著者
Windhorst Hans Wilhelm 杉山 道雄 大島 俊三
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.325-329, 2009-03

・2002年と2007年の間にEUの鶏卵生産は7.4百万tから7.2百万t、すなわち2.5%減少した。・この間に世界の鶏卵生産が急速に増加したので、世界生産量に占めるEUの生産量は12.4%から10.6%に減少した。・分析対象期間を通じて自給率はかなり安定していた。・2002年と2007年の間において鶏卵生産の上位7カ国の生産割合は72.8%から73.5%に増加した。・EU加盟国は優位な世界鶏卵貿易国であり、そのシェアは約60%である。・EUにおいてオランダとスペインが先進鶏卵輸出国である。フランスとドイツは最大の鶏卵輸入国である。・オランダは鶏卵製品の優位な輸出国であり、鶏卵製品の輸入に関してはドイツが一位である。・鶏卵生産および貿易の将来は、伝染性の強い鳥疾病の制御、飼料価格の動向および通常のケージ飼育の禁止の影響に依存している。
著者
柏原 孝夫
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.623-628, 2008-05

途上国で社会的存在意義の高まる熱帯動物資源。南米は21世紀の農業を支配する。南米産業の特色として全面積の1/4以上が牧野で占められ、家畜の80%以上は畜牛である。熱帯(亜熱帯)林に恵まれた南米は、21世紀において途上国全体の1/2の畜肉を賄うであろうと予測されている。柏原は家畜繁殖改善計画チームリーダー(JICA・高官専門家)としてパラグアイ駐在時に、南米の畜牛が放牧に適した体型であると知った。米国では数種のインド牛(ゼブ牛)を交配してブラーマンを開発し、体質強健、耐暑性、ダニ熱耐性、1日増体量にもすぐれた品種を作ったが、パラグアイではネロール(インド牛オンゴール種のブラジル名)の方が飼養頭数が多い。これは皮膚の弛緩が少ない(腹垂がない)方が、放牧によるダニ等の体表被害が少ないため、ブラーマンより広く普及していると考えられる。共進会において、ネロールの方がブラーマンよりも高値で取引されていることからも人気の程が分かる。当時、日本のプロジェクトとして「受精卵移植」が南米で有名であったが、ETで生まれたアンガスがブラジルでも注目されていた。
著者
高山 成 木村 玲二 神近 牧男 松岡 延浩 張 興昌
出版者
養賢堂
雑誌
農業氣象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.173-189, 2004-09-10
被引用文献数
5 8

黄土高原における砂漠化対処に必要な環境モニタリングを目的として、降水の特性について検討した。まず黄土高原における年降水量について、空間分布、安定性(ばらつき)、トレンドを調べた。次に降水の季節パターンに着目し、夏季を中心とした雨季において、降水がどの程度安定して出現するかについて検討した。はじめに1980年から2000年までの53地点の日降水量データを基に、Boosrap法より年平均降水量の区間推定を行った。さらにこの区間推定値を基準として年降水の時系列トレンドを調べた。次に1年を5日間単位の期間に分け、各期間の期間降水比{PRP(、j)}と降水安定度{PSI(、j)}との関係より、各地点における降水の季節パターンについて検討した。年降水量の平均はengeri(騰格里)砂漠、Wulanbu(ウランブ)砂漠の周辺(N38-41°、E104-107°)で最も少なく、低緯度になるほど降水量は増加した。しかし、2つの砂漠の西側に位置するQuilian(チーリエン)山脈周辺の地域(N37°30'、E101°20')は多降水な地域であった。また、Maowusu(毛烏素)砂漠北部とWulanbu砂漠北東の地域、Wugong(武功)周辺の地域は、年降水量の変動が最も大きいが、Quilian山脈周辺の多降水地域やその南方の山岳地域などは年降水の変動が小さかった。年降水量のトレンドについては黄土高原全域を平均した場合、有意なトレンドは見出せなかった。しかし、個別の観測点について見た場合には、数箇所の観測点で増加または減少のトレンドを有する可能性が示唆された。本研究では期間降水比{PRP(、j)}と降水安定度{PSI(、j)}との関係から雨季安定度{RSS(j)}を提示し、夏季を中心とした雨季における降水の安定度(変動度)を評価した。その結果、黄土高原においては同程度の年降水量の地域であっても、東側地域が西側地域よりも雨季に出現する降水が不安定であることが明らかとなった。
著者
ハンス ウイルヘルム・ウインフォルシュト 杉山 道雄 鷲見 孝子
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.642-646, 2008-06

世界の牛肉、豚肉などの食肉生産が2020年にむけて先進諸国から発展途上国へと立地変動するということをホフマンなどと唱えて世界畜産会議でCompetitiveness of East Asian Livestock Productionと題して発表した。鶏肉の2016年への展望については本誌4月号で紹介しているが豚肉について紹介したい。豚肉の世界食肉生産の中に占める割合は過去10年以上にわたって38%以上でかなり安定している。けれども地域環境動態の観点から分析を進めてみよう。第1は世界における豚肉生産の地域動向と第2は豚肉貿易の地域別動向の変化を分析し、その上で第3はこれからの10年後の2014年にそれら豚肉生産と貿易がどのように変化するかを分析してみよう。
著者
丸岡 知浩 伊藤 久徳
出版者
養賢堂
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.283-296, 2009-09-10

植物の開花や落葉などの時期は、気温に密接に関連している。従ってこれらは地球温暖化の影響を受けやすいと言える。実際、Walther et al.は近年の気温上昇の影響を受けて、植物の開花や落葉などの時期が変化していることを報告した。一般的には温暖化とともに、開花は早くなり、落葉は遅くなる。しかし暖地では冬季に十分な寒さを経なくなるので、休眠打破が遅れ、開花が遅くなることも指摘されている。日本のサクラも例外ではない。近年の気温上昇傾向を受けて、サクラの開花の時期は早くなっている。しかし冬季に暖かいと休眠打破が遅れ、開花が遅くなることも知られている。その典型が2007年であった。この年は暖冬で、全体的には開花日が早まったが、南九州や八丈島などの暖地で極端に開花が遅くなる現象が見られた。特に八丈島では観測史上初めて満開には至らなかった。本研究では、DTS(温度変換日数)法に基づきながらも、全国一律のパラメータを用い、予測したい期間の気温のみで休眠打破の時期、開花日までを予測できるように開花モデルを作成する。また、さらに現在気候において開花しない名瀬と開花の南限である種子島のデータを使用することによって、開花そのものの有無の判定基準を作成する。そしてその開花モデルを将来の予測気温に適用し、将来の開花を予測する。
著者
冨田 健太郎
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.369-379, 2009-03

ブラジル、サンパウロ州グァタパラ日系移住地での研究実例。グァタパラセンターにおける化学分析室の設置背景および概況。今まで、2003年度における基礎研究業務の他、グァタパラセンター(以下、センターと記す)において、土壌分析室の設置に関する仕事にも取り組んできた(8月下旬に帰国し、新たなビザが発給されるまでの自宅待機期間にもJATAK(全拓連)とのコミュニケーションは密にしていた。この話は、2003年3月赴任から2004年12月までと一気にいく。
著者
松尾 英輔
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.458-463, 2009-04

人と植物とのかかわりを探る。園芸を通してのしあわせを推進するという「園芸福祉」の概念が提唱されてからちょうど10年になる。この間、高齢者の健康や生きがい対策、まちづくり運動、生活の質の向上に対する市民の関心の高まりなどの社会的背景を追い風に、園芸福祉は急速に市民の間に浸透している。たとえば、園芸福祉に関する新聞記事や勉強会・情報交換ネットワークの増加、園芸福祉を授業科目に取り上げた高等教育機関がみられるようになったことなどが挙げられる。本報では、園芸福祉という言葉の誕生の経緯、その後の普及・発展の様子と課題をまとめてみたい。
著者
秋葉 和温
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1037-1044, 2009-10

鶏のロイコチトゾーン症と小倉喜佐次郎獣医学博士との関係、そして知り得た日本統治下の台湾の獣医畜産事情。劉書彦:台湾総督府における農業研究体制に「適地化」展開過程-台北帝国大学理農学部を中心に-、東京:お茶の水女子大学大学院博士論文、甲447号。これはお茶の水女子大学の大学院生の学位授与・受賞歴の中の11番目に掲載されている。この文献は2005年9月15日、次の文献は2005年3月24日となっていて、順番が異なるのではと思われるが、後者の文献に、前者の文献が引用されていることから、この順番に配置することにしたのです。
著者
国本 佳範 小山 裕三 印田 清秀
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.540-545, 2009-05

奈良県は露地での小ギクや二輪菊生産が盛んで、とくに小ギクは生駒郡平群町を中心に栽培面積約80 ha、生産量約3,600万本と全国でも有数の産地として知られている。このキクの害虫の1つにタバコガ類があり、とくにオオタバコガによる茎頂部の食害が大きな問題となっている。生産者は主に殺虫剤散布で防除しているが、以下のような理由から十分な効果が得られない場合が多い。(1)成虫が夜間に飛来し、茎頂部に1個ずつ産卵するため発見が難しい(2)幼虫は植物体に食入するうえ、移動が激しく、発生場所が特定しにくい(3)発生期がお盆や彼岸などの収穫繁忙期と重なるため散布作業が十分に行えない一方、オオタバコガ防除には殺虫剤に頼らない方法もある。たとえば、黄色灯の夜間点灯、合成性フェロモン剤による交信攪乱やネットによる圃場の被覆である。これらは、他の作物ではすでに実用化されている。筆者らは露地ギク栽培でのタバコガ類防除を目的に小規模な家族経営の生産者でも安価で簡単に設置できる新しいネット被覆法を開発した。これを平群町の小ギク栽培圃場に設置したところ、タバコガ類による被害を大幅に減少させ、殺虫剤使用回数も半減できた。本稿では、この新しいネット被覆法の概要を紹介するとともに、現地でのネット被覆栽培の普及状況やネット被覆から波及する露地ギクでの総合的害虫管理等の可能性について述べる。
著者
池田 隆政 井上 耕介
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.878-883, 2008-08

6月下旬から7月中旬はわが国におけるニホンナシの果実発育最盛期である。同時に、翌年の花芽が分化、発達する時期でもあり、当年および翌年の栽培の善し悪しに大きな影響を与える時期である。ところがこの時期は梅雨に当たり、多雨、日照不足になることが多い。これまでの事例を見ると梅雨期間中に雨が多かった年は作柄が悪く、空梅雨で梅雨明け後も干ばつ気味に経過した年は作柄がよい。すなわち、梅雨時期の降雨(曇天の影響もある)が、ナシの品質に大きな影響を与えていることがわかる。しかし、長雨年においても比較的良い果実を出す園がある。また、傾斜地の果樹園は長雨年に平坦地の園が小玉に泣く中で大玉を出荷している。これらの園に共通しているのは、排水が良いという点である。「ナシ園を拓く際は、松の大木が育つ地を選んでいた」という古老の話は、昔からナシ栽培に排水性が重要視されていたことを伺わせる。排水性の改善は、梅雨の影響を最小限に抑えるために不可欠なものである。排水対策として最も一般的な方法は暗渠を入れることである。しかし、暗渠の設置には多額の資金を要するうえ、年数の経過とともに排水効果がなくなったという事例も聞く。こうしたことから、われわれは、「農家が行いやすく(安価、簡単)効果が持続する排水改善技術」の確立を目標に試験に取り組んできた。ここでは、これまでに鳥取園試で取り組んできた排水改善技術と新たに開発した「半明渠排水法」について紹介する。
著者
真木 太一
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.761-765, 2010-07

本年の夏季の気象経過の推測状況と冷害に向けた対策は次のとおりである。なお、夏季の気象の推測は2010年4月上旬に行い、文章化は5月中旬に行ったものである。冷夏・冷害についての著者のコメントは日本農業新聞の2010年5月5日に記述されている。2010年夏季の気象推測結果を報告する。(1)春季にエルニーニョが終息するが、海に囲まれた北日本ではポストエルニーニョとしての影響が継続しやすい。(2)インド洋の海水温の高温額向が継続しやすい。(3)地球温暖化による高温化に対する成層圏低温化によって北極から寒気の南下が北日本に影響しやすい。(4)春季気温乱高下の夏季気象への影響が継続しやすい。(5)太陽黒点数が極小期を過ぎた翌年に相当するため冷夏になりやすい。(5)アイスランド火山爆発の噴煙・ダストの地球規模浮遊と日射の減少のため冷夏になりやすい。以上6項目から、北日本太平洋側ではヤマセ気象が継続しやすいが、少なくとも北日本では冷夏が発生しやすい。ただし、北冷西暑型天候が推測されるが、全国的天候不順も否定できない。そして、地域・高度の気温較差が大きくなることで、関東以西でゲリラ型降雨が発生しやすい。冷害の原因となる6条件が重なったことで、過去の気象事例・傾向から比較的強い冷夏を推測し、本文に冷害発生を軽減する各種農業気象・営農的対策法を提示した。

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著者
高橋郁郎著
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
1931
著者
新谷 勝広 富田 晃 萩原 栄揮
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.554-559, 2008-05

モモの枯死障害に及ぼす強剪定の影響。山梨県におけるモモの栽培面積は3,510ha、生産量は60,200tになる。これはいずれも全国一であり、山梨県内における樹種別の栽培面積ではブドウの4,360haに次ぐ規模となっている。しかし一方で、山梨県の農地面積は、農業就労者の高齢化や担い手不足などに伴い漸減してきている。そのような状況においても、モモはブドウに比べ栽培面積の減少割合は低く、ほぼ横ばいとなっている。これは、ブドウに比べて開園に際して棚などの施設費を必要としないことや、1998年1月の大雪でブドウ棚が倒壊する被害によってモモヘの改植が進んだこと、ブドウに比べ省力的な樹種として認識されていることなどによると考えられる。障害は植付け後2〜3年が経過した若木で発生が多いと言われている。果実が生産できる樹齢に達したころ、本障害が発生し樹体の衰弱や枯死を引き起こすと、経営的にもダメージとなる。このような状況から本障害の原因の究明と防止対策が強く求められており、筆者らは2001年より「モモ枯死障害の原因究明と対策」の試験を開始した。
著者
鈴木 啓一 ホーク エムディー・アズハウル
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.512-520, 2009-05

家畜に給与する飼料は畜産の生産コストの主要な部分を占めるため、飼料の利用効率を高める方向への改良は飼料コストを低減させことにつながる。飼料要求率は、増体当たりの飼料摂取量として表され、飼料摂取量や成長率との間に有意な遺伝と表型相関が認められるためこれまで伝統的に効率に対する重要な測定形質として使用されてきた。しかし、摂取量/増体量のような比形質に対して選抜を行うと、世代が進むにつれてその成分形質の相関反応に問題が生じる可能性がある。余剰飼料摂取量は実際の飼料摂取量と維持および生産に必要とする飼料摂取量との差に由来する形質である。牛と豚に関する余剰飼料摂取量の遺伝的変異は大きく選抜反応が期待できる。表現型余剰飼料摂取量は体重や増体量と独立した形質である。遺伝的余剰飼料摂取量も、成分形質である体重と増体量とは遺伝的に独立している。余剰飼料摂取量と一日平均飼料摂取量、飼料要求率との遺伝相関は、牛と豚で高く正の値である。余剰飼料摂取量は牛ではロース芯面積や枝肉重量と、豚ではロース面積や皮下脂肪厚とそれぞれ好ましい遺伝相関を示す。余剰飼料摂取量を減らす(余分な飼料摂取量を減らす)方向への選抜は、牛と豚の飼料効率と、経済的に重要な枝肉形質の大部分を改良することができる。それ故、余剰飼料摂取量は育種計画での飼料要求率に代わる選抜基準形質として利用することができるだろう。
著者
牧野内 生義
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.89-93, 2009-01

多様なニーズに応える学習メニュー。7ヶ所のキャンパスに12の学科があり、さらに新規就農向け研修や農業技術研修も行っている長野県農業大学校は、長野県の農業を支える一大教育研修拠点です。信州・長野県は、南北212km東西120kmと全国第4位の広さに加え、日本の屋根といわれる大山岳高原地帯にあって農耕地は標高260mから1,500mにまで及んでいてその差は1,200mを越します。このように非常に変化に富んだ自然条件の下で多様な農作物が栽培され、さらには内陸的な厳しくもメリハリの利いた気象(気温の日較差・年較差ともに大)は、美味しく充実した品位の高い農畜産物を産出しています。また、進取の気性に溢れる信州農業人は全国に先駆けて農業指導者の養成と基幹農業者の育成に取り組み、長野県農業大学校に96年の伝統を与えています。こうした事情を背景に、長野県農業大学校は長野市松代町を本拠地として総合農学科および専門技術科を置くほか、県内5ヶ所の農業関係試験場に実科および研究科のキャンパスを展開し、小諸市に研修部を置いています。