著者
松井 吉康
出版者
神戸学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

思考の究極の問いは「まったく何もないのか、そうではないのか」であるが、そこで問われているのは「端的な無」という可能性の真偽である。こうした可能性としての「無」と「無ではない」を問うことで、「無ではない」という現実(もしくは真理)に先立つ次元を問題にすることができるのである。こうした「無の論理」は「現実以前」を扱うことができるのである。その結果「無ではない」という真理が、「無から成立する何らかの働きもしくは出来事」ではないことが明らかとなる。
著者
宮崎 清恵 高梨 薫
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

周産期医療施設766施設においてソーシャルワーク業務を担当している職員に対するアンケート調査、事例研究、および文献研究をおこなった。それらの分析により、極低出生体重児へのソーシャルワーク実践モデルを開発した。実践モデルは(1)実践理論、(2)実践の対象、(3)実践の意義、(4)援助の手続き、(5)必要な知識・価値・技能、(6)業務環境で構成される。今回の研究では、それぞれの項目の内容を明確にした。
著者
前林 清和
出版者
神戸学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、地雷被害が続くカンボジアにおける地雷回避教育を推進するための研究である。まず、カンボジア北部地域、特にポイペト市において、地雷被害調査と地雷教育の実情を調査し、その不備も含めて明らかにした。そのうえで、実際の地雷回避教育プログラムおよび教材を開発した。開発した「地雷ノート」をポイペト市にある小学校3校の子どもたちに配布し、地雷回避教育を実施し、その効果を明らかにした。
著者
岩井 信彦 青柳 陽一郎 白石 美佳 大川 あや 清水 裕子 柿本 祥代
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.75-81, 2007-01
被引用文献数
1

回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者51例の日常生活活動(Activities of Daily Living ; ADL)を機能的自立度評価法(Functional independence measure ; FIM)を用いて、実際の生活の中で行っている活動「しているADL」を評価し、同時に理学療法室や作業療法室など限られた環境での潜在的な活動「できるADL」を評価し、その得点差の状況を比較検討した。その結果、入院時、低FIM群では更衣上半身、更衣下半身、トイレ動作で得点差が大きかった。一方、高FIM群では階段昇降、歩行で差が大きかった。さらにADL項目ごとの得点と「しているADL」と「できるADL」との得点の関係において、低FIM群ではその差は確認できなかったが、高FIM群においては得点が高いADLほど得点差が小さいという相関が確認された。このことから回復期脳卒中患者の「できるADL」と「しているADL」の格差の特性を知り、医療チーム全員が格差の早期発見と原因の解明に取り組んでいくことが重要であると思われた。
著者
山本 大誠 奈良 勲
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.97-104, 2006-03-20

この論文は精神疾患の理学療法に関する課題と展望について議論するものである。理学療法は身体的健康を維持するために不可欠である。また,身体的健康は精神保健に対して寄与している。しかし,わが国では精神疾患患者への理学療法による身体運動は確立されていない。精神疾患の治療は,主に医師,看護師,作業療法士,精神保健福祉士によって行われている。理学療法は身体症状の改善が主な役割であるとされ,精神科領域では重要視されてこなかった。しかし,近年では精神疾患患者に対する適正な医療が見直され始め,精神医療におけるリハビリテーションの重要性がさらに高まってきた。そして,精神科領域における身体医療の必要性から,理学療法の取り組みが期待されている。精神科領域のリハビリテーションにおいて理学療法を導入し,他職種と連携して取り組んでいくことが望ましい。
著者
西林 保朗 西村 望
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.69-74, 2006-03-20
被引用文献数
1

わが国の男子バスケットボールプレーヤーの多くはヒップホップファッションを取り入れて,大きいシューズと踝部の下方までしかない極端に短いソックスを履くようになっている。過去1年間に,そのために生じた足部障害と判断できる6例を経験したので報告する。このうち1例ではプレーの続行が不能となり,治療に局所麻酔薬とステロイド薬を混合して用いた局所ブロックが必要であった。潜在例を含めて,同様の障害が多発していることが推測される。流行に左右されたために生じた障害であり,適切に指導すれば解決する問題であるので,ヒップホップシンドロームと呼称して注意を喚起したい。
著者
水本 浩典
出版者
神戸学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

阪神・淡路大震災から15年が経過するなかで、戦後最大の都市型大規模災害に関係する史料(本研究では「震災資料」と呼称)のうち、特に、被災地の小学校・中学校などで多数形成された「避難所」に関する「震災資料」の所在を捜索するとともに、調査を目的としている。初年度に実施した神戸市域の小学校及び中学校に対するアンケート調査を基に、「避難所資料」の確認と発見に努めた。最終年度である平成22年度は、兵庫県南部地震の震源地に近い旧北淡町の避難所資料調査にも調査範囲を拡大した。(1) 震災資料所在の確認と資料の発見・神戸市立長田小学校避難所資料の発見と資料調査実施(原資料の寄贈を受ける)・神戸市立鵯越小学校(現・廃校)廃棄資料中から避難所資料発見・移管・淡路市立野島小学校(現・廃校)避難所資料の確認と資料調査実施(2) 聞き取り調査(避難所運営に係わる「記憶」資料の記録化)実施・神戸市長田区被災者からの聞き取り調査実施・神戸市東灘区被災者からの聞き取り調査実施(3) 神戸市消防局当時職員に対する聞き取り調査実施・特に、神戸市長田区の消火活動・人命救助活動に従事した職員(30名)に実施
著者
神原 文子 本村 めぐみ 奥田 都子 冬木 春子
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

第1に、ひとり親家族に育つ50人ほどの子どもを対象にしてインタビュー調査を行い、ひとり親家族の生活状況を捉えた。そのなかで、ほとんどの子どもたちがひとり親家族で育っていることを受容していることを明らかにした。第2に、ひとり親家族で育っている高校生と、ふたり親家族で育っている高校生を対象に「高校生の生活と意識調査」を実施した。その結果、ひとり親家族で育つ生徒とふたり親家族で育つ生徒の比較によると、親子関係の良好さには違いはないが、ひとり親家族に育つ高校生のほうが、小遣いが少ないこと、アルバイトをよくしていること、学習時間が少ないこと、大学進学希望が低いことなどが明らかになった。
著者
中山 文 成田 静香 野村 鮎子 濱田 麻矢 西川 真子 松尾 肇子 林 香奈
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究の目的は、現代中国の中国文化(文学・演劇・映画など)に表れたジェンダーを明らかにすること、および文化の根底にある中国人のジェンダー観念を歴史的に考察することであった。我々は、平成15年度〜16年度(2003年4月〜2006年3月)にかけて、これをテーマとする研究会を計22回開催し、平均して毎回14〜15名の参加者を得た。2004年3月7日の国際シンポジウム「中国演劇におけるジェンダーの表象」では、パネリストとして、中国から中国の女性演劇である越劇の監督である楊小青氏、中国戯劇家協会の重鎮で『中国戯劇』の副主編である黎継徳氏を迎え、日本側からは中山文(神戸学院大学)、伊藤茂氏(神戸学院大学)、細井尚子氏(立教大学)が加わり、中国の越劇と日本の宝塚との比較やジェンダーの表象について討論した。また、2005年6月25日〜26日には、日中の女性演劇の比較をテーマとする国際シンポジウム「男らしさ・女らしさの作り方-越劇と宝塚」を開催した。宝塚からは、草野旦氏(演出家)・磯野千尋氏(宝塚歌劇団専科、男役)・一原けい氏(宝塚歌劇団専科、女役)、越劇(中国の女性演劇)からは、楊小青氏(演出家)・陳雪薄氏(杭州越劇院、男役)・周俊氏(杭州越劇院花旦、女役)を迎え、実演を交えて、一般にも広く公開した。このほか、研究会では、中国のジェンダーを歴史的に考察するための入門書『中国女性史入門-女たちの今と昔』(人文書院2005年3月)を編纂・出版した。この書は、中国女性の歴史を、婚姻生育・教育・女性運動・労働・身体・文芸・政治ヒエラルキー・信仰の8つのテーマに分けて解説したもので、すでに書評などで高い評価を得ている。
著者
渡辺 〓修
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

我が国では、犯罪現象と人権意識の変化にもかかわらず、「自白をとるか、とられないか」という次元での争いが、捜査から公判そして学界における主たる関心になっている。刑事手続における「55年体制」的思考である。本研究は、刑事手続のかかる運用と理論を克服し、新たな犯罪情勢に対応する捜査権限のあり方、起訴の基準、公判手続のありかた、有罪・無罪の認定基準、そして、これらに対応した被疑者・被告人の防御権の充実を模索することを目的として行った。その結果、次の点について研究をまとめることができた。(1)違法収集証拠排除法則の適用のありかた。(2)外国人被告人事件の公判廷の運用開演。(3)聴覚障害者事件と刑事裁率の限界を明確にすること。(4)事実認定の適正化。(5)検察官上訴権の制限による刑事裁判の全体としての適正化。
著者
佐藤 忠信 小長井 一男 堀 宗郎 澤田 純男 本田 利器 盛川 仁 張 至鎬 濱田 政則
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、エジプト側研究協力者が主体となりナイルデルタを取り巻く地震活動資料の収集を行った。また、過去に発生しカイロ市に被害を及ぼした地震の断層破壊過程を明確にするとともに、将来発生する地震のシナリオを作成した。日本側研究分担者はエジプト側研究者の協力の下にカイロ市を取り巻く地域の詳細な地盤調査の資料収集を行った。収集した資料の内容は以下のようである。1.ボーリング調査(PS検層、サンプリングを含む)と室内試験2.微動調査および屈折法探査(板叩き)による地盤構造調査3.重力異常による深層地盤調査4.RI(ラジオ・アイソトープ)コーン貫入試験による浅層地盤物性調査さらに、得られた資料からカイロを含むナイルデルタ地帯の地盤構造をモデル化するとともに、エジプト側の研究協力者と共同して、ナイルデルタ地帯の地震危険度マップを作成した。特に、今年度は最終年度であるので、平成18年9月にエジプト国立天文台・地球物理学研究所を研究分担者全員と研究協力者1名の合計6名で訪問し、研究の途中経過発表会をエジプトで開催するとともに微動観測点の選定を行なった。また、カイロ内の特定構造物の耐震性能を評価するために用いる動的解析用の入力地震動のシミュレーション方について議論した。特定地点を選定し微小地震の観測を継続するためのプロジェクトを立ち上げた。そのために必要な予算措置をエジプト国家地震局に申請すると共に、エジプト国立天文・地球物理学研究所の地震観測網を利用してナイルデルタにおける微小地震活動を評価した。
著者
渡辺 覬修
出版者
神戸学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

関西所在の裁判所で、甲山事件はじめ大小の事件の裁判傍聴を行い、手続の様々な段階における被告人の手続からの疎外状況を把握した。その中で、逮捕勾留中の取調べが病理を生む大きな原因であることを、実例を通じて確認する作業を続けた。また、これを克服する弁護活動の実情調査等について、理論面の検討を含めて、まとめた。各地で継続する聴覚障害者被告事件を積極的に傍聴するとともに、担当の弁護士、手話通訳者と研究交流会を各傍聴の毎にもつように務めた。裁判所サイドが考えている公正な手続・公正な通訳保護のあり方と、聴覚障害者の側なり手話通訳の側からみたそれとの食い違いがあるか・ないか、実務がどのあたりで落ち着こうとしているのか、検討結果を論文にまとめた。外国人事件の傍聴と、事件関係者、弁護士などとの面接・調査などもすすめた。とくに、外国人事件と量刑のありかたを巡り、刑罰の意味を含めた検討作業を実例を通じて進めた。全体として、被疑者・被告人の権利の主体性を法解釈面から支えるまとめの作業を行った。