著者
吉村 征浩
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年、腸内細菌叢が産生した短鎖脂肪酸(SCFA)が宿主の健康状態に非常に重要な役割を担うことが明らかとなっている。SCFAのうち、酢酸を摂取すると生活習慣病の予防に役立つことが示されており、そのような酢酸の機能性は、酢酸代謝および受容体を介したシグナル伝達により発揮されると考えられている。本研究では、酢酸摂取が宿主の腸内細菌叢構成に与える影響を明らかにすることを目的とした。酢酸をSDラットに摂取させると、腸内細菌叢構成が明確に変化することが細菌の16SrRNAのPCR-DGGE法による解析で明らかとなり、メタゲノム解析によって、ある種の乳酸菌が酢酸摂取によって有意に増加することが分かった。
著者
松本 英孝
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院総合リハビリテーション研究 (ISSN:1880781X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.3-14, 2007-01

この論文は1956年に刊行された岡村の労作『社会福祉学(総論)』が50年経過した現在もなお、何故意義ある社会福祉理論として存在し続けられるのかを検討している。吉田がいう超時代性に応えるべく、岡村の論理に着目して解明するものである。その方法は『社会福祉学(総論)』における社会福祉論理のすじみちを表現している文脈を抽出して考察を加えている。結論的には、岡村の論理は、動的・発展的論理であり、全体的関連の中で捉える媒介の論理であることから弁証法論理であることを明らかにしている。弁証法という語彙は使われなかったけれども、岡村の研究方法が弁証法であったことにより時代を超えて生き続けているのである。
著者
長谷川 千洋 博野 信次 小幡 哲史 宗佐 郁 田中 達也 横山 和正
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は情動の神経基盤を調べることを目的に,幸福情動を賦活させる手段として実験参加者に催眠暗示を行い,脳のどの部位で賦活化が生じているかについてfMRIを用いて測定した。予備実験として催眠感受性の高い実験参加者に対してfMRI環境下での情動賦活法としての催眠の有用性を確認した後,安定した幸福情動の産生が確認された実験参加者に対して聴覚提示による催眠誘導を行い幸福情動産生時と非幸福情動産生時の違いを調べた。この結果,幸福情動産生時での共通の賦活部位として補足運動野が示された。関連研究として,情動及び催眠に関する実験研究も行い,情動の脳内メカニズムの解明を試みた。
著者
近藤 浩文 福森 義信 平塚 純一
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【研究の目的】メラノーマ細胞に特異発現し、その放射線抵抗性に関与すると考えられているTRP-2遺伝子の発現を抑制することによって、メラノーマ細胞の放射線抵抗性・DNA障害型化学療法剤への抵抗性を減弱させることの可能性を検証する第一段階として培養癌細胞レベルを実施し、「ブラックデビル」と恐れられているメラノーマに対する粒子線・放射線・化学療法等の治療効果増強法(増強剤)開発に結びつけることを目的とした。【研究実績】研究実施計画に基づき以下の研究を実施した。平成17年度は各種基盤評価技術の確立と検討する対照となる細胞系の確立に重点をおいた。(1)各種悪性黒色腫細胞を用いてTRP-2発現抑制法を検討した。Tyrosinase遺伝子発現欠損黒色腫細胞にTRP-2発現抑制shRNA発現プラスミドを導入した細胞株を作製した。(2)TRP-2遺伝子発現抑制による殺腫瘍細胞効果評価系の確立するため、X線に対する感受性評価系、紫外線に対する感受性評価系、およびDNA障害型抗癌剤であるシスプラチン系抗癌剤に対する感受性の評価系を確立した。(3)放射線感受性変化の機序を解明するため、TRP-2遺伝子発現量・黒色腫細胞内メラニンモノマー量と放射線感受性の相関関係解析のためHPLCを用いたメラニンモノマー定量系を確立した。平成18年度は、TRP-2発現と放射線抵抗性の関係を明確に出来る細胞系確立と評価に重点をおいた。(4)TRP-2遺伝子発現抑制による放射線感受性変化の機序を解明するため、TRP-2遺伝子を非メラノーマ系細胞であるHeLa細胞に導入安定発現する細胞を作成した。本細胞を用いれば、TRP-2遺伝子による放射線抵抗性がTRP-2蛋白質のみに依存するのか、それともメラニン生成機構と関連するのかを明確にできる。本細胞の色素細胞学的性質、細胞生物学的性質および分子生物学的性質を解析評価した。(5)作成した上記2種の細胞を用いて、紫外線抵抗性・放射腺抵抗性およびDNA障害型抗癌剤であるシスプラチン系抗癌剤に対する感受性を親株細胞と比較検討したが、現在までのところ、明確な結果は得られなかった。評価条件・手法を変更・改良して評価試験継続中である。
著者
谷 正人
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、かつて徒弟制の中で実践されてきたイラン音楽の教育観や知識観が、五線譜や練習曲を用いる近代教育的観点の導入によって如何に変容したのかを考察したものである。従来イランでは音楽は口頭で伝承されてきた。しかし『タール教本』(1921)のような教則本の登場によって、それまでのただひたすら師匠の模倣に専念するなかか自ら問いを立て学ぶというような徒弟制的教育に、より具体的で体系的な指導という近代教育的な知識の伝授段階をもたらされたことを指摘した。
著者
石井 剛志 新井 映子 中山 勉
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

茶ポリフェノールの渋味の発現機構を生体成分との分子間相互作用の観点から解き明かすことを目的として研究を実施した。タンパク質(カゼイン)の凝集能やリン脂質膜への結合能を評価するための実験系を構築し、味認識装置やヒト官能試験の結果を基に解析・改良することで、新しい渋味の評価法を開発した。これらの評価法を用いてカテキン類やテアフラビン類の渋味特性を解析し、茶ポリフェノールの渋味の発現機構を提案した。
著者
藤川 直樹
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

大日本帝国憲法と皇室典範からなる明治期日本の所謂「典憲体制」はその成立においてもその解釈論の展開においても、ドイツ法(学)の強い影響を受けていた。このようなドイツ法の「継受」を分析するに際しては、近代ドイツ法(学)史それ自体の精確な理解が不可欠であることは言を俟たない。この研究は近代ドイツの王位継承法と王室法の制度と学知を明らかにし、明治皇室典範の制定過程および解釈学説に対するドイツ法学の影響を測定し、それを通じて近代日本の皇室制度におけるドイツ法(学)継受の実相と国制的諸条件を明らかにすることを目的とする、王位継承の日独比較国制史の試みである。
著者
玉木 七八 堀川 陽子 松田 広一 坂田 成子(藤本 成子)
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

GABAアミノ基転移酵素(β-AlaATI ; EC2.6.1.19)は脳ではGABAの代謝に、肝臓、腎臓ではシトシンやウラシルの代謝産物β-アラニンの分解に関与している。GABAは脳の抑制性神経伝達物質であることはよく知られている。アルコール(エタノール)は少量で中枢神経を興奮し、多量では抑制を示す。アルコールはチロシンアミノ基転移酵素(TAT)を非常に有意に増加させることが知られているので、β-AlaATIについても何らかの影響を示すのではないかと考え本研究を始めた。アルコールの血中濃度を長時間持続させる目的で嫌酒薬ジスルフィラム投与ラット用いた。TAT活性は顕著に増加するに対し、β-AlaATI活性は逆に減少した。時間の経過に対し指数関数的な減少の様子を示した。アルコールやジスルフィラム単独ではβ-AlaATI活性に効果を示さなかった。また、アルコール脱水素酵素阻害剤ピラゾール前投与もβ-AlaATI活性にアルコールの効果を与えなかった。生体内でジスルフィラムはジエチルアミンと二硫化炭素に分解される。二硫化炭素前投与ラットにアルコールを投与してもβ-AlaATI活性に影響を与えなかった。エタノールアミン-○-サルフェートがβ-AlaATIの自殺基質であることから、アルコールとジスルフィラムの同時投与がエタノールアミタン-○-サルフェートの様な代謝産物を生じβ-AlaATI活性を抑制したのではないかと考えられる。β-アラニン・ピルビン酸アミノ基転移酵素についてジスルフィラムとアルコールの影響について検討したが酵素活性を抑えるもののβ-AlaATIの場合のように顕著な作用を示さなかった。
著者
三道 弘明
出版者
神戸学院大学
雑誌
神戸学院大学経営学論集 (ISSN:13496727)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.129-136, 2005-03-20

化学製品などの生産工程の最終段階で,製品の重量を秤で測定し,結果を製品に記載するという工程が存在する場合がある.このとき,計量作業中に秤に狂いが発生し,製品に記載された重量と実際の重量が異なってしまうことが少なくない.ここでは,作業の直前である朝と直後である夕方の1日に2度,秤に対して点検を行い,夕方の点検で秤に異常が検出された場合には,これまでに計量した製品を計り直すという状況を考える.なお,計り直した製品は,翌日朝の点検を待たずにそのまま出荷される.しかしながら,計り直し作業中に再度秤が狂ってしまうこともあり,この場合には記載重量と実重量が異なったまま製品を出荷することとなる.但し,秤に対する点検は調整作業と同じ作業であり,点検が終了した秤は正常な状態にあるものとする.本研究では,こうした状況に対して,計り直しの際にすべての製品を再計量するのではなく,最後に計量した製品から過去に遡って一定の割合だけを計り直すことを考える.この上で,どれだけの量を計り直しすればよいかという計り直しの問題を取り上げ,その離散型数理モデルを構築した.ここでは,1日に計量すべき製品数をn(n=1,2,…)とし,夕方の点検で秤に異常が認められた場合には,最後に計量した製品から遡及してr(r=0,1,2,…,n)個だけ計り直すという方策を前提に,最適な計り直し個数の存在条件を明らかにした.
著者
辻 加代子
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、京都語に隣接する京都府口丹波方言の敬語展開の現状を明らかにすることを目ざしたものである。口丹波地方では、従来、尊敬語として機能するハル敬語と、親愛語として働くテヤ敬語とが併存し、使い分けられていた。しかし、2012年から2015年までの現地調査の結果、京都市に近い南東部、特に中心部の亀岡地区で、テヤ敬語が廃れつつあることがわかった。そして女性は京都市女性話者に近い敬語運用を行い、男性は京阪地方で盛んな軽卑語のヨルを取り入れ、テヤ敬語の役割の一部を担わせつつある。また、ほぼ全域で、存在動詞がハルに承接する場合、オラハルとイハルないしイヤハルとのあいだでゆれがみられることがわかった。
著者
中谷 英明 徳永 宗雄
出版者
神戸学院大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究の目的は、『マハーバーラタ』と『ラ-マ-ヤナ』という古代インドの2大叙事詩の韻律の解明である。両名は2年来、2大叙事詩の韻律解明を行ってきたが、この過程において、インド古典期のもっとも普通の韻律形式であり、2大叙事詩においては9割以上を占めるアヌシュトゥブ(シュローカ)律の変遷を探るうち、アヌシュトゥブが、インド最古の文献『リグ・ヴェーダ』において、ガーヤトリー律から派生したことを示す新事実を発見した。『リグ・ヴェーダ』における生成から、2大叙事詩に至るまでのアヌシュトゥブの展開が、ここに初めて連続的に明らかになったと言え、インド韻律史上の重要事実であるから、本年度はこの発見を学界に報告することとした。その事実は、「韻律パターンの使用頻度」に関わる。パターンを一々数えなから作詩することは不可能であり、作者にとってほぼ無意識の領域に属すると推定される。しかし3行ないし4行から成る1詩の各行によって異なるパターン頻度が認められること、しかもそれが2種の異なる韻律(ガーヤトリーとアヌシュトゥブ)の間でまったく平行することは、熟練した詩作者の心の内にある微妙な韻律観念を映し取るものと言えよう。詩人のこの繊細な感覚には驚きを禁じ得ない。統計的研究は、今後この種の人間精神の精妙な働きを、さらに明らかにしてゆくであろう。またこの例は、古典期の複雑に規程された韻律形式が、本源において、ここに認められるような詩人の半ば無意識的な、柔軟なリズム的感性から発生し、次第に固定化したものであることを明瞭に示しており、インド韻律史的観点からも極めて興味深い。
著者
杉木 明子
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は多くの難民が第一次庇護国で長期難民状態となっている状況をふまえ、特に長期的難民が集中しているアフリカ難民受け入れ国に対する支援方法、及び難民保護の「負担分担」に対する国際協力の可能性を多角的に検討した。アフリカに居住する難民および難民受け入れ国のニーズと、ドナー諸国の動向という2つの側面から分析することにより、現在のアフリカにおける難民保護レジームの限界を明らかにし、今後の課題を提示した。
著者
土井 晶子 本山 智敬
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

対人援助職を対象としたメンタルヘルス支援プログラムの策定および実施と、継続的にそれらのプログラムを実施していくためのグループ・ファシリテーター・トレーニングの開発を行った。メンタルヘルス支援プログラムはフォーカシングをベースにしたセルフケア研修と、つながりを作るためのサポート・グループで構成し、エンパワメント中心の研修が求められていることが示された。ファシリテーター・トレーニングでは、自分自身と相手との関係の質をより深く体験できることを目的とし、かかわりの「方法」ではなく、その「あり方」を体験的に身につける場として機能することの意義が示された。
著者
中山 文
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は中国と日本における女性演劇の可能性を探るものである。楊小青演出の『班昭』のヒロイン像が、女性ばかりで演じられる越劇と男女合演の昆劇では大きく変化していることを明らかにした。また中国女性演劇の現状を把握するために、大阪で女性演出家銭〓の講演会を実施した。さらに国によるジェンダー認識の差異を明らかにするために、『それでもワタシは空を見る』上海公演をサポートし、日中女性演劇人による座談会を行った。