著者
岡松 道雄 毛利 洋子
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1069-1076, 2015
被引用文献数
1

モータリゼーションの進展、中心市街地の空洞化、少子高齢化等により近隣型商店街が衰退している。同時に集約型都市構造への転換が望まれ、「歩いて暮らせる街づくり」の必要性が唱えられている。近隣型商店街はこの課題に重要な役割を果すと考えられることから、本稿ではまず、鹿児島県いちき串木野市にある近隣型商店街の現状を調査し、地域活性の取組み状況を明らかにする。次に商店街に生じた空き地を、朝市イベントの「賑わい広場」として活用し、商店街に賑わいを取り戻すための仮設実験を行った。その有用性を確認するため仮設物の使われ方の効果を検証した。
著者
小林 陽一郎 大沢 昌玄 岸井 隆幸
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.757-762, 2011-10-25

わが国の高齢化社会は着実に進み、街と自動車の接続点であり乗換口でもある駐車場では、今まで以上に高齢者を含めた移動制約者に配慮することが求められている。2006年にバリアフリー新法が施行され、移動制約者用の駐車スペース設置に関しては、路外駐車場は1台以上、建築物特定施設に関しては、200台以下は全体の2%、200台以上の場合は全体の1%+2台以上という基準となっている。しかし、駐車場の新築または増築時に適用されるため、既存の駐車場にはあてはまらない。そのため、現状では移動制約者用駐車スペースの設置数は極めて少ない状況にある。そこで本研究は、移動制約者を障がい者手帳を所持している人のみならず、妊婦や高齢者、一時的な病気・怪我人まで含めた広い概念として捉えた上で、実際に運用されている移動制約者用駐車スペースに関する設置基準を概観し、東京と横浜の駐車場においてアンケート調査を実施し、移動制約者が乗車している自動車の駐車ニーズと課題認識を明らかにする。あわせて移動制約者駐車マスの利用実態を現地で確認し、こうした利用状況から得られた結果を基に、移動制約者用駐車スペースの設置のあり方を提案する。
著者
樋野 公宏 雨宮 護 樋野 綾美
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.108-112, 2007

本研究では、防犯カメラの正負の影響に着目し、実際に防犯カメラが設置された集合住宅団地駐車場の利用者(=団地居住者)の意識を調査し、設置に対する賛否の態度が形成される構造を分析した。防犯カメラへの期待は高く、回答者の約半数が自動車関連犯罪への不安が軽減されたと答えた。また、プライバシー侵害等への懸念を感じる人は5%と少なく、9割を超える人が設置に賛意を示した。それでも、SEMによる分析からは、防犯カメラへの賛否の態度が期待と懸念のバランスで形成されていることが明らかになった。また、不安減少は賛成態度に直接影響しないことが明らかになった。
著者
平山 豪 中井 検裕 中西 正彦
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.595-600, 2003-10-25
被引用文献数
6

昨今、地球温暖化をはじめとする地球規模の環境問題が大きく取り上げられてきた。その中でも多くの人が住む都市の環境悪化が課題として注目されている。都市の環境悪化の例を挙げればヒートアイランド現象・大気汚染・ごみ問題・都市型洪水・エネルギー問題等々きりが無く、またこれらの原因は非常に多岐にわたり、その解決は困難を極めている。その中でも都市内における緑の喪失は多くの問題の原因であり、いかに緑地を確保していくかが大きな課題である。しかし、高密度に利用されている現在の都市においては新たに緑地を創出する為の土地はほとんど無い。そのため、新たに新規緑地を創出できる場としての屋上が注目され始めている。この様な背景を受け、行政は屋上緑化推進のために様々な施策を設けているがそれらがどの程度の効果又は害をもたらすか、屋上緑化推進の目的を本当に果たしているかは未だ明確に把握されていない。本論文では屋上緑化を義務化した屋上緑化義務条例と屋上緑化面積と引き換えに容積率を与える容積率割増制度を対象として取り上げる。 また、既存研究によると屋上緑化の経済的な効果にのみ着目すれば断熱材の利用や配色の工夫など代替的な方法でより安く・効果的な方法がある事が示され、屋上緑化の有効性が疑問視されている。しかしそれらの屋上緑化の評価には、本来緑地が持つ安らぎ・豊かさ感といった生理・心理的な効果は考慮されていない。ゆえにこれからの屋上緑化施策を考えるにはこの生理・心理面の効果を考慮に入れた経済的評価が必要であると思われる。 東京全体で屋上を緑化できる平坦屋根面積は屋上開発研究会によると約2000haと港区に匹敵する面積であり、その中でも宅地の占める割合が大きく、住宅の屋上緑化は東京における今後の緑地増加に対して大きな役割を果たすと思われる。よってその効用を明らかにする事は重要である。 そこで本研究では住宅の中でも、今後都心部おいて増加が予想され、しかも緑化義務条例・容積率割増制度の対象となり易い集合住宅に着目し、屋上緑化のなされた集合住宅の住民・周辺住民を対象とした仮想市場法(CVM)により生理・心理面を含めた屋上緑化による効用を定量化し、この結果を踏まえた上で、現在行政が行っている2つの屋上緑化推進施策と両制度併用時の評価を行なう事を目的とする。 結果として、まずCVMにより定量的に把握した。住民の平均WTPは679円・周辺住民の平均WTPは179円であった(抵抗回答は除く)。また分析により住民が利用可能な屋上緑地の方がその効用が高まり効果的であり、屋上緑化が効果的な地域は市街地等緑の不足が問題視されている地域であると考えられる。 次にそれに基づいて施策への評価を行った。「屋上緑化の義務化」制度(緑化率20%)にはある程度の妥当性が認められたが、指定容積率による段階的な緑化率の設定等改善の可能性もあると考えられる。「屋上緑化に対する容積率の割増」制度(緑化率50%、容積率50%増)は建物経営者にとって魅力的な制度となっており多くの適用が予想されるが、その結果として住民・周辺住民にとってマイナスの効果を及ぼす危険性があると思われ、高い指定容積率の建物に絞った適用が考えられる。また義務化制度のある東京都において容積率割増制度(緑化率30%、容積率30%増)を併用することは住民・周辺住民にとってマイナスの効用しか与えなく、さらには本来の屋上緑化推進という目的を果たし切れていないと思われる。
著者
伊藤 雅
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.381-386, 2014

近年、世界各地の都市内幹線道路において、高架道路の撤去や車道の地下化によって地上部を歩行者中心の断面構成に再整備する事例が相次いでいる。本研究では、地下トンネル整備の中止を決定しながらも、住民投票を通じて地下トンネル整備を再開したミュンヘン市の「中環状道路」を事例として取り上げ、地下トンネル整備の中止とその再開に至った経緯の資料調査に基づいて、その決定に至った背景と要因について考察を行った。また、トンネル整備再開後の道路空間整備のコンセプトづくりに関するヒアリング等の現地調査に基づいて、新たな道路空間整備を志向した背景と沿道環境整備が都市に及ぼした影響に関する考察を行った。その結果、住民投票に至る背景には住民グループによる報告書の内容に表わされている通り、高度な実行力と構想力が市民の間に存在していたことがわかった。また、その後、市民の意向を汲み取って作成されたマスタープランと実施プログラムは中環状道路沿道の住環境を向上させるのみならず、都市全体の価値向上につながる取り組みがなされたことがわかった。
著者
前根 美穂 清水 陽子 中山 徹
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.27-30, 2010

アメリカの総人口は増加し続けているが、中には人口が減少しつつある都市もある。そして、中には独自の政策により空き家の増加などの問題に対処している都市がある。本研究ではそのような独自の政策を行っている都市の調査を行った。我々はアメリカのミシガン州フリント市とオハイオ州ヤングスタウン市の2都市を訪れた。フリント市では「ランドバンク」と呼ばれる政策が行われており、ランドバンクでは固定資産税を払えなくなった人の物件が不動産投機家の手に渡る前に、ランドバンクの所有になるようにしている。ランドバンクが管理することにより、放棄地のコントロールが可能となった。ヤングスタウン市には「ヤングスタウン2010」と呼ばれるマスタープランがある。それは縮小型都市政策であり、現在、実行されているところである。
著者
岡村 祐
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.687-692, 2013

London View Management Framework: LVMFは、大ロンドン庁(GLA)により2007年に策定されたロンドン中心部の歴史的ランドマークや町並みに対する眺望景観保全計画である。英国内外からの規制強化の要請にしたがい既に2度の改訂が行われている。本研究では、その計画内容の変化や運用実績から、高い都市開発圧力の下で、LVMFがどのような景観像を求め、いかなる手法を用い、いかなる価値判断で景観コントロールを行っているか、その実態を明らかにした。特徴としては、第一に、高さへの柔軟な対応であり、基準高さが適用される「保護ヴィスタ」であっても、ランドマークへの視認性や鑑賞性の向上に貢献すると判断されれば、多少の高さ超過も許容されている。第二に、景観の質的評価を担保するものとして、精緻な景観アセスメント手法: QVAが確立されている。第三に、ランドマークの視覚的独立性の向上や既存要素との相対的関係など、開発と保全の調和を目指すための判断基準が適用されている。
著者
植野 和文
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.76-76, 2003

本稿では明石海峡大橋の開通(平成10年4月)が津名町民の余暇活動に及ぼした影響を分析した。ここでの影響とは、本州への交通がより便利な陸上ルートに切り替わったことに住民の余暇活動がどのように反応したか、そしてその結果を彼らはどのように評価したのか、ということである。 調査は開通の4ヶ月前の平成9年12月と、開通の1年9ヶ月後の平成12年1月に、いずれも20歳以上の住民400人を対象に郵送調査法で行われた。設問では余暇活動の場所として提示した23地区から活動の領域ごとに重要な地区を複数(最多3つ)選ばせたうえで、それらを地理的条件、交通条件、余暇活動機会などを考慮して7地域(津名町、津名町を除く淡路地域、神戸・阪神、京阪地域、西・北地域、徳島県、その他全国)にグループ化した。活動の9領域における回答を地域ごとに合算し、それらをいずれかの領域で余暇活動を行っている有効回答者数で除した値を余暇活動水準とした。得られた知見は以下のとおりである。 第一に開通後の活動水準の変化でみる限り、大橋の影響はあまり大きくはない。それでも開通後に余暇活動が「神戸・阪神」「その他全国」で活発になり、「津名町」「京阪地域」を除く地域では活動水準の個人差が広がった。さらに余暇活動環境(神戸・大阪へのアクセス、公共交通サービス、余暇活動の利便性、余暇生活)のすべてにおいて満足水準が上昇した。ただし活動圏が地域的に分散する傾向はみられなかった。 第二に大橋を多用する人はそうでない人に比べると、島外での余暇活動が活発で、かつ活動水準の個人差も大きく、さらに活動圏が一層地域的に分散している。そのうえ余暇生活の満足水準が高い。 第三に大橋を多用する人でも活動圏が拡大した人はそうでない人に比べると、本州の一部地域で余暇活動が活発で、かつ活動の個人差も大きいが、活動圏の地域的な分散では差はみられなかった。さらに余暇活動環境のすべてにおいて満足水準が高い。 第四に余暇活動が本州で活発になっても、島内での活動水準と活動の地域分布は安定しており、活動が島外に流出して島内の活動が低迷するという現象はみられなかった。最 後に大橋は多くの地域で余暇活動水準の個人差を広げたが、このことは影響が住民均等に及ぶのではなく、余暇活動に対する彼らの態度や生活状件に依存することを示している。 同時にいくつかの課題も残された。第一に今回の分析では9領域の余暇活動を統合したデータを用いたが、余暇活動の領域によって活動圏や大橋利用の必要性が異なるため、余暇領域ごとの実践者を対象にした分析が必要である。 第二に今回の知見の一つは大橋が余暇活動の個人差を拡大することであった。これが住民一般を対象にした開通前後の影響分析で明瞭な結果が得られなかった理由の一つと考えられる。属性、生活条件、大橋の利用パターンなどをもとに調査対象を選別して影響分析を行う必要がある。 第三に余暇活動への影響には大橋の出現が活動を誘発する側面と、開通にともなって整備された島内外の余暇資源が活動を誘発する側面がある。いずれも長期的な観察が必要であるが、今回は開通後2年足らずの短期的な影響を分析したに過ぎない。得られた知見を仮説として継続的な調査と研究が必要である。 第四に調査で得られたデータの数が少なかったことが、いくつかの統計的検定を難しくし、影響分析の結果に曖昧さを残したことは否めない。上記の課題に応えるためには、十分なデータの確保に努める必要がある。
著者
紅谷 昇平
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:13482858)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.9-14, 2008

本研究では、第二次大戦中の鳥取地震(1943年)における住宅再建施策の分析を行った。鳥取地震は、鳥取市という県庁所在地を襲った都市直下型震災であること、第2次大戦による物資・労務の不足から効率的な対策が重視されたことなどの特徴を持つ。住宅再建では、戦時下の限られた物資や労力を効率的に運用するため、半壊住宅の修理、応急住宅の建設、資力ある被災者の新築が優先された。また、民間による借家供給への支援や民有地への仮設住宅建築などの対策も実施された。公的仮設住宅への入居については居住地域への配慮がみられる一方、軍人遺族の入居が優先されるなど戦時下の復興としての特徴がみられた。
著者
新保 奈穂美 雨宮 護 横張 真
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.219-224, 2014
被引用文献数
4

都市農地の環境保全機能を発現する方策として,都市住民が主導し,近隣由来の有機性廃棄物を農地に還元し,それを農作物生産のための堆肥として利用するシステムの構築が考えられる.本研究は,その際に課題となる,(1)有機性廃棄物の収集量の実態と調整方法,および,(2)有機性廃棄物の処理における都市住民の関与の実態と調整方法という2点から実在の事例の実態解明を行った.(1)に関しては,有機性廃棄物収集量の実測調査および収集の背景情報をインタビュー等で把握した結果,収集量の調整は科学的知見と経験的な知識をもとに,リーダーの判断で収集量が調整されていたことがわかった.これにより適正な量の有機性廃棄物の収集が可能となったといえる.(2)に関しては,有機性廃棄物の処理に携わった都市住民の作業時間・内容についてアンケート調査を行った結果,都市住民の関与の強さに応じて作業分担が行われていたことがわかった.これにより,広く都市住民を巻き込むことに成功していたといえる.今後,同様の事例研究が蓄積され,ノウハウが普遍化されることが,都市農地における住民主導の有機性廃棄物利用システムの取り組みを普及させるにあたり重要である.
著者
村上 尚 村橋 正武
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.757-762, 2003-10-25
被引用文献数
3

現行の斜線制限等に代表される形態規制によって導かれる市街地景観は混乱している。このような市街地景観の現状に対して街並み誘導型地区計画は全国一律の形態規制を地域の実情に即した規制に置き換え、一定の市街地環境を確保しつつ、土地の有効利用の促進に併せて整った街並みの形成を誘導することが可能となった制度であり、その効果が期待される。 そこで本研究では、本制度が導入された事例を対象として制度導入の背景・目的、計画内容を分析し、制度の運用実態を明らかにする。次に適用地区における更新建築物、敷地状況より景観形成への実効性を分析し、制度の適用効果を明らかにし、本制度の効果と課題を明らかにすることを目的としている。
著者
照本 清峰
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.871-876, 2012-10-25
参考文献数
13
被引用文献数
3

本研究では、防災教育と防災まちづくりの連携による実践的津波避難訓練の実施体制を示すとともに、実施結果に基づく効果と課題を検討することを目的とする。従来、個別になされていた活動について、相互の取り組みを連携させるモデルを構築するとともに、それらを実践することによって検討することに本研究の特徴がある。調査対象地域は、和歌山県海南市黒江船尾地区である。同地区は、南海地震による地震動とともに、その後の津波の来襲によって被害が生じることが予測される地域である。訓練時には、道路の一部は損壊によって通行できない、避難場所の一部は土砂崩れなどによって使用できない、負傷している(役割の)住民がいる、高齢者等の避難に対して支援を必要とする(役割の)住民がいる、という状況を想定して実施された。実践的な訓練の取り組みの結果より、避難に関する仕組みと空間整備上の課題を導出できること、避難に関する様々な課題があるという認識がより高まることを示した。また、実践的訓練を媒介として連携することによる意義と相互の活動の効果を高められる可能性について言及した。
著者
吉田 葵 片桐 由希子 石川 幹子
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.637-642, 2011-10-25

本研究の目的は、都市内の崖線上に存在する緑地について、その歴史的背景、保全に至る経緯とその考え方を踏まえた上で、現況における緑地の生態的な質を明らかにし、その持続的な質、つまり生態系機能の向上に対する保全・管理に繋がる基礎的な知見を得ることである。対象地は落合崖線とその崖線上に存在する緑地である新宿区おとめ山公園である。その結果、以下の2点が明らかになった。1)崖線緑地の多くは明治期における邸宅の存在が緑の継承に大きな役割を担っていることがわかった。またおとめ山公園は、江戸期から現在に至るまで、所有者や利用目的がさまざまに変わりながらも、守られてきた貴重な緑地であった。2)崖線上の緑地の質は、種構成において常緑樹の割合が高く、遷移が進行しているという一様な状態であった。また、おとめ山公園の緑地の質を明らかにするために、落葉樹二次林から生態遷移が進行し常緑樹が優占している状態までの植生遷移の段階に着目したビオトープタイプ区分を行った。上層木における常緑樹の割合が高くなるほど裸地化しており、その裸地化した区域の7割が急斜面地であった。また、上層木に落葉樹の割合が高いと更新が起きていた。