著者
長谷川 順二
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.14, pp.7-31, 2015

『水経注』は、北魏当時の河川位置が詳細に記されている地理書である。特に変動著しい黄河においては北魏期および前代の前漢黄河の2 本の河道が記されているため、黄河変遷研究における最も重要な文献とされる。この時期を含む後漢から唐代にかけての黄河は800 年間に渡って大規模な変動が発生せず、黄河の「安流期」とされてきた。しかし近年は文献記述や環境史に基づく考察から、この時期においても黄河は氾濫や決壊を繰り返してきたという説が登場し、「安流期」の有無を巡って多くの専門家による議論が行われている。本稿では後漢から南北朝を経て唐宋に至る各時期の正史や『元和郡県志』などの地理書をはじめとした文献記述に加えてRS データおよび現地調査の成果を活用して、『水経注』に多く見られる記述の錯綜箇所を整理した上での北魏期黄河の河道復元を目指し、その第一歩として河南省濮陽市から山東省高唐県にかけての古河道復元を試みる。In the current changes in research on the course of the Yellow River, there is a theory thathas gained a lot of support over the years that there was no big change in the Yellow River for over 800 years from the time of the Eastern Han (後漢) dynasty to the Tang (唐) Dynasty. In recent years, however, this has been refuted, as it appears that, at that time, the Yellow River had experienced repeated flooding and collapse. Many experts have discussed this subject, but no definitive conclusions have been found.Using the results of remote sensing data analysis and field surveys, I reconstructed the course of the Yellow River during the Western Han (前漢) period. In this paper, which presents research not only based on the conventional literature, it is possible to re-consider the subject by taking into account new information, such as analysis of remote sensing data and the results of field surveys, to reveal the actual situation of the Yellow River during the Northern Wei (北魏) period. As a first step, I reconstruct the river channel of the Yellow River course in the Northern Wei (北魏) period from Henan Puyang City (河南省濮陽市) to Shandong Gao-Tang County (山東省高唐県), based on the description found in "Shui-jing-zhu" (水経注).
著者
高山 真策 植松 聖陽 秋田 求
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.25-29, 2014

自然植生下に成育するイヌガヤを材料にして,光条件が成育とアルカロイド組成の特性におよぼす影響について検討した.イヌガヤは,光強度(相対値)が弱く,多くの場合太陽直射光の20 %以下の環境で成育していた.イヌガヤの成育には光強度(相対値)が影響しており,樹高と樹径は光強度(相対値)と正の相関があった.また,樹高と樹径との間には高い相関があった.環境の異なる2地域(静岡県富士郡と沼津市)のイヌガヤを分析した結果,光強度が弱い環境に成育する静岡県富士郡のイヌガヤにはHHTが多く,光強度が強い環境に成育する沼津市のイヌガヤにはHTが多かった.アルカロイドの組成に光が関与することが考えられたので,太陽直射光下に成育する樹木個体を選抜し,太陽直射光の照射下にある南側(高照度環境)と太陽光がさえぎられて散乱光が照射されている北側の枝(低照度環境)のアルカロイド組成を比較した結果,前者ではHT,後者ではHHTが多かった.
著者
八木 浩司 丸井 英明 Allahbuksh Kausar Shablis Sherwali
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 : 地すべり = Journal of the Japan Landslide Society : landslides (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.335-340, 2010-11-25
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

パキスタン北部を流れるフンザ川右岸のアッタバードにおいて2010年1月初旬に幅1000m, 比高1000m, 斜面長1500mの規模で地すべりが発生し, 約4000万立方mの移動土塊がフンザ川河谷をせき止めた。移動体は, 青灰色細粒物質をマトリックスとした長軸方向で3-4mから10mに及ぶような岩屑層からなり, この移動体からさらに絞り出された細粒物質が地すべりマウンド上を泥流となって下流側や上流側に流れ下った。本地すべりによる犠牲者は死者19人で, そのすべてはこの泥流に巻き込まれたことによるものである。この地すべりダムは大きな岩屑層からなるため突然決壊の危険性は低いと考えられた。災害4ヶ月前に撮影されたALOS/PRISM画像の実体判読の結果, 谷壁斜面には前兆現象的な変位が認められた。このためヒマラヤなどの高起伏地域での河道閉塞を引き起こす大規模地すべりの事前把握のための衛星画像利用の可能性が示唆された。
著者
柴崎 直明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.267-282, 2015-09-25

2011年東北地方太平洋沖地震により引き起こされた,東京電力福島第一原子力発電所の深刻な事故から4年が経過したにもかかわらず,汚染水問題は解決していない.この問題は原発の廃炉作業のために解決しなくてはならないものの,かえって汚染水に関係する様々な問題が発生している.たとえば,原子炉およびタービン建屋に流入する地下水量を減らすための対策として運用されている地下水バイパスは,当初の想定よりも効果が低い.敷地付近の複雑な地質・地下水条件に関する調査や理解が不足して,東電や国が作成した水文地質断面図や地下水シミュレーションモデルは極めて単純なものになっている.そこで,福島第一原発敷地内の公開されたボーリング柱状図を活用して,主に泥岩や砂岩からなる大年寺層D_4の層相を解析し,局所的な範囲でも層相が大きく変化するとともに,地下水の流動状況を左右する可能性があることを明らかにした.また,福島第一原発の地質概要や汚染水のタンクの地盤問題,地質や地下水データの問題やそれに関係する地下水モデル解析の問題をレビューした.さらに,現在進めている建屋への地下水流入量削減のための地下水バイパスや凍土壁の建設,サブドレンの運用等に関する地質学的課題を指摘した.
著者
桧垣 伸次
出版者
福岡大学研究推進部
雑誌
福岡大學法學論叢 (ISSN:04298411)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.297-328, 2014-09
著者
塩谷 透
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大紀要 (ISSN:03854566)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.103-124, 2003-12-31

リューティはフォルクス・メールヒェンの独自性は個々のモティーフにではなく,それが語られる様式にあるとして,その様式の特性を表す様々な概念を提唱した。それによって彼が目指したのは,他の口承文芸のジャンルとの相違を,語りの様式を通して明確にすることであったが,同時に,一定の様式を持つものとしてメールヒェンを文学の一つのジャンルとして認知させることでもあった。その際,彼はヴォリンガーの抽象芸術についての理論に依拠した。ヴォリンガーは未発達なものと評価されていたエジプトの美術などを抽象衝動という観点から解釈し,稚拙と思われることが一つの様式の必然的な結果であり,ギリシアやルネッサンスの美術とは異なった基準で評価されねばならないと論じた。この美学は,同様の評価の下に置かれていたメールヒェンに対して,小説などに対するのとは異なる評価と理解の基準を構築することに努めていたリューティにとっても有効なものだったのである。
著者
Yuzuru Sato Daisuke Shimaoka Koichi Fujimoto Gentaro Taga
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
Nonlinear Theory and Its Applications, IEICE (ISSN:21854106)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.226-233, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1

We propose an extended framework of two dimensional neural field with network between distant cortical areas as a model of global brain dynamics, and the models whose geometry of the neural field changes depending on the field dynamics as a model for growing brains. As a characteristic pattern with non-local and network interactions in neural field, pulser and memory are constructed. Possible applications to quantitative measurements of cortical activities of mouse and human brain development are briefly discussed.

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著者
前田多門 著
出版者
選擧肅正同盟會
巻号頁・発行日
1935
著者
望月 賢二 Solomon Gultneh
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.421-427, 1989-03-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
2

熊野灘および南シナ海で採集された標本をもとにスズキ科PercichthyidaeのノコバスミクイウオSynagrppsspinosusを西部太平洋から初めて記録した.本種はこれまでメキシコ湾からの原記載とスリナム沖からの標本によって知られているだけであった.そこでこれらをふくむ西部大西洋で採集された標本を調べ, 西部太平洋産の標本と比較した.その結果, 両者の間に重要な違いはなく, 同一種であるとの結論を得た.本種の形態的特徴は以下の通りである.腹鰭棘, 唇鰭第2棘, および第1背鰭第2棘の各前縁に明瞭な1小棘列を有する.第2背鰭棘に小棘列がない.磐鰭が2棘7軟条 (稀に8軟条) である.第1背鰭が9棘, 第2背鰭が1棘9軟条である.側線鱗数は29-31である.下顎側部に4-7本の大犬歯状歯列があり, そのすぐ外側に1列の微小歯列がある.脊椎骨は10+15である.本種はこれらの形質の組合せにより本科の他種と容易に区別できる.本種は底魚類の一種で, 主に100-500m水深の大陸棚および同斜面上部から底曳網類により採集されている.また, 本種の西部大西洋と西部太平洋という大きく隔たった分布について, 第三紀における海洋構造の変遷や気候の変化との関係で議論した.
著者
田沢 裕賀
出版者
東京国立博物館
雑誌
Museum (ISSN:00274003)
巻号頁・発行日
no.654, pp.25-35,3-6, 2015-02