著者
藤谷 秀雄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

セミアクティブ制御装置であるMRダンパー(可変ダンパーの一種)だけを試験器で加振して制御力を検出し、制御対象の構造物が制御された応答をコンピュータによるシミュレーションで求め、その応答変位と応答速度を試験器で制御装置に再現すると同時に制御計算も行いMRダンパーを制御するというリアルタイム・ハイブリッド実験手法を確立した。これによってセミアクティブ制振構造の応答低減効果を検証した。このとき等価サイクル数を減衰性能を評価する指標として採用し、その有効性を示した。
著者
中村 哲也
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.149-158, 1989-03

ラット膵ラ島腫瘍細胞株RIN-rおよびRIN-m5Fを入手し, RIN-rからは新たなクローンを得て,これらの細胞におけるホルモン分泌,およびその遺伝子を比較検討した。すべての細胞において,インスリン,グルカゴンともに分泌し,両遺伝子の発現を認めたが,それぞれの程度は異なっていた。RIN-rのクローンはすべて,long♯1,long♯3を共通のマーカー染色体として持ち,同一細胞由来であることが確認され,これらの細胞が,ホルモン産生の面で多面性を持つことが示唆された。RIN-m5Fも本来は同じ膵ラ氏島腫瘍由来の細胞であるが,ホルモン分泌および遺伝子発現ともに他の細胞より著しく,染色体構成も大きく異なっていた。すべての細胞において, Ha-rasの有意な発現を認めたが,遺伝子増幅やDNAレベルでの組換えを認めず,またホルモン分泌ならびにホルモン遺伝子の発現との関連は不明であった。グルコース刺激に対し,RIN-rおよびRIN-m5Fは,正常ラット膵ラ島と異なった反応を示し,これらの細胞はホルモンの分泌モデルとしては不適当であると思われたが,遺伝子発現の研究上,有用な材料となり得ると考えられた。
著者
喜多 伸一 松本 絵理子 辻本 悟史 野口 泰基 寺本 渉 山口 俊光
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、手指が物体に触れるときの情報処理過程を調べるため、心理学実験と生理学実験を行い,触覚的注意の性質を解明することを目的として遂行した。そのためまず基礎科学に重きを置いた研究として、健常者を対象とした触覚探索の実験を行った。またその後に実世界での応用に重きを置いた研究として、視覚障害者を対象に含めて触地図内の図形の探索実験を行った。これらの実験により、触覚的注意の時空間特性を計測して視覚的注意と比較し、物体触知の能動性を解明した。
著者
水野 進
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-5, 1971

野菜の貯蔵に関し, 5種のフラスチックフィルムを使用し, その適応性を低温ならびに常温で検討した。1. 密封試験には材料としてホーレン草を使用したが, 低温(2℃)貯蔵であれば, 何れのフィルムでもその貯蔵性は常温より著しく高まった。しかし重量減少の点を考えると, 塩化ビニール, あるいは二軸延伸ポリプロピレンが最も良く, 次いでポリエチレンであり, 無延伸ポリプロビレン, ならびにポリスチレンは不適当であった。また常温(20℃)では, 何れのフィルムでも, 袋内のCO_2濃度が高く, O_2濃度が低くなり, 包装効果は期待出来なかった。2. パーフオレーション包装試験の材料としては, 芽キャベツを使用した。1包装に芽キャベツ30ケ, 重量約270gの場合, 直6mmの穴を2-4個あけた場合, 袋内のCO_2濃度は, 或程度高く, 鮮度の保持も良好であった。8個以上の場合, 萎れの防止はあるが, 袋内のCO_2,O_2濃度は無包装と変らず, 鮮度の低下すなわち黄色化が目立って来た。
著者
溝井 泰彦 福永 龍繁 足立 順子 藤原 敏 上野 易弘
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

1.人に於けるエタノールの初回通過効果の有無を調べる為、被験者をアルデヒド脱水素酵素(ALDH)アイソザイムの欠損者と正常者に分け、空腹時に体重当り0.1g及び0.4gのエタノールを経口及び経静脈投与した。0.4g/kgを投与した場合、血中エタノール濃度は直線的に減少した。血中アセトアルデヒド濃度は欠損者でのみ上昇した。経口投与した時の血中エタノール濃度は経静脈投与の場合よりもかなり低く、血中エタノール濃度曲線下面積は経静脈投与に比べ正常者に於いて13%、欠損者に於いて22%減少した。0.1g/kgを経口投与した場合、血中エタノール濃度は曲線的に下降した。曲線下面積は経静脈投与に比べ経口投与した時は正常者に於いて35%、欠損者に於いて33%減少し、エタノールの初回通過効果の存在が示された。曲線下面積の減少の割合は少量投与の場合に大きく、初回通過効果はエタノール少量投与によって明瞭に認められるものであった。2.食事後に0.1g/kgのエタノールを経口投与すると、ALDH正常型・欠損型被験者共に血中エタノール療度は空腹時に比べて有意に低くなり、曲線下面積は空腹時の経口投与に比べ著しく減少した。欠損者の血中アセトアルデヒド濃度は食事後投与の場合に高くなった。エタノール吸収の遅れ・吸収効率の低下と共に肝血流の増加とそれに伴うエタノール代謝の亢進が考えられた。3.健常者12人に0.1g/kgのエタノールを経静脈投与し、血中エタノール濃度曲線をMichaelis-Menten型酵素反応を消失過程に持つone compartment open modelで解析した。エタノール濃度の最高値は2.8mMから9.4mM迄分散し、非線形最小二乗法で求めたKm値、Vmax値には大きな個人差があった。エタノールが体内に拡散する速度と拡散スペースの容積もエタノール代謝の重要な要因であることが判った。
著者
宮本 セツ 宮本 雄一
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.79-84, 1971-12

1. モザイク斑紋を呈していたベラドンナから分離されたウイルス(glutinosa necrosis virus; GNV)(仮称)(宮本ら, 1965)は, 寄主範囲, 物理的性質, ウイルス粒子などからCMVに近いウイルスと推定された。このGNVをN. glutinosaに接種した場合, 植物の老若および環境温度にはほとんど関係なく, 常に接種葉に局部えそ斑(LL)を生じたのち頂端えそ(TN)となり, さらに全身えそ(SN)となって植物は枯死する。このようにLL⟶TN⟶SNと進行する現象の詳細と機構を知るために, N. glutinosaの葉位, 葉数, 部位などを変えてGNVを接種し, 頂葉部におけるえそ斑の発現様相, ウイルスの接種葉からの移行の時期とTN出現との関係, さらに頂葉部からのGNV回収可能時期とその濃度などについて1968年に行なった実験の結果をのべた。2. GNVをN. glutinosaに接種した場合, 接種葉のLLが水浸状に拡大, 褐変・癒合する時期(一般に接種後5∿7日)にTNが出現し始めた。このTNの発現は, 接種葉がより下位の場合, 接種葉数あるいは接種部分がより少い場合には多少遅れたが, 一般に時間の経過と共に頂葉部全体に拡大した。しかしこのTN発現の様相には常に1つの規則性が認められた。すなわちTN発現初期には, 接種後最初に出た+1葉あるいは+2葉および第2葉にTNが出現するが, 接種時に最も若く未展開であった第1葉へのえそ斑の出現は前記の葉より必らず遅く, 一般に頂葉部全体にえそ斑が拡大する時期まで遅延した。3. N. glutinosaの先端部を切除した個体にGNVを接種した結果, まず接種葉側の上下のわき芽にえそ斑が出て枯死させたのち, 反対側のわき芽にえそ斑が現われるのが常であった。4. GNV接種葉におけるLLの形態は, 葉位が上位の場合ほど輪郭が鮮明で, 下位になるほど不明瞭となりウイルス局所化の不完全さを示した。なおLLの出現数は, 上位葉より下位葉になるに従って増加する傾向が認められ, さらに下位葉では上位葉におけるより出現日が遅れた。5. N. glutinosaの第7葉にGNVを接種し, 接種66時間後にLLが出現し始める条件下においては, 接種72時間後には接種葉からGNVはその葉柄にすでに移行しており, その移行したウイルスのみによってTNをひき起こし, さらにSNとなって植物を枯死させることが, 接種葉切断実験で明らかとなった。すなわちTNの出現および拡大は, 接種後の初期の1時期に到達したウイルスのみで十分であり, それらが頂葉部で増殖・拡大するものと考えられる。6. N. glutinosaの第7葉にGNVを接種し, えそ斑発現の前段階の状態にある接種4日後の+1葉, および頂葉部に広くえそ斑が拡大した7日後における+1葉からGNVを回収した結果, 接種4日後には非常に低濃度で, また7日後にはかなり高濃度でこの+1葉中にウイルスが存在することが確かめられた。7. 以上の結果から次のことが結論される。1) GNVがN. glutinosaにおいてLL⟶TN⟶SNをひき起こす機構は, TMVがN. rusticaにおいて示す現象と同じタイプに属する。2) 接種時に未展開であった第1葉はTNになりにくい。3) LL形成初期にウイルスは既に葉柄に移行しており, そのウイルス量のみでTNおよびSNをひき起こすことができる。4) TNの最初に現われる葉と接種葉との葉序的関係は無視できないが, すべての場合にそれを関連づけることは困難である。
著者
東 順三 長沢 藤延
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.325-330, 1975

含有粘土の種類を異にする土壤における粒団生成の実態を明らかにする目的で, 前報のハロイサイト系人工土壤における粒団の造成実験に引続き, 本報ではモンモリロナイト系人工土壤(ベントナイト粘土・海砂・ガラス玉混合物)に腐植, アルミニウム, 鉄および土壤改良剤(アロン・ソイラック)を施用し, 前報と同様に, 湿潤と湿乾交代の二通りの条件下で1・3・6か月間インキュベートして粒団の造成実験を行った。1. モンモリロナイト系人工土壤においては無施用区にも少量の粒団が生じたから, 膨潤性で高い和水性と電荷を持つ粘土では極性の高い水で加湿されると粒子が相互に引き合ってゲル状に集合し, その一部が比較的強固に連結して耐水性になることがわかった。2. アルミニウム単用区は湿潤条件でインキュベートすると高い粒団生成効果を発揮した。しかし湿乾交代条件でインキュベートすると粒径の大きな粒団が形成されなかったから, アルミニウム単独による土粒連結は耐久性の低いことがわかった。3. 腐植単用区ではほとんど粒団生成が認められなかった。しかし腐植とアルミニウムとを併用すると, 両成分が複合して土粒間の連結に関与し, しかもこの粒団は耐久性が高く, 湿乾交代条件下においても注目すべき高い粒団生成効果を発揮した。4. 土壤改良剤のアロンとソイラックの粒団生成効果は中位程度であった。5. 鉄単用区では肉眼的にも特異な泥塊状の集合体を形成し, その粒団化度は中位で, アルミニウムのように高い粒団生成機能を持たないことがわかった。
著者
角谷 賢一朗
出版者
神戸大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

iPS細胞から椎間板髄核細胞、線維輪細胞を分化誘導することを試みた。現在のところ幹細胞から椎間板細胞を効率的に分化させる方法は確立されていない。したがって、我々は互いを共培養させる方法を採用した。まず、iPS細胞と椎間板細胞を共培養することで分化誘導を試みたが、iPS細胞は線維細胞様の細胞に分化し椎間板髄核細胞の特徴は有していなかった。そこで、iPS細胞から胚様体を作成、この胚様体ヘレチノイン酸を負荷することで間葉系幹細胞を分化誘導し、この間葉系幹細胞と椎間板髄核細胞、線維輪細胞を共培養する手法を選択した。iPS細胞は浮遊培養することで約7日間後に胚様体の形成をみた。さらにこの胚様体細胞ヘレチノイン酸を負荷することで間葉系幹細胞様の細胞が誘導された。この間葉系幹細胞の性格を検討するために、骨分化誘導を行いアリザリン染色にてCa沈着を証明し骨分化誘導能を確認した。今後、このiPS細胞誘導間葉系幹細胞から椎間板細胞の分化誘導を図る予定である。
著者
長谷川 清三郎 山口 禎
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大學研究報告. 農芸化学編 (ISSN:04400216)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.61-62, 1958

本実験は水稲の出穂直前に台風(暴風雨)にあてたものについて, その後の水分と炭水化物含量を測定した。茎葉3部位別の水分は処理区の方が対照区よりも常に[table]若干少く, その後回復の見込は殆んどない。また3部位別に水分の多少をみると葉身の含量は最も少く茎は最も多く葉鞘は両者の中間にあたり, これらの差は何れも僅少であるが全て有意差をもつている。全糖と澱粉含量は処理区の方が多い傾向を示した。これは前報の結果とともに出穂期或はその後に台風をうけた稲は穂への同化産物の移行が若干妨げられて3部位に貯蔵的な状態で一時存在しているものと思われる。
著者
石川 達夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

まず、プラハの成立の事情を探ってゆくと、プラハはヨーロッパでもかなり特殊な地位にある町であることが明らかになった。「プラハ」の名の語源に関しては様々な説があるが、極めて信憑性の高い説によれば、「プラハ」は「プラヒ」(浅瀬)という言葉に由来する。ヨーロッパの中央に位置する町プラハは、エルベ川支流のヴルタヴァ川の浅瀬(プラヒ)でヨーロッパの東西南北を結ぶ道が交差する地点にできた町であり、古来ヨーロッパの十字路だったのである。しかし、人口に膾炙した伝説によれば、「プラハ」は「敷居」に由来するという。これは、プラハを創設したチェコ最初の王妃リブシェにまつわる伝説であり、この有名な伝説は時代と共に変容しながら、チェコのみならずドイツの様々な芸術作品を生んでいった。このように、プラハの様々な固有名詞に関する一連の研究によって、プラハの極めて興味深い文化史を掘り起こすことができた。プラハは、町の成立当初から、単にチェコ人だけの町ではなく、ユダヤ人とドイツ人の町でもあった。プラハの文化史を辿ることによって、その特徴を成す複数文化的な性格を明らかにすることができた。特に、ヨーロッパの様々な民族の人々がプラハにやって来て、チェコ人以外の芸術家たちが壮麗な宮殿や見事な彫刻を造ったバロックの時代、やはりヨーロッパの様々な民族の人々がプラハにやって来て、国際色豊かな文化を形成した両大戦間の時代など、プラハはヨーロッパの文化の十字路と呼ぶにふさわしい性格を有してきたことが分かった。一九三〇年代にプラハに移住した、チェコ語の姓を持つオーストリアの画家・劇作家オスカル・ココシュカが言ったように、プラハは「ヨーロッパが最後に辿り着いた、コスモポリタン的な中心地」になっていたのである。
著者
森下 敏男
出版者
神戸大学
雑誌
神戸法学年報 (ISSN:09123709)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-117, 1999