著者
遠田 勝
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

近代日本におけるオリエンタリズムの多様な役割を検証するために、その分析の対象を欧米人のいわゆる日本論や日本人論、あるいはアカデミックな日本研究から、短い雑誌記事やフィクション・民話における「語り」に広げ、さまざまな事例を検討した。それにより、たとえば、ハーンのオリエンタリズム的物語が逆輸入され、日本の民話の語りを変容させた事例などが発見され、異文化の歪曲と圧殺という、オリエンタリズムについての西洋の公式見解とは異なる役割を論証し得た。
著者
久松 太郎
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

トレンズは、リカードウの諸理論を批判することもあったが、それらを受容し、自らの経済理論を提起していた。しかし彼のリカードウ解釈は、時おりその本来の意味からかけ離れていた。トレンズの言説は、J.S.ミルや20世紀の著名な経済学者たちの注目を集めたため、そのことがひとつの契機となり、誤ったリカードウ解釈が流布してきた可能性がある。とりわけ、国際経済学の教科書で「リカードモデル」として知られる比較優位の原理はリカードウ本人によって提示されたものであるとの誤った解釈の普及には、トレンズが間接的にかかわっていたと考えられる。
著者
伊集院 壮
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2型糖尿病は骨格筋をはじめとする末梢組織でのインスリン抵抗性の誘導とそれにともなう糖代謝能の低下が原因で起こる疾患である。本研究では、ホスホイノシチドホスファターゼSKIPが、骨格筋において小胞体ストレスとインスリンシグナル、そしてインスリン抵抗性を結ぶ分子であることを初めて明らかにした。さらに、SKIPによるインスリンシグナル制御は小胞体内腔のシャペロンであるGRP78との結合に大きく依存していることを明らかにした。これはPI3キナーゼシグナルと小胞体ストレスが非常に密接に機能していることを示す全く新しい発見である。
著者
谷岡 史絵 佐々木 倫子
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学発達科学部研究紀要 (ISSN:09197419)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.211-226, 2001
著者
林 申也
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

p21 knockoutマウスを用いて変形性関節症モデルマウスを作成したところ、p21が細胞外基質であるアグリカンと、メタロプロテアーゼであるMMP13の発現を調整することがわかった。軟骨のhomeostasisを維持する働きがあることがわかった。これに関して整形外科関連での国内学会1回、国際学会で5回発表。現在英語論文を投稿中である。概ね初期の目標は達成されたと考えている。
著者
佐藤 隆太
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,実際の数値制御工作機械の送り駆動系をモデル化し,送り駆動系の運動誤差を考慮して加工面をシミュレーションするための方法を開発した.送り駆動系の運動誤差が加工面に及ぼす影響について,実験とシミュレーションの両面から検討したところ,同じ運動誤差が生じていても工具経路によって加工面に及ぼす影響が異なることが明らかとなり,工作機械の運動特性を考慮した知能化CAMシステムの実現に向けた重要な知見を得ることができた.
著者
青木 敏 竹村 彰通 日比 孝之 大杉 英史
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

多項式環のグレブナー基底の理論を,統計学の様々な問題の解決に応用するという研究分野(計算代数統計学)は,1990年代に誕生し,主に分割表の枠組みにおいて,研究が進められてきた.本研究は,統計学の重要な応用分野のひとつである,実験計画法において,計算代数手法を使った新たな統計手法を開発することを目標とした.従来,実験計画法では,正規性の仮定を前提にした直交表の利用などに主眼が置かれていたが,本研究では,非正規性を有する観測値に対する統計手法として,多項式環のイデアルの構造から得られる新たな統計モデルの提案や,統計モデルの代数的特徴づけなどの結果を得た.
著者
小田 直樹
出版者
神戸大学
雑誌
神戸法學雜誌 (ISSN:04522400)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.1-37, 2013-09
著者
古市 晃
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

5・6世紀の王宮について、恣意性をともなう『古事記』『日本書紀』の宮号ではなく、居地にちなむ王名から検討できることを明らかにした上で、5世紀の王宮が大和・河内・山背など広汎に分布していたこと、6世紀前半には淀川水系や大阪湾岸西部にも展開するようになったこと、この変化が倭王権の支配構造の転換に対応するものであることを明らかにした。さらに、『播磨国風土記』を中心とする地域社会の神話・伝承を検討し、5・6世紀を通じて、中央支配者集団による地域社会の統合の度合が国レベルから村レベルに深化することを明らかにし、中央支配者集団再編の過程と地域統合の進展が密接不可分の関係にあったという見通しを得るに至った。
著者
越智 敦彦
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、5月と8月の2回にわたり、日本原子力研究機構FNSにおける大強度中性子ビームラインにおけるビームタイムを、合計2週間得ることができた。これにより、主に以下の二つのテーマに大別される検出器の試験を行うことができ、高頻度中性子環境化におけるワイヤー型検出器の挙動について、理解を深めることができた。1.2.5MeV中性子源を用いた検出器の特性テスト重水素ターゲットに対して重水素ビームを衝突させることにより得られる2.5MeVの単色中性子を用いて、薄型の比例計数型ガス検出器の特性調査を行った。昨年度は、三重水素ターゲットを用いることにより14MeVの単色中性子を用いたが、本年度行った試験によって、MeV領域での検出器の挙動に対するエネルギー依存性を知ることができる。測定項目は、中性子による信号の発生確率、放電確率、及び信号電荷の分布である。このうち信号の発生確率については、昨年度行った14MeV中性子の場合と比較し1/5程度の値である0.02%程度の値が得られた。本研究では、入射中性子と検出器の相互作用について計算機シミュレーションも行っており、2.5MeVの中性子に比べて、14MeVの場合の方が、検出器構造体による反跳原子核が5倍程度出やすいという結果を得ており、これはこの実験結果とも良い一致を見せている。2.ATLAS実験用大型TGCを用いた信号の測定比例係数型の検出器の特徴の一つとして、大型化しやすいということが挙げられるが、本研究においては、LHC実験におけるATLAS検出器で実際に用いられるものと同じタイプの検出器(Thin Gap Chamber)を用いて、信号測定を行った。この測定においては、確実に中性子由来の信号を捉えるために、中性子ビームをパルス状に出し、飛行時間測定法による信号測定時間の制限をかけた。この結果、中性子由来の大きな信号を受けた場合、多くの場合信号線間や、検出器間のクロストークが観測され、本検出器をATLAS実験で用いる際の問題点や、改善すべき点を提示することができた。なお、本研究の成果については、物理学会年会/分科会で適宜報告しており(本年度は4件)、投稿論文についても現在作成中である
著者
寺居 剛
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

採用初年度から取り組んできた、高軌道傾斜角メインベルト小惑星のサイズ分布決定の成果をまとめた論文を日本天文学会欧文研究報告誌(PASJ)に投稿し、2010年12月23日に受理された。すばる望遠鏡を用いて取得された広域サーベイデータを解析し、直径1km前後の微小メインベルト小惑星候補616個を検出した。観測バイアスを除いたサンプルを、軌道傾斜角15度を境に2つのグループに分け、それぞれの累積サイズ分布を求めた。そのべき指数は低軌道傾斜角のグループで-1.79±0.05、高軌道傾斜角のグループで-1.62±0.07という値を示し、高軌道傾斜角の小惑星は傾斜の浅いサイズ分布を持つことが分かった。これは衝突速度によって小惑星の衝突破壊強度が異なるためだと考えられる。この結果から、高速度衝突が頻繁に起こったと考えられる惑星形成最終段階では、大きな小惑星ほど破壊されずに生き残りやすい環境であったと推測される。一方、UCLAのDavid Jewitt教授と共同で天王星型惑星の不規則衛星についての研究も行った。すばる望遠鏡のデータを使用し、不規則衛星3天体(Sycorax、Prospero、Nereid)の位相角変化に伴う光度変化を測定したところ、それぞれ0.03、0.14、0.18mag/degreeという値を得た。Sycoraxは木星トロヤ群天体や高軌道傾斜角のケンタウルス天体と、Prosperoは低軌道傾斜角のケンタウルス天体や高軌道傾斜角の外縁天体と、Nereidは低軌道傾斜角の外縁天体と類似していることが分かった。この結果は、Prosperoは天王星軌道に近い領域に位置していた天体を捕獲したのに対し、Sycoraxは木星軌道付近から外側に移動した天体を、Nereidは外縁部領域から運ばれた天体を捕獲した可能性を示唆している。
著者
上田 修司
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

低分子量G蛋白質のRhoAは骨格筋形成に不可欠な分子であるが、筋肥大におけるその役割は殆ど分かっていない。本研究では、C2C12細胞を用いた筋細胞肥大モデルにおいてRhoAの発現量と活性調節機構について検討した。IGF-1刺激によってRhoAの発現増加と持続的な活性化が認められた。RhoAの活性阻害実験では、IGF-1による筋肥大の抑制が示され、更に複数の筋肉分化に関わるシグナル分子の活性低下が観察された。また、BirA酵素標識法を本研究に導入したことで複数のRhoA結合蛋白質の同定に成功した。本研究より、IGF-1による筋肥大に関わるRhoAの活性調節機構の一端を明らかにすることができた。
著者
山根 隆志 松田 兼一 山本 健一郎 西田 正浩 小阪 亮 丸山 修 山本 洋敬
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

緊急に除水が必要な患者から,簡便かつ安全に除水する可搬型除水システムを開発し,在宅医療や被災地医療にも役立つ装置の構築をめざす.本研究では透析液が不要な濾過方式を採用し,血液回路には羽根直径3cmの小型遠心ポンプを採用した.溶血試験では,1号機の溶血率は市販体外循環ポンプの3/10程度から,2号機では1/20程度に改善したが,摩耗に注意すべきことがわかった.模擬血栓試験ではピボット周辺以外に血栓は観察されなかった.さらに今回の血液濾過実験では,血流流量および濾液流量を一定に維持できたが,今後,長時間使用では中空糸目詰りやファウリングによって性能が劣化しないことを引続き立証する必要がある.
著者
藤谷 秀雄 福住 忠裕 崔 宰赫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

制振ダンパーとして、履歴型ダンパーと粘性型ダンパーを研究対象とした。平成17年度の各種ダンパーの単体載荷実験から得られた、制振ダンパーの必要なエネルギ散逸特性や特定した数学モデルに基づき、平成18年度は、履歴ダンパーで連結された連結制振構造物の必要なエネルギ散逸特性や接続された構造物群の制振効果を確認するため、エネルギ散逸要素に対する載荷実験をオンラインで結合した地震応答実験によって行った。まず、低降伏点鋼を用いたせん断パネル型履歴ダンパーについて、パネル部の厚さが薄い場合,パネル部の面外座屈による局所的な耐力低下が全体連結構造物に及ぼす影響を調べ、その影響が少ない既存のスケルトン・シフトモデルを用いた応答解析結果を準用することが出来ることが判明した。また、梁間方向の伸縮と上下動、桁行き方向の水平変位に対して履歴減衰を付加することが可能な多方向ダンパー(鋼管ダンパー)を製作し、地震時の挙動を調べた。鋼管ダンパーの形状の特性によって、鋼管ダンパーの亀裂進展による耐力低下は入力振幅の大きさ及び入力波形によって極めて大きく変動することを示し、等価単調載荷曲線を用いてスケルトン・シフトモデルの適用範囲を提案した。そして摩擦ダンパーについて、連結制振部材としての適用可能性を検討した。せん断型摩擦ダンパーを完全弾塑性モデルでモデル化して地震時の応答挙動を制度良く追跡できることを示し、卓越する変位低減効果を有することが明らかになった。更に、上のいずれの履歴型ダンパーに対しても、連結制振性能曲線を作成し、これからの連結制振構造物の設計時に有効な指標(ダンパーの剛性と耐力)や制振効果の予測に関する情報を確認した。粘性型ダンパーについては、オイルダンパーと粘弾性ダンパーを適用し、17年度に実施した単体特性試験の結果から得られたダンパーのモデルを用いて、地震応答解析を実施した。17年度は、構造モデルは弾性であったが、より現実の建築物への適用性を高めるために、弾塑性系の構造物、および多質点系の構造物に適用した解析を行った。その結果、新設S造の固有周期が短い(ブレースの設置などによって剛性が高い)場合は、新設S造の質量を既存RC造の0.25倍以上となるようにし、既存RC造の重量1000kNあたり、粘性減衰係数C_d=5〜20kNs/cm程度のオイルダンパー、または等価粘性減衰係数C_<dVE>=8.5kNs/cm以上の粘弾性ダンパーを設置すれば、既存RC造の変位を低減できるということが明らかになった。
著者
波多野 直哉
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

がんは日本人の死亡原因の第1位である。この予防には、がんの疑いのある方を早期発見し、病院で精密検査を受けることが重要である。簡便で低コストかつ高感度な早期スクリーニング法として、がん患者特有の血中代謝物のプロファイルを用いることを考えた。このため、質量分析計を用いたヒト血清メタボロミクス解析法の確立を行った。これを、膵臓がん患者と健常者の数十例の血清サンプルで実施したところ、複数の代謝物で統計的に有意な変動が見られた。さらに、この代謝物プロファイルの変化のメカニズムを明らかにするため、質量分析計を用いた代謝酵素を網羅的に比較定量するプロテオミクス法を確立した。