著者
古川 壮一 平山 悟 森永 康
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.4, pp.228-238, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
157
被引用文献数
1 2

日本の伝統的発酵食品に関与する微生物は,麹菌,乳酸菌,酵母,酢酸菌などであり,これらの微生物は古くから生育環境が類似しているため共に協力しながら,共存・共生する環境で利用されてきました。こうした微生物内の相互作用が,発酵プロセスの安定化に重要な役割を果たしてきたと思われます。ここでは伝統的発酵食品として,清酒・ワイン・ビール・蒸留酒・酢・醤油・味噌・乳製品などに関わる微生物の共存と共生の意義について解説して頂きました。
著者
宇都宮 仁
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.327-334, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
17

酒類製造においては,課税,表示,品質管理上様々な分析が必要であり,特に近年,政府の推進する日本産酒類の輸出環境として輸出時の分析書や表示の信頼性が求められ始めている。そのような中,今後,酒類分析の技能試験法の確立に向け,所管官庁,公共及び民間研究機関等が中心となって議論を始めるため,技能試験法に関する国内の食品分析における実施状況と海外の酒類分析の実施例が纏められている本稿はよい指針になる。広くご一読をいただきたい。
著者
木村 宜克
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.827-839, 2015 (Released:2018-05-23)

近年日本酒の輸出が伸びているのは明るいニュースである一方,国内市場の縮小は続くと考えられる。特に地方において人口減少,首都圏への人材流出が進む中,地域経済・社会・自然環境の持続可能性を確保するためには,蔵元だけではなく,農家,卸小売りなどの流通,料飲店,地域の農水産品による食品加工業に加え陶磁器・漆器などの伝統工芸や観光と幅広い産業のネットワークによる地域ブランド化を総合的に考え,付加価値を向上させていく必要がある。当調査では,消費者アンケート分析,蔵元向けアンケート分析,ヒアリング調査の結果を踏まえて中国地方における日本酒ブランド確立と消費拡大につなげる方策について提言を行っている。
著者
高下 秀春
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.381-388, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

麦焼酎は淡麗ですっきりした酒質が特徴であり,他原料と比べて原料の個性が少ない。そのため,製造技術による酒質の多様化が期待できる焼酎といえる。本解説では,麦焼酎の風味の形成に及ぼす製麹条件の検討やフルフラールの酒質への影響とその生成に及ぼす要因の解明,麦焼酎の特徴的香味成分の同定といったこれまでの研究成果を詳細に解説していただいた。
著者
中山 二郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.724-733, 2013 (Released:2018-02-13)
参考文献数
32

100兆個の細菌を保有するヒトの腸管は巨大なバイオリアクターと言っても過言ではなく,腸内細菌を調べれば,その人の食生活や健康状態の一端がわかる。ヒトの腸管は胎児期には無菌であるが,誕生後,生育環境や成長に伴う食生活の変化によって各人の腸内フローラが形成され,各人の健康と密接に関連していく。腸管は単に栄養や水分を吸収するためだけの器官ではなく,そこに生育する腸内細菌とともに免疫系,神経系,内分泌系といった様々な生体機能に影響することが明らかにされつつある。本報は,以上について解説をしていただいたので,ぜひともご一読いただきたい。
著者
中山 素一 細谷 幸一 宮本 敬久
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.7, pp.494-501, 2014 (Released:2018-03-15)
参考文献数
22

近年,消費者の健康志向,マイルドな風味の要求により,ドレッシングの低酸・低塩化が進み,それに伴い抗菌性が低下しているために,風味に影響を与えないLactobacillus fructivoransの制御技術が不可欠となっている。そこで,筆者らはL. fructivoransの制御は膜を損傷して酢酸の取り込みを促進させることが必要で,これにはキトサンの利用が適しているが,添加量が多いと,風味に悪影響を与えることを明らかにした。油水界面に局在しやすく,膜をさらに損傷するチアミンラウリル硫酸塩の併用が有効であることを明らかにしたので,解説いただいた。
著者
佐無田 隆 谷山 健弘 岡村 壮一郎 廣 あおい
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.37-47, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
35
被引用文献数
1 1

1.黒糖焼酎(タンク5年以下貯蔵,常圧及び減圧蒸留)及び泡盛(カメ10年及びタンク15年貯蔵)の動粘度を測定した結果,貯蔵年数が長いほど動粘度が大きい傾向が認められ,また,貯蔵年数が長いほどTBA価が高い傾向が認められた。2.製造後約5~30年間経過した黒糖焼酎及び泡盛を蒸留処理(試料を蒸留して約70%留出させ,留出液と蒸留残液を混合する)しても動粘度に変化は認められず,蒸留処理による貯蔵効果の測定はできなかった。3.エタノール(試薬特級,99.5%)に蒸留水を加え5.4年間保存されたエタノール水溶液(25.05%v/v)の動粘度は,同等の試薬エタノールを蒸留水により希釈した直後の溶液(25.05%v/v)の動粘度と差が認められなかった。4.以上のことから黒糖焼酎の貯蔵による動粘度の増加にはエタノール-水クラスターの変化は影響しておらず,化学反応による組成変化が影響していると推察された。
著者
蟻川 幸彦 髙橋 寿知
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.8, pp.554-564, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
2

市販清酒は,品質の良し悪しに加えて,売る酒,売れる酒としての要件を備えていることがもとめられる。筆者らはラベル等に表示される製品コンセプトに着眼し,長野県産と全国的に評判が高い市販清酒についてコンセプト審査を行って,コンセプト達成度などを評価し,品質や成分,指摘項目等との関係を解析された。コンセプト審査法ならではの有益な知見が随所に得られており,長野県のみならず,全国の清酒関係者にとっても大いに参考となる記述となっている。
著者
吉田 元
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.826-831, 2011 (Released:2017-03-28)
参考文献数
29

明治初年,文明開化の風潮に乗じて全国各地に小さなビール会社が数多く設立された。 著者は,東京遷都後の京都で産業振興のために設立された京都舎密局麦酒醸造所,そして扇麦酒,井筒麦酒,九重麦酒,兜麦酒などの知られざる興亡の経緯を,京都府庁文書,地元新聞記事を発掘調査して興味深く紹介された。
著者
広常 正人
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.221-228, 2013 (Released:2018-01-11)
参考文献数
19

最近では適正飲酒のヒトが最も長寿であるというコホート研究結果が,医学界でも定説になりつつあります。ワインがその発端ですが,酒類,特に醸造酒で幅広く効果が見いだされ,その一端を長年の研究成果からご紹介いただきました。清酒を代表する酒類は,食事をおいしくするためになくてはならない伴侶ですが,その味が忘れられつつあるのは大きな問題です。日本の食文化を維持・発展させる酒類を含めた食育が必要であることに同感です。
著者
北垣 浩志
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.335-345, 2014 (Released:2018-03-12)
参考文献数
83

ミトコンドリアは酵母などの真核生物がもつ細胞小器官であり,その主要な働きは酸素呼吸によるエネルギー生産である。このことから,清酒醸造のような酸素のほとんど存在しない醗酵においては,ミトコンドリアはなくてもよいものと思われていた。筆者は,ミトコンドリアのエネルギー生産以外の機能に着目し,清酒酵母の新たな代謝経路を明らかにし,さらに実用的な醸造技術の開発・技術移転にまで結びつけた。コロンブスの卵ともいえる画期的な研究成果について,研究の着想から,代謝経路の解析法の開発,ピルビン酸低減酵母の育種と実用化,ミトコンドリア分解に着目した新たな醸造技術の開発についてまで,詳しく解説していただいた。
著者
増渕 隆
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.8, pp.544-548, 2015 (Released:2018-05-10)
参考文献数
5

微生物の育種において,変異導入を行う際には,従来は紫外線,EMSなどの薬剤が変異原として用いられてきた。イオンビーム育種とは,変異原として加速器で高速に加速したイオン(イオンビーム)を用いる比較的新しい技術である。イオンビームによる変異導入では,従来法とは異なる変異スペクトルが期待されるという。著者らは吟醸用清酒酵母のイオンビーム育種に早くから取り組んでおり,今回はその成果の一端をご紹介いただいた。
著者
杉中 茂之
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, pp.141-155, 2013 (Released:2017-12-28)
参考文献数
19

多くの加工食品の場合,食中毒菌は勿論であるが,流通中の微生物の繁殖を抑制する必要があり,耐熱性芽胞や乳酸菌,酵母といった腐敗菌も制御すべき対象となる。したがって,惣菜工場や高次加工食品工場の製造ラインや環境などには,より高い衛生度が求められる。そこで,著者に対象とする汚れや微生物,用途,使用方法により,洗浄・除菌に影響する要因と注意点を説明いただき,適切な洗浄・除菌を選択し,使用しなければ期待する効果が得られないことを解説いただいた。醤油,味噌,清酒などの製麹中の汚染低減や製品の詰め時に役立つと考えられるので,是非共にご一読いただきたい。
著者
早川 享志
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.483-493, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
42

消化管内で消化・吸収されにくく,消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食物成分をルミナコイドという。ルミナコイドのうちの食物繊維の整腸作用についてはよく知られているが,本報ではルミナコイドの1つであるレジスタントスターチについて解説していただいた。筆者の早川先生は平成23年度日本食物繊維学会学会賞を受賞されており,ルミナコイド研究の第一人者である。ご一読いただき,健康な食生活に生かしていただきたい。
著者
伊藤 俊彦 高橋 仁 志賀 拓也 佐藤 勉 中沢 伸重 岩野 君夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.453-460, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

清酒麹に残存するアミノ酸について,品種の異なる麹米5点と麹菌17株を用いて清酒麹85個をシャーレ法で製麹し,レベル変動に関与する要因について検討したところ以下の知見を得た。1.麹の残存アミノ酸はグルタミンとアルギニンが多く,次いでリジン,グルタミン酸,ロイシン,チロシン,アラニンの順であった。2.麹米タンパク質が酵素分解されて生成する全アミノ酸の約80%は麹菌の増殖に利用され,約20%が麹の残存アミノ酸となることが推定された。3.麹の残存アミノ酸量の多い麹はタンパク質分解酵素活性が高かった。4.麹の残存アミノ酸量は麹米品種と麹菌株に共に影響された。5.麹菌株の選択により麹の残存アミノ酸量を約半分に低減できる可能性がある。
著者
老川 典夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.4, pp.189-197, 2015 (Released:2018-04-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1 5

近年の分析技術の進歩により,D-アミノ酸は医学,薬学分野において様々な生理機能との関連が明らかとなってきた。また,食品分野においても呈味性や機能性の面から大変注目され,呈味性を改善するための調味料や機能性を訴求する健康食品,美容食品などに利用されている。D-アミノ酸は乳酸菌を始めとする微生物が関与する発酵食品中に広く分布することから,清酒中のD-アミノ酸についても大変興味が持たれるところである。本稿では,清酒に含まれるD-アミノ酸と製造方法の関係や味への影響について解説頂くとともに,その生成機構についても解説頂いた。清酒の多様化という観点からの研究開発に大いに参考となることから,是非ご一読をお勧めしたい。
著者
星 靖子 鈴木 整
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.120-126, 2016 (Released:2018-05-30)
参考文献数
7

アルコールの種類を問わず,スパークリング飲料は場を華やかに変え,気分を爽快にさせてくれる。マイナーだった発泡清酒を一躍注目商品に変えたのが,この「すず音」と言えよう。日本酒らしさを排除しながら日本酒の独自性は守る,固定観念にとらわれない新たな商品開発に必要な姿勢を教えていただいた。
著者
瀧村 剛 樋口 進
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.308-314, 2016 (Released:2018-07-12)
参考文献数
12

平成25年に成立したアルコール健康障害対策基本法に基づき,現在,アルコール健康障害対策推進基本計画の策定が進められており,平成28年6月までには公表される予定である。お酒は百薬の長と言われているが,一方では,アルコール依存症,飲酒運転等,多くの問題も抱えている。基本計画では,「不適切な飲酒の誘因防止」に関する施策も講じられると聞いている。酒類の製造,販売に携わる者にとってアルコールのマイナス面への対応も大切なことであり,法律の背景と概要について解説していただいた。
著者
井出 民生
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.778-782, 1997-11-15
被引用文献数
1

1998年 (平成8年) 2月に, 第18回オリンピック冬季競技大会が長野市を中心として開催される。平成3年6月に冬季五輪を長野で開催する決定を受けて, 長野県酒造組合は長野五輪組織委員会と接渉し, 公式認定商品のライセンス契約を結んだ。<BR>この6年間, 新しいタイプの清酒「アルプス吟醸」の開発や五輪マークの酒「信州の酒」の発売までの経緯等について, このプロジェクト担当責任者として従事された著者に解説していただいた。新商品開発の参考になると思われる。