著者
竹内 義夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.95, no.11, pp.1744-1758,1891, 1992-11-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
68

骨導測定とマスキングに関連する基本的事項を定量的法則に再編成し, 実効マスキング狭帯域雑音を装備するオージオメータの使用を前提とすれば, マスキングノイズレベルと気導および骨導の域値の関係を計算して予測できることを示した. 良聴耳骨導を非検耳の骨導とする仮定を導入すれば, この骨導と両気導の3者および両耳間移行減衰量からマスキングノイズレベルが算出できることを新たに見いだし, ABCマスキング法として体系化した. ABCマスキング法は原則的に一検査周波数につき1つのノイズレベル下の骨導測定で終わるのでプラトー法に比べて測定時間を飛躍的に短縮することができた.
著者
山本 哲夫 朝倉 光司 白崎 英明 氷見 徹夫 小笠原 英樹 成田 慎一郎 形浦 昭克
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.108, no.10, pp.971-979, 2005-10-20
被引用文献数
7 3

1995年4月から2002年の間に札幌市南区にある耳鼻咽喉科診療所を受診し4種のCAP (シラカバ, カモガヤ, ヨモギ, ダニ) を検査した例を対象にOASの有症率を調査した. そしてシラカバ花粉の感作とOASの関係を調べるとともに, イネ科やヨモギ花粉の感作とOASとの関係も調べた. シラカバ感作例843例のうち37% (378例) が問診上OASを有しており, 多くの原因食物 (リンゴ, モモ, サクランボ, キウイ, ナシ, プラム, メロン, イチゴ, カキ, ブドウ, トマト, スイカ, マンゴー, バナナ) に対しシラカバ陰性例より多く, またこの中でブドウとマンゴーとバナナ以外はいずれもシラカバCAPスコアの増加とともに有症率が上昇した. また原因食物の数もシラカバCAPスコアの増加とともに増大した. シラカバ感作例におけるOASの有症率は92年の調査より増加していた. シラカバ感作例において同じシラカバCAPスコアごとで比較すると, イネ科重複感作例はメロンとスイカとモモのOASが多く, ヨモギ重複感作例はメロンのOASが多い場合があった. シラカバ感作例においてロジスティック回帰分析を用い. OASの合併に影響する因子を調べると, シラカバCAPスコア以外には, 性別 (女性に多い) とダニCAP (陽性例に少ない) が有意であり, また原因食物別にはキウイとトマトに対するOASはヨモギ陽性例に有意に多かったが, イネ科に関しては有意差はなかった.
著者
杉内 智子 佐藤 紀代子 浅野 公子 杉尾 雄一郎 寺島 啓子 洲崎 春海
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.1126-1134, 2001-12-20
被引用文献数
17 8

軽度・中等度難聴児の現況を調査し, 問題とその背景について考察した.<BR>対象は補聴器外来にて聴覚管理を行ってきた軽度・中等度難聴児30人である.<BR>全体象例について, 難聴を疑った時期と診断の時期, 補聴器の装用開始時期, そして補聴器の使用状況を調査し, 24人に知能検査 (WISC-III) を行った. また, アンケートを用いて, 児の聴取状況および児の「きき返し」に関する母親の意識と対応について調査を行った.<BR>難聴を疑った時期は平均2歳10ヵ月と遅く, その診断は平均4歳2ヵ月, 補聴開始は平均5歳3ヵ月と, 難聴を疑いながらも診断, 補聴がさらに遅れる傾向があり, また補聴器を有効に活用できていないと考えられる児がみられた. WISC-IIIを行った24人のうち14人は, 言語性IQが動作性IQより15以上低く, 言語発達に遅れがみられた. これら言語発達の遅れと, 聴力レベル, 難聴の診断および補聴器開始時期との関連は見出せなかったが, その背景として, 定着していない補聴器装用状態と, 帰国子女, 両親がろうであるなどの言語環境, すなわち音声コミュニケーションの質と量の問題が関与していることが示唆された. また, 母親は児のきき取りの状態を気にかけてはいるものの, 児からの「きき返し」には"くり返す"以外, ストラテジースキルを導くような対応は少なく, 意識していても対処する術を知らないという現実がうかがえ, この傾向は言語発達に遅れのある群で顕著であった.<BR>小児難聴は早期発見が不可欠である. 同時に, とくに軽度・中等度難聴児においては, 聴覚障害を適正に認識, 受容できるような指導, 補聴の定着, そしてコミュニケーション指導が重要である.
著者
山本 哲夫 久々湊 靖 縫 郁美 高田 竜多 平尾 元康 上村 正見 斎藤 博子 朝倉 光司 形浦 昭克
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.98, no.7, pp.1086-1091, 1995-07-20
被引用文献数
10 3

シラカバ花粉, カモガヤ花粉, ヨモギ花粉, ダニの4種類のCAPを検査した650例に果物の口腔咽頭の過敏症状の有無を調べた.<BR>(1) シラカバCAP陽性例 <スコア2以上> 174例の16%に, 他のCAP陽性例 (253例) の2%に果物に対する口腔咽頭の過敏症が見られた.<BR>(2) シラカバCAP陽性例の13%にリンゴで症状が, 6%にモモで症状が見られ, ともにシラカバのCAPスコアーの高い方が多く, 他の例よりも多く, 花粉の感作の診断の参考となると思われた.<BR>(3) キウイの症状は, シラカバCAP陽性例の3.5%に, シラカバ以外のCAP陽性例の1.2%に見られたが, 有意差はなく, 必ずしもシラカバ花粉の感作を示すとは限らないと考えた.
著者
梅野 博仁 宮嶋 義巳 森 一功 中島 格
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.1442-1449, 1997-12-20
参考文献数
20
被引用文献数
16 9

1971年1月から1996年7月までの26年間に久留米大学耳鼻咽喉科で治療した腺様嚢胞癌54症例 (一次例44例, 二次例10例) の臨床統計を行った. 原発部位は口腔13例, 口唇1例, 鼻腔11例, 副鼻腔3例, 顎下腺8例, 耳下腺5例, 上咽頭3例, 中咽頭3例, 外耳道3例, その他4例 (眼窩2例, 涙嚢1例, 気管1例) であった. 性差は男性19例, 女性35例と女性に多く, 平均年齢は男性60.8歳, 女性57.5歳であった. 全症例の5年生存率は72%, 10年生存率53%, 15年生存率46%であり, 諸家らの報告と大差はなく, 原発部位別の治療成績に有意差はみられなかった. 病悩期間は1日から13年4カ月までであり, 平均病悩期間は1年5カ月であった. 病悩期間が長い程, 生存率が低下した. 腺様嚢胞癌に対してSzantoらの組織grade分類を行うと諸家らの報告と同様にsolid patternを多く含むgradeでは転移を来しやすく, 予後も不良であった.<BR>死因の解析では, 原病死17症例中遠隔死が10例と最も多く, その10例中8例が肺転移であった. 原発巣死は5例で, 原発巣死全例が癌の頭蓋内浸潤で死亡していた. 頸部リンパ節転移に対しては頸部郭清術で十分制御可能であり, 頸部リンパ節死した症例はなかった. また, 腺様嚢胞癌は従来, 放射線感受性が低いといわれていたが, 術後に放射線療法を行った群が手術単独群より有意に良好な生存率が得られた.
著者
藤田 芳史 久保田 彰 古川 まどか 八木 宏章 佃 守
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.115-122, 2010-03-20
被引用文献数
1 2

過去11年間に当科で治療した耳下腺癌症例34例について検討した.T1/2/3/4aが5例/12/7/10, N0/1/2が25例/3/6, stage I/II/III/IVが5例/10/6/13であった. 病理組織型は, 多形腺腫由来癌が9例, 腺癌が8例の他, 計10種類の組織型を認めた. 同期間の良性腫瘍98例を含め, 穿刺吸引細胞診 (FNA) の有用性を検討したところ, 感度76.0%, 特異度95.4%, 良悪性の正診率91.1%であり, 過去の報告と同等であったが, 4例の偽陽性と, 6例の偽陰性を認め, FNAの結果のみで悪性腫瘍と判定し, 顔面神経の処置を決定するのは危険なことが判明した. 悪性腫瘍29例に手術を施行した. 顔面神経は可能な限り温存を試み, 15例で全5枝を温存した. 悪性腫瘍で, 顔面神経浸潤が疑われる症例, リンパ節転移陽性, 高悪性度の症例, 切除断端陽性の15症例に対して, 術後放射線照射を施行し, そのうち3例に再発を認めた. 手術不能例5例に対しては, 化学放射線同時併用療法または放射線単独照射を行ったが, 現在まで全例生存している. 5年overall survival (OS) は87.4%, 5年progression free survival (PFS) は71.4%であった. stage分類別5年PFSは, stage I/II: 91.7% (stage I: 100%, stage II: 87.5%), stage III/IV: 51.6% (stage III: 50%, stage IV: 47.9%) で, 両者の間には有意差が認められた. またN分類別5年PFSでも, N0: 86.2%, N+: 38.1% (N1: 66.7%, N2: 20.8%) で, 両者の間には有意差が認められた.
著者
瀬野 悟史 嶽 良博 硲田 猛真 齊藤 優子 池田 浩己 北野 博也 北嶋 和智 榎本 雅夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.232-239, 2002-03-20
被引用文献数
5 3

近年花粉症の治療として, 従来のメディカルケアに加えてセルフケアの重要性が認識されてきている. 飛散花粉観測より得られる情報は, セルフケアに重要であるが, 特にリアルタイムの花粉情報はよりきめ細やかなセルフケアに役立つ可能性がある. リアルタイム花粉モニターは, リアルタイムの飛散花粉情報が得られること, 簡便に飛散花粉数を測定することができることから今後普及していくと考えられる. 今回このリアルタイム花粉モニター (KH-3000) の精度などについて検討した. 和歌山市において, 2001年2月2日から4月26日までに観測された飛散花粉を対象とし, ダーラム型花粉捕集器とリアルタイム花粉モニターの結果について比較検討を行った. スギ花粉飛散のピークとなる3月のスギ花粉の相関係数はr=0.69, ヒノキ科花粉飛散のピークとなる4月のヒノキ科花粉の相関係数はr=0.89であり, 良好な相関関係が認められた. しかし, リアルタイム花粉モニターの結果には, 花粉ではないピークも認められた. 検討の結果その原因は雪やそれ以外の可能性が考えられた. 現在本機器に, 改良品として雪対策も行われており, スギ・ヒノキ科花粉のリアルタイム測定には, 本モニターが有用であると考えられた.
著者
杉浦 欣一 大橋 淑宏 江崎 裕介 古谷 博之 大野 義春 中井 義明
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.506-515, 1991-04-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
19

There is amount of epidemiologic, clinical and laboratory evidence to document that viral infection is involved in otitis media with effusion(OME).However, few studies have demonstrat- ed the direct influence of viruses on the tubotympanum.The purpose of this study is to establish the effect of influenza A virus invaded in the tubotympanum, in an attempt to elucidate the possible mechanism by which the virus contributes to the pathogenesis of OME.80 guinea pigs with normal otoscopic findings were inoculated with 0.2m1 suspension of influenza A(3.3 x 108PFU/ml)into their tympanic cavities through their tympanic membranes.To serve as controls, the same number of guinea pigs were injected with 0.2ml of physiologic saline solution into their tympanic cavities.At 3, 7, 14, and 28 days postinoculation, they were used for examination of the mucociliary function.Middle ear effusions were observed only in the animals inoculated with the virus.Mucociliary dysfunction was observed only in the animals inoculated with the virus.The ciliary activity in the bulla was declined at any time examined.On the other hand, the ciliary activity in the eustachian tube and the tympanic orifice was slightly lowered between 7 and 14 days, but the level was not different from that of the control.However, the number of active ciliated cells(showing more than 500 beats/min)was significantly smaller than that of the control.The mucociliary clearance time of the tubotympanum was more prolonged than that of the control at 3, 7, and 14 days, and returned to the control level at 28 days.A variety of morphologic changes were observed in the tubotympanum treated with the virus. Major pathologies observed included a general inflammatory cell infiltration, vacuolation and other degeneration of ciliated cells, and vascular damage and increased vascular permeability.Regener- ation of cilia or ciliated cells followed the degeneration, which included an increased number of basal cells and new formed centrioles.However, the viral infection had an influence on the epithelial cells with new centrioles.Our study has demonstrated that viral infection could evoke mucociliary dysfunction of the tubotympanum and create an increased susceptibility to bacteria.Therefore, viral infection could enhance bacterial infectious process in the tubotympanum.Through the failure viruses could contribute to the occurrence of OME.
著者
後藤 友佳子
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1192-1201, 1990-08-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
41
被引用文献数
6 5

The localization of epidermal growth factor (EGF) in human cholesteatoma tissue, normal ear drum and external auditory canal skin was examined immunohistochemically, using avidin-biotin peroxidase complex method.Bouin-fixed tissue was stained for investigation of horny layer in the epidermis, because fixation in Bouin's solution provides better preservation of the antigen. In the horny layer of cholesteatoma tissue, 19 out of 24 cases had EGF-positive immunoreactivity (79%). In 2 cases of normal external auditory canal skin, 4 cases of normal ear drum and a case of postauricular skin, no EGF-immunoreactivity was revealed in the horny layer.EGF was assayed in the debris of cholesteatoma and the horny layer of the normal bony external canal with dot blot immunoassay. EGF content of the debris was higher than that of the horny layer of normal skin.The result of the first report suggests the activity of cholesteatoma exists in the subcutaneous tissue (see the previous paper). In this report EGF content of cholesteatoma in the horny layer was found higher than that of normal external skin. This result demonstrates that EGF in the horny layer plays an important role in accelerating the growth and bony destruction in cholesteatoma.To summarize these two reports, the following conclusion was reached. In the epidermis EGF content is equal in cholesteatoma and normal skin. But in the subcutaneous tissue and the horny layer EGF content of cholesteatoma is higher than that of normal skin. EGF in situ may be strongly related to the growth and bony destruction of cholesteatoma.
著者
吉川 琢磨 生井 明浩 池田 稔 木田 亮紀
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.100, no.8, pp.864-869, 1997-08-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
21
被引用文献数
4 1

小児の異物誤飲事故は, 日常診療において遭遇する機会が多いが, 小型電池によるものは早期より重篤な合併症を引き起こしうるため, 近年多数の報告がなされている. しかしそのほとんどが胃あるいは腸に異物が落下していた例であり, 食道内に停滞していた症例についての報告は多くはない. 今回我々は, 従来の小型電池よりも電圧の強いリチウム電池を誤飲し食道潰瘍をきたした1症例を経験したので報告する. さらに, 犬を用いて実験的にリチウム電池による食道潰瘍を作製し, 食道粘膜の傷害程度と電池の停滞時間の関係について組織学的に検討を行った. 対照としての100円硬貨の挿入後4時間の組織と電池挿入後1時間の組織では, 異常所見は認められなかった. 電池挿入後2時間では, 肉眼上異常所見は見られなかったが, 組織学的には粘膜上皮中間層の解離が認められた. 電池挿入後4時間では, 肉眼上も明らかな潰瘍性変化が認められ, かつ組織学的にも粘膜上皮の剥離, 脱落などの変性が認められた. 今回の実験結果から小児の異物誤飲時の治療指針としては, 早期に異物の種類を診断し, 特に組織傷害力が強い電池異物と診断された場合には, 異物誤飲後4時間以内の早期の摘出を心掛け, 重篤な合併症を回避することが重要と思われる.
著者
河野 淳
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.466-477,549, 1993-03-20 (Released:2010-12-22)
参考文献数
41

平均聴力レベル90dB以上 (平均105.9dB) の補聴器装用の高度難聴者49名を対象に, 補聴器による聴覚補償, 主観的評価 (アンケート調査) と客観的評価 (語音了解度検査) との関連性について検討した. 主観的には「静かな所での一対一の会話」の聴覚補償可能例が90-110dBで約60%と高かった. 客観的には聴覚のみと視聴覚併用の正答率は, 単音節で19.6%, 46.3%, 単語で19.8%, 43.4%, 文で29.5%, 60.0%であった. 単語, 文および視聴覚併用, 聴覚の検査項目に他との関連性が多くみられた. 高度難聴者の検査として, 単語, 文の検査, さらに視覚の検査を行えば補聴効果を一層知りうると推察した.
著者
和田 伊佐雄 加瀬 康弘 飯沼 壽孝
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.106, no.6, pp.678-684, 2003-06-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
26
被引用文献数
10 9

外耳道異物は,日常外来でしばしば遭遇する疾患である.病態が単純であり診断も容易であるためか臨床像の分析あるいは多数例に基づく臨床統計的な検討についての報告が少ない.本研究では,1986年1月から2001年12月までの16年間に埼玉医科大学•耳鼻咽喉科を初診し病歴の記載が明らかで診断が確定した外耳道異物509症例の臨床像につき検討し.臨床統計的検討を行った.16年間の外耳道異物症例は,509症例でこの間の新患患者数は68,579名であり,外耳道異物が新患患者に対して占める割合は,0.74%であった.異物症例の受診時間帯をみると時間内を受診したのは161症例(31.6%),時間外は,348症例(68.4%)であった.性別では,男性307症例(60.3%),女性202症例(39.7%)であった.左右別では,右側251症例(49.3%)左側241症例(47.3%),両側4症例(0.8%)であった.受診月別にみると月平均42.4症例で,7月,8月と気温の高い時期に多く認めた.年齢分布では,平均年齢25.4歳で生後1カ月の乳児から90歳までの各年齢層に認めた.年代別でみると9歳以下の小児が182症例(35.8%)で最も多かった.種類別にみると,有生物206症例(40.5%),無生物は288症例(56.6%)であった.また,受診月別平均気温と有生物の症例数の間には極めて強い相関関係が認められた.

1 0 0 0 OA 聴力詐病症例

著者
志村 彦八
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1505-1518, 1958-01-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
38
被引用文献数
1

Two cases who complained of unilateral deafness and were proved to be malingerers, were reported. The one had been injured by gas explosion and the other by a blow on his left mastoid region, bad been complaining deafness of the left ear for 6 months. During which periode there has been no improvement. However, examination revealed that they were malingerers. Stenger's test and the Delayed Side Tone Test were voluable for the diagnosis of malingering, and the latter played an important role to determine the threshold in hearing difficulty.
著者
藤井 興年
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.1423-1451, 1965 (Released:2008-03-19)
参考文献数
39

1) Amoung the earlier studies on the directional hearing, there have been few on the discrimination ability of the sound from front and rear sources(DFR).Foundamental study on this ability was performed to establish the test method, and various kinds of hearing disorders were tested. 2) The method was as follows: Two loudspeakers were set in front of and in the back of the subject at the same distance. Pure tone, white noise and bandpass-noise of the same loudness were given from the two speakers.The subjects were told to answer where the sounds came from. 3) When a subject kept his head still. i) The wider the frequency range of the testnoise, the better the DFR. ii) To elicit good DFR, the duration and the intensity of the testnoise should be more than 0.25sec and 40db(SL) respectively. DFR was not significantly influenced by the rise and decay time of the testnoise. iii) Concerning the azimuth of the sound sources, the best DFR was obtained when the sources was 30° to 45° apart from the median sagittal plane. iv) When earplugs were inserted in the both earcanals, DFR was disturbed, but the effect of auditory fatigue was not so remarkable as earplugs. 4) When the head of subject was moving, narrow bandpassnoise was also well discriminated as whhite noise. 5) DFR of the subjects with hard deafness was oor in proportion to the degree of hearing loss. 6) DFR was poor in the presence of central disorders, even when the hearing was normal. The last result indicates the possible usefulness of he test as a diagnostic aid of central disorders.
著者
金子 功
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.974-987,1139, 1992-07-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
38
被引用文献数
11 14

男女による違いや加齢により嚥下時の舌骨運動がどのように変化しているかを解析し, 嚥下動態を定量的に評価することを今回の研究目的とした. 対象は咽喉頭異常感症の男性44例, 女性27例とした. 頸部側面からX線映画撮影を行い, 舌骨体下端の測定点の運動をモーションアナライザーで分析した.〈結果〉1. 舌骨の安静時位置は男女差があり, 女性が男性よりも高位にあった.2. 舌骨の安静時位置は, 男性女性とも加齢により下降が認められた.3. 嚥下時間, 挙上距離は加齢により延長し, これは挙上第一相時間, 挙上第一相距離の延長によると考えられた.
著者
高原 幹 板東 伸幸 今田 正信 林 達哉 野中 聡 原渕 保明
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.1065-1070, 2001-11-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
12
被引用文献数
9 7

尋常性乾癬7例に対する扁摘の効果とその病理学的特徴について検討した. 7例の内訳は男性3例, 女性4例であり, 年齢は9歳から46歳であった. 扁摘による効果は3例が消失, 2例が著効であり, 治療効果は約70%に認められた. 病理学的な検討として, CD20抗体と抗ssDNA抗体による扁桃組織の免疫染色を行い, B細胞, T細胞, BT混合領域の面積とB細胞領域のアポトーシス細胞数を測定した. その測定値を習慣性扁桃炎, IgA腎症, 掌蹠膿疱症と比較した. 結果は, 乾癬と掌蹠膿疱症において有意なT領域の拡大, Bリンパ濾胞の縮小, リンパ濾胞内でのアポトーシス細胞の増加が認められた. このような結果から, 乾癬の中には, 臨床的のみならず組織学的にも掌蹠膿疱症と同様に扁桃病巣感染症の特徴を持つ症例が存在することが示唆された. また, 掌蹠膿疱症, IgA腎症, 乾癬症例における消失群と著効・改善群を比較すると, 消失群では有意にT領域の拡大を認めた. このような結果から, T領域の測定は術後の扁摘効果を反映する組織学的検査に成り得る可能性が期待された. 今後症例数を増やし更なる検討を加える予定である.
著者
古川 浩三
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.169-181, 1984-02-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
37
被引用文献数
23 15

Laryngeal movement during deglutition was analyzed by means of cineradiography on fortyeight males of different age groups who had no pathology. The film was analysed using a film motion analyzer and the laryngeal movement was measured in two directions, horizontal and vertical.As a result, the vertical movement associated with swallowing was divided into 5 phases: 1) the slowly ascending phase, 2) the rapidly ascending phase, 3) the pause at the position of maximum rise, 4) the rapidly descending phase, and 5) the slowly descending phase. The slowly ascending phase was observed during the period of voluntary stage (the first stage) of deglutition, whereas the rapidly ascending phase was observed during the period of reflexive stage (the second stage). The average duration at the maximum position of rise was 0. 24 seconds. The descending phase appeared during the third stage of deglutition. Throughout these phases, the greatest time difference as related to aging, was noted in the slowly ascending phase. There were no notable time differences among the different age groups in the rapidly ascending phase and in the pause at the maximum position of rise. There were some differences among the different age groups in the extent of vertical laryngeal movement and in the time required for it. However, there were no notable differences in the extent of horizontal movement and in the time for the second stage among the different age groups.
著者
西川 泰次
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.544-575, 1962 (Released:2007-06-29)
参考文献数
35
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4

A decreased volume of voice and a marked narrowing of the vocal register by recurrent nerve paralysis as well as a loss of vocal cord tension and a phonetic disturbance in high-pitch voice by superior laryngeal nerve paralysis were noted in our experimental and clinical observations in the larynx of dogs and human subjects, In most of these cases, the unilateral vocal cord was found to be fixed in paramedian position, but the bilateral vocal cords became fixed in cadaver's position when the bilateral laryngeal nerve paralysis supervened or the external laryngeal muscles were removed. This fact is considered to be indicative that the external laryngeal muscles and the compensatory working of the contralateral laryngeal nerve have a great influence upon the voice and the status of vocal cord.Phonetical investigations in the waste of air, the volume of voice, the vocal register and the tone of voice in a variety of vocal cord diseases enabled the author to assume the status of vocal cord and its mode of vibration corresponding to a certain kind of voice.Sonographical examination of the voice of vowel“A”revealed that phonetic disturbance in the component resonance ranging from fundamental to 1000cps and in the neighborhood of 4000cps was the decisive factor in the cause of a hoarse voice and the abnormal voice which was chiefly encountered on vocal register change.