著者
小島 奈々恵 大田 麻琴 高本 雪子
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.6, pp.71-85, 2006

大学生にとって,恋愛はとても関心の高い問題であり,恋愛における告白は恋愛関係を開始する上で重要なきっかけとなる.本研究では,恋愛における告白の成功・失敗の規定困について検討した.先行研究に習い,使用した規定因は,知り合ってから告白までの期間,告白時間,告白場所,告白方法,告白内容,告白時の相手の交際状況,交際行動であった.自分の恋愛感情に対する相手の気付きや,相手との年齢差をも新たに加えた.また,告白結果に最も影響を与えると考えられる告白者の魅力を個人特性として新たに加えた.知り合ってから3ヶ月末満に夜から深夜の時間帯に告白をしていること,二人で遊びや食事に行くなど二人きりになる交際行動を経ていること,告白時に交際の申し込みをはっきり伝えていることが,恋愛における告白の成功者のパターンであることが示された.Love is a high interest issue for university students, and confessing one's love is an important trigger to start a love relationship. The purpose of this study was to find the factors influencing success and failure of confessing one's love. As in the preceding study, factors used were the time needed until confession, the time of confession, the place, the method, the content, the kind of relationship the partner was involved in, and the kind of acts. Newly added were the partner's notice of the confessor's love and the age difference. Also, the confessor's attractiveness thought to give the most influence to the result of the confession was newly added as a personal trait. As a result, the confessor who was successful had confessed one's love within 3 months since the acquaintance with the partner between night and mid-night, had made time to be alone together by going out together or by going out for a meal together, and had made a proposal for a relationship at the time of confessing one's love.
著者
小島 道裕
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.113-134, 2004-03-01

永禄六〜七年(一五六三〜四)の旅行支出簿である表題の資料は、当時の旅行の実態や、都市的な場、そして物価やサービスの価格についての豊富な情報を含んでいる。これについては既に一度史料紹介を行ったが、地名比定は大幅に改善することができるようになり、また関係史料との比較などから、内容についても分析を進めることが可能になった。醍醐寺の僧侶と思われる記者の目的は、同じ醍醐寺の無量光院院主堯雅の東国での付法と関係があり、帳簿の一部で支出が見られない部分は、堯雅の滞在先とほぼ重なる。すなわち、帳簿に空白部分があるのは、関係する真言宗寺院を用務で訪ねていたため、支出の必要がなかったものと考えられる。それ以外の部分ではほとんど旅籠に宿泊しているが、旅籠代がかなり一定していることをはじめ、他の料金にもサービスの量に応じた相場があったものと思われる。このことは、広汎な旅行の需要と供給の結果としか考えられず、当時既に、経済的関係のみで旅行を行うことが可能なシステムが存在していたと見なせる。また、旅籠代はかなりの部分で一泊二食二四文であるが、これは一五世紀初めの史料とも一致し、その他の料金にも大きな変動がないものがある。本史料は、長期的な価格変動の検討にも道を開いている。旅籠や昼食を提供しているそれぞれの場について見ると、外来者向けのサービスを自立したものとして持っており、近世に引き継がれたものも多い。近世の交通体系は、このような中世段階で自然発生的に成立していた旅行のシステムを前提にしてできたものと言うことができる。
著者
小嶌 慶太 青木 真彦 石井 智 田村 光 小島 正夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.625-629, 2013-03-31 (Released:2013-06-07)
参考文献数
18

巨大な直腸異物の2例を経験したので報告する。症例1は65歳,男性。肛門痛,腹痛を主訴に近医を受診し腹部単純X線写真上,約30cmの針金を腹部に認め当院に紹介された。腹膜刺激徴候は認めず,CTでは腹腔内遊離ガス像およびS状結腸内に靴べらとS状結腸壁を貫通する針金を認めた。同日緊急手術を施行したところ,針金はS状結腸壁を貫通しS状結腸間膜内に迷入していた。靴べらはS状結腸内に認めた。靴べらと針金は経肛門的に摘出した。穿孔部位を含め腸管切除を施行した。術後13日目に退院となった。症例2は58歳,男性。主訴は直腸異物の摘出困難。CTで直腸からS状結腸に棒状異物を認めた。穿孔所見もなく,腰椎麻酔下に異物を鉗子で摘出した。術後1日目に退院した。直腸異物では腹部症状も軽度にあらわれる可能性があり,治療方針決定においては詳細な病歴聴取,理学所見,そして画像診断も重要であることが認識された。
著者
小島 彩子 佐藤 陽子 橋本 洋子 中西 朋子 梅垣 敬三
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.141-145, 2010 (Released:2010-09-10)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

最近の野菜の栄養価が低下しているという情報が流されている。こうした情報は,単に日本標準食品成分表(食品成分表)の収載値を引用して比較しているが,食品成分表では改訂ごとに分析方法が変更されていることは考慮されていない。このような情報における分析方法の関与について検証する目的で,ビタミンC(VC)に焦点をあて,9種類の野菜のVCを,これまで食品成分表で使用された3つの分析方法,すなわち滴定法(I),比色法(II),HPLC法(III)を用いて比較した。ホウレンソウ,コマツナ,ニンジンのVC含量はI>II>IIIのように明確に年代順に低下した。この実測値の変動は,食品成分表におけるVC収載値の変動とよく一致していた。トウガンのVC含量は食品成分表収載値の変動と同様に方法IIによる実測値が他法よりも高かった。いくつかの野菜では,食品成分表におけるVC収載値の変動が分析方法だけでは説明できなかったものの,全体としては,実測値の変動は食品成分表の収載値の変動とよく一致していた。以上の結果より,過去の食品成分表のVC収載値の変動に対して,分析方法の違いがある程度は影響したことが示唆された。(オンラインのみ掲載)
著者
丸茂 喜高 清水 勇介 竹内 亮佑 綱島 均 小島 崇
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.80, no.817, pp.TL0280-TL0280, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

This study proposes a driving assistance system to inform the notch operation timing for train drivers. The assistance system indicates visually the notch-off position where the driver releases the accelerator. The notch-off position is calculated by the present vehicle acceleration, velocity and position by assuming the constant acceleration. The assistance system also indicates the brake onset and the predicted stopping positions. Two experiments are conducted by using the train-driving simulator. One experiment examines the effects of the notch-off and brake onset timing on the vehicle velocity and the running time. The assistance system makes it possible to adjust the vehicle velocity and the running time. The other experiment examines the three running patterns by combination of the notch-off and the brake onset positions. With the time recovering pattern, which is combination of the higher notch-off velocity and the later brake onset timing, the assistance system realizes the shorter running time in comparison with the standard running pattern. With the energy saving pattern, which is combination of the lower notch-off velocity and the later brake onset timing, the assistance system prevents the time delay by the later brake timing even if the velocity is lower than the standard running pattern.
著者
二宮 祐 小島 佐恵子 児島 功和 小山 治 浜島 幸司
出版者
独立行政法人 大学改革支援・学位授与機構(旧 大学評価・学位授与機構)
雑誌
大学評価・学位研究 (ISSN:18800343)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.1-25, 2020-03-01 (Released:2020-03-30)
参考文献数
14

本論の目的は,「第三の領域」と呼ばれる分野で働く新しい専門職のキャリアと職務に関する意識に関して,ファカルティ・ディベロッパー,キャリア支援・教育担当者,インスティテューショナル・リサーチ担当者,リサーチ・アドミニストレーション担当者,産官学連携コーディネート担当者を事例として取り上げて,聞き取り調査の結果を分析することによって明らかにすることである。各分野で概ね共通して認識されていることは次の通りである。任期付雇用のために,必ずしも十分には目標を達成することができず,職能形成にも課題がある。また,求められる知識・スキルが多様であること,専門とは異なる仕事を任されること,そもそも仕事の目標さえ曖昧であったりすることゆえに,何が評価の対象とされているのかがわからず,専門職としてのアイデンティティが揺さぶられている。他方,裁量を発揮することは可能であり,やりがいを感じることもある。
著者
小畠 正夫 小島 峯雄 足立 信幸 天野 和雄 亀谷 正明 川出 靖彦 宇土 一道 清水 勝 高橋 善弥太
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.196-201, 1977-03-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
18
被引用文献数
2

HBs抗原持続陽性の夫から感染し,結婚後3カ月で発症したと思われる劇症肝炎の1例を経験したので報告する.症例は23歳,女性.黄疸,輸血,アルコール常用等の既往はなく,家族にも黄疸および肝疾患は認めない.発症前3カ月に結婚.昭和51年1月13日,感冒様症状出現.18日より黄疸,意識障害をきたし,19日当科入院.HBs Ag陽性.入院後4日目に死亡.剖検にて広範な肝細胞壊死と出血を認めた.ところで,夫はHBs Ag陽性の肝硬変として入院加療を受けたことがあり,e抗原も陽性だったため家族調査を施行したところ,母親および検索し得た同胞はすべてHBs Ag陽性で母親にはe抗原も証明した.以上より夫から妻(症例)への水平感染が推定される劇症肝炎の1例と考えた.
著者
矢部 信成 村井 信二 横瀬 崇寛 尾戸 一平 吉川 貴久 北里 憲司郎 清水 裕智 小島 健司 水野 達人 大久保 恒希 味生 洋志 池谷 仁美 林 量司 中村 雄二 浅野 朗
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society Kanto Chapter
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.184-185, 2015
被引用文献数
3

Transanal rectal foreign bodies are foreign items retained in the rectum following direct insertion through the anus. In general, the treatment strategy is to attempt endoscopic removal of the foreign body through the anus. At our hospital, there were 4 cases of rectal foreign bodies during the 4-year period from April 2010 to March 2014, and the foreign bodies were removed endoscopically in all the cases. All the patients were male, with a median age of 22.5 years (16 to 87 years) . Their motives for the foreign body insertion were sexual preference in 2 cases, amusement in 1 case, and habitual practice to induce defecation in 1 case. The foreign bodies found were vibrators in 2 cases, the plastic cap of an nasal spray in 1 case, and a toothbrush in 1 case. In all the cases, the removal was carried out under intravenous conscious sedation. The instruments to be used for the removal procedure were determined according to the case. Non-invasive procedures for the removal of transanal rectal foreign bodies are greatly beneficial for the patients.
著者
辻内 琢也 扇原 淳 桂川 泰典 小島 隆矢 金 智慧 平田 修三 多賀 努 増田 和高 岩垣 穂大 日高 友郎 明戸 隆浩 根ケ山 光一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、「帰還か移住か避難継続か」の選択を迫られる原発事故被災者が、今後数年間で安心して生活できる新たな居住環境をどのように構築していくのか、現状と問題点を明らかにし、「居住福祉」に資する心理社会的ケアの戦略を人間科学的学融合研究にて提言していくことにある。「居住は基本的人権である」と言われるように、被災者が安心・安全に生活できる基盤を構築するためには、内科学・心身医学・公衆衛生学・臨床心理学・発達行動学・社会学・社会福祉学・平和学・建築学・環境科学といった学融合的な調査研究が欠かせない。応募者らは2011年発災当時から被災者支援を目指した研究を継続させており、本課題にてさらに発展を目指す。
著者
加藤 泰史 高木 駿 馬場 智一 小島 毅 納富 信留 建石 真公子 芝崎 厚士 後藤 玲子 杉本 俊介 田坂 さつき 柳橋 晃
出版者
椙山女学園大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本総括班は、「領域運営調整会議」「ジェンダー学会議」「評価会議」を主導的に開催することで、本領域研究を適切に遂行できる環境と条件を整えると同時に、Web上にHPを作成して研究成果を各計画研究班で共有できるように工夫したりその都度社会に向けて発信したりできるようにする。その際に、各計画研究代表者の役割を明確にし、特に特任助教や特任研究員等の採用といった若手支援を適切に遂行できるように促す。また、年度毎の論文集の企画や『講座 尊厳』、さらに社会へのアウトリーチ等の企画にも責任を持つ。
著者
諫田 泰成 中村 和昭 山崎 大樹 片岡 健 青井 貴之 中川 誠人 藤井 万紀子 阿久津 英憲 末盛 博文 浅香 勲 中村 幸夫 小島 肇 関野 祐子 古江-楠田 美保
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.13-19, 2017 (Released:2017-05-24)
参考文献数
8

近年、細胞培養に関連する技術の急速な開発に伴い、創薬研究、再生医療への応用など、細胞培養が貢献する分野が拡大している。欧米では細胞培養の再現性、信頼性、的確性を確保するうえで、細胞培養の基本概念を研究者・実験者間で共有することの重大性が認識され、Good Cell Culture Practice(GCCP)を作成することにより、細胞培養技術を一定の水準に維持する努力がなされている。我が国の研究者・実験者においても、細胞培養における基本概念を共有すべきと考え、「細胞培養における基本原則」案を作成した。本基本原則案は、培養細胞の脆弱性、入手先の信頼性と使用方法の妥当性、汚染防止、適切な管理と記録、作業者の安全と環境への配慮、の5条項から構成されている。この基本原則の概念が細胞培養を行うすべての研究者・実験者により共有され、日本の細胞培養技術が上進し、細胞培養技術を用いた研究の信頼性が向上することを期待する。
著者
小島 聡子
出版者
岩手大学人文社会科学部
雑誌
Artes liberales (ISSN:03854183)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.69-86, 2010-06-25

近年,地域の言語の多様さの例として,伝統的「方言」ではなく「標準語」とも異なる独特の言葉が取り上げられるようになってきた。これらの語のあり方の多様さを反映して,「地方共通語」や「新方言」など様々な用語もある。具体的には,東北地方に特有なものとして「しなきゃない」(=「しなければならない」),「お先します」などが知られている1)。本稿では,そのような伝統的「方言」とも「標準語」とも異なる地域に独特な言い方について,岩手の例を挙げてみたい。