著者
三宅 洋平 臼井 英之
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

3次元電磁モデル大規模プラズマ粒子シミュレーションにより、太陽近傍プラズマ環境中における科学衛星プラズマ相互作用を定量的に解明した。特に①強太陽放射による大量の光電子放出にもかかわらず、空間電荷制限電流の効果により衛星は負に帯電する、②太陽風プラズマ中の対流電場に起因する光電子の非対称分布が衛星搭載電場プローブ位置に数100 mV/mの強い人工電場を発生させる、③衛星からの光電子放出電流により最大数nT程度の局所磁場変動が起こりうる、などの結果により、これまで人類が経験したことのない極限環境における衛星プラズマ相互作用の実態を明らかにし、将来衛星計画の設計に適用可能な知見を得ることに成功した。
著者
原 賢太 横野 浩一 安田 尚史 明嵜 太一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

mTORシグナルの栄養代謝における役割を生体で解析するため、mTORC1シグナル特異的阻害剤であるラバマイシンを腹腔内投与したC57BL6マウスモデルを用いて解析を行ったところ、非投与群に比べて体重血糖、遊離脂肪酸や脂肪重量などには有意な差は認めなかったが絶食後の血中ケトン値がラバマイシン投与群で有意に高値を示していることを前年度見出したそこで次に肥満、2型糖尿病モデルであるKK-Ayマウスに同様の解析を行った。その結果やはりラバマイシン処理群で血中ケトン体の産生が有意に増加していた。また投与群で体重増加が有意に抑えられていたにもかかわらず、随時血糖値の上昇、肝・脂肪重量の低下が見られ、またインスリン負荷試験にてインスリン感受性の低下が見られた。一方、mTORヘテロノックアウトマウスを用いて同様の解析を行ったが、ヘテロ欠損はlittermateの野生型と比べても、絶食後のケトン体や遊離脂肪酸の産生および脂肪や肝重量に有意な差を認めなかった。以上のラバマイシンを用いたマウスモデルの解析から、mTORC1シグナルは、飢餓時におけるケトン体産生に対して抑制的に働いている一方、mTORC1経路の抑制は、末梢でのインスリン感受性と膵β細胞の代償性肥大化を抑制することで、耐糖能の悪化をきたすことが明らかとなった。mTORC1は生体において、糖・エネルギー代謝において重要な役割を担っており、分子栄養学的な観点から重要な標的分子であることが明らかとなった。
著者
嶋矢 貴之
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、近時の日本における刑事立法について、解釈論的観点から調査・研究を行うものである。日本では、この10年の間、刑事立法が非常に活発化しており、それを実定法解釈論研究者の立場から、研究することの意義は非常に大きい。本研究では、それら刑事立法のプロセス、そこで行われた議論、もたらされた帰結・状況を研究し、一般化可能な立法に関する命題を探求した。具体的成果としては、後述のとおり、違法ダウンロードに関する研究報告、不正指令電磁的記録等作成罪の注釈書執筆等において明らかにしている。
著者
岩井 正浩
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

2004年〜2006年度の調査・研究によって得られた成果は以下の通りである。(1)2004年度のよさこい祭りでは、音楽制作のキーパーソンである三谷章一氏との長時間対談を始め、地区競演場の責任者、数多くの音楽および振付け制作者を対象として、聞き取り調査を実施し、よさこい祭りを支えている人々の役割と位置づけを明らかにした。(2)2005年度では、実際に地方車に搭乗し、パフォーマーの側からのアプローチを実施した。チームは52回皆勤の地元町内会チームである「上町よさこい鳴子連」である。地方車の役割、子どもチームにおけるパフォーミングが、子どもの成長、よさこい祭りの発展にとって大きな役割を果たしていることを明らかにした。(3)2006年度では、53回皆勤の商店街チームである「帯屋町筋」チームの地方車に搭乗した。テレビ局の取材(全国放映)を受けつつ、地方車のトップから鳥瞰的に祭りを調査し、全体像を把握することができた。そして商店街の重要な要として、祭りが位置づけられていることを明らかにした。中間的まとめとして単行本『これが高知のよさこいだ!いごっそとハチキンたちの熱い夏』を、岩田書院から刊行した。(4)以上、現代の都市の祭りであるよさこい祭りの創造と進化は、町内会と商店街、そして地区競演場の底支えで成立していること、人口30万人規模が、都市の祭り規模として適正であったこと、さまざまな課題を市民レベルで克服してきたことにある。さらに重要なのは、祭りへの参加規程を最小限にして自由性を正面に据えたことである。それらは、(1)音楽《よさこい鳴子踊り》の一部を含めること、(2)鳴子を両手に持つこと、(3)前進すること、である。これらは土佐人の自由性・開放性の精神表出であり、パフォーミング・アーツを常に創造し進化させている。
著者
渡部 昭男
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

地方分権一括法の 2000 年施行により、就学行政は中央集権的なものから自治的な仕組みに変わった。中央教育審議会は、インクルーシブ教育に向かうこと、および就学指導から相談支援に転換することを表明した(2010・2012 年)。まず 2010 年調査により、市区町村において就学指導委員会の名称・仕組み・機能を相談支援の性格に変更した自治体例を掌握した。次に 2012 年調査により、回答のあった 36 都道府県の 17%(6 件)、8 特別区の 75%(6 件)、320 市の 25%(79 件)、254 町の 9%(22 件)、46 村の 22%(10 件)、57 共同設置等自治体の 19%(11 件)で既に相談支援に移行していたことが明らかとなった。
著者
角松 生史 小田中 直樹 桑原 勇進 小玉 重夫 佐々木 弘通 進藤 兵 都築 幸恵 長谷川 貴彦 藤川 久昭 山本 顕治 横田 光平 世取山 洋介 DIMITRI Vanoverbeke 内野 美穂
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

1990年代後半以降のわが国の統治システムの構造的変容(「構造改革型」統治システム)を対象として、社会構成主義的方法を共通の立脚点とした学際的共同研究を行った。各年度毎に研究キーワードを設定して(2009年度「参加」、2010年度「責任」、2011年度「関係」)シンポジウム・共同研究会を開催した。「まちづくり」と市民参加、説明責任、教育基本法改正、歴史的記憶、裁判員制度、子どもの権利といったトピックについて、構造改革型統治システムのマクロ的・ミクロ的諸相が社会構成主義的観点から分析された。
著者
梅田 正博
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部紀要 (ISSN:00756431)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.45-62, 1987-03
被引用文献数
8

ハイドロキシアパタイトセラミックス(HAP)の人工骨としての有用性を検討するため,HAPの家兎頸骨内移植実験,脱灰骨基質(DMBM)およびHAPのラット皮下混合移植実験を行った。頸骨内移植実験においては,移植後早期よりHAP表面には骨芽細胞の配列がみられ,HAPを核として骨形成は進行し,移植部全域に新生骨形成が認められたが,90日後においても新生骨に吸収像は認められなかった。一方,骨削除のみの対照群においては,骨削除部を中心に活発な骨形成が生じるが,骨髄腔内の新生骨は吸収され. 90日後ではほぼ術前の状態にもどっでいた。皮下移植実験においては.DMBM単独移植では,良好な軟骨,骨誘導がみられたが,HAPとDMBMとを混合すると,軟骨,骨形成は低下することが認められ,一方,新生骨とHAPとの直接の接触もみられなかった。以上より,HAPは骨伝導能を有し,口腔外科領域における人工骨材料として有用性が高いものと考えられるが,その適用範囲に関しては,今後さらに検討する必要があると思われた。
著者
長坂 一郎 本江 正茂 近藤 伸亮 近藤 伸亮
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

生活環境内に存在する様々な不適合・矛盾 (コンフリクト) を解消するデザイン・フレームワーク、行為シーケンスのパタン・ランゲージの構築にむけて、実験室の統制下の環境と、実際に使用されている現実的な環境との両方、複数のカメラを長時間稼働させて、ユーザの行動を撮影し、それらをシンクロさせて統合した動画を作成し、またその動画からスライス画像を作成して、画像内から行動パタンを抽出するシステムを開発した。さらに、行為シーケンスの特徴を視覚的に分析するための表現として、人の行動傾向をベクトル場として表現する方法、およびランドスケープ・ダイアグラムとして表現する方法を提案した。これらの成果に基づいて、生活環境のコンフリクト解消のためのパタン、特に、コンフリクト解消のための設計アイデアを表現する手法について、因果ループ図を用いて最適行為シーケンスと実際のシーケンスの差異を表現することを検討し、ライフサイクル設計問題を例として、因果ループ図を用いたパタンのデータベース化と、これを用いた設計支援手法の開発を行った。
著者
小田 利勝
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、少子高齢・人口減少社会への対応策として学部教育の修業年限を1年短縮することによって期待される効果をシステムダイナミックスモデルで推計するとともに学部教育の修業年限短縮という着想に関わる諸側面に関する大学長への質問紙調査(医歯薬獣医系の単科大学、2年以内の新設大学、廃止予定の大学等を除く国立79,公立70、私立533の計682大学の学長/総長宛に調査票を郵送し、国立50(回収率63%)、公立37(同53%)、私立200(同38%)の計287大学(同42%)から回答があった)から得られたデータを分析した。18歳人口は減少し続けるが、進学率の上昇が見込まれるので、学部入学者数は2023年頃までは増加し続ける。修業年限を1年短縮することによって、2030年頃までは毎年40万~50万人の労働力人口が1年早く補充されることになる。その結果、所得税と年金保険料の増収が2025年には2,500億円から3,200億円になる。しかし、進学率が上昇しても2035年頃からは大学入学者数も卒業者数も確実に減少していき、補充労働力人口も減少し続けることになり、毎年の税収や年金保険料収入も減少していく。奨学金に関しては、修業年限を1年短縮することによって貸与学生を大幅に増やすことができると同時に奨学金貸与事業費をかなり軽減させることができる。学部の修業年限を1年短縮することによって1年前倒しして労働力人口の補充や税、年金保険料の増収を図ることができることは少子高齢・人口減少社会が抱える課題への確実な対応策になり得ると考えられる。大学長の多くは現行の4年制を支持しているが、工夫次第では教育の量と質を落とさずに3年制にすることも可能とする意見や3年制にすることに関して検討する余地があるとする回答も3割あった。そのほか多くの貴重な意見が寄せられ、本研究を進める上で、学部教育の目的や多様性をいかにして考察の枠組や分析モデルに組み入れていくかが課題であることが示唆された。
著者
松田 毅
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

まず、ライプニッツによる「有機的物体」のモデルとしての「テセウスの船」のパズル解決、「実体形相の復権」、原子論との差異化のなかでの「自然の真の原子」としての「モナド」導入の意義を解明した。また、ライプニッツの場合、生物が「無限」を内包するだけでなく、「寄せ集め」から区別され、発生学の文脈では、発展的に「進化する自然機械」として把握される点も示した。さらに、生気論との対決から、その生物哲学の「機械論」と「目的論」の両立が生物全般に「拡張された予定調和説」として理解できる点も論証した。以上を通じライプニッツの生物哲学の従来問題とならなかった重要な局面に光を当てることができた。
著者
広瀬 智久 松尾 浩気
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大学・神戸大学農学部研究報告 (ISSN:0367603X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.95-99, 1968

1. 水田裏作として栽培されたオランダイチゴ, ダナー種の完熟果実を室温中に貯蔵し, その含有成分の変化の過程を調査した。収穫当日に含まれていた80%エタノール可溶性N化合物, 糖類の含有量は次第に減少したが, 有機酸の量は殆んど変化がなかった。しかし, 収穫後の水分含有率の低下は収穫後の日数と共に著しく。従って各成分の濃度(含有率)は相対的に高くなり, その結果N化合物の含有率の低下は比較的緩慢となり, 糖類の含有率は殆んど変化なく, 有機酸は上昇した。糖の種類は, グルコース, フラクトース, キシロース及び蔗糖であるが, 収穫後次第にグルコース及び蔗糖が減少し, キシロースがやゝ増加した。有機酸は大部分がクエン酸で, リンゴ酸, コハク酸及び痕跡の酒石酸が認められたが, 減少したのはリンゴ酸のみであった。2. 排水良き砂壌土の圃場に於て, 栽培された4品種のオランダイチゴ(紅露・幸玉, アメリカ・ダナー)の果実について収穫後に於ける諸成分の含有率の変化を比較した。N化合物・糖類・有機酸についてみると, その含有率自体は品種の特性を示し, 夫々非常に異なっているが, 含有率の貯蔵中の変化は互に平行的に推移し同様の傾向を示した。この実験の果実成分のペーパークロマトグラフィーの結果は, 水田裏作のダナー種に比べて, 糖類の内, フラクトースが特に多く, 蔗糖が少かった。品種間差異は特にグルコースに認められた。有機酸では, 酒石酸がかなり多く, 紅露及び幸玉ではα-ケトグルタル酸を認めた。品種間の差異は, 大部分をクエン酸に, 次いで酒石酸によって影響された。
著者
高取 克彦 嶋田 智明
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学医学部保健学科紀要 (ISSN:13413430)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.31-40, 2005

本研究の目的はビデオ映像を手がかりとしたMental Practice(MP)が、脳卒中患者の非麻痺側上肢課題遂行能力と麻痺側上肢機能に与える影響を調査することである。対象は脳卒中患者40例とし、MP群とコントロール群に無作為に振り分けた。課題は「座位にて、接近してくる水の入ったコップをできるだけ遠くで取る事」とし、MP群には課題動作を三人称的および一人称的視点で撮影したビデオ映像を見せ、コントロール群には同時間の休息のみとした。また、麻痺側上肢機能への学習効果を検証するためにMP群の1例には上記介入を4週間実施した。非麻痺側機能評価は座位でのFunctional Reach距離(S-FRD)の変化、視覚的判断による課題遂行能力と実行との整合性とした。麻痺側上肢機能は簡易上肢機能検査(STEF)の合計点数とペグボード遂行時間の変化で評価した。結果として、S-FRD変化は介入法と時間経過(介入前後)の2要因に交互作用が認められた(F=7.69,p<0.01)。4週間の介入を行った症例では介入後、STEF合計点数およびペグボード遂行時間共に改善が認められた。