著者
山岡 伸 小山 達也
出版者
青森県立保健大学
雑誌
青森保健医療福祉研究 = Aomori Journal of Health and Welfare (ISSN:24356794)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.8-12, 2020-12-04

[目的] 現在,食事調査は日々の食事の栄養価などの食事摂取状況を把握するために行われている。しかしながら,食事からの栄養価の算出は第二次世界大戦以降の人々の食事を対象としている場合が多く,それ以前の時代の人々の食事はほとんど対象にされていない。したがって,古文書などの史料から,昭和初期以前の食事の栄養価の算出を試みようとした研究はほとんどない。そこで,本研究では,江戸時代における弘前藩の史料である[年中行事御祝献立並三方等御飾]に記載されている食事の描写から栄養価の算出を試み,その結果から,江戸時代の史料が食事の栄養価の算出のための新たな既存資料として利用できるか栄養価の算出方法の検討を行った。[方法] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から一部料理を抜粋し,日本食品標準成分表2015年版(七訂)を用いて,雑煮,田作り,数の子,うちまめの栄養価を算出した。[結果] [年中行事御祝献立並三方等御飾]から食事の栄養価を算出することができ,雑煮のエネルギーは446kcal,田作りは81kcal,数の子は49kcal,うちまめは46kcalと推定された。[結論] 本研究で算出した各料理の栄養価は,現代の食事調査法の1つである写真法によって栄養価を算出された結果に相当すると考えられる。したがって,江戸時代などの史料からの食事の栄養価の算出は,現代の食事調査の知識を活かすことで可能となることが示唆された。
著者
原田 信之
雑誌
新見公立大学紀要 = The bulletin of Niimi College
巻号頁・発行日
vol.38-1, pp.1-12, 2017

玄賓(七三四~八一八)は南都法相宗興福寺の高僧であったが、備中国(岡山県)や伯耆国(鳥取県)など、隠遁した地で寺院を建立していたことが知られている。伯耆国に関するものでは、『日本三代実録』に伯耆国会見郡で阿弥陀寺を建立したことが記されているが、その場所がどこであったのかは未だにわかっていない。玄賓が伯耆国会見郡に建立した阿弥陀寺の場所については、これまでに伯耆大山建立説と伯耆賀祥建立説が提示されてきた。寛保二年(一七四二)成立の『伯耆民諺記』、安政五年(一八五八)編纂の『伯耆志』会見郡分などの地誌類に加え、地域に伝わっている文献や伝承を調査した結果、玄賓が伯耆国会見郡に建立した阿弥陀寺の場所は、伯耆賀祥(鳥取県南部町賀祥)であった可能性が極めて高いことがわかった。伯耆大山には玄賓の伝承は伝わっていないが、伯耆賀祥には玄賓が豊寧寺(伯耆三十三札所第三番。法寧寺、保寧寺、宝念寺とも。阿弥陀寺があった地とされる)と白山権現を草創したとの伝承があり、その地には「あみだいじ」という地名が残っている。
著者
吉田 敬一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.19, no.8, 1978-08-15
著者
山田敦
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.190-197, 2015-07-15

ビッグデータから競争優位を構築するために,多くの企業がアナリティクスの活用を進めている.優秀なデータサイエンティストを多数獲得・育成できれば,果たして成果を生み続けられるのだろうか.これまで数多くのお客様に対してアナリティクス活用の支援をしてきた筆者は,アナリティクスで継続して成果を生み出すには,企業は組織としての仕組みを持つべきであると考える.そう考えて筆者が実践してきたことを,本稿で,企業の仕組みとしてまとめた.この仕組みは,(1)データ活用プロセス,(2)データ基盤管理,(3)意思決定と運用管理の3つから構成される.
著者
丸山宏 神谷直樹 樋口知之 竹村彰通 大西立顕
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.223-229, 2015-07-15

ビッグデータ利活用の主要なボトルネックの1つが人材不足だといわれている.我が国におけるデータサイエンティストの育成を加速するため.我々は文部科学省委託事業「データサイエンティスト育成ネットワークの形成」を2013年に開始した.本稿では,この事業を推進する上で見聞きした,さまざまなデータサイエンティスト育成の取り組みと,データサイエンティストを実際に組織の中で活かしていく取り組みについて,ベスト・プラクティスとして紹介する.
著者
河本薫
雑誌
デジタルプラクティス (ISSN:21884390)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.183-189, 2015-07-15

本稿では,企業の中で分析専門家として歩んできた15年間の経験をもとに,データ分析を単なる分析で終わらせずにビジネスに貢献するに至るには,分析力やIT力に加えて具備すべき能力があることを述べる.具体的には,意思決定の解決につながるような分析問題を設定する力,意思決定者が納得する解を導く力,また,人間の思考力と分析結果を融合させる環境を作る力が必要であるという持論を述べる.
著者
小林 睦
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
Artes liberales (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.1-16, 2008-07-07

本稿の目的は,ハイデガーにおける「生命」概念を理解するために,彼の思索と生物学との関係を整理・検討してみることにある1)。これまで,ハイデガーと生の哲学との関係については多くの議論がなされてきたが,彼の哲学と生物学との関わりについては,あまり語られることがなかったように思われるからである。 そのためには,ハイデガーがその著作や講義録で行なっている,必ずしも多いとは言えない生物学への言及を手がかりに,彼が当時の生物学によって提案されていた主張をどのように評価あるいは批判していたのか,また,彼がその生物学からどのような影響を受けていたのか,を明らかにする必要がある。 哲学者としてのハイデガーは,アリストテレス研究から出発して,その思索の途を歩み始めた。このことを考慮するならば,彼の生命観を理解するためには,アリストテレスの「生(ζω´η)」概念から引き継いだものを無視することはできない。周知の通り,アリストテレスの生命論は,歴史的に見て,「生気論」の古典的かつ代表的な形態であるとみなされている。 「生気論(Vitalism)」とは,生命現象には物質には還元できない本質(生気)が伴っており,環境に適応するための合目的性は生命そのものがもつ自律性にもとづく,とする立場である。それは,「機械論(Mechanism)」のような,生命現象がそれを構成する物質的な諸要素が組み合わされることによって生じ,物理−化学的な諸要素に還元することができる,と主張する立場とは真っ向から対立する。生命の本性をめぐる解釈の歴史は,こうした生気論と機械論とが互いにその正当性を主張しあう論争の歴史であったと言うことができよう。 アリストテレスの場合,生命における可能態(δ´υναμις)としての質料を,現実態(εʼντελ´εχεια,εʼν´εργεια)へともたらすものが,形相としての「魂(ψυχη´, anima)」である。魂の定義は多義的であるが,その本義は,〈生きる〉という活動─栄養摂取,運動,感覚,思考─の原理として規定されており,植物・動物・人間などの違いに応じて,魂はその生命活動を具現化する形相にほかならない,とされる2)。 こうした思想を熟知していたハイデガーは,アリストテレスと同じく何らかの「生気論」に与するのだろうか。それとも,同時代の生物学において有力であった「機械論」的な発想に理解を示すのだろうか。あるいは,そのいずれとも異なる第三の生命観を主張するのだろうか。 以上のような問題意識にもとづいて,本稿ではまず,(1)ハイデガーによる生命への問いが何を意味するのかを整理する。次に,(2)ハイデガーが機械論的な生命観に対してどのような態度をとっていたのかを確認する。さらに,彼が「生物学における本質的な二歩」を踏み出したとみなす二人の生物学者──ハンス・ドリーシュとヤーコプ・ヨハン・フォン・ユクスキュル──について,(3)ドリーシュの新生気論に対するハイデガーの評価,および,(4)ユクスキュルの環世界論とハイデガーとの関係,をそれぞれ検討する。その上で,(5)生気論と機械論に対するハイデガーの批判を振り返りつつ,動物本性にかんするハイデガーによる意味規定を分析する。最後に,(6)ハイデガーにおける反進化論的な態度が何に由来するのかを考察し,その思想的な特徴を確認した上で,本稿を閉じることにしたい。
著者
脇本 敏裕 宮川 健
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1-1, pp.201-205, 2020

剣道は面を着用していることや稽古および試合中に不規則的な動きをするため,生理学的な測定が難しく実測が行われた研究は少ない.剣道稽古中の呼吸波形や呼吸循環機能についての研究は散見さ れるが,剣道稽古中のエネルギー消費量,呼吸代謝応答の実測を行った研究は少ない.本研究では, 剣道の試合形式の稽古を行った際の呼吸代謝応答を実測し生理応答を明らかにするとともに自転車エ ルゴメーター運動との差異を検討することを目的とした.対象は K大学剣道部に所属する剣道鍛錬者の男性5名,女性5名とした.自転車エルゴメーターを用いた最大酸素摂取量の測定,および試合を想定した剣道稽古中の心拍数,呼吸代謝応答を測定した.剣道稽古中の呼吸代謝応答は面金の下半分 を切り取った面を用い,フェイスマスクを介して背中に背負ったダグラスバッグに呼気ガスを採取して行った.剣道稽古中の呼吸代謝応答を,剣道稽古中と同一心拍数における自転車駆動時の呼吸代謝応答と比較した.酸素摂取量は剣道稽古中:26.1±5.6ml/kg/分,自転車駆動中:22.0±6.4ml/kg/ 分で有意な差が認められた(p<0.05).換気量は剣道稽古中:32.0±10.3L/分,自転車駆動中:26.0± 10.9L/ 分で有意な差が認められた(p<0.05). METs は剣道稽古中:7.5±1.6METs,自転車駆動中:6.3±1.8METs で有意な差が認められた(p<0.05).剣道で打突時に発生を伴わなければ一本にはならない.この剣道特有の呼吸や発声が,同一心拍数での呼吸代謝応答の違いの原因ではないかと考えられる.
著者
CVIM研究会運営委員 同僚・友人一同
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.18(2004-CVIM-148), pp.19-26, 2005-03-03

2005 年1 月3 日朝,松下電器産業の長尾健司氏が永眠されました.優れた研究者であり,様々な学会で活躍されていた方だけに,多くの方々から彼を惜しむ声が聞かれます.しかし,悲嘆に暮れるだけでは,彼も本望ではないはずです.CVIM研究会運営委員会では,彼の優れた研究業績や人柄を多くの方々に知って頂くため,本稿の発行を決定いたしました.幸いにして多くの方々からの資料提供や寄稿が得られ,彼の生きた証の一端を綴ることができました.
著者
廣田 浩治
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.223-247, 2003-03-31

公家権門の家領を支配する担い手に、家僕を中心とする家政機構がある。中世後期の九条家の家僕は、「御番衆中」「境内沙汰人」などといわれ、諸大夫級と侍身分の家僕から成る。中世前期以来の家司が脱落する過程で、九条家家門との主従関係を強めた家僕が残り、家門が侍身分の家僕までも直接統括する体制に変質した。家門と家僕の関係は家と家の関係という性格が強まり、中世後期の九条家家僕の構成は九条政基・尚経期に一定の確立をみた。中世後期の九条家領荘園といえば日根荘がよく知られる。が、同家領はそれだけでなく、畿内・西国に複数存在し、また九条家関係の寺院の所領も畿内・西国に広がり、所領支配の面で九条家への依存度を強めた。特に寺院所領の錯綜する東九条御領(境内)では九条家「本役」賦課体制をとり、寺院所領の家領化が進んだ。家領支配に当たっては諸大夫級の家僕が奉行、侍身分の家僕は主に上使に任じた。当該期の荘園支配の本質はあらゆる手段を講じてできるだけ多くの収納を実現することにある。このため奉行・上使はしばしば家領に下向し、代官・在地勢力の離反を防ぎ、「案内者」を起用して荘務の協力者とした。家僕相互にも荘務遂行の下向経費捻出や給分保障の点で依存関係があり、これが家領相互の並行支配を支えた。また家僕には金銭の「秘計」「引替」の能力も求められた。日根荘のように家門が下向して直務支配を行う場合には、家門と複数の家僕(奉行―上使)による支配機構が整備される。政基の日根荘支配は複数の家僕に支えられ、また家門―家僕の主従関係は荘内の寺僧などにも広げられた。政基の支配は京都東九条の尚経を頂点とする他の家領支配とも関連しており、孤立したものではなかった。中世後期の九条家は家僕編成の主従制を強化したが、地域領主化したのではなく、公家権門として家僕の荘務を基盤に複数所領の収納維持を志向したのである。
著者
野村 直之 高橋 一裕
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第41回, no.人工知能及び認知科学, pp.75-76, 1990-09-04

言語学・工学の諸分野では慣用句および類似の術語の指し示す概念は一定していないようにみえる。市販の辞典によれば慣用句とは「二語以上が結合し、または相応じて用いられ、その全体がある固定した意味を表すもの。『油を売る』」とされ、またidiomとは、「全体の意味が各単語の意味を組み合わせて得られるのではなく、独特なもの;例"in the soup" 『困って』」とされる。これらは、いずれも計算言語学の言葉で言えば「構成性(compositionality)が成立しないこと」に注目した定義になっている。しかし、現在工学分野では明らかにこの定義とは異なる扱いもみられる。そこで、本稿では慣用性を互いに独立な3軸によって定義する枠組を提案する。慣用表現の定式化は意味解析システムの解析精度を高め、さらに解析結果の意味構造を適切に定義することに貢献する。特に、ある語彙が慣用句であるか否かの線引きを迫られるという意味で『大規模な』 自然言語処理システムの構築に対して、有益な示唆を与えるものと考えられる。この他、自然言語からの知識獲得や、外国語学習者のためのCAIシステムの効率的な設計や教材内容そのものへの応用が考えられる。