著者
大場 孝宏
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.262-270, 2011 (Released:2016-11-15)
参考文献数
15

近年,食の多様化や嗜好の変化に伴い洋食に合うワインなどの消費が増加している反面,清酒の売り上げが伸び悩んでいる。清酒の復権の一つとして,清酒を敬遠しがちな若者や女性をターゲットに,酵母の造る有機酸特にリンゴ酸生成に着目し,リンゴ酸生成に特徴を有する酵母の開発と,その育種酵母を用いたアルコール濃度の低い低アルコール清酒(ソフト清酒)の商品化に成功した例を著者に解説いただいた。新しい商品の開発に携わる人には参考となり,是非一読を勧める次第である。
著者
青島 均
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.1, pp.19-27, 2011 (Released:2016-06-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

茶やコーヒーは,抗酸化活性を持つカテキンあるいはクロロゲン酸などのポリフェノールを含むため,健康に良いといわれている。しかし,ポリフェノールは,酸素と接すると過酸化水素を生成してしまう。醤油や味噌は,緑茶に加えると過酸化水素の生成を抑制した。さらに魚醤は,高温の下でも過酸化水素を分解した。魚醤による反応は,魚醤に含まれる耐熱性のカタラーゼによるものと推定された。したがって,魚醤,醤油や味噌は,食品中での有害な過酸化水素生成を抑制することにより,健康に役立つ可能性がある。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.3, pp.168-180, 2014 (Released:2018-03-06)
参考文献数
4
被引用文献数
5 8

シャンパンの製造には,ベースのワインをブレンドして各製品に相応しい酒質を造り上げるアサンブラージュが重要なポイントの一つであると言われる。では,実際にはどのようにして毎年ほぼ同じ酒質のノンヴィンテージ・シャンパンが造られるのだろう? アサンブラージュの方法は永く各生産者の秘密とされていたが,シャンパーニュ委員会初の外国人研修生となった筆者に,その秘密を解き明かしていただいた。
著者
佐藤 和夫 西村 顕 小林 美希 進藤 斉 高橋 康次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.122-129, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

1.醪の生成アルコールを17%以下とした液化仕込みによる清酒製造において,酒粕中の酵母を再利用した高密度酵母による繰り返し仕込みを長期間継続して行うことができ,平均で約3日の醪期間の短縮効果がみられた。2.繰り返し仕込みの醪では,酵母の増殖量は少なかったことから,何らかの増殖阻害現象が生じたと考えられた。3.醪の圧搾は粕中の酵母の増殖能や発酵能に影響しなかった。また,酵母のメチレンブルー染色率は10%以下を維持し,生酸菌や野生酵母による顕著な汚染は生じなかった。4.繰り返し仕込み回数が多くなると製成酒のアミノ酸度や着色量が増大して品質評価上の問題が生じたことから,実現可能な繰り返し仕込み回数は数回程度と考えられた。
著者
児玉 貴志
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.6, pp.342-352, 2011 (Released:2016-12-12)
参考文献数
39

遺伝子組換え技術を利用した農作物は日本ではほとんど栽培されていないが,諸外国では除草剤耐性,害虫抵抗性,耐病性,保存性などの性質を遺伝子組換え技術によって増強した農作物が数多く栽培されており,日本にも輸入されている。日本国内で遺伝子組換え農作物を流通する際には法律に基づいて表示をすることが必要であるが,そのためには遺伝子組換え農作物を検出する技術の確立が極めて重要である。本稿では,PCRを用いた遺伝子組換え農作物の検出技術について詳しく解説していただいた。
著者
吉沢 淑 尾崎 裕子 武藤 敏昭 進藤 斉 角田 潔和 小泉 武夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.990-997, 1998

A protease was purified from the sarcocarp of Yubari melon fruit, the raw material used in the production of melon wine, by a series of treatments consisting of ammonium sulfate precipitation, gel filtration and ion-exchange chromatography. The enzyme was a monomer protein without a carbohydrate moiety. Its characteristics are as follws: molecular weight 66 kDa, isoelectric point pH 8.5, optimal temperature 40°C, and enzyme activity is promoted in the presence of Mn<SUP>2+</SUP>. It is a characterisric serine protease and preferentially hydrolyzes peptide bonds on the carboxyl terminal side of Phe and Arg.<BR>The sequence of the N termcnal 20 amcno acods was determined.
著者
大倉 龍起 石崎 泰裕 近藤 平人 大川 栄一 棚橋 博史
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.8, pp.549-553, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
7

ブルゴーニュ風牛肉の赤ワイン煮(ブフ・ブルギニョン)のように,肉料理に赤ワインを使用すると,肉が柔らかく,おいしくなることが経験的に知られている。本誌では,先に肉の臭みを抑えるポリフェノールの酸化防止作用を紹介したが(108巻12号),今回は,肉を柔らかくする主成分を明らかにした研究を紹介していただいた。
著者
渡辺 健一郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.500-503, 1973

対人関係でも第1印象は重要な意味をもつ。消費者の商品にたいしてもつ潜在意識も同様である。そのイメージはどのようにして形成されるのか, 現実に各種の酒類にたいしてどのようなイメージをもっているか, 新市場特に女性の市場を中心としてアンケート調査した貴重な資料である。
著者
印南 博之
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.5, pp.326-333, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
7
著者
菅原 悦子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.12, pp.863-872, 2013 (Released:2018-02-13)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

味噌や醤油はわが国独特の発酵調味料から世界的に広く知られる調味料として飛躍している。その旨味成分や呈味機構についての研究が多く成されてきたが,近年では特有香気成分HEMFに関する研究が進んでいる。本解説では,味噌,醤油の特徴香成分としてのHEMFの生成メカニズムについて,これまでの研究成果をとりまとめてわかりやすく解説していただいた。本解説の著者は,味噌におけるHEMFの発見者であり,生成メカニズム解明の生化学的研究を進めていられ,今後求められる未解明の研究領域,HEMFの生理機能研究や味噌・醤油に含まれる未知の微量香気成分の可能性についても言及していただいている。わが国の発酵調味食品の製造において,品質向上の面から大変に興味の持たれる研究分野であり,同時に応用面にも寄与する研究である。
著者
奥田 徹 矢嶋 瑞夫 高柳 勉 堀 郁郎 横塚 弘毅
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.446-451, 1996

キウイフルーツワイン発酵中における有機酸及びフェノール酸の濃度変化を調べた。果汁マストからワイン製造終了までの間, 主な有機酸類としてクエン酸, キナ酸, リンゴ酸及びアスコルビン酸が検出された。これらの有機酸のうち, キナ酸以外の有機酸は発酵中の濃度変化は認められなかった。キナ酸は発酵開始後1口目よりその濃度が苦干増加したが, 4日目から発酵終了まての間, 緩やかな濃度低下が見られた。フニノール酸の場合, クロロゲン酸が果汁の主要成分として検出されたが, 発酵開始とともにその濃度は急激に低下し, 5日臼には全く見られなくなった。これに対して, 果汁中には検出されなかったコーヒー酸が, 発酵開始後急速に生成し, 5日目には果汁中に存在したクロロゲン酸と同じ濃度にまでな-った。酵母を添加しない場合, 果汁中のクロロゲン酸の消失及びコーヒー酸の生成が認められなかったことから, 発酵中におけるクロロゲン酸の減少は, 酵母のエステラーゼによリクロロゲン酸が加水分解され, コーヒー酸とキナ酸が生成した結果であると考えられた。クロロ・ゲン酸は果汁中に8.2mg/l, 雛一ピー酸はワイン中に5.Omg/l, キナ酸は果汁中に7.4g/l含まれ, これらの量はそれらの苦味の閾値よりやや少なかったが, 他のワイン成分との相乗作用により, 果汁やワインの苦味に寄与しているものと考えられた。
著者
峯木 眞知子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.346-351, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1

熊本の郷土酒である赤酒は,飲用酒や料理酒として用いられている。料理酒としての効果はこれまでほとんど報告されていないが,調理の現場ではその効果が経験的に認識され,その科学的な解明は大変に興味深いところとなっている。筆者は赤酒の調理効果を本みりんと比較しながら,成分分析及び官能評価の観点からアプローチされている。そこで赤酒の調理効果について魚料理を対象に詳しく解説していただいた。調理関係者はもとより酒類製造関係者にも有益な知見が幅広く提供されている。
著者
工藤 秀明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.101-103, 1995

ワイン市場は, ボジョレーヌーヴォーの異常なまでの騒ぎが下火になると共に大きなトンネルに入ったまま抜け出せない状態が続いており, 抜本的な対策が望まれている。その方策の1つが, ワイン消費層の拡大を目指したローコストオペレーションの徹底による低価格ワインの市場投入であった。筆者にその決定までのいきさつ, オープンプライス出現の背景, その反響等について紹介していただいた。
著者
村上 雄哉
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.728-735, 2016 (Released:2018-08-06)

日本産食品の海外輸出は,国の施策の後押しもあって増加しているが,イスラーム食品市場では,ハラールやハラール認証への理解と対応が必要だ。しかし,ハラールやハラール認証については,なじみが薄くよく知られていない。また,国により詳細は異なっている。これらの実態に詳しい専門家に,ハラールやハラール認証,イスラーム圏のマーケットの実態について解説をいただいた。
著者
佐藤 充克
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.740-749, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
39

赤ワインの機能性については,「フレンチパラドクス」に端を発した赤ワインブームの後も,種々の研究が続けられている。今回は,赤ワインの活性酸素消去効果を発表した,日本の赤ワインの機能性研究の第一人者である筆者に,特に注目されている成分であるレスベラトロールについて最新の話題を含めて解説していただいた。
著者
小山 周三
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.900-907, 2012 (Released:2017-12-18)

消費者との接点に立つ小売店の販売状況について解説をお願いした。地域に密着した専門小売店の状況は大変厳しい時期が続いている。その中で,スーパーやコンビニエンスストアと異なる販売戦略で「元気のいい地域小売店」の状況を,「優良経営食料品小売店頭表彰事業(全国コンクール)」を通して,具体的に見ていく。その結果,消費者と「きずなづくり」に欠かせない経営観が見えてくるが,個別の例の中から共通して見えてくるポイントを提示していただいた。当誌の読者の多くがメーカー側の立場におられると思うが,消費者に直接サービスを提供する立場をより理解することにより,「元気のいい地域小売店」へのメーカー側の販売戦略に参考になると考える。
著者
宮岡 俊輔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.9, pp.651-656, 2014 (Released:2018-04-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1

酒類全体の需要が低迷する中にあって,好調な売れ行きを維持している梅酒を代表とするリキュール類には,柑橘を活用した商品も数多く存在する。しかし,柑橘特有の苦味や油臭さ,保存性などが問題とされている。本解説は,愛媛県の特産である柑橘の果皮をホワイトリカーに漬け込み,減圧蒸留を駆使することで柑橘特有の苦味と油臭さを低減させた。その一方で,柑橘の特徴香を最大限に生かす減圧蒸留条件を明らかにし,得られた蒸留酒を活用したリキュール開発を提案した研究事例である。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.628-635, 2015 (Released:2018-05-18)
参考文献数
17
被引用文献数
1

ワインのマロラクティック乳酸菌は,ワイン酵母に較べてスターターの実用化が困難とされていたが,近年では色々な特長を持った乳酸菌スターターが市販されるようになり,マロラクティック乳酸菌も使い分ける時代になってきた。今回は,これらのスターターの性質を日本の赤ワインに使用して比較した結果を解説していただいた。