著者
村田 志朗 前坂 明男 宮崎 為夫 木下 弘治 北川 和久 田近 由美子 滝元 徹 加勢 満
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.655-664, 1978-07-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
23
被引用文献数
5 7

Nine hundred and fifty one cases of epistaxis were observed for the past 7 years. Epistaxis was observed more frequently in males than in females and was frequently observed in children.It occured more frequently from May to August, showing a peak in June.The negative correlation was observed statistically between the frequency of epistaxis and the atmospheric pressure.Hemorrhagic diathesis was examined in 114 cases. About 28 per cent of them showed abnormality, especially in the capillaly fragility.Children with nasal bleeding showed the tendency of disliking of foods containing vitamine C.
著者
神田 幸彦
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.8, pp.703-712, 2011-08-20
参考文献数
3

補聴器 (右耳) と人工内耳 (左耳) を装用する医師として243名の人工内耳手術を執刀医として経験したこと, 10年前に開業し人工内耳・聴覚リハビリ医療機関で行ってきた補聴器適合, 人工内耳と補聴器の聴覚リハビリテーションを通して筆者自身の難聴の経験と医療の現場を通して得られたことを振り返って報告した. 医学生時代の24歳から20種類以上の補聴器を装用, アナログからデジタル, そして最近では第3世代のデジタルも出現, ISP (統合信号処理) やFMなども進歩している. 使用してきた補聴器の利点を報告した. 一方, 人工内耳は2004年に補聴器非装用側に「より良い聴覚の獲得」を目的として, 以前留学していたドイツ・ビュルツブルグ大学で人工内耳手術を受けてきた. 現在6年が経過したが, 補聴器との両耳聴により, 騒音下・離れたところからの会話・早口の会話・音楽の聴取などがより改善された. 現在は左の人工内耳だけでも会話可能で装用閾値は20-30dB, 語音明瞭度 (67-S) は左人工内耳のみで95%, 騒音下 (S/N=0, 70/70) で90%である. 両耳聴では50, 60, 70dBSPLすべての提示音圧, 騒音下で100%となった. 人工内耳も最新の器機では聴取能アップが進んでいる. 筆者自身の難聴の経験, 聴覚の回復の過程, 患者としての心理, 補聴器・人工内耳の近来の進歩と人工内耳の未来について考察を加え報告する.
著者
Akihiko Nakamura Tadao Asai Kazuhiro Yoshida Kohtaro Baba Kimihiro Nakae
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.215-224, 2002-03-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
40
被引用文献数
12 10

アレルギー性鼻炎に関する全国疫学調査を行った. 全国の耳鼻咽喉科医師9471名およびその家族を対象とし, 1998年6月にアレルギー性鼻炎に関する質問用紙を郵送し, 同年9月末日までに回収した. 回収率は42.8%で, 17301名が対象になった. 年齢構成を日本人人口ものと比較すると調査対象者は20歳代がやや多く, 60歳以上特に男性に多い以外ほとんど差異はみられなかった.スギ花粉症の有症率は, 人口分布調整を行ったところ17.3%であった. 全体に日本海側, 瀬戸内地方に比べ太平洋側, 中部地方に高く, 高緯度あるいは低緯度地域で有症率は低かった. 年齢層別有症率をみると, 10歳代で急激に増加し60歳代になると低下した. スギ花粉飛散が多い地域で有症率が高く, 住環境に関しては郊外, 住宅地, 都会の順で高かった.スギ以外の花粉症についても同様に検討した. 年齢層別有症率および住環境と有症率との関係は, スギ花粉症とほぼ同様の結果で, 人口分布調整後の有症率は11.7%であった.通年性アレルギー性鼻炎の人口分布調整後の有症率は19.8%で, スギ花粉症に比べやや高率であった. 年齢層別有症率は, 5~9歳で急激な上昇がみられ, スギ花粉より若年者での発症が多く, 60歳以降での有症率の低下はみられなかった. スギ花粉症と異なり, 地域や住環境による有症率の差異はみられなかった.今回の調査は全国に住居する耳鼻咽喉科医師およびその家族を対象としており, スギ花粉症はもとより通年性アレルギー性鼻炎の地域による有症率の差異を知ることができた. また回収率も他のアンケート調査より優れており, 回答内容の信用度も高いため, 日本全国のスギを主としたアレルギー性鼻炎に関する疫学的調査として有用なものと思われた.
著者
Tadao Enomoto Takema Sakoda Yoshihiro Dake Akira Shibano Yuko Saitoh Masanori Takahashi Hideyo Sogo Yoshiaki Fujiki
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.102, no.12, pp.1311-1317, 1999-12-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

和歌山県下のスギ花粉症の現状を把握するため, 1321例の自然集団を対象として, スギ特異的IgE抗体をルミワードイムノアッセイシステムで測定した. その結果, クラス2以上の陽性者は30.9%であった. 過去の同様の調査, 13.9% (1985年), 18.3% (1990年) より明らかに増加していた. 性別では女性よりも男性に多かった. 年齢では20歳代に陽性者が最も多く, 加齢と共にその陽性率は減少した.スギ特異IgE抗体陽性率に及ぼす各種の環境要因について検討したが, 過去の調査では検討学的に有意差のでた項目で有意差はみられず, 陽性者増加の要因を明らかにすることはできなかった.
著者
立木 圭吾 竹中 洋 後藤 違也 西山 康之 水越 治 西村 武重
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.37-45, 1989
被引用文献数
6

We experienced 102 cases of facial bone fracture during 16 months of 1986 to 1987. These cases were analyzed statistically concerning causes, age and locations of the fracture.<br>These fractures have increased rapidly in number. The causes were classified into three types; occurrence during sport, traffic accident and fighting, which were equal in number. There were 85% males and 15% females in the patient cohort, which were concentrated at the ages of 10-20 years. A large part of the fractures was mostly consisted of maxillo-facial components (95%). These trends were similar to the previous report of our clinic (1972-1979). On the other hand, not only severe dysfunctioning cases but also complicated cases increased in number, so that the several clinical aspects were reported.<br>Case 1 : 17-year-old male presented with retraction of left cheek caused by Rugby foot ball, whose maler bone was dislocated backward and anticlockwise, was treated with oroantral reduction and with the intermaxillary packing of silicon blocks.<br>Case 2 : 10-year-old boy with complaint of double vision occured by head blow to right eye. Pure type blowout fracture of the orbital floor was presented, which was reconstructed by silicon plate from the incision of the lower eyelid.<br>Case 3 : 59-year-old male presented with 6 month history of diplopia and retraction of left eye ball, had been under the conservative care by an eye doctor. X-ray examination showed the intraorbital soft tissue was blown out into the ethomoidal sinus.However the transethomoidal reduction was performed, the result was not satisfactory.<br>Case 4 : 17-year-old female visited emergently with facial destruction by traffic accident. Bilateral mid-third fracture of the face and fractures of the mandibullar processes were found. In order to pull out the maxilla, silicon blocks were packed into the maxillary sinus and intermaxillary fixation with bite plate was tried.However, the maxilla was receded backward and "dish face" deformity was appeared.
著者
高倉 亨
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.749-763, 1972

1)研究屋的と実験方法平衡機能に対して,視器系,前庭迷路系および深部受容器系がどのような相関性をもつているかを検討するために,家兎の鼓室内に4%キシロカインを注入して迷路を一過性に麻酔したり,深層項筋群を1%プロカインで麻酔した時の視運動眼振触発態度の変化を主として眼振数の変動をもとに,迷路破壊術も加えて検索した.<br>2)結果および結論<br>(i)一側迷路麻酔では前庭性眼振の強さにより種々な反応態度を示し,常に前庭性impulseの影響を受けた.<br>(ii)両側迷路麻酔では前庭性筋緊張が低下して,四肢,頸筋の筋緊張が一過牲に低下し特異なを示し,視運動眼振は抑制され,特に網膜型眼振において著明であつた.<br>(iii)深層項筋群のprocainizationによる視運動眼振の解発態度は両側お路麻酔時に比して軽度であるが抑制が起り,迷路麻酔時と同様に網膜型眼振において著明であつた.<br>(iv)両側迷路を完全破壊すると,四肢およびが頸筋の緊張が低下するが時間の経過とともに次第に回復し,やがて過緊張が起り視運動眼振の解発も改善された.
著者
丹生 健一
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.7-14, 2011-01-20
参考文献数
6
被引用文献数
3 4

日本頭頸部外科学会が母体となり, 平成21年4月より耳鼻咽喉科専門医のサブスペシャルティーとして頭頸部がん専門医制度が発足した. 本制度の基本理念は, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科に関する熟練した技能と高度の専門知識とともに, がん治療の共通基盤となる基本的知識と技術, 医療倫理を併せ持ち, 頭頸部がんの集学的治療を実践する能力を養成することにある. 頭頸部領域はQOLに大きく関わっており, 外科的治療, 薬物療法, 放射線治療などを組み合わせた治療が行われることが多い. 頭頸部がん専門医には, そのチームリーダーとしての役割が求められる. 診断から終末期まで, がん治療の全相における幅広い経験や知識, 患者とのコミュニケーション能力, そしてコーディネーターとしての調整能力が必要である. 一方, 外科的治療は依然として頭頸部がん治療の大きな柱であり, その治療を自ら担当する頭頸部がん専門医にとっては最も重要な能力である. 専門医の認定にあたっては, 頭頸部がんの入院治療100例以上, 頭頸部がんの手術経験50件以上 (術者として) に加え, 外科的治療の基本である頸部郭清術を特に重視し, 頸部郭清術を助手として20側以上・術者として20側以上と, 必要経験症例数を決定した. さらに, これらの技術を集中的に学べるように, 5年間の頭頸部がん診療研修中, 頭頸部がんの年間新患数100例以上の指定研修施設で2年間の研修を行うことを義務付けている. 本原稿執筆時点で, 257名が暫定指導医として, 127施設が指定研修施設として認定された. 昨年9月には第1回頭頸部がん専門医認定試験が行われ, 165名が受験した. 本制度の発足が, 頭頸部外科を目指す耳鼻咽喉科医の増加, 大学・施設横断的な頭頸部外科医育成システムの構築, 頭頸部癌診療施設の集約化など, 頭頸部がん診療の今後の発展につながることを大いに期待している.
著者
河野 淳 博久 詠司 舩坂 宗太郎
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.884-894, 1996-06-20
参考文献数
27
被引用文献数
3 2

今論文では, 聾仔猫の蝸牛神経核細胞の成熟が, 慢性電気刺激によりいかなる影響を受けるか調べた. 対象は生後10日目聾の仔猫4匹で, 電極挿入後1000時間以上慢性電気刺激を行い, 実験終了時2-deoxyglucose (以下2DG) を静注45分刺激後, 蝸牛神経核の連続切片を作製し, 蝸牛神経核細胞体の面積を測定した. その結果刺激側の2DGの取り込みが見られた部位の神経細胞体面積は2DGの取り込みが見られない部位に比べ, 前腹側核, 後腹側核, 背側核のいずれにおいても大きく, 多くに有意差が認められた. つまり蝸牛内の慢性電気刺激により, 蝸牛神経核内の特定の部位が機能的活動性が増し, その部位に限っては慢性電気刺激が成熟期の神経細胞の成熟に関与していることが示唆された.
著者
樋口 博行
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1119-1128, 1971

(目的) ウサギの外眼筋の自己受容器に由来するインパルスを中脳被蓋部から誘導し, 視運動眼振解発機序解明の一端に資するため本実験を行った.<BR>(実験方法) 有色のウサギを用いて, 左側上丘経由で中脳被蓋部に色素充填微小電極を定位的に刺入, 単一神経活動を誘導した.<BR>ウサギの同側6外眼筋を剥離し, 刺激として20g~30gの張力を滑車を介してそれぞれの筋に与えた. 誘導部位は実験後誘導電極を通じて生体染色を行い組織学的に同定した.<BR>(結果) 562ユニットの外眼筋伸展に対する中脳被蓋部から誘導した単一神経活動中419ユニット (74%) は無反応で, 反応を認めたのは39ユニット (7%) に過ぎず, 104ユニット (19%) ではいずれとも断定できなかった. 反応を示した39ユニットのほとんどは, 傍水道中心灰白質外側縁から誘導された. 反応を示したユニットの各外眼筋伸展刺激に対する反応様式を個々に分類し, (i) 放電数増加型, (ii) 放電数減少型, (iii) 長潜時放電数増加型の3型とした. 反応を示した39ユニット中, 23ユニットは総ての外眼筋の伸展刺激に反応を示し, しかもそれぞれのユニットはいずれの外眼筋伸展刺激に対する反応も同一の反応型を示した. 10ユニットでは全眼筋の伸展刺激を行い, そのうち少くとも一筋に対する反応が確認されているが, 他の筋に対してはそれと異なる型の反応が認められているか, あるいはそれが疑われるものであった. 6ユニットでは6外眼筋中の一部の筋に対する試行しか観察できなかったが, 試みた刺激に対しては確実に反応していた.<BR>以上の結果から, 本実験で観察した外眼筋伸展刺激に反応を示すユニットは, いずれも外眼筋の自己受容器の刺激に対して反応したものと考えられたが, 自己受容器の求心性一次ネウロンから誘導されたものではないと考えられた.
著者
鈴木 幹男 小川 富美雄 北野 博也 矢澤 代四郎 北嶋 和智
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.879-884, 2000-08-20
被引用文献数
2 4

音刺激の聴覚野への交叉性投射を調べる目的で単音節刺激時の聴覚野脳活動をfunctional MRIを用いて検討した.対象は聴力正常な成人6名(右利き)である.1秒間に1個の単音節(95dBSPL)を呈示し,OFF-ONパラダイム(OFF;音刺激なし,20秒,ON;音刺激あり,20秒)を4回繰り返した.機能画像は1.5テスラMRI装置(GE社製Signa Horizon)でグラジエントエコーエコープラナー画像(EPI)として得た.EPIはワークステーション上でSPM99bを使用し解析を行い,聴覚野賦活部位を測定した.<br>予備実験としてEPI撮像時の騒音を測定した.ERI撮像時の騒音は97dBSPLであったが,MR対応のヘッドホンを使用することにより80dBSPLまで減少させることが可能であった.片耳単音節刺激により主に反対側の1次聴覚野,両側の聴覚連合野に広い賦活部位が観察された.賦活は一次聴覚野より聴覚連合野に著明であった.右耳に単音節刺激を与えた際は左聴覚野に,左耳に与えた際は右聴覚野に有意に広い賦活部位がみられた.このパターンは被験者全員に観察された.この結果から単音節聴取時の音情報は両側の聴覚野に入力されるが,刺激対側の聴覚野に反応が強く交叉性投射が確認された.撮像時の騒音を減少させれば聴覚刺激による反応をfunctional MRIで測定することが可能であり今後臨床応用できると結論した.
著者
柏村 正明 福田 諭 間口 四郎 樋口 栄作 犬山 征夫
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.254-259, 1995-02-20
被引用文献数
6 1

声門下喉頭癌27例について臨床的検討を行った. 5年生存率が44%と他の部位の喉頭癌に比べ不良であった. その原因として, 放射線治療後の局所再発率の高さが第一に考えられた. さらにsalvage operationの結果がT2で低く, 声門下喉頭癌の治療は他の喉頭癌より放射線治療の適応を厳しくし, 初めから手術を念頭においた治療計画が必要と思われた. またT1でも照射終了後の化学療法を考慮すべきと考えられた. また進行例では転移が多く初回治療後の化学療法の施行や, 喉頭全摘時の頸部郭清の施行により予後の改善に努めるべきと思われた. 縦隔への転移例は少なかったが実際にはもう少し多いと思われ, 慎重な経過観察が必要と思われた.
著者
綿貫 幸三 高坂 知節 草刈 潤 古和 田勲 西条 茂 小林 俊光 新川 秀一 飯野 ゆき子 六郷 正暁 柴原 義博 富岡 幸子 佐久間 眞弓 粟田口 敏一 三好 彰 荒川 栄一 橋本 省 大山 健二 原 晃 沖津 卓二 郭安 雄
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.766-776, 1982
被引用文献数
6

The laryngeal cysts were treated in 14 cases in our in-patient clinic during the last 9 years and 8 months between the April 1972 and the December 1981. The laryngeal cysts at the vocal cord were excluded in this study. The clinical, histological and some other findings of these cysts were briefly described. After some considerations regarding the origin and the developing mechanism of the cysts, a new classification of the laryngeal cysts was proposed as follows. <br>Laryngeal cysts. <br>1) Retention cysts: The cysts due to stenosis of the glands, their ducts, lymph vessels or other similar structures. <br>2) Epidermoid or dermoid cysts: The cysts due to stray germs, implantation or the result of down growth with separation and eventual isolation of a fragment of epidermis or dermis. They may also due to dysontogenesis of a foetal epithelial tissue. Dermoid cysts are extremely rare. <br>3) Cysts of a special origin: Branchiogenic cysts, thyroglossal duct cysts, and cysts of laryngocele origin.
著者
仁保 正和
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.703-708, 1981
被引用文献数
3

Maxillary sinus irrigation with a Schmidt's maxillary antrum trocar was applied to 47 patients with chronic sinusitis, including 2 with dental sinusitis, between the ages of 13 and 74 years; forty-six received the treatment 10 to 342 times, averaging 55 times in past 4 years; one received it 166 times in past 9 years.<br>Two patients with dental lesions were cured, and the others were not cured but their symptoms and findings were greatly improved.<br>It was observed that nasal obstruction due to sinusitis was chiefly related to the degree of stricture of the orifice of the maxillary antrum rather than to the changes of the nasal cavity. Frequent sinus irrigation may cure this stricture. The changes in the nasal cavity were improved, and rhinorrhea was decreased by this procedure. This treatment was superior to the other conservative treatments for chronic sinusitis.
著者
五島 史行 堤 知子 新井 基洋 小川 郁
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.113, no.9, pp.742-750, 2010-09-20
被引用文献数
2 9

めまい患者の身体症状とストレスに着目し調べることを目的とした. めまいの治療のため集団リハビリテーション治療を目的として入院した患者145例を対象とした. 今回作成した問診票を用いて調査した. 質問項目の内容は現在有している身体症状としてめまい, 頭痛, 不眠, 下痢, 便秘, 腹痛, 胸痛, 心臓がドキドキする, 息が切れやすい, 疲れやすいの項目, さらに現在感じているストレスの内容として仕事 (学業), 家庭内の問題, 社会に対して, 金銭面, 自分の健康, 生活環境, 近所づきあいの項目について数値評価尺度 (Numerical Rating Scale: NRS) によって回答するものである. また不安, 抑うつの程度, めまいによる障害度をHADS (hospital anxiety and depression scale), DHI (dizziness handicap inventory) にて評価を行った. 身体症状として疲れやすい, 不眠, 頭痛を多く認めた. これらの症状は抑うつや不安にしばしば認められる症状である. NRSにて数値化しためまいと頭痛症状の間には相関関係が認められた (R=0.48, P<0.0001). 今回の結果, めまい患者はめまい以外にもさまざまな身体愁訴を有していることが明らかになった. めまい患者の治療においてはめまい以外の身体症状に焦点をあて, 適切に症状聴取を行い対応していくことが必要である.
著者
小松原 幸子 花牟礼 豊 須田 佳人 春田 厚 笠野 藤彦 鹿島 直子
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.111, no.5, pp.412-415, 2008-05-20
被引用文献数
2 10

耳鼻咽喉科領域では, 脂肪注入術は, 主に声門閉鎖不全に対し行われる方法である. われわれは, 喉頭摘出後にボイスプロステーシス (PROVOX2<SUP>®</SUP>) を留置したがシャント孔が拡大し, 保存的には縮小困難であった症例に遭遇した. この症例に対し, 声帯内脂肪注入術を応用して, シャント孔周囲に脂肪を注入した. その結果, シャント孔の十分な縮小が得られた. これにより, ボイスプロステーシスを用いた発声が継続可能となった.
著者
岡田 隆平 角田 篤信 籾山 直子 岸根 有美 喜多村 健 岸本 誠司 秋田 恵一
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.115, no.8, pp.791-794, 2012
被引用文献数
13

困難な術式や新しい術式に際して術前に解剖体を用いて解剖学的理解を深めることは有意義であるが, 従来のホルマリン固定による解剖体では組織の硬化が強く, 術式に即して展開することが困難であった. Thiel法は1992年に発表された解剖体の固定方法で, 生体とほぼ同じ質感を維持することができ, 病原体による感染の危険性を伴わない. 本固定法で処理された解剖体は組織が柔らかく, 実際の術式に即したかたちで解剖, 検討することができ, 術前の解剖学的検討に有用と考えられた. 本法は他の解剖体固定法と比していくつもの有利な点があり, 術式検討に加え, 新しい手術機器の開発, 外科医の技術評価にも有用であると考えられる.
著者
杉田 麟也
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.432-440, 1973
被引用文献数
1

1. 目的:小脳疾患においては,いわゆる小脳症状が病巣と同側にあらわれ,しかも症状が著明であるために,診断はさほど困難ではないとも一般にいわれている.<br>このたび,われわれは,小脳症状は企図振戦以外には著明なものがなく,反対に神経耳科学的に興味ある小脳半球腫瘍を経験したので報告する.<br>2. 症例:K.S,23♂,:右利き<br>主訴:歩行障害,右耳鳴(ガーン)<br>現病歴:約5ヵ月前,全身倦怠感,38.5°C発熱.数日後より運動の後や,頭部前後屈時に右後頭部より項部の拍動性の痛みを覚え徐々に増強.3ヵ月前,海水浴後,3~4目間右耳鳴.約1.5ヵ月前,食思減退し,嘔気,嘔吐が発現,夕食後時に多い傾向.約20日前より歩行障害が発現.階段下降時着しく,ある時には転落.また右手がふるえ,箸を持てない,歩行時右足のスリッパが脱げる.2週前,舌を主とした雷語障害に気付く.<br>検査結果:右上肢企図振戦著明,V,VII脳神経症状,脳脊髄液;初圧140mmH<sub>2</sub>O,蛋白90mg/dl,Pa-ndy陽性,自発並びに注視眼振は,単に麻痺性というよりはdysmetricな水平性眼振,上方,下方,左方注視でいずれも水平性眼振,頭位検査で方向交代上向性,一部固定性眼振.頭位変換検査ではStenger法で下眼瞼向き垂直性眼振.視標追跡検査では追跡運動がsaccadic pursuit.視運動性眼振はfusion limitが著しく障害され,視運動性後眼振は左向きによく解発され,しかも時々firingしている.温度刺激眼振反応では右側外側半規管機能がやや低下.椎骨動脈写:脳底動脈はunrcllingし後下小脳動脈にごく軽慶のforaminal sign.<br>3. 考察<br>1) 小脳症状は企図振戦以外著明でなかった.すなわち小脳半球障害でも肝臓障害に似て無症状なことが少なくない.<br>2) 脳圧亢進がみられない.小脳半球の実質性腫瘍は一般に脳室を圧迫して早期から脳圧は上昇するというのが常識であるが,腫瘍の性質や部位,あるいは患者の年令によつては脳圧亢進をきたさないことが珍しくない.<br>3) 注視眼振がpareticプラスdysmetricで,小脳障害には特徴的なものであつた.これは眼筋の共同運動失調,あるいは眼筋自体の企図振戦と考えられる.<br>4) 視運動性眼振解発不良にもかかわらず,視運動性後眼振は非腫瘍存在測が優性なのに加わえてfiringを示し,前庭系に対する小脳の抑制の脱落現象を思わす所見がみられた.<br>5) 眼振はすべて非腫瘍存在側に向う傾向があり,破壊性病変においては,この考え方は正しいのではないかと思われる.
著者
山岨 達也 菊地 茂 八木 昌人 菅沢 正 原田 勇彦
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.41-50, 1992
被引用文献数
18 1

We studied 50 patients with acute low-tone sensorineural hearing loss (ALHL) who were examined at the Department of Otolaryngology, University of Tokyo, and followed up for 18 months or more. We investigated the prognosis of hearing loss within 3 months after onset, rate of recurrence during long-term follow-up, interval between the first and the second episodes of hearing loss or between onset and the time when the diagnosis of Meniere's disease was made, and factors affecting prognosis.<br>The results were as follows.<br>1. Within the initial 3 months of follow-up, hearing loss continued to fluctuate in 5 patients. In the remaining 45, hearing returned to normal in 34, improved without returning to normal in 6, showed no marked change in 4, and became worse in one.<br>2. In long-term follow-up, the recurrence of hearing loss without vertigo occurred in 16 patients, and 5 others were eventually diagnosed as having Meniere's disease. The average interval between the first and second episodes of hearing loss was 9.2 months, and the diagnosis of Meniere's desease was made an average of 27 months after onset.<br>3. Recurrence was not significantly related to the initial prognosis of hearing loss.<br>4. Within the initial 3 months of follow-up, the prognosis of hearing loss was significantly better in patients whose hearing loss at 1kHz was within 20dB, and tended to be better in females and in patients attending within one week of onset. Long-term follow-up showed that the rate of recurrence was significantly lower in patients aged 40 years or more, and tended to be lower in patients who visited the hospital within one week of onset or whose hearing loss at 1kHz was within 20dB.<br>5. There were no significant differences between patients with single and recurrent attacks with respect to sex, subjective symptoms, and results of the glycerol test and electrocochleography.<br>ALHL tends to recur without any relationship to the initial prognosis of hearing loss. Since it is still difficult to predict whether or not hearing loss will recur, long-term follow-up is necessary even in patients with good initial prognosis.
著者
坂田 英治 李 汝培 栄木 恭男 和田 昌士
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.75, no.7, pp.764-782, 1972

目的<br>中枢神経系,とくに天幕下領域や間脳における各種の疾患において,眼球運動の性状を精細に分栃し,検討することが診断上有力な役割を果すことが少なくない.<br>しかし乍ら従来は,このうち眼振にたいしては臨床家の注意は高まりつつあるが,眼振以外の自発性の異常眼運動については殆んど関心が普Eわれていない.<br>われわれは過去2年間に亘り,この問題に注目し研究をつづけてきたが,その病巣局在診断的意義と病態生理の一端を明らかにし得たのでご批判を乞う.<br>症例ならびに検査方法<br>病理解剖や手術•さらに精細な神経学的検索によつて診断を下し,しかもこの現象をみとめた症例101例を対象とした.<br>眼運動の記録は,電気的な記録法によつては不可能な注視痙攣や輻輳痙撃は映画に撮影し,その他にENGを用いた.<br>時定数3秒(原波形)ならびに0.03秒(微分波形)として,水平ならびに垂直誘導をおこなつた.EMGの混入やEEGの混入をこの現象と誤認しないよう,これらの同時記録もおこなつた.<br>結果<br>非眼振性•自発性の異常眼運動を1)調整困難性眼運動(a:固視振動,b:追越または低越性振動,c:羽攣性振動),2)間代性眼運動(a:電光運動,b:視性ミオクロニー),3)緊張性上眼運動(a:注視厘攣,b:輻輳痙攣)に分類し,整理•整頓した.<br>第1群はそれぞれ,17例,12例,27例においてみとめたが,おもに小脳疾患である.<br>第2群はまた,それぞれ23例,9例でみとめたが脳幹を中心とする錐体外路系障害例である.<br>第3群はまた,それぞれ7例,6例であり,上部脳幹を中心とする錐体外路系障害例においてみとめた.<br>この現象の病態生理学についても考察を加えた.