著者
秋山 稔 三上 慶浩
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.101, no.3, pp.178-185, 2006

貯蔵に伴う蒸留酒のクラスターサイズの変化を定量的に決定するために<BR>(1) マクロなクラスターサイズを (1) 式と (2) 式で定義した。<BR>(2) エタノール水溶液での水分子とエタノール分子の水和クラスターへの分率であるP<SUB>w</SUB>とP<SUB>E</SUB>とを贋-NMRにおける化学シフト値の濃度変化から (5) 式により求めた。<BR>(3) 蒸留酒として, ウィスキーを選び, ウィスキーでの分率P<SUB>w</SUB>*とP<SUB>E</SUB>*とをP<SUB>w</SUB>とP<SUB>E</SUB>を基礎にし, ウィスキーとエタノール水溶液から蒸発する水分子数の比とエタノール分子数の比を測定することによって, (12) 式から算出した。<BR>(4) 算出されたP<SUB>w</SUB>*とP<SUB>E</SUB>*から (4) 式により, ウィスキーでの3種のマクロなクラスターサイズを求めた。<BR>(5) 本研究で定義されたマクロなクラスターサイズの25年の貯蔵に伴う変化はエタノールクラスターで大きく減少しているが, 水和クラスターと水クラスターではそれに較べて小さい。
著者
高橋 篤
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.2-5, 1980

いま清酒業界は他の酒類との激しい競合のなかで苦境にたたされ, これを乗り越えるため総力をあげて清酒の需要増大という大きな課題に取り組んでいる。<BR>そこでマーケティングに詳しい著者に, その豊富な知識と貴重な経験を通してえた清酒製造業者としての販売戦略のあり方, 進め方について解説していただいた。
著者
門間 敬子 橋本 渉 村田 幸作
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.116-121, 1999

とかく近頃, 遺伝子組換え食品の安全性が話題になっている。特に消費者は組換え食品に対しアレルギーを抱いているようである。<BR>ここでは, 遺伝子組換え作物の安全性について, ジャガイモとコメに大豆の貯蔵タンパク質であるグリシニンの遺伝子を挿入した組換え作物をつくり, 非組換え体と比較し, その成分組成や動物飼育実験結果からの安全性評価を解説していただいた。また, 組換え体の容易な判別法 (モニタリング) を使用して遺伝子組換え大豆の検出法をも紹介していただいた。
著者
栗山 一秀
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.921-924, 1983

滴酒についての一般の人々の誤解はきわめて多い。<BR>曰く,「清酒は長くおくと酢になる」「日本酒には防腐剤が入ってるから頭が痛くなる」「清酒を冷やで飲むと, メチルアルコールやフーゼル油が残っているため二日酔になる」などなど全く荒唐無稽なものばかり。<BR>セールスマンはまずこうした誤解をとくことから始めねばならない。
著者
新宮 和裕
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.96, no.9, pp.592-599, 2001

伝統食品に纏わる食品事故は軽微なクレームはあるにしても健康に関わる重大事故は幸いにもまだ起きていない。しかし, 近年食品事故が大きな社会問題になっている今, 安易な安全意識を見直し, 謙虚に製品の安全対策に取組む時にきていると思われる。このマニュアルは万一食品事故が起きてしまった時の迅速かつ適切な対応をするためのノウハウを執筆いただいたものであり充分に活用願いたい。
著者
稲橋 正明 戸塚 堅二郎 岡崎 直人 石川 雄章 佐藤 和夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.4, pp.285-294, 2013 (Released:2018-01-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

活性度の低い酵母を使用した時の生酸菌の動向を調べた。酵母の増殖速度が正常の約1/2程度に低下した酵母,いわゆる活性度の低い酵母を仕込みに用いた場合,醪初期の酵母数が不足(1×108/ml以下)することにより,アルコール生成も遅れることから,生酸菌はもろみで旺盛に増殖を始め,その結果として酸度が高くなり,醪は酸敗する。しかし,二日踊りを採って酵母数を充分確保することができれば,活性度の低い酵母を用いても,もろみの酸敗をかなりの確率で防止できることを明らかにした。
著者
金子 秀
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.892-899, 2012 (Released:2017-12-18)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

醤油のうま味成分の主体はグルタミン酸,アスパラギン酸などのアミノ酸であるが,それ以外の醤油のうま味寄与成分については,不明な点が多い。そこで,著者はそれ自身はうま味を示さないにも関わらず,グルタミン酸ナトリウムのうま味を強めるアマドリ化合物であるFru-pGlu[N-(1-デオキシ-D-フラクトス-1-イル)ピログルタミン酸],Fru-Val,Fru-Met,ピログルタミルペプチドであるpGlu-Gln(ピログルタミルグルタミン),pGlu-Glyを単離・同定したので,解説いただいた。
著者
佐々原 浩幸
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.2, pp.79-87, 2010 (Released:2012-02-13)
参考文献数
20

アントシアニンは,果実や花の色素成分として広く分布しているが,フラボノイドの一種として抗酸化性や視力改善作用などの健康機能を示すことが明らかになり,食品素材として注目されている。黒大豆の種皮にはアントシアニンが多く含まれており,黒大豆を原料とした食品は内臓脂肪の蓄積の防止,肝機能障害の防止などの効果があることが報告されている。筆者らは地域特産物である黒大豆を原料とした新規味噌製品の開発を目的として,黒大豆味噌におけるアントシアニンの一種シアニジンの挙動と醸造期間中の変動を詳細に解析している。今回は,原料黒大豆に対する「色止め」処理の効果,試験醸造における成分や抗酸化性等の変動についての貴重な知見について解説していただいた。
著者
伊豆 英恵 山田 康枝 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.664-671, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

マウスを用いた高架式十字迷路試験によって,清酒の飲用摂取による抗不安作用を検討した。1)エタノールまたは普通酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),対照と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ2.7倍と3.4倍,滞在時間が3.2倍と3.9倍に増加しており,普通酒もエタノール同様に抗不安作用があり,さらにその作用がエタノールよりも高い傾向にあった。2)普通酒または吟醸酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較して,吟醸酒でオープンアームへの進入回数が1.7倍,滞在時間が1.6倍に増加しており,普通酒よりも吟醸酒の抗不安作用が有意に高いことがわかった。3)吟醸酒に含まれるのとほぼ同程度となるように吟醸酒香気成分であるカプロン酸エチル(10mg/l)または酢酸イソアミル(2mg/l)を普通酒に添加してマウスに飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ1.5倍と1.4倍,滞在時間がいずれも1.5倍に増加しており,カプロン酸エチルと酢酸イソアミルが抗不安作用を有意に促進することが明らかになった。4)通常,清酒に含まれる濃度範囲では,カプロン酸エチル,酢酸イソアミル,イソアミルアルコールはADHによるエタノール代謝を阻害しないことがわかった。
著者
松原 英隆 今村 弥生
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.7, pp.493-501, 2011 (Released:2017-02-15)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

蒸留直後の芋焼酎にはガス臭成分が含まれている。製品焼酎の出荷時におけるガス臭の有無およびガス臭の強度は官能試験で評価されており,原因物質の特定には至っていなかった。したがって,機器分析によってガス臭物質を特定し,かつ,閾値濃度付近の非常に低濃度のガス臭物質を定量することは重要であると考えられた。著者らは,蒸留直後の芋焼酎には含硫化合物臭が感じられることから,ガス臭の原因物質としては硫化水素等の揮発性硫黄化合物の可能性が高いのではないかと考えた。そこで,芋焼酎の硫化水素,メチルメルカプタン,硫化ジメチルおよび二硫化ジメチルを分析するため,エタノール除去システムを組み込んだ高感度パージ&コールドトラップ-GC-MS法を開発した。本研究で開発した方法を用いてガス臭のある芋焼酎に含まれる揮発性硫黄化合物を分析したところ,硫化水素とメチルメルカプタンが硫化ジメチルや二硫化ジメチルに比較して高濃度に検出された。次に,硫化水素やメチルメルカプタンがガス臭の原因物質であることを調べるため,銅カラム処理によるこれら2成分の選択的除去を試みた。その結果,銅カラム処理によって硫化水素やメチルメルカプタンは完全に除去され,ガス臭もなくなることが分かった。ここで,メチルメルカプタンの閾値が硫化水素の閾値に比較して圧倒的に低濃度であったことから,ガス臭寄与率が最も高かったのはメチルメルカプタンであり,次が硫化水素であると推察された。
著者
中村 好志 江崎 秀男
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.16-24, 2013 (Released:2017-12-21)
参考文献数
25

発酵食品における機能性成分の研究は幅広く行われているが,発酵茶についての機能性成分の研究は,これまであまり知られていない。本解説では,お茶の発酵食品として,わが国では馴染みが少ない中国の黒茶について製法,種類,微生物,抗酸化性,機能性成分の面から研究成果をわかりやすく,興味深く紹介していただいた。また,大豆発酵食品の抗酸化能について,測定方法と機能性成分であるイソフラボンの変換の関連をわかりやすく解説していただいた。本解説の著者は,発酵による食品の機能性成分の生成には,まだまだ知られていない部分が多くあることを述べている。
著者
瀬川 修一 高瀬 貴仁 高澄 耕次 小杉 隆之 中村 剛
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.2, pp.107-116, 2016 (Released:2018-05-28)
参考文献数
15

1)マウスの肝臓を用いたALDH酵素活性評価において,清酒由来の成分に阻害活性が認められた。2)清酒からALDH阻害活性を有する物質を疎水性吸着樹脂,陽イオン交換樹脂,ODSカラム,NH2カラムにより分離・精製後,LC/TOF-MSによる精密分子量測定を行った結果,α-GGが同定された。3)マルトースとグリセロールからα-グルコシダーゼを用いて合成したα-GGはALDH阻害活性を示した。4)市販の清酒に含まれるα-GGを測定した結果,約4~19 mg/mlの濃度であり,醸造アルコールを添加した清酒では低値の傾向が認められた。
著者
前橋 健二
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.2, pp.71-78, 2016 (Released:2018-05-28)
参考文献数
24
被引用文献数
1

高濃度食塩存在下で米麹を消化させた醸造調味料の一つである塩麹は,2010年頃より販売されたのを端緒にして,その美味しさから全国的なブームとなったことは記憶に新しいが,塩麹について技術的な見地から記述した文献は,味噌や醤油に比べればまだまだ少ない。今回は,塩麹の残存酵素活性に関する成果を中心にして,最近の塩麹の研究状況に関して解説していただいた。新しい調味料としてその活用が期待される内容であり,味噌や醤油醸造に関わっている研究者にも是非読んでいただきたい。
著者
古川 幸子 鈴木 啓太郎 増村 威宏 田中 國介 若井 芳則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.653-665, 2015 (Released:2018-05-18)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

(1)2007年産の酒造好適米と良食味米を含む11品種11点について,試験米の食味評価とこれらの試験米を掛米とする製成酒の味覚センサーによる呈味評価の関係を検討した。(2)味覚センサーを用いて製成酒の呈味特性を評価した結果,酒造好適米品種を掛米に用いた場合には,製成酒は有機酸による濃厚感を持つ呈味となり,一方で良食味米品種を掛米に用いた場合には,製成酒は爽快感のある呈味となることが示唆された。(3)用いる掛米品種により製成酒の呈味に差異が見られる理由について詳細な検討を加えるため,製成酒の遊離アミノ酸含量を測定したところ,良食味米品種で酒造好適米品種よりもAsp,Thr,Ser,Leu,Tyr,Phe,Met,Lys含量が有意に高い値となった。(4)遊離糖含量は,良食味米で酒造好適米品種よりもフルクトース含量が有意に高く,グルコース含量が有意に低い値となった。従って,用いる掛米品種によって製成酒の呈味に違いが生じる原因として,アミノ酸含量や遊離糖含量の影響が示唆された。(5)味覚センサーを用いた製成酒の呈味評価により,掛米品種による酒質の差異を明示できる可能性が示唆された。これを商品開発に応用することで,新規市場の開拓や需要拡大への貢献に期待できるものと思われた。
著者
曲山 幸生
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.785-790, 2014 (Released:2018-04-09)
参考文献数
18

豆腐ようは豆腐を原料とする沖縄の伝統的発酵食品で,この起源と考えられる腐乳も豆腐を原料とする中国の伝統的発酵食品であり,筆者にこの2つの製造の差,さらに,豆腐ようは腐乳の一つと考えられることを解説いただいた。中国における腐乳の食べ方には学ぶべき点が多く,日本における豆腐ようの消費拡大の参考になると考えられ,さらに,伝統的発酵食品は新商品開発のアイデアにつながるので,ご一読いただきたい。
著者
吉﨑 由美子 金 顯民 奥津 果優 池永 誠 玉置 尚徳 髙峯 和則
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.170-178, 2015 (Released:2018-04-16)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

本研究では韓国麹「ヌルク」を用いた焼酎商品化の可能性について検討した。10種類のヌルクの発酵能力を確認したところ,米麹と比べ全てのヌルクで発酵能が弱かった。しかし,その中でも2種のヌルクは比較的高い発酵能力を示した。ヌルクに含まれるα-アミラーゼとグルコアミラーゼは米麹とほぼ同等であり,生デンプン分解活性に関してはヌルクの方が高かった。ヌルクに含まれるデンプン質の糊化度は米麹と比較して低く,糊化度の低さがヌルクの緩やかな発酵に影響していることが強く示唆され,糊化度をもとに発酵能力の高いヌルクを選抜できる可能性が示された。ヌルクを用いて製造した米焼酎の官能評価は,米麹を利用した焼酎より酸臭と酸味がある一方で,華やかであった。さらに,一次仕込み時に焼酎酵母を添加することでヌルクを使用した米焼酎の酸臭および酸味を抑制できる可能性が示唆された。また,ヌルクに含まれる酵母の1つとしてSaccharomyces cerevisiaeを同定し焼酎製造に適した微生物をもつことが確認された。 本研究は韓国RDAとの共同研究(Project No. PJ008600)で実施された。
著者
阿部 敬悦 上原 健二 高橋 徹 大滝 真作 前田 浩 山形 洋平 五味 勝也 長谷川 史彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.10-18, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
21

生分解性プラスチックは,発酵により生産が可能である有機酸とアルコールを原料とするものであり,現状の石油系プラスチックに代わるものとして期待され,生産量が拡大している。本稿は,著者らが行っている,麹菌が生分解性プラスチックを効率的に分解するメカニズムの学術的な検討と,伝統的な麹利用技術を本プラスチックの分解に生かす新たな処理システムの構築につき,詳細な解読をしていただいた。
著者
大久 長範
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.7, pp.472-477, 2013 (Released:2018-01-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1

稲庭うどんには肉眼でも判別できる位の空隙(気泡)が存在し,この空隙が歯ごたえの原因となつており,その他の乾通やスパゲテイーに認められている水分勾配による歯ごたえではなく,この気泡は小麦粉に食塩水を添加し,手延べ製麺を繰り返すことにより,集積された耐塩性酵母Hyphopichia burtoniiがアミラーゼを保有し,可溶性デンプンを発酵し炭酸ガスを発生することにより生成し,稲庭うどんは伝統的な発酵食品であることを明らかにしたので,解説いただいた。