著者
弓倉 弘年
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科
巻号頁・発行日
2007-03-22

本論文は、室町幕府管領であり河内・紀伊等の守護でもあった畠山氏を対象とした。畠山氏の家系を明確にし、河内・紀伊の支配体制を検討するとともに、内衆や奉公衆等の動向も加味して、守護の在り方や畿内・近国の様相を明らかにすることを目的とした。序章では、畠山氏の世襲分国である、紀伊・河内・越中の畠山氏に関する研究史を整理し、本論文の論点を示した。管領家畠山氏系図は、異同の多い諸系図類ではなく、本論文の成果をもとに作成した。第1部では、畠山氏の家督相続と紀伊の支配体制について論じた。第1章では畠山氏の当主交代について論じた。応仁の乱以降は、正守護か否かにかかわらず、義就流・政長流の当主交代を明確にすることを基本とし、両畠山氏の当主交代を明らかにした。第2章では、紀伊支配にかかわった守護代・奉行人等の検出を通して、紀伊の支配体制について論じた。「室町時代紀伊国守護・守護代等一覧」は、第1章・第2章の成果に基づいて作成した。第3章では某姓宣顕を例に、畠山氏の前に紀伊守護であった大内氏との間で、支配にかかわった人物に関係がないことを論じた。第4章では、応永25 年(1418)に発生した守護と熊野本宮との抗争を通して、守護の分国支配の脆弱さと、紀南の支配拠点南部について論じた。付論Ⅰでは、畠山満慶が満家の伯父ではなく、弟であることを論じた。付論Ⅱでは羽柴秀吉が紀伊を攻めた際の畠山式部太夫の人名比定について論じた。第2部では、畠山氏の分裂抗争の原因と、関係した内衆の動向、分国の状況について論じた。第1章では、畠山氏が義就流と政長流に分裂する原因が、畠山氏内部にあることについて論じた。嘉吉の変後に持国が一部近臣を重視した分国の支配体制をとり、従来の内衆を退けたことが、畠山氏分裂の原因であることを明らかにした。第2章では、畠山氏の紀伊における分裂抗争を、畠山義就と弥三郎・政長の時期について論じた。その際、奉公衆の湯河政春が、在地の理由により一貫して政長方を支持したことを明らかにし、応仁の乱における中央と地方との関係について論じた。第3章では、政長流の紀伊在国内衆である野辺氏について論じ、紀伊国人でないことを明らかにした。第3部では、守護畠山氏と、紀伊の奉公衆湯河氏・玉置氏・山本氏の関係について論じた。第1章では、山本氏が奉公衆に編成された時期、明応の政変後の湯河氏と山本氏の立場の違いについて論じた。明応の政変によって奉公衆の結合が崩壊したことを、紀伊においても明確にし、戦国期には山本氏が守護権力の一端を担っていた。
著者
朝岡 正雄 アサオカ マサオ
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.31-35, 2005-02

動きの正確な模倣は人間に固有の能力であり,他の動物には見られない.この能力が発揮される生理学的メカニズムは今日でも十分に解明されているとは言い難い状況にある.確かに,現代の科学技術を用いれば,空間内に展開される人体の運動の軌跡を正確にトレースしてそれを機械で再現することは可能であろう.しかし,スポーツにおける技能伝承の場では,他者の動きを学習者自身の身体で再現することが求められる.本論では,人間に固有の「動きの模倣」の方法を「なぞり」という視点から解説し,この延長線上に動きのイメージトレーニングが成立していることが示される.これによって,スポーツにおける想像力の役割とその重要性が明らかになれば幸いである.
著者
清登 典子 Kiyoto Noriko
出版者
筑波大学文藝・言語学系
雑誌
文藝言語研究. 文藝篇 (ISSN:03877523)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.128-122, 2001-10-31

一見すると叙景句と見える蕪村発句に、実は古典を踏まえての趣向が隠されており、その趣向を読みとることで、新しい解釈の可能性がひらけてくることについては、さきに「山の端や海を離るる月も今」の蕪村発句 ...
著者
酒井 英行
出版者
静岡大学人文学部
雑誌
人文論集 (ISSN:02872013)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.23-70, 2001-07-31

1 Sense of guilt of the hero for the girl in kobe is nothing but that for Naoko. 2 Hatsumi is the woman who makes the hero remember yearning in his boyhood, and feeling of fullness of those days is described by the vivid light of innumerable fireflys. 3 Through the relationship between Reiko and the hero, the relationship of reciprocal help, which is the most important theme of Noruuei no Mori, is described.
著者
鈴木 暁子 惠 明子 安村 明
出版者
熊本大学大学院社会文化科学教育部
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.65-74, 2020-03-24

Heuristics used in human decision-making are usually instinctually determined and can result in cognitive bias. People with developmental disorders are known to be particularly vulnerable to such cognitive biases. However, the relationship between these biases and developmental disorders in children has not yet been sufficiently established. Here, we created scenario tests with cognitive bias designed for children and sought to clarify the relationship between cognitive bias and autistic traits in children. Biased scenario tests designed for children were created and 25 6th graders (standard classes only) were asked to respond to scenario questions. We then examined the relationship between their responses and the Autism-Spectrum Quotient (AQ). Results showed that there was a relationship between specific cognitive biases and autistic traits. Specifically, total number of correct responses on the biased scenario test and severity of communication skill impairment were negatively correlated in both males and females, total number of correct responses on the biased scenario test and severity of social skill impairment were negatively correlated in males, and total number of correct responses cognitive reflection and imagination were positively correlated in females. These results show that autistic traits can be quantitatively evaluated using the cognitive bias scenarios we created.
著者
山田 千春
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.179-198, 2014-06-30

全専各連は,専修学校が学校教育法第1 条に規定されていないために起こる取り扱いでの格差を改善しようと,専修学校の1 条校化運動を推進してきた。それに関する議論は,専門学校を中心に行われているので,本稿では,高等専修学校に焦点を当て,筆者が北海道の高等専修学校の管理職に行った聞き取り調査をもとに,1 条校化をめぐる論点の整理を試みた。調査の結果,小規模校では,資格のある教員の確保や施設面での充実を義務付けられる点から専修学校のままを望んでいた。一方,中規模校では,教員数の増加や教育施設のより一層の充実を期待し,1 条校化を望んでいた。それらを踏まえて,高等専修学校の1 条校化をめぐる論点として,1,全専各連の1 条校化の要望と現場との間に意見のギャップがある点,2,格差の改善を優先するのか,教育における自由度を優先するかという点,3,教員資格の基準について,4,学園内における他の学校との関係性の問題,以上4 つの論点を見出すことができた。