著者
川道 美枝子 川道 武男 山本 憲一 八尋 由佳 間 恭子 金田 正人 加藤 卓也
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.633-641, 2013-06

アライグマ(Procyon lotor)は北米原産の食肉目アライグマ科に属する中型の哺乳類である。日本での最初の野生化は,1962年岐阜県犬山市の施設で飼育されていた個体からと言われる(環境省,2011)。1970年代末に放映された連続テレビアニメ「あらいぐまラスカル」が人気を呼んだのも一因と考えられるが,ペットとして多数が北米から輸入されるようになった。その後,各地でのアライグマの拡大で,農作物の被害もあり,1994年に狩猟獣に指定され,有害駆除が容易となった。しかしながら,アライグマの拡大は進み,1998年には日本哺乳類学会が対策を求める決議を採択した(哺乳類保護管理専門委員会,1999)。アライグマが原産地で狂犬病を媒介することから,2000年に狂犬病予防法による動物検疫対象に指定されて輸入規制されるまでに(神山,2008),日本に多数が輸入されたが,輸入の実数は不明である。アライグマなどの侵略的外来生物の輸入や日本国内での増加を抑制するために2004年,「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(以降外来生物法とする)」が成立し,2005年に施行され,アライグマは輸入,販売,飼養,運搬が規制される特定外来生物に指定された。しかし,法律施行までにすでに日本各地にアライグマは広がっていた。狩猟統計によると(環境省HP),2004年には22道府県で3,287頭のアライグマ捕獲が記録されている。2010年には狩猟,有害駆除,外来生物法に基づく捕獲で24,091頭が捕獲された(狩猟統計)。2010年に全47都道府県に分布することが確認された(国立環境研究所侵入種データベース,2010)。アライグマのもたらす被害としては,自然生態系への被害,農作物や養魚への被害,民家や社寺などへの侵入による汚損・破壊の被害,病気の伝搬の可能性が挙げられる。日本各地に分布するアライグマは主にペット由来とみなされる。アライグマは成獣になると飼育困難になり,野外に放されたり,器用な手先を使って檻から逃走して,各地で野生化したと考えられる。外来生物法が施行されるまでは,捕獲されたアライグマを奥山放獣するようにという行政指導も行われた。また,有害駆除が農作物被害のみに対応している場合も多く,家屋侵入被害は駆除対象とされなかったため,市民による違法捕獲後に山などに放されるケースも多かったようである。そうした事情がアライグマの急速な拡大に拍車をかけたと考えられる。
著者
竹中 昭雄
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.35-40, 2010-01

日本の食料自給率はカロリーベースで41%と、食料の6割程度を海外に頼っている。家畜の飼料自給率についてはさらに低く、飼料用の穀物の9割以上は海外から輸入している。この数値はOECD加盟国中アイスランドをのぞいて最低水準であり、もちろん、食料安全保障上からも、「自国で消費する食料は国内で生産するべきだ」という理論は正しいが、日本国内ですべての食料を自給すると言うことは現実的には難しいと考えられることから、輸入に頼らざるを得ないが現状である。さらに、世界的規模で考えると、耕作地の劣化や砂漠化、途上国における人口の増加などから、世界的に食糧の需給は逼迫していると考えてよく、人類の英知を注ぎ開発途上地域を含めた地球上すべての耕作可能地域で効率的な食糧生産を行う必要に迫られている。この時、世界最高水準である日本の農業技術を開発途上地域における効率的な農業生産に活用することは、とりもなおさず日本における食糧安全保障につながるものであり、安心・安全な食糧輸入にも活用できることを意味する。国際農林水産業研究センター(JIRCAS)は開発途上地域における農林水産業の研究を包括的に行う我が国唯一の機関として「国際的な食料・環境問題の解決に向けた農林水産技術の研究開発」、「国際的な食料・農林水産業及び農山漁村に関する動向把握のための情報の収集・分析及び提供」を行うための国際共同研究を国際農業研究機関等との連携・協力の下で推進し、開発途上地域の農林水産技術の向上に貢献し最終的には日本の食の安心・安全を守ることにつなげようとしている。今般、地球温暖化は世界全体における大きな課題であり、農業は環境の上に成り立つ産業であるとともに、農業生産自体から発生する温室効果ガスをいかに抑制しながら効率的な生産を達成することができるのかが喫緊の課題であり、今後のJIRCASの新たな展開方向になるものと考えられる。
著者
村田 浩平
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.486-493, 2019-06
著者
奥村 純市
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.923-928, 2013-09

XVI. オーストリッチの肉料理(続き) 2 生で食べるオーストリッチ (続き) h. 生ハムとルッコラのピザ モモ肉を使って,生ハムを作る みんなでワイワイ楽しいパーティ,オードブルに,酒の肴に向いている。<モモ肉>断面の直径が5cm位 漬け込み用塩 適宜 ローズマリー,セージ,タイム 適宜 (図73)
著者
菅原 七郎
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.253-259, 2015-03

有袋類の発生は真獣類と比べて卵子の外囲構造(膜状構成),卵割の様式,卵管下降速度,着床,胎子形成と妊娠期間などの点で大きく異なり,有袋類の種保存と継代をする上での相対的に優位な繁殖戦略を持っていると考えられる。a) 卵子の形成と特性 有袋類のうちでキタオポッサム,フクロネコ,チャアンテキヌス,コアラなどで卵胞内での成長,成熟過程の組織学的研究が行なわれている。i) 卵子の成熟と排卵 上記の4種では第1卵母細胞は真獣類の卵子と同様に第一成熟分裂前期の複線期(卵核胞)で休止しており,第二成熟分裂の中期に至り排卵される。しかし,第2卵母細胞(M-II)からの卵胞細胞の消失時期が真獣類のそれとは全く異なり,排卵前か排卵直前に消失してしまう。
著者
辻 博之
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.147-154, 2010-01

農業技術は古来より進歩を続け、さまざまな生産上の問題を克服してきた。畑作農業にあって古くから問題となってきたのは、地力の維持と増進の問題、病害虫や雑草害による収量の不安定、連作障害などである。緑肥作物はそれぞれの時代に直面した問題に対応するために輪作に導入されてきた。もっとも、緑肥作物などの輪作は問題の最終的な克服手段とはならず、他の技術(化学肥料、農薬、抵抗性品種等)の開発と普及までのつなぎや、それらとの組合せに使う技術といって良い。しかし、時代は移り変わっても、緑肥作物には常に新しい役割が与えられてきた。現在、緑肥作物に求められている役割は、現在の技術で克服しがたい生産上の諸問題や、最新技術が引き起こす副作用、地域が抱える社会的な状況に起因する諸問題の解決にあるといえる。本稿では、畑作やその周辺で使われる緑肥作物の利用の現状を概説するとともに、その問題点と展望を述べようと思う。
著者
高橋 成人
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.p1047-1053, 1990-09
著者
長田 隆
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.357-361, 2010-03

畜産に由来する温室効果ガス。とくに家畜排せつ物起源の排出に関して。集約化、経済的効率化の進んだ畜産経営のもたらす環境負荷は、悪臭や水質汚濁などの地域限定的な影響にとどまらず、地球温暖化にも深刻なダメージを与えかねない重大事項と認識されている。国際機関の報告書によれば、現在、陸上の30%、農業用地の約70%が家畜生産のために使用されており、畜産業活動全体からの温室効果ガス発生は、二酸化炭素等量(CO2eq)で18%に達すると算定されている(FAO2006)。本報では京都議定書対象の6種の温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄)のうち、農業活動で顕著な発生が指摘されているメタンと亜酸化窒素の基本的な情報を報告する。とくに、本報告の主な読者である畜産環境関係者の関心事であるふん尿処理に関わるメタンと亜酸化窒素の排出について測定方法と削減技術を重点的に言及する。
著者
中井 裕 砺波 謙吏 大村 道明 大串 由紀江
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.511-520, 2014-05

東北および関東の太平洋側に立地する飼料工場の生産量シェアは,国内全体の約3分の1に相当する。宮城県石巻には飼料工場が6つあるが,津波による施設等の損壊ほか浸水被害があった。例えば,ある工場では,震度6強の揺れによる機械への被害は少なかったが,3.6mの津波が襲い,製品在庫が大量流失し,機械設備が破損,電気設備も冠水した。高圧変電所の被災に伴い,通電までには45日を要した。復旧にあたっては,30cmものヘドロに埋まり除去に苦労したほか,水に浸かった飼料をどのように処理するかという大きな問題に直面した。それでも機械設備を修復し,5月18日に製造テストを開始して同23日から本格稼動させている。また,青森県八戸のある工場では,震度5強の揺れによる機械への被害は少なかったが,1.5mの津波が襲い,製品在庫の大量流失のほか,機械と電気設備も冠水した。3日後に高圧通電したことから復旧を急ぎ,3月23日に製造テストを開始し,28日から本格稼動させている。このように,被災した飼料会社では復旧に尽力するとともに,飼料業界でバックアップ体制を敷き,余力のある北海道・西日本・九州の工場で増産し,長距離輸送する体制を発生後1週目から本格化させている。あわせて備蓄飼料穀物35万tの貸付,輸送車両の高速道路使用特別許可等もあった。一方で,燃料・トランスバック・内航船が不足するという事態も生じた。また,一部の外国船は遠方の港への荷降しを希望し,対応に追われた社もあったようだ。
著者
入倉 敏広 市原 裕子
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.711-714, 2009-07

ニホンナシ栽培では毎年10a当たり主要品種の「幸水」で599kg、「豊水」で1,057kgの剪定枝が発生している。これらの剪定枝は、そのほとんどが焼却処分されており、周辺環境に対する煙や悪臭等の影響が懸念されている。一方、循環型社会の構築を目的として、剪定枝等の良質な有機物は資源として適正にリサイクルさせていくことが求められており、焼却以外の利用法を開発することが急務となっている。千葉県内では剪定枝をチップ化し、木質プラスチックの原料として活用するなどの動きも見られているが、剪定枝チップの利用用途は限られているのが現状である。千葉県木更津市牛袋川東地区においてもナシ栽培で発生する剪定枝の有効活用を模索していた。同地区では2007年より農林水産省の「農地・水・環境保全向上対策」に取り組んでおり、その活動の一環として集落で管理している用水路脇の桜並木をナシ剪定枝のチップで被覆し、土壌マルチ資材としての有用性を試験した。その結果、雑草防止効果が認められたため、利用法に関して明らかになった若干の知見を報告する。
著者
藤原 昇
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.916-920, 2007 (Released:2011-01-18)
著者
山崎 英恵 伏木 亨
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.695-699, 2013 (Released:2014-02-21)
著者
宮崎 昭 丹治 藤治
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.323-327, 2015-04

昭和32年に国の天然記念物に指定された「奈良のシカ」は春日大社の神鹿として,1,200年以上もの長い歴史を生きぬいて今日にいたっている。しかし,シカをとりまく環境はいつの時代にも安泰というわけではなかった。古くは社寺境内ということで聖域とみなされて,殺傷禁断の安住の地であったため,戦前900頭前後で落ち着いていた生息頭数も,戦中・戦後の社会混乱期には激減して,昭和20年には推定頭数がわずか79頭になってしまった。そのような状況の中で奈良の鹿愛護会はシカの保護育成に努力した。頭数は昭和28年には254頭に回復し,さらに食糧事情が好転し経済成長が著しい時代を経ると39年には1,058頭に達した。しかしその後10年間ほどは頭数が逆にいくぶん減少した。
著者
杉山 純一
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.1151-1162, 2006 (Released:2011-03-05)
著者
勝崎 裕隆
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.396-402, 2018 (Released:2018-07-18)
著者
大成 清
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.549-556, 2008-05

最近では環境問題といえば、地球温暖化ということだが、20年くらい前は赤潮が大きく採りあげられていた。アメリカの話であるが、豚糞を繰り返し施用した農地に関する調査では、リンが過剰で窒素も高い場合が多いという。このため、養豚業者の間では飼料の不消化分が、環境に及ぼす影響を心配する声が上がっている。わが国の場合、海水の富栄養化の原因は生活系や、産業(工場)系排水の汚濁負荷の上昇とされているが、家畜に対するリンや窒素(蛋白質)の過剰給与は、いろいろな点からも、改善せねばならない課題である。そこで本稿ではフィターゼの分解率に対する、カルシウムの影響をまず採りあげることにする。
著者
松尾 雄二
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.591-595, 2013 (Released:2014-01-31)