著者
高瀬 武典
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.15-24, 1988 (Released:2022-07-14)

組織イノヴェーションを研究する際に,従来の合理主義的組織モデルの限界が多く指摘されている.しかし,合理主義の克服をねらった反合理主義的経営理論もまた,現状ではその内部に合理主義的な要素を内包せざるを得ない.自己組織系として組織をモデル化するにあたっても,ただ反合理主義を唱えるのではなく,合理性と非合理性の拮抗がもたらすダイナミクスも内包した理論の構築がのぞまれる.
著者
豊嶌 啓司 柴田 康弘
出版者
全国社会科教育学会
雑誌
社会科研究 (ISSN:0289856X)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.1-12, 2016-11-30 (Released:2018-05-25)

本小論の目的は,社会科で育成される思考の操作を概念の活用と捉え,新たな事実判断の再構成として他者との関係構築思考を評価する問題の開発とその検証である。概念活用の思考評価では,概念的知識の活用による,他者との関係構築思考が重要である。そのための評価枠組みとして「学習者中心のデザイン」(LCD)の援用が有効であることを,指導と評価を通して実証的に明らかにした。成果は以下の3点である。1点目は,従前の社会科では活用としての思考評価は不十分であることを指摘した。2点目は,再文脈化つまり概念的知識の活用による社会科固有の関係構築思考についての評価問題を作成するための,具体的な11個の「足場かけ方略」及び問作スキルを明らかにした。3点目は,これらをもとに開発した評価問題を中学校社会科で実施し,その成果を検証した。その結果,我々が提案する「足場かけ方略」は,生徒が解答しつつ「新たに学ぶ」段階的な思考方略として,社会科の活用としての思考評価において有効であることを実証的に明らかにした。
著者
金井 壽宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.80-90, 1989 (Released:2022-07-14)

ネットワークは,理想型においては,階層性や専門性を奇妙に持ちこまない対等な相互依存関係である.懸案があると電話で呼び出すこともできるが,ネットワーク内の同輩が一堂に会する機会もありうる.そこでは,なんの遠慮もなく自由に発想を走らせ夢を翔ばせるような議論が生まれるのが理想である.そのような同輩間での懸案の真剣かつ共感的な議論を,ピア・ディスカッションと呼ぶ.その組織論的な意味を,「気づき」の共有や,集団レベルでの知識の生成として探るのが本稿の目的である.
著者
榊原 清則
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.71-79, 1989 (Released:2022-07-14)

職能制,事業部制,マトリックスと展開されてきた組織形態の変遷に新しい動きがみられる.それはサテライト組織(S型)とでもよぶべきネットワーク型の組織の台頭である.S型組織は「新しい成長戦略」の遂行の過程で現れてきたものであり,組織デザイン論にまったく新しい洞察を提供している.
著者
浅羽 茂
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.65-78, 1990 (Released:2022-07-14)

企業が長期的に成長するためには,既存事業の盛衰を越えて新規の成長機会を探索・実現しなければならない.本稿では,経営資源の蓄積に焦点を当て,企業と顧客との相互作用が生み出す産業の盛衰と企業成長のメカニズムを分析する.分析を通じて,既存事業の成熟化過程における経営資源のスラック化が企業の長期的成長にとって重要であることが主張される.さらに,企業の長期的成長の2つのパターンが導出される.
著者
金井 壽宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.46-59, 1990 (Released:2022-07-15)

組織研究における定性的研究方法には,多様なアプローチがある.本稿では,エスノグラフィーによって得られる多様な観察データに基づく比較ケース分析の方法論的奥行きを探る.ケースの選択における理論的サンプリングの意義,およびエスノグラフィーと臨床的方法の補完的相違についてもふれる.
著者
野中 郁次郎 紺野 登 川村 尚也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.2-20, 1990 (Released:2022-07-15)

組織にとって有意義な知識は,成員が能動的に関与した暗黙知と形式知の相互作用によって固有に獲得される.組織的「知の創造」は,知の共有化から概念化に至る集団の対話プロセスである.その実証分析とモデル化の手法としては発語行為やメタファーなどの言語行為に着目した創造的対話の内容分析が有効である.今後の組織研究はこれに基づく新たなかつ普遍的な組織的知の創造の方法論の探求に焦点を当てる必要がある.
著者
沼上 幹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.74-89, 1991 (Released:2022-07-15)

本稿の目的は,限られたデータから業界構造と企業の競争行動を解読する手法を開発することにある.具体的には,数量シェアを横軸に,金額シェアを縦軸にとったグラフから,業界の基本的な特徴と企業の競争構造を一歩ずつ読みとっていく.この手法の解読性能を明確にするべく,液晶ディスプレイ産業の事例が分析される.最後に,この手法のもつ意義と問題とを簡単に論じる.
著者
苅谷 俊宣
出版者
日本フランス語フランス文学会
雑誌
フランス語フランス文学研究 (ISSN:04254929)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.161-170, 2011-03-18 (Released:2017-08-04)

Ecrivain, poete, Antonin Artaud est aussi un epistolier digne d'attention. Ce qui caracterise sa correspondance, ce n'est pas la quantite, mais l'usage qu'il en fait. Curieusement, Artaud ne distingue pas ses lettres de ses oeuvres et publie de preference ses lettres. L'epistolaire n'est pas convoque pour son usage biographique mais comme production litteraire. Cette confusion entre la vie et l'oeuvre a toujours ete une problematique chere a Artaud. Sa carriere litteraire debute avec la publication de sa Correspondance avec Jacques Riviere (1924). Seulement, apres avoir accepte l'invitation de ce dernier a publier leurs missives comme oeuvre litteraire, Artaud lui reproche de <<chercher a mettre sur le plan litteraire une chose qui est le cri meme de la vie>>. Artaud souhaite que ses ecrits temoignent de chaque instant de sa vie, c'est pourquoi il publie regulierement des lettres. Cependant, de par leur nature fragmentaire, les lettres ne peuvent representer une realite totale, celle par exemple qu'Artaud des annees 1930 s'efforcera de retrouver dans l'esoterisme. Les oeuvres epistolaires d'Artaud des annees 1940 mettent en jeu cette contradiction, plutot qu'elles ne la resolvent. Dans les Lettres de Rodez (1946), Artaud denonce des complots contre lui, auxquels on ne trouve aucune reference exterieure. Alors que les lettres portent la mention de dates et de destinataires reels, tout est, pour Artaud, mensonger en dehors de ses ecrits. Les lettres d'Artaud sont donc une sorte de trompe-l'oeil. La realite ne s'exprime qu'au pied de la lettre. Il en est ainsi pour l'identie de poete. Artaud nous le demontre par sa lecture d'une lettre de Lautreamont (<<Lettre sur Lautreamont>>).
著者
桑田 耕太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-35, 1991 (Released:2022-07-15)

組織の長期適応を説明するためのキー概念として,「ストラテジック・ラーニング」の概念を導入し,そのプロセス・モデル,および意義について議論する.ストラテジック・ラーニングは,戦略行動をデザインする際の,基本的なものの見方・考え方を規定する組織の根源的知識が学習され,戦略的能力の刷新をもたらす組織学習である.それは,知識の有効性の評価を伴わない学習であり,戦略的知識蒸留過程を通じて行われる第2次学習である.
著者
榊原 清則
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.55-62, 1992 (Released:2022-07-15)

本稿では,企業組織のドメインをめぐる議論の概念的体系化を試みる.ここにドメインとは,組織体の活動の範囲ないしは領域のことであり,組織の存在領域を意味する.分析の結論として,ドメインの広がりを空間,時間,意味の広がりの三つの次元でとらえる,まったく新しい分析枠組みが提唱される.
著者
寒川 恒夫
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.56-61, 1992 (Released:2022-07-15)

柔道は,明治時代の初めに,嘉納治五郎がそれまでおこなわれていた柔術を,当時の欧米の中心的教育思想であった三育主義教育をモデルにして,独特の「近代教育的な日本のエスニック・スポーツ」に体系化しなおしたものである. 本論は,この柔道が国内に普及し,また世界に拡散して国際化してゆく過程を反省して,柔道が国際化しえた要因について考えようとするものである.
著者
沼上 幹
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.85-99, 1995 (Released:2022-07-15)

社会科学,特に経営学の領域でマクロ現象法則を確立できる可能性が非常に限られていることを,簡単なゲーム論の概念を利用して明らかにする.マクロ現象法則が確立困難であれば,法則定立的な実証研究の方法論が社会科学者に要求してきた信頼性・追試の可能性と外的妥当性という2つの評価基準が重要なものではなくなる.このような作業を通じて個別事例研究の擁護論を展開するのが筆者の最終目標である.
著者
宮川 健郎
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.62-72, 2006-01-10 (Released:2017-08-01)

子どもむけの落語の本(読み物、絵本、紙芝居)がいろいろ出版されている。このなかで、特に落語絵本について考えた。口伝えで可変的なテクストである落語は、落語絵本においては固定的なテクストとなり、「声の文化」としての落語が「文字の文化」になる。落語絵本は、小学校の国語教科書で学習材化もされている。落語の子どもむけメディアの横断の背後に見えてくるのは、文化の受け渡しの欲望とでもいうべきものである。

1 0 0 0 OA 笑談五種

著者
林屋正蔵 著
出版者
富山房
巻号頁・発行日
1910