著者
柳 京煕
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.413-417, 2009-04

2001年5月に、「食品循環資源の再利用等の促進に関する法律」が施行され、食品から由来する廃棄物(以下「食品循環資源」に称する)の飼料・肥料化などの有効な再利用に向けての法制度が整備された。一方、2007年12月に改正された「食品リサイクル法」では、食品循環資源の再生利用に当っては飼料化を優先することを明確に打ち出す一方、廃棄物処理法の特例措置として一般廃棄物の収集・運搬の許可を不要にするなど、政策的なバックアップを鮮明にしていることからも一層の拡大が期待されている。こうした中で、新たな切り札として脚光を浴びているのが、エコフィードである。それは最近高騰しつつある穀物類の価格によってエコフィードが導入される社会的与件が成熟しているといえる。本稿では食品関連事業(主に大手コンビニエンスストア)から発生する食品循環資源からエコフィード生産に取り組んでいる事例を紹介し、飼料化に伴う問題と課題について迫ることにしたい。
著者
野上 ふさ子
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.159-164, 2008-01

日本では戦後に急速に集約的工業畜産が導入された。集約畜産の実態は、一般の国民がそれを知る機会がほとんどないままに、急速に拡大してきたために、畜産の現状と一般の国民の意識の乖離が甚だしい状態になっている。それに加えて、80年代からは畜産製品の輸入が急増しているため、ますます畜産の現場は一般の消費者の意識からほど遠いものとなっている。近年、海外では、世界に広がる家畜伝染病の脅威に対抗するためには家畜の健康と福祉の促進が必要だという認識が広がり、OIE(国際獣疫事務局、世界動物保健機関)が主導して家畜福祉への取り組みが開始されてきた。OIEは世界169カ国の政府行政機関が加盟する国際機関であり、他の国際機関と同様に、NGO(非政府団体)のオブザーバー参加を促している。また、EU(ヨーロッパ連合)では、有機畜産・環境保全型農業の政策の一つとして、家畜福祉を導入しており、ここでも動物福祉団体が積極的に政策に関与している。
著者
木村 一榮
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.9-13, 2009-01

わが国の農業就業人口、基幹的農業従事者ともに高齢化が加速する中、農業の持続的発展を維持するためには、将来の農業の担い手となり得る青年農業者の育成確保が重要な課題となっている。このため、国および都道府県、関係団体等において必要な諸施策が講ぜられている。このような状況の中、農業大学校は、将来の農業・農村を担うべき人材の育成を行うため、高校卒業者等の入校者を対象に、実践的な研修教育を通じて、農業生産・経営に関する高度な知識・技術および農業が抱える諸課題に柔軟に対応できる能力の付与等において、それぞれの地域で青年農業者教育の中核的機関として役割を果たしている。農業大学校は、農業に関する普及事業を定めた農業改良助長法に基づき協同農業普及事業の一環として、設置運営されている農業者研修教育施設である。農業大学校はこの施設の通称であり、現在、道府県に42校整備され研修教育が展開されている。また、独立行政法人や民間の教育団体においても農業・農村の人材育成の目的から、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構農業者大学校、鯉淵学園農業栄養専門学校、八ヶ岳中央農業実践大学校、日本農業実践学園、中国四国酪農大学校等5校設置されており、併せて47校が設置運営されている。最近における道府県農業大学校の入校者、卒業者の状況は表1のとおり、少子化等の社会情勢の中で全体的な入校者の減少傾向、卒業者の就農過程の多様化等の状況がみられる中、効率的かつ安定的農業経営を担うべき青年農業者を育成するため、各農業大学校は、地域の特色を生かした研修教育により、意欲ある優れた担い手を多数育成、輩出する等地域農業の発展に大きく貢献している。
著者
中井 裕 砺波 謙吏 大村 道明 大串 由紀江
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.332-338, 2014-03

東日本大震災(以下,「大震災」)の発生は,岩手県,宮城県,福島県を中心に畜舎等の損壊や家畜の死亡・廃用といった直接的な被害をもたらした。こうした直接的な被害が報告される一方で,電気・水道等の供給停止,飼料工場の被災,交通網の遮断や燃料不足等が,家畜の生産・飼養管理や物流等に影響をおよぼし,生産物の廃棄や資質低下,資材の入手先や販売先の確保に困難を極めるといった二次的影響・被害ももたらした。さらに,東京電力福島第一原子力発電所の事故は,稲ワラや堆肥,圃場を放射能汚染し,出荷遅延,汚染堆肥の除去・保管等を余儀なくされ,風評被害による畜産物消費の低迷を惹起(じゃっき)した。このように,大震災の発生に伴う畜産経営への被害・影響については広範であったが,一方で個々の畜産経営が受けた影響は,同じ地域であっても地理的条件,周辺の社会インフラ寸断状況により異なるものであった。再生・復興の取り組みはまだまだ道半ばであり,避難している者,原発事故による影響がまだまだ残る地域もあるが,被災地で畜産経営を取り巻いてどのようなことが起き,生産活動継続でどのように苦労したかを横断的に整理し,記録等にとどめておくことは,被災地の着実な復興の歩みの上で,また今後のわが国の畜産経営の維持・安定的な発展に重要なことである。
著者
岡野 邦宏
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.747-750, 2013-07

秋田県八郎潟残存湖(以下,八郎湖)は秋田県西部,男鹿半島の根本に位置し,八郎潟調整池,東部承水路,西部承水路を合せた湛水面積は48.3km2となっている。かつては琵琶湖に次いで日本第二位の面積(220km2)であったが,1957年に着工した八郎潟干拓事業により約17,000haの干拓地が造成され現在の形となった。防潮水門の設置により汽水湖から淡水湖に変わった八郎湖の水質は,湛水面積の減少,人口増加,農地造成などにより悪化の一途を辿り,1977年の事業竣工から24年後の2001年に全国ワースト5位(COD濃度)となっている。2006年には,アオコ(藍藻類の大量増殖)により近隣地域で取水制限も行われ,水質もワースト3位となった。このような現状を鑑みて,2007年12月に湖沼水質保全特別措置法(湖沼法)の指定を受け,全国で11番目の指定湖沼となった。翌年2008年度より「八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第一期)」が策定され,悪化した水質の改善が進められている。一方で,秋田県をはじめとする農山村地域を多く持つ地域では生活排水処理において各戸での合併浄化槽に加えて,比較的小規模な集合処理施設である農業集落排水施設が大きな役割を担っている。実際に,秋田県では全体計画処理人口の13.8%(2012年現在)がこうした農業集落排水施設によって生活排水処理が行われている。八郎湖流域では,前述の八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第一期)に基づき,農業集落排水施設の高度処理化や広域下水道への接続が進められている。しかしながら,高度処理化されていない施設は水域の富栄養化の一因となる可能性があることから,既設施設の高度処理化は重要な課題といえる。また,農業集落排水施設のような比較的小規模な施設には広域下水道処理施設とは違い,低コストかつ持続可能な高度処理技術が求められる。本稿では,11番目の指定湖沼となった八郎湖の汚濁状況をアオコ問題を中心に解説するとともに,農業集落排水の高度処理技術について植生浄化法の1つであるバイオジオフィルター(Bio-Geofilter)水路を用いた技術について紹介する。
著者
石坂 宏
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.624-629, 2009-06

サクラソウ科の中にはシクラメン属というグループがあり、その中に22種が存在する。シクラメン属のすべての種は塊茎を作るが、自然分球による栄養繁殖は行わず、種子繁殖を行う。市販されているシクラメンの園芸品種は、22種あるシクラメン属の中のCyclamen persicumという野生種の改良により作出された。C. persicumの野生種は播種後2〜3年で開花個体に成長し、開花できるようになった個体は、2月に開花し、5月に結実して、その後9月まで休眠する。休眠が終了した個体は葉を展開し、翌年の2月に再び開花する。この生育サイクルをくり返し、10年くらい生存する。 C. persicum の野生種は、花弁の長さが約2cm、花色は白、ピンクおよび純白である。主な原産地はトルコ、キプロス、ギリシア、イスラエル、チュニジアであり、1700年頃に原産地から西ヨーロッパに導入され、主にイギリス、オランダ、ドイツ、フランスで栽培と育種が行われた。
著者
中洞 正 赤崎 勇次
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1205-1209, 2013-12

第一義に,日本において乳類を販売するにあたり一定の菌数を超える大腸菌及び一般細菌が検出された製品は販売してはならない規定がある。この規定をクリアするためには製造現場に,製品中の大腸菌及び一般細菌の陰・陽性を知り得る技術が必要となる。生産された乳製品は例外なくこの検査の対象となり,細菌検査を通過した物のみが出荷販売が可能となる。これは昭和26年12月27日に施行された「乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)」による取り決めである。菌検査は菌数をコロニー(斑点)の数により判定し,陰・陽性が判断される。乳製品の場合,大腸菌は1コロニー以上,一般細菌は5万以上で陽性の判定となり陰性以外は再検査をかけ再判定する。再検査の段階で陽性結果が出た場合において,販売不可の製品となる。これを怠った場合,または何らかの事象により一定の菌数を超えた製品が市場に流れた場合,販売責任者は回収の義務が課せられる。場合によっては,営業停止という重い罰を与えられることもある。このことから,検査は製造の末端工程ではあるが販売においては第一に重要な必須事項であることは言うまでもない。また乳自体の検査(比重・糖度・酸度・クリームライン・アルコール凝集など)も行うため,適正な検査を行えるか否かによって製品の安心・安全が保たれるのと同時に,品質保持の役割を担っているのが製品検査といえよう。検査においては製造現場に検査専用の部屋があること,必要機材があることが求められる。検査員は特に資格(公的には食品衛生資格者というものもある)は必要としない。各細菌の検査方法に則って行い,製品が生産されるごとに一定量のサンプルを採取して調べる。
著者
稲垣 純一
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.616-618, 2009-06

今号の口絵で紹介されている安藤養鶏は、山梨県上野原市の市街地より旧甲州街道に沿った芦垣集落に位置している。平成17年に、旧上野原町と旧秋山村が合併して市政化された上野原市は、山梨県の最東端であるが首都圏中心部から約60〜70km圏に位置していることもあって、東京都への通勤者が就業者全体の25.5%、通学でみても全体の27.1%が、東京都へ通学しているため、JR上野原駅は県庁所在地の甲府駅に次いで第2位の利用者数となっている。市内の養鶏農家が1戸のみという環境下で、飼養羽数5,000羽という小規模経営ながらも、市場出荷をせずに全量を直販している安藤養鶏は、平成6年に飼養羽数を1/3へ縮小することによって現在の経営を確立している。近隣に相談できる同業者がいないながらも、この大きな転換に至った経緯とその後の経営展開について記すこととする。
著者
古在 豊樹
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.994-1006, 2014-10

日本の都市における農業の現状(農地・農業就業者・生産額の動態など),多面的機能(生産,環境保全,防災,レクリエーション,市民農園,コミュニティー,教育など),法律(都市計画法,農業振興地域整備法など)・税制などに関しては,数多くの識者により報告され,また都市の農地・農業・緑地のあり方や解決すべき課題が論じられている(たとえば,進士 2003,蔦屋 2005,樋口 2008,東 2011)。本稿では,都市の住民が消費する生鮮食料を都市で生産することの意義を,(1) 都市への有用資源流入と都市からの劣化資源排出,(2) 都市での植物生産による資源内部循環,(3) 輸送に伴うCO2排出(すなわち,石油資源消費),(4) 都市に適した植物生産方式,(5) 都市住民の生活の質の向上,および(6) 都市における農業以外の諸活動との関係などに留意しつつ考察する(古在 2014)。
著者
並河 良一
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.794-802, 2009-08
被引用文献数
1

農産物・食品の輸出促進が日本の重要な政策となっている。そのターゲットとして、イスラム市場が注目を浴びつつある。国際金融都市化するドバイに代表される中東産油国などのイスラム諸国の経済成長は著しく、その購買力が急上昇し、高級食品・食材への二一ズが高まっているからである。イスラム市場開拓の最大のハードルは「ハラル(Halal)制度」である。ハラル制度はイスラム教を基礎とする制度であり、宗教の素養がないと理解できないと考えられているからである。現実に、日本・欧米諸国の企業や団体が、ハラル制度に関するトラブルを経験しており、同制度を非関税障壁のように感じてきた。しかし近年、貿易や投資の促進のため、ハラル制度を非イスラム世界にもわかりやすい技術制度として構築する国が現われてきた。その一つがマレーシアである。同国のハラル制度については、これを利用すればイスラム市場の開拓が容易になるため、日本・欧米諸国の企業は関心を示している。本稿では、ハラル制度の概要、その問題点を示し、日本企業はハラル制度にいかに対応すべきかを、マレーシアのハラル政策に焦点を当てて検討する。
著者
熊谷 成子 佐川 了 星野 次汪
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.1068-1072, 2009-11
被引用文献数
1

雑穀の定義にもよるが、雑穀は世界中で20種類ほどが栽培されている。雑穀の栽培の歴史は古く、世界中の人々にとって、食料、油料、アルコール用、行事食用などとして雑穀は生活の中で重要な役割を果たしてきた。戦前までの日本では、雑穀が畑作や輪作体系の中で重要な位置を占め、地域によっては主食として、あるいは地域固有の食文化資源作物として利用され、現在でも伝統祭事などと強く結びついている。しかし、戦後の日本では、雑穀はコメやムギと異なり主要食料ではないため、研究対象となることは希で、最近まで雑穀に陽が当たることは少なかった。そのため、現在栽培される多くの雑穀は在来系統で、長稈種が多く、脱粒しやすく、多肥栽培や機械化には不向きで、収量が低い。しかし、雑穀は、世界規模での主穀の大量生産、大量消費とは対極にあることから、地域に根ざした高付加価値作物ともいえる。最近では食の多様化や雑穀のもつ有用成分に注目が集まり、雑穀ブームを迎えている。現在の雑穀に対する国民の信頼に応え、健康食への追い風を定着させるためにも、研究から生産、流通、加工、販売、調理までの一連の態勢確立が早急に求められる。そこで、本稿では雑穀などの用語に注目し、その生産の現状を考察し、問題点を整理してみたい。
著者
眞田 誠 坂本 恭一
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.111-114, 2009-01

愛媛県立農業大学校の歴史は、明治43年に愛媛県立農事試験場に農業見習生制度を設置したことに始まりました。大正4年に愛媛県立農業技術員養成所と改称し、その後、時代の変遷に伴い、愛媛県高等農業講習所と名称を変更、また果樹、蚕業、畜産の各試験場にも同様の施設を併設し、技術者の養成にあたってきました。昭和46年に時代の進展に即応して農業指導者等の養成を一元化するため、講習所等を廃止し、農業大学校として新たに発足しました。昭和48年には、環境のよい愛媛県中部の松山市下伊台町へ新築移転し、教育や研修の体制強化を図りました。この後、国の要領改正や制度改正に伴う学科等の改変を行い、時代に対応した専門教育への体制を整えてきました。平成17、18年度には大学校の大幅な改革を行い、専修学校へ移行し、教授・助教授を配置するなど指導体制を拡充するとともに、従来の養成部門を自営農業者の育成だけでなく、地域農業および農村を担う幅広い人材を養成する総合農学科に再編するとともに、改良普及員の養成を目的とした専攻科を廃止し、高度な農業経営者や地域農業のリーダーを養成するアグリビジネス科を設置し、現在に至っています。
著者
秋葉 和温
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.557-561, 2015-06

長崎市: (1) 九州支場長として鹿児島に赴任してすぐ,長崎県担当の九州地区獣医師大会で研究業績発表会が長崎市で開かれた。私は支場長として,昭和58年10月11日~13日まで長崎市に出張し,県の指定していた長崎グランドホテルに2泊し,獣医畜産学会助言者として講評した。鹿児島空港→長崎空港→リムジンに乗り1時間位で長崎市内に着いた。終了後,グラバー邸を訪れた。シーボルトの鳴滝塾について県の職員の方に聞いたが,ご存知なかったので,訪れることができなかった。帰りは汽車を利用した。(2) 平成12年は日蘭交流400周年に当たるので,長崎,平戸などで記念特別展が開かれていた。畜産の研究,69巻5号の宇和島,卯之町,松山市の項に記載したように,司馬遼太郎の著書,「坂の上の雲」,「花神」そして「胡蝶の夢」など,こんなにも面白くて,参考になる読み物があったのだろうかと,感激と興奮に包まれながら,それぞれ一気に読んだものである。松山では「坂の上の雲」の正岡子規,夏目漱石,秋山好古,秋山真之などについて,現地を訪ね,資料の収集を試みた。
著者
坂口勇著
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
1959
著者
徳田 誠
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.635-646, 2013 (Released:2014-02-07)
著者
菊川 明
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.141-146, 2009-01

鹿児島県立農業大学校は、鹿児島県の南西部、薩摩半島西部の日置市吹上町と南さつま市金峰町の町境に位置し、東は霊峰「金峰山」、西は日本三大砂丘の吹上浜に囲まれた風光明媚な場所にあります。当地域には、早期水稲、かごしまブランドのかぼちゃ、砂丘らっきょう、キンカンの栽培のほか畜産では肉用牛、酪農などがある農業地帯です。農業大学校の歴史は古く、その前身は戦前昭和16年4月に設置された県立農民道場までさかのぼります。終戦後は海外引き揚げ者の開拓入植に対する訓練施設、海外移住または国内開拓を志す青年を対象にした講習施設、農業後継者の養成施設、畜産・園芸を専門に研修する高等営農研修所などを経て、昭和53年4月に県立農業大学校として創立されました。平成15年4月には県内5カ所に分散配置されていた5学部6学科を2学部7学科に再編し、現在地に移転開校しました。あわせて、農業機械研修施設や農村婦人の家等を再編統合し、研修部を設置しています。平成18年4月には農業関係試験場と農業大学校を再編統合し、技術の開発と担い手の育成を総合的に推進する「農業開発総合センター」として再オープンしました。平成19年7月には専修学校化しています。本校の教育は、その歴史からも推測されるように、現場の課題を解決するプロジェクト学習を基本とした実技と理論の総合的な教育を柱の一つとしており、校訓も「自立」「実践」「協調」となっています。
著者
秋葉 和温
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.775-780, 2013-07

私は媒介者検索のため,7月22日に久保田さんの家の離れにお邪魔した。幸いにも,久保田さんの離れを井野専務夫妻が借りておられて,私を泊めて下さるというのである。有り難いことであった。しかも,この離れの裏にはバタリー鶏舎があったので,この離れに血液塗抹や染色用具,携帯顕微鏡,接種用ヒナなどを置き,裏の鶏舎で作業して,その処理を,この離れの部屋の座り机の上ですることができたので,大変好都合であった。お邪魔して最初は,裏の鶏舎に入り,まず糞の状態を見る。緑色をした便を見つけたら,顔を上げて鶏冠の状態を見るのである。鶏冠が白っぽくなっていれば,その鶏は貧血しているのである。このようにして緑色便と貧血の見られる鶏を数羽,探し出して,血液塗抹をとった。離れに帰ってメタノール固定し,ギムザ染色をして顕微鏡で検査して,II期とV期の原虫が同時に見られるような鶏を選び出したのである。V期の原虫のみしか見られない鶏では,すぐ消失してしまうかもしれない,II期とV期の原虫が同時に見られるような鶏はV期の,すなわちガメトサイトの出始めであることを示していて,ニワトリヌカカに吸血させるのに好都合であったからである。
著者
砂田 美和 石橋 晃
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.1117-1122, 2013-11

糖質(saccharides 炭水化物 carbohydrates Cn(H2O)m)は炭素の水和物の意味であるが,名前が示すような炭素の水和物というより本来は糖質というべきものである。現在ではこの糖質の他,誘導体やそれらの縮合物も含めて炭水化物または糖質と総称される。化学的には炭水化物=糖質であるが,日本の食品成分表では食品重量から,タンパク質,脂質,灰分と水分の量を差し引いた値を糖質の量,さらにここから食物繊維を差し引いた値を糖質の量としている。飼料の一般成分分析でも同様で,水分,粗タンパク質(CP),粗脂肪,粗繊維,粗灰分の分析値を差し引いた値を主に糖質からなる可溶無窒素 nitrogen free extract (NFE)の量としている。ここでは,糖質から繊維を除いたものを糖質とした。自然界にある糖質の種類,役割や構造も低分子量の単糖から複雑な多糖類まで範囲は広い。食品や飼料ではエネルギー源の他に,糖質の特性としてグルコース(ブドウ糖),スクロース(砂糖)のような単糖や二糖は素材に甘味を持たせる重要な素材である。一方,多糖類は形状を構成し,粘性やこしなどのテクスチャーを付与する機能などの様々な役割を担っている。
著者
藤田 葵 熊倉 克元 太田 能之 石橋 晃
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.141-144, 2015-02

水の固体は氷,液体は水,気体は水蒸気,天から降る水は雨,飲用にするものを飲料水,海にある水は海水,地下にある水は地下水,用途により農業用水,工業用水,上水,下水,不純物をほとんど含まないものは純水と呼び分けられる。飲用水は井戸水,水道水,さらに特定の地下水には温泉水,鉱泉水,湧水,井戸水,水源から採水された地下水を沈殿,濾過,加熱を施した水がナチュラルウォーター,その中で,手を加えない自然の状態でミネラルが溶け込んでいる鉱水,鉱泉水をナチュラルミネラルウォーター,原水は前者と同じで,ろ過および加熱殺菌以外に複数の原水の混合,ミネラル分の調整,オゾン殺菌,紫外線殺菌を施した水をミネラルウォーター,原水は純水,蒸留水,河川の表流水,水道水を処理方法の限定なしの水をボトルドウォーターと呼び分けている。