著者
田谷 正仁
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.507-511, 2010 (Released:2016-01-25)
参考文献数
10

二酸化チタンの光励起により発生する活性酸素種は,種々の有機化合物を酸化分解し無機化することから,セルフクーリング機能のある環境浄化材料としての利用が期待されている。このような二酸化チタンの反応機構は,有機物の集合体ともいえる微生物やウイルスの滅菌や殺菌にも有効である。二酸化チタンによる有機物処理は,高い有機物含有環境には不向きで,低濃度で有機物(あるいは細胞)を含む系において効果を発揮する。この場合,標的とする反応物(細胞)を二酸化チタン粒子近くに引き寄せるような工夫が重要となる。ここでは,このような観点からの二酸化チタン複合材料の調製とその利用について,筆者らの取組みの一端を解説いただいた。
著者
宮川 博士 木田 建次
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.491-498, 2012 (Released:2017-12-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本格焼酎製造に一般的に使用されている「差しもと」の安全で安定したユニークな方法の紹介。微生物の乾燥や冷凍耐性のキー物質であるトレハロースが酵母の活性に影響し,一次醪製造工程で撹拌又は通気によって酵母菌体のトレハロース濃度を高めることで活性を高レベルに維持できる。ただし,製造規模が大きくなると細菌汚染の可能性が高くなるので微生物管理には注意を要する。
著者
山田 潤 松田 秀喜
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.866-873, 2009 (Released:2016-02-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

かつお節は古来より使用されてきた日本の伝統的な調味料である。培乾した荒節にカビ付けした枯節は発酵食品といえる。かつお節のDPPHラジカル消去活性は,100℃,30分間の抽出時に最も強い値を示し,鰹だしの抗酸化活性成分として,クレアチニンとフェノール系の2-methoxy-4-methyl-phenol,4-ethyl-2-methoxy-phenolを同定し,さらに鰹だしにより加熱調理時のイワシの酸化が抑制されることを明らかにしたので解説していただいた。鰹だしは醤油加工品であるめんつゆやだし入り味噌などに使用されており,これらの製品においても抗酸化作用が期待される。
著者
谷本 昌太 松本 英之 藤井 一嘉 大土井 律之 山根 雄一 若林 三郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.312-319, 2009 (Released:2016-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

1. カプロン酸高生成酵母と発酵力の高い酵母の混合醸造を行い,もろみにおける両酵母菌数および諸成分の経日変化を比較した。2. 広島吟醸酵母は,KA-4と比べてもろみ中での酵母菌数が少なかった。全酵母菌数に対する広島吟醸酵母の菌数の比率は,もろみ初期から減少し,もろみ中期に約10-60%に減少した。3. 広島吟醸酵母の添加比率が増すにつれてもろみ中のアルコール濃度および酸度が低くなり,ボーメの切れは緩慢となった。4. もろみ中の香気成分については,広島吟醸酵母の添加比率が増すことにより,もろみ期間を通じてカプロン酸エチルおよびカプロン酸は高く,酢酸エチル,酢酸イソアミルは低くなった。一方,有機酸については,リンゴ酸およびコハク酸が低下した。5. 広島吟醸酵母とKA-4を混合醸造することで,もろみの発酵力を改善するとともに,酒質を変化させることが可能であった。また,もろみ中のカプロン酸エチル濃度の違いは,広島吟醸酵母の酵母菌数に応じて生成されたカプロン酸が広島吟醸酵母およびKA-4によりエステル化を受けているためと推察された。尚,本研究の一部は,平成16年度日本醸造学会大会において発表した。
著者
峰時 俊貴
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.1, pp.11-20, 2014 (Released:2018-02-16)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

清酒醸造の副産物である酒粕には,血圧降下作用が確認されているアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドやアルコール性肝機能障害,うつ病などの疾病への効果が認められているS-アデノシルメチオニン(SAM)など多くの機能性成分が含まれており,様々な生理機能を有することが報告されている。また,酒粕は栄養価が高く,食物繊維やビタミン類,アミノ酸を多く含む天然の食品素材,調味料としての特長を有しているが,品質保持が難しい食品素材である。今回,レジスタルプロテインをはじめとする酒粕の機能性について,さらに酒粕の利点を強化し,ハンドリングの良い品質重視の新しい酒粕調味料の開発について解説していただいた。
著者
国税庁
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.790-800, 2016 (Released:2018-08-15)
被引用文献数
1

近年国内の日本酒需要は少子高齢化の影響等もあり,減少傾向にあります。一方,2015年の日本酒の輸出金額は約140億円(対前年比121.8%)と,4年連続で過去最高を記録しました。 このような背景の下,国税庁では,日本酒業界がより活性化するためのヒントを蔵元の皆様からお伺いするために日本酒座談会を第52回(独)酒類総合研究所講演会に併せて開催しました。
著者
殿内 暁夫 森山 裕理子 青山 嘉宏 土岐 春歌
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.437-444, 2016 (Released:2018-07-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

著者らは,白神山地由来の微生物資源の産業利用を通じた地域貢献を目的として,酵母Saccharomyces cerevisiaeの分離を進めている。十分に検討された分離・同定スキームにより,これまでに多数の菌株を得ている。加えて,本稿には自然環境から酵母を分離する際に有用な示唆に富んだ内容も含んでいる。また,産学官の研究会を組織し,広報・普及活動を行っており,一部については商品開発もなされている。解決すべき課題もあるというが今後の展開が期待される。
著者
中森 俊宏 北川 さゆり
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.25-36, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1

大豆は,日本人にとってなくてはならない食材であり,タンパク質,レシチン,オリゴ糖,イソフラボンなどに富む優れた機能性は,今や世界の人々の健康や食生活に大きく寄与しようとしている。調整大豆ペプチドは大豆タンパク質の優れたアミノ酸バランスを有し吸収性に優れた素材である。この特徴を生かした栄養ドリンクなどが開発されており,少し前には健康情報テレビ番組によりブームとなった。一方,最近市場が拡大している新ジャンルと呼ばれる酒類の原材料表示をみると大豆ペプチドと表示されたものがあり,アルコール発酵を円滑に行うための素材としても注目されている。本稿では,大豆ペプチドの製法から,その物理学的特性,栄養学的特性,発酵食品への利用について解説していただいた。
著者
篠田 次郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.127-140, 2016 (Released:2018-05-30)
参考文献数
4

この論文は著者が言うように,日本酒造組合中央会の技術幹部養成上級研修通信講座テキスト「清酒工場設計の考え方」の続編として製造設備とその付帯設備に求められるスペックを熱エネルギーの視点から,著者の豊富な経験をまじえながら,わかりやすく論じたものである。さらに,酒造の各工程に関わる熱エネルギーの問題が具体的な例示によって述べられているので,酒造工場のエネルギー管理や省エネの観点からも参考になることが多々あり,一読をお奨めする次第である。
著者
奥田 将生 橋爪 克己 上用 みどり 沼田 美子代 後藤 奈美 三上 重明
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.97-105, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
19
被引用文献数
3 11

登熟期の気温と原料米の溶解性に密接に関係するデンプン特性の年次·産地間変動との関係について解析し,以下の結果が得られた。1 同一品種でも産地間でデンプン特性や蒸米消化性が異なるのは,産地の登熟期気温が影響したことが主な原因であると示唆された。2 25品種27産地の生産年度の異なる試料について,出穂後気温とデンプン糊化温度の関係について解析したところ,登熟期気温と糊化温度は高い相関性を示し,登熟期気温が低い年は糊化温度が低く,一方気温が高いと糊化温度も高くなることを確認した。以上,デンプン糊化温度は蒸米消化性と高い相関性を示すので,これまでと今回の研究結果から,原料米ごとの出穂後の気温に注目すれば,かなりの精度で原料米の溶解性に関する酒造適性を予測できると考えられた。
著者
恩田 匠
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.286-301, 2016 (Released:2018-07-12)
参考文献数
9

シャンパーニュ製造について研修をされた筆者には,これまでに本誌でブドウ栽培やアサンブラージュについて解説をしていただいたが,今回はシャンパーニュ製造のための果汁の調製について貴重な情報を紹介していただいた。日本でも瓶内二次発酵のスパークリングワインの生産が増えているが,通常の白ワインの果汁調整とは考え方が異なることが分かり,大変興味深い。
著者
竹内 直一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.292-295, 1975
被引用文献数
1

日進月歩の技術革新の世にあっては, 食品もその製造技術の改良進歩により品質は益々向上し, 本来の製法が必らずしも良品を生むとは限らなくなる。ともあれ, 消費文明の高揚は昔のものへのノスタルジアにかられる。それもかけがえのない消費者の要求とあれば業界も十分に傾聴しなければなるまい。業界にとっては当然の事でも消費者の納得し得ない何物かがあるとすれば, 消費者への説得が不十分なのかも知れない。内ゲバから脱却し業界一丸となって消費者教育に乗り出す上にも, 一見身勝手と思える消費者の声を冷静に聞きとる寛容さが必要であろう。
著者
青木 淳一
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.604-608, 1979

「ダニのように喰いついて離れない」などといわれ, ダニは嫌われものの代表格であり, 地球上の到る所に生息している。その種類も実に数万に及ぶという。ダニについては姿が小さいために, 意外に知られていないし偏見も多い。今回はダニ学の権威である筆者に食品にわくダニを中心にその興味深い世界の一端を紹介していただいた。
著者
宇賀神 文子
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.318-320, 1996

BCOJ海外発表技術論文の再演会は, ビール酒造組合内の国際技術委員会が中心となり, 国内において海外発表論文の早期伝達等を目的に開催されている。<BR>本稿では, メンバーである筆者に, 再演会開催の経緯と第5回の模様を紹介していただいた。
著者
井上 喬
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.182-187, 1996

我が国のビール醸造技術は, 欧米の技術大会での研究成果の発表も多い。国内ではビール酒造組合内のビール技術委員会が中心となり・海外発表技術論文の再演会等最新情報の伝達が行われているが, アジアの中での最新の情報交換は少ない情況にある。<BR>本稿では, ビール技術委員会のメンバーである筆者に, 7ジア地域でのビール技術者の交流を目的とした醸造技術者会議を結成しようという動きについて, 紹介していただいた。
著者
宮城 文
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.29-31, 1976

宮城先生は本年84才, 2年前702頁におよぶ御労作 〈八重山生活誌〉 を自費で出版され, 八重山の人々が伝承してきた行事や明治・大正・昭和にわたって先生自ら体験されてこられたことどもを集大成するお仕事を完成された。先生は太平洋をかこむ国々に, 原料はことなるとはいえ, われわれの祖先が醸み伝えてきた口かみの酒づくりを自ら体験された数まれな方でもある。特に本誌がお願いして, お孫さんに口伝されて寄せられた手記をここに掲載させていただいた。
著者
内村 泰 小島 陽一 小崎 道雄
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.881-887, 1990
被引用文献数
1 10

1. 構成微生物により次の3グループに分けられた。<BR>A: <I>Saccharomycopsis</I>属酵母優勢型<BR>B: <I>Rhizopms</I>属中心の糸状菌優勢型<BR>C: 菌糸状酵母と糸状菌共存均衡型<BR>これら3グループに分類されたチャン・ボーも希釈平板を行うことにより, 全試料中からSaccharomycopsis属酵母とRhizopus属中心の糸状菌が共存することが確認された。<BR>2. 糸状菌優勢型の餅麹を用いて蒸煮米の糖化を行ってみたが, 他の餅麹試料を用いて糖化を行ったものに比べて非常に弱いものであった。<BR>3.糸状菌およびチャン・ボーのアミラーゼ活性を試験した結果, 分離した15株の菌株のうち, アミラーゼを生産していたものはRhixopus sp.の5株とAspergillussp.1株の計6菌株のみであった。<BR>他の菌株のアミラーゼ活性はきわめて弱かったことから, チャン・ボーより分離される糸状菌はそのすべてが必ずしもアミラーゼ生産に関与しているとは考えられず, チャン・ボーの主糖化菌はSacCharomycopsis fibuligeraであり, Rhizopus sp.や, 若干のASpergillus sp.などの糸状菌が, 補足的に糖化に関与しているものと考えられた。<BR>以上のことから, これまで報告してきたSaccharomycopsis属酵母がアミラーゼ生産を行うの主糖化菌であることを支持する結果となった。<BR>同行を許可された田部井淳子氏を隊長とするブータン遠征女子登山隊に感謝します。
著者
宮尾 俊輔
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.10, pp.742-749, 2008-10-15
被引用文献数
5 2

吟醸酒の製造にカプロン酸エチル高生産酵母は不可欠な存在になっている。カプロン酸エチル高生産酵母は醒後半のキレが鈍る傾向にあり, そのため発酵能が高い酵母との混合仕込が普及している。最近, 日本醸造協会が開発し, 頒布しはじめたカプロン酸エチル高生産酵母のきょうかいm1号は, 発酵能が高い酵母として注目されている。筆者らはかねてからカプロン酸エチル高生産酵母の混合仕込について詳しく調べており, 今般きょうかい1801号の混合仕込を行い, 発酵能や香気成分の生成量などを検討した。混合仕込全般を含めきょうかい田1号について得られた最新の知見を詳しく解説していただいた。
著者
李 沢守
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.102-105, 1973

米を主食とする韓国人に味噌は古来から愛用されてきたが, その製造は今もなお自家製が主体であるという。そして工業生産は約50年前から始まり, 軍用民需が共に増大するにつれ規模が拡大してきたとはいえ, 現在もなお企業体の大部分は施設, 賃金の零細性は免れず, したがって製品, 品質面においても消費者の信用をかち得ていないという。<BR>著者は本誌の愛読者ということから韓国の資料を収集してこの稿を寄せられたが, 著者の願いは, 恐らく韓国味噌製造の現状を改良して近代的な食品工業に脱皮したいということにあるのであろう。