵 浩三
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.61-66, 1988-03-31
被引用文献数
3

北海道の本格的開拓が開始されたのは明治になってからのことである。以降ほぼ一世紀の間に多くの都市や村落が成立し,さまざまな土地利用が展開されてきた。北海道における都市公園と自然公園の成立にも,開拓政策が深くかかわっており、それは本州方面の公園成立事情ときわめて対照的なことが多い。本論では具体的事例を通して、北海道の公園の成立事情の特異性を明らかにしたい。
著者
進士 五十八
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.77-88, 1986-12-15
被引用文献数
2 4

庭園はそれ自体で完結した構成から徐々に外界との交渉,即ち社会性を付与してゆく。外界との接続は,眺望行為による。その特殊な手法が日本庭園の特質のひとつ,「借景」である。借景は究極的に園内景観を無にし対象景を対比的にいけどる構成技法だが,その基底には造景,修景・借景の3段階で整理できる日本人の自然への態度(=自然観)が存在すると考えられる。本論は借景庭園の景観構造を明らかにし,借景技法が庭園を無にすることで自然を活かす自然観のあらわれであることを考察する。
著者
小林 昭裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.277-282, 1989-03-31
被引用文献数
1

石狩平野は低地に位置する立地条件から,石狩川の洪水氾濫に幾度も見舞われてきた。そのため,北海道開拓以来,水害対策が継続的に取り組まれた。こうした中,1981年8月に発生した洪水は,記録的な豪雨が基本的要因であったが,石狩平野の低地における水害対策上,水系自体の治水に加え,自然条件を考慮した土地利用の必要性が示された。本論では,主として石狩平野特有の泥炭地等の低湿地の土地利用について,考察した。
著者
小野 良平
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.825-830, 2001-03-30
参考文献数
22
被引用文献数
3

都市における歴史的遺産である庭園の保全には,遺産としての歴史性の価値付けが求められるが,その概念および評価は多義的であることが保全のためにも有効と思われる。本稿は小石川後楽園を事例として,庭園が周囲の都市空間の変容から影響を受けるばかりでなく,都市の自然環境あるいは社会環境などの側面において都市空間に影響を与えてきた歴史として読み直し,この作業を通して庭園の歴史性の概念の再考を試みた。庭園と都市空間相互の関係性はその庭園の立地する場所の新しい歴史を創造し続けており,この意味において歴史性とは単なる芸術学術上の真正な価値ばかりでなく,より広い概念で捉え,評価されるべきと考えられる。
著者
野口 智美 仙田 満 矢田 努
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.691-694, 2000-03-30
被引用文献数
3 3

集合住宅のベランダ計画・設計の基礎的資料を得ることを目的とし,東京都区内集合住宅での居住者へのヒアリング及びベランダ観察調査から,利用の現状と居住者意識の分析を試みた。集合住宅では園芸が多くの居住者に望まれており,趣味・楽しみや安らぎ・潤いを与えている。ベランダ広さの満足感は,鉢植え設置可能面積の確保と関係が深いと言え,要求緑量に対する提供すべきベランダ広さ算定の(延べ幅に着目した)指標作成についてその可能性が示された。また鉢植えは,リヒング前・柵腰壁・広い奥行き・物干し竿無し、という位置に配置され易く,植物高さの違いによる配置の偏りも見られる。更にベランダ利用の実状と計画との違いも見られた。
著者
東梅 貞義 佐藤 哲 前川 聡 花輪 伸一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.102-105, 2002-11-15

渡り鳥とその生息地の保全は、比較的長い国際的な歴史を持つ。本報告では渡り鳥の中でもっとも長距離の渡りを行う鳥類グループのひとつであるシギ・チドリ類の保全をケーススタディとして取り上げ、地球規模の環境問題解決の視点と地域レベルで取り組む視点の現状と保全を推進するために必要な条件の検証を行う。1995年にアジア太平洋地域渡り性水鳥保全戦略が提唱され、96年に東アジアオーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワークが新たな国際的渡り鳥保全の枠組みとして発足した。日豪政府とNGOである国際湿地保全連合(WI)が中心となり、発足当時から日本国内の研究者、政府機関、環境NGOの幅広い参加と支持を得てこれまで実施されてきた。シギ・チドリ類は、多国間にわたる広大な範囲の生息地を必要とし、特定の時期に特定の地域の生息地を利用する必要がある。例えばホウロクシギ(全長63cm)は3月中旬にオーストラリアを出発し、3、4月に中継地の日本などの干潟に渡来し休息と採食を行い、5月には繁殖地のロシア極東部に到達する。繁殖終了後の秋期になると、非繁殖期(越冬期)を過ごすため日本などを経由しながら南半球へと渡り、年間往復2万5千キロを超す長距離を移動する。
著者
平岡 直樹 佐々木 邦博 伊藤 精晤
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.455-458, 1998-03-30
参考文献数
22

本研究の目的は, ベルギーの首都ブリュッセルにおいて, 近代都市計画の始点とされるイギリスの田園都市論の影響のもと, 20世紀初頭, 田園地域に数多く建設された住宅地の特徴を明らかにすることである。そのためにそれらの分布や規模, 計画技法, 住民共同組織の形態, 共有施設等を整理分析した。その結果, ハワードにより提案されたような真の自立した都市像ではなく, 既存市街地に部分的に依存し, 低層低密な2連戸住棟, テラスハウスによる中世風不規則配置構成を持った比較的小規模な田園郊外としての特徴を有していることが明らかになった。