著者
宗岡 悠介 長谷川 潤 木戸 知紀 内藤 哲也 谷 達夫 島影 尚弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.2182-2187, 2014 (Released:2015-02-28)
参考文献数
24
被引用文献数
3 2

小腸内胃石と胃内の胃石に対し,コーラによる溶解療法が奏効した1例を報告する.症例は74歳の男性で,嘔気・嘔吐を主訴に当院を受診し,食餌性小腸イレウスの診断で入院した.イレウス管を留置したが改善せず,経過中のCTにて小腸内に嵌頓した胃石がイレウスの原因と考えられた.イレウス管よりコーラを注入し溶解療法を試みたところ,速やかに胃石が溶解・軟化し,イレウスが解除された.また,胃内に留まっている胃石に対してもコーラによる溶解と生検鉗子・スネアを用いた破砕を併用し,安全に治療しえた.これまで胃石イレウスに対する治療には,早期診断による外科手術が必要と考えられてきたが,コーラによる溶解療法が有効である可能性が示唆された.
著者
杉森 健 三武 裕玄 佐藤 裕仁 小栗 賢章 長谷川 晶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1697-1707, 2020-11-15

VRメタバースやVTuberなどのように,モーションキャプチャデバイスを用いてリアルタイムにアバターを操作する機会が増えるにつれて,アバター同士接触することでコミュニケーションをとったり,アバターと物体が衝突する機会が増えている.しかし,現状ではアバター同士やアバターと物体が接触しても貫通してしまうか,不自然な動作になってしまう.そこで本研究では物理シミュレーションを用いて自然な接触動作を自動生成する.その際に問題となる追従遅れをフィードフォワード制御により解決する.提案手法により,これまでできなかったアバター同士やアバターと物体の自然な接触が可能であることを示す.さらに,提案手法ではこれまで一般的であった接触している振りの演技が不要になることで,演者の負担が軽減されることを示す.
著者
朴 勝俊 長谷川 羽衣子 松尾 匡
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.27-41, 2020-03-28 (Released:2020-05-15)
参考文献数
59

格差や貧困の拡大と,気候危機を背景として,2018年以降,欧米では反緊縮グリーン・ニューディール(GND)が相次いで提案されている.GNDは,環境政策と経済政策を統合させた急進的な政策案である.気候変動防止のために従来提案されていたよりも,早急に炭素排出ゼロ社会への移行を実現するために,巨額の投資の実施を求めるとともに,雇用の「公正な移行」の実現と,富や人種,ジェンダー,世代などに関わる不正義の解消にも注意を払っている.また反緊縮の経済理論に基づき,資金は主に増税によってではなく,年金基金等の巨額の民間資金の誘導と,(通貨発行権を有する国々の場合は)赤字支出でまかなうことを求めている.
著者
横井 英人 長谷川 誠司 和田 朋子 菅原 裕子 渡辺 卓央 池 秀之 福島 忠男
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.543-548, 2017 (Released:2017-07-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1

自慰目的に挿肛したハンドグリッパーが直腸穿通をきたし,開腹手術を必要とした1例を報告する.症例は39歳男性,握力トレーニング用のハンドグリッパーを自慰目的に肛門より挿入し抜去ができなくなった.20日ほど経過し臀部痛を主訴に当院救急外来に受診した.腹部CTで片方のグリップが直腸穿通していたため経肛門的摘出は不可能と判断し,緊急開腹手術(Hartmann手術)を施行しハンドグリッパーを摘出した.術後経過は良好で第10病日に退院した.直腸異物の摘出法に関しては,一定の見解は今のところなく,全身状態,異物の大きさ,形状,材質,肛門・直腸外傷や,消化管穿孔の有無を考慮し,慎重に検討する.
著者
巖城 隆 佐田 直也 長谷川 英男 松尾 加代子 中野 隆文 古島 拓哉
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.129-134, 2020-12-24 (Released:2021-02-24)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

2011年から2019年に西日本各地で捕獲された4種のヘビ類(シマヘビ,アオダイショウ,ヤマカガシ,ニホンマムシ)の口腔から吸虫を採取した。これらは形態観察と分子遺伝子解析によりOchetosoma kansenseと同定した。この種は北アメリカのヘビ類への寄生が以前から知られているが,日本に生息するヘビ類での確認は初であり,今回の結果は新宿主・新分布報告となる。
著者
長谷川 剛 小林 研介 村上 修一
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.228-231, 2020-04-05 (Released:2020-09-14)
参考文献数
7

令和元年度科学研究費助成事業(科研費,基盤研究等)審査結果報告
著者
長谷川泉 武田勝彦共編
出版者
明治書院
巻号頁・発行日
1976
著者
松本 吏樹郎 長谷川 匡弘 市川 顕彦
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
大阪市立自然史博物館研究報告 = Bulletin of the Osaka Museum of Natural History
巻号頁・発行日
vol.73, pp.1-5, 2019-03-31

大阪市南港中央公園における訪花性ハチ目昆虫のモニタリング調査の過程で,これまで日本から記録のないワタナベツチバチScolia watanabei( Matsumura)(ハチ目ツチバチ科)が発見された。本種は,大型で顕著な斑紋を持つにもかかわらずこれまで記録がないこと,また本種の分布が知られている中国,台湾を含む海外からの大量の貨物が運び込まれる港湾地区でのみ見られることから,外来種であると考えられる.本種が確認されているのはごく狭い範囲に限られているため,侵入の初期の段階にあると考えられる.
著者
長谷川 龍樹 多田 奏恵 米満 文哉 池田 鮎美 山田 祐樹 高橋 康介 近藤 洋史
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20217, (Released:2021-05-31)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

In the midst of the current reproducibility crisis in psychology, pre-registration is considered a remedy to increase the reliability of psychological research. However, because pre-registration is an unconventional practice for most psychological researchers, they find it difficult to introduce pre-registration into their studies. To promote pre-registration, this article provides a detailed and practical step-by-step tutorial for beginners on pre-registration with Open Science Framework. Furthermore, a typical example what beginners might experience and ways to resolve such issues are provided as supplementary material. Finally, we discuss various issues related to pre-registration, such as transparent research, registered reports, preprints, and open science education. We hope that this article will contribute to the improvement of reproducible psychological science in Japan.
著者
半田 徹 加藤 浩人 長谷川 伸 岡田 純一 加藤 清忠
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.43-54, 2009-06-30 (Released:2009-11-05)
参考文献数
27

The purpose of this study was to examine muscle activities during seven traditional different free dynamic exercises designed to strengthen the abdominal muscles. Eleven adult men with experience in weight training were asked to perform three repetitions of LSU, BSU, TSU, TC, RSU, LR and SLR. Activities of the upper rectus abdominis (URA), lower rectus abdominis (LRA), external abdominal oblique (EAO), and rectus femoris (RF) during the hip flexion and hip extension phases of each exercise were examined by electromyography (EMG) and analyzed using root mean square (RMS) values. The following results were obtained: (1) The mean RMS values for the URA were larger during the RSU and SLR than during the other five exercises. The value for the same muscle was larger during the TC exercise than during the LSU, BSU, TSU, and LR exercises. The mean RMS value for the LRA was largest during the RSU exercise, while that during the SLR exercise was larger than those during the LSU, BSU, TSU, TC, and LR exercises. (2) The mean RMS value for the EAO was largest during the SLR exercise, while that during the RSU exercise was second-largest and that during the TSU exercise was third-largest. The mean RMS values for the RF were larger during the RSU and SLR than during the other five exercises. The smallest value for this muscle was recorded during the TC exercise. (3) In most of the exercises, RMS in the hip flexion phase was larger than in the hip extension phase, and each muscle exhibited a knee flexion phase/knee extension phase ratio of between 0.5 and 0.8. However, the ratio for EAO and RF exceeded this range. (4) The muscle activity for the RF muscle in the RSU and SLR exercises was large, implying excessive stress for the lumbar vertebrae. Nevertheless, these exercises induced active muscle activity, and appeared desirable to perform with sufficient attention to safety.These results suggest that RSU and SLR exercises are the most effective movements for stimulating the URA, LRA and EAO. Moreover, TC is an effective movement for training the URA, and TSU is an effective movement for training.

41 0 0 0 OA 知の格差

著者
長谷川 哲也 内田 良
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.259-280, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の目的は,大学図書館の図書資料費に関して,大学間の格差の実態とその推移を明らかにすることである。資料の電子化という地殻変動のなかで,大学間の格差はどう変容してきたのか。図書館研究と高等教育研究はいずれもこの問題を等閑視してきただけに,格差の全体像を丁寧に検証することが求められる。 とくに高等教育の資源格差は,各大学の機能の相異として是認されうるため,本研究では4つの視点──大学間の不均等度,大学階層間の開き,時間軸上の変化(縦断的視点),大学本体との比較(横断的視点)──を用いて多角的に分析をおこなう。分析には『日本の図書館』の個票データを用いた。国立大学法人化以降(2004-2011年度)の図書費,雑誌費,電子ジャーナル費に関して,「大学間格差」(個別大学間の不均等度)を算出し,さらに「大学階層間格差」(群間の開き)を明らかにした。 主な知見は次のとおりである。第一に,電子ジャーナル費では大学間の不均等度は縮小しているものの,階層間格差はむしろ拡がっている。これまで電子ジャーナルの購読では階層間格差は小さくなると考えられてきただけに,重要な知見である。第二に,雑誌費では大学間の不均等度が高くなり,さらに階層間格差が拡大するという,深刻な事態が生じている。「電子化」の背後で進むこれら図書資料費の「格差化」にいかに向き合うかが,大学図書館の今後の課題である。
著者
長谷川 昭 中島 淳一 内田 直希 海野 徳仁
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.3, pp.398-417, 2013-06-25 (Released:2013-07-08)
参考文献数
60
被引用文献数
1 1

Recent investigations based on seismic tomography, hypocenter determinations and focal mechanism analyses using dense seismic network data reveal the precise configurations of the Pacific (PAC) and Philippine Sea (PHS) plates subducting beneath the Tokyo metropolitan area. Estimated geometry shows a broad contact zone between the two plates located directly beneath the Kanto plain. The overlap with the PHS plate subducting above it provides the PAC plate with protection from being heated by the hot mantle wedge. Moreover, the fore-arc portion of the PHS plate, before its subduction beneath Kanto, had been cooled by the subduction of the PAC plate from the Izu-Bonin trench. These cause lower-temperature conditions within the two oceanic plates and the upper continental plate beneath the Tokyo metropolitan area. As a result, depth limits of seismic activities within the plates and along their boundaries are anomalously deep. Seismic tomography studies show that the easternmost portion of the PHS slab mantle is serpentinized. The PHS slab may have been torn in two along the western boundary of this serpentinized mantle, with the eastern portion being left behind relative to subduction of the western portion. This is accompanied by the generation of large intraslab earthquakes along the boundary. We need to take these observations into consideration to understand the mechanism generating M7-class earthquakes, which are anticipated to occur in the southern Kanto region with a high probability.
著者
杉田 精司 巽 瑛理 長谷川 直 鈴木 雄大 上吉原 弘明 本田 理恵 亀田 真吾 諸田 智克 本田 親寿 神山 徹 山田 学 早川 雅彦 横田 康弘 坂谷 尚哉 鈴木 秀彦 小川 和律 澤田 弘崇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

リュウグウの近接観測の本番が目前に迫っている。これに備えて、我々は3つの重要な準備を進めている。1) 低アルベド小惑星の可視スペクトルの見直し。2)リュウグウの地上観測スペクトルの解析とメインベル小惑星との比較。3)可視分光カメラONC-Tのスペクトル校正観測。本講演では、これらについて簡潔に紹介する。 まず、メインベルトの低アルベド小惑星のスペクトル解析である。先駆的な小惑星のスペクトルのサーベイ観測であるECAS(Tedesco et al.,1982)の後、地上望遠鏡による多バンド分光のSDSS(Ivezic et al. 2001)、地上望遠鏡のよる連続スペクトルのデータベースであるSMASS2の整備(Bus and Binzel, 2002)、天文衛星WISE/NEOWISEによる多バンド分光のデータベース(Masiero et al. 2011)など多数の強力な小惑星のスペクトルのデータベースが整備されてきた。特に、SDSS やWISE/NEOWISEによって膨大な数がある小さな小惑星のスペクトルアルベドの分布が定量的に計測されたおかげで、RyuguやBennuが由来するメインベルト内帯の低アルベド族の分布については最近に大きな理解の進展があった。まず、以前にNysa族と言われていた族は、E型スペクトルのNysa族の中にF型(or Cb~B型)のPolana族とEulalia族が隠れていることが明らかになった。さらにPolana族とEulalia族は形成時期が古くて広範囲に破片を分布させており、ν6共鳴帯にも多くの1kmクラスの破片を供給していることが分かった。その一方で、より若いErigone, Klio, Clarrisaなどのぞくはずっと若いため、ν6共鳴帯への大きな破片の供給は限定的であることが分かってきた。この事実に基づいて、Bottke et al. (2015)はRyuguもBennuもPolana族由来であると推論している。 このようにSDSS やWISE/NEOWISEのデータは極めて強力であるが、0.7μmのバンドを持たないため、広義のC型小惑星のサブタイプの分類には適さない。その点、ECASは、小惑星スペクトル観測に特化しているだけあって0.7μmのバンドの捕捉は適切になされている。しかし、ECASではあまり多くのC型小惑星が観測されなかったという欠点がある。そのため、現時点ではSMASS2のデータが広義C型のスペクトル解析に適している。そこで、我々はSMASS2の中の広義のC型の主成分解析を行った。紙面の関係で詳細は割愛するが、その結果はCg, C, Cb, Bなど0.7μm吸収を持たないサブタイプからなる大クラスターと、Ch, Cghなど0.7μm吸収を持つサブタイプからなる大クラスターに2分され、両者の間にPC空間上の大きな分離が見られること、またこの分離域はPC空間上で一直線をなすことが分かった。この2大クラスターに分離する事実は、Vernazza et al. (2017)などが主張するBCGタイプがCgh, Chと本質的に異なる起源を持っていて水質変成すら受けていない極めて始源的な物質からなるとの仮説と調和的であり、大変興味深い。 これに引き続き、世界中の大望遠鏡が蓄積してきた23本のRyuguの可視スペクトルをコンパイルして、SMASS2と同じ土俵で主成分解析に掛けた。その結果は、Ryuguの全てのスペクトルがBCGクラスターに中に位置しており、その分布は2大クラスターの分離線に平行であった。これはRyuguが極めて始源的な物質であることの現れかもしれず、BCGクラスター仮説の検証に役立つ可能性を示唆する。 しかし、現実は単純ではない。Murchison隕石の加熱実験で得られたスペクトルもPC空間ではRyuguのスペクトルの分布と極めて近い直線的分布を示すのである。これは、Ryuguのスペクトル多様性がMurchison隕石様の物質の加熱脱水で説明できるとの指摘(Sugita et al. 2013)とも調和的である。この2つの結果は、Ryuguの化学進化履歴について真逆の解釈を与えるものであり、はやぶさ2の試料採取地の選択について大きな影響を与えることとなる。 この2つの解釈のどちらが正しいのか、あるいは別の解釈が正しいのかの見極めは、0.7μm吸収帯の発見とその産状記載に大きく依存する。もし、Murchison隕石様の含水鉱物に富む物質がRyuguの初期物質であって加熱脱水で吸収帯が消えただけの場合には、Ryugu全球が表面下(e.g., 天体衝突などで掘削された露頭)まで含んで完全に吸収帯を失ってしまうことは考えにくい。したがって、0.7μm吸収帯が全く観測されない場合には、VernazzaらのBCG仮説やFやB型の水質変成によってCh, Cghが生まれたと考えるBarucciらのグループの仮説(e.g., Fornasier et al. 2014)が有力となるかも知れない。しかし、0.7μm吸収が見つかって、熱変成を受けやすい地域ではその吸収が弱いことが判明すれば、スペクトル多様性は加熱脱水過程でできたとの考えが有力となろう。 最後に、はやぶさ2ONCチームは打ち上げ後も月、地球、火星、木星、土星、恒星など様々な天体の観測を通じて上記の観測目標を達成できるための校正観測を実施している。それらの解析からは、0.7μm帯および全般的なスペクトル形状の捕捉に十分な精度を達成できることを示唆する結果を得ており(Suzuki et al., 2018)、本観測での大きな成果を期待できる状況である。引用文献:Bottke et al. (2015) Icarus, 247 (2015) 191.Bus and Binzel (2002) Icarus, 158, 146.Fornasier et al. (2014) 233, 163.Ivezic et al. (2001) Astron. J.、 122, 2749.Masiero et al. (2011) Astrophys. J. 741, 68.Sugita et al. (2013) LPSC, XXXXIII, #2591.Suzuki et al. (2018) Icarus, 300, 341Tedesco et al. (1982) Astrophys. J. 87, 1585.Vernazza et al. (2017) Astron. J., 153,72
著者
長谷川 秀記
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.587-598, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
5

日本の電子出版30年の歴史を電子辞書と電子書籍の2つのコンテンツから概観する。日本の電子出版はCD-ROMの登場とともに誕生した。電子辞書は1980年代後半に生まれたCD-ROM辞書から始まり,1990年代後半には携帯電子辞書端末が主流となる。1999年iモードがリリースされると会員制のケータイ辞書引きサービスが生まれ,現在はネットワーク辞書とスマホ辞書アプリが主流になるなど時代によって媒体が変化してきた。現在はネット上の無料辞書引きサービスや検索エンジンに押されて有料電子辞書は苦戦をしている状況である。一方,電子書籍は電子辞書に比べると普及に時間がかかった。最初の電子書店は1990年代半ばにできたが,iモードによってケータイでコミックが読めるようになると徐々に普及が進み,スマートフォンの発売や米国での電子書籍のブームを受けて,日本でも2010年は「電子書籍元年」と騒がれた。現在はまだ印刷本の電子化という段階にとどまっているが,今後電子ならではの表現が加わることが期待される。
著者
松田 裕之 矢原 徹一 竹門 康弘 波田 善夫 長谷川 眞理子 日鷹 一雅 ホーテス シュテファン 角野 康郎 鎌田 麿人 神田 房行 加藤 真 國井 秀伸 向井 宏 村上 興正 中越 信和 中村 太士 中根 周歩 西廣 美穂 西廣 淳 佐藤 利幸 嶋田 正和 塩坂 比奈子 高村 典子 田村 典子 立川 賢一 椿 宜高 津田 智 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.63-75, 2005-06-30 (Released:2018-02-09)
被引用文献数
22

【自然再生事業の対象】自然再生事業にあたっては, 可能な限り, 生態系を構成する以下のすべての要素を対象にすべきである. 1生物種と生育, 生息場所 2群集構造と種間関係 3生態系の機能 4生態系の繋がり 5人と自然との持続的なかかわり 【基本認識の明確化】自然再生事業を計画するにあたっては, 具体的な事業に着手する前に, 以下の項目についてよく検討し, 基本認識を共有すべきである. 6生物相と生態系の現状を科学的に把握し, 事業の必要性を検討する 7放置したときの将来を予測し, 事業の根拠を吟味する 8時間的, 空間的な広がりや風土を考慮して, 保全, 再生すべき生態系の姿を明らかにする 9自然の遷移をどの程度止めるべきかを検討する 【自然再生事業を進めるうえでの原則】自然再生事業を進めるうえでは, 以下の諸原則を遵守すべきである. 10地域の生物を保全する(地域性保全の原則) 11種の多様性を保全する(種多様性保全の原則) 12種の遺伝的変異性の保全に十分に配慮する(変異性保全の原則) 13自然の回復力を活かし, 人為的改変は必要最小限にとどめる(回復力活用の原則) 14事業に関わる多分野の研究者が協働する(諸分野協働の原則) 15伝統的な技術や文化を尊重する(伝統尊重の原則) 16目標の実現可能性を重視する(実現可能性の原則) 【順応的管理の指針】自然再生事業においては, 不確実性に対処するため, 以下の順応的管理などの手法を活用すべきである. 17事業の透明性を確保し, 第3者による評価を行う 18不可逆的な影響に備えて予防原則を用いる 19将来成否が評価できる具体的な目標を定める 20将来予測の不確実性の程度を示す 21管理計画に用いた仮説をモニタリングで検証し, 状態変化に応じて方策を変える 22用いた仮説の誤りが判明した場合, 中止を含めて速やかに是正する 【合意形成と連携の指針】自然再生事業は, 以下のような手続きと体制によって進めるべきである. 23科学者が適切な役割を果たす 24自然再生事業を担う次世代を育てる 25地域の多様な主体の間で相互に信頼関係を築き, 合意をはかる 26より広範な環境を守る取り組みとの連携をはかる
著者
長谷川 誠 和田 信昭 井上 孝志 安原 洋 仲 秀司 黒田 敏彦 野尻 亨 新川 弘樹 藤田 尚久 古谷 嘉隆
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.852-857, 2000-04-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
28
被引用文献数
5 13

1986年5月から1999年6月までの14年1ヵ月間に,当院に来院した経肛門的直腸内異物症9例と,本邦報告例55例について臨床的検討を加えた. 患者年齢は最小年齢15歳から最高年齢43歳で,平均年齢は29.6歳,性別では男性が7人,女性が2人であった.主訴では異物が7人,腹痛が2人で,来院する患者の中には異物挿入の事実を隠している場合もしばしば認められた.原因としては性的行為に関係している症例が8例と最も多かった.そのため患者は羞恥心から夜間当直帯に来院することが多かった.また繰り返し経肛門的直腸内異物で来院する症例も2例認められた.摘出は穿孔性腹膜炎を発生していた1例を除き経肛門的に摘出された.異物の種類ではスプレー缶2例,ハンガー・針金2例,試験管1例,瓶1例,バイブレーター1例,キセル1例,鉛筆1例,お菓子の容器1例となっていた.
著者
菅野 昌明 濱田 和樹 長谷川 裕
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
トレーニング指導 (ISSN:24336742)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-17, 2017 (Released:2020-03-26)
参考文献数
25

本研究の目的は、国内最高峰のラグビートップリーグに所属するチームの男子ラグビー選手25名を対象に、爆発的な加速能力に重要な役割を果たすと考えられる1-4Step区間のスプリントスタート能力の向上のための、スプリント変数や下肢筋機能との関連性 を明らかにすることであった。その結果、1-4Step区間のスプリント走速度とステップ長、滞空時間、接地時間との間に有意な相関関係が認められたが、ステップ頻度との間には有意な相関関係は認められなかった。下肢筋機能では、20kg、30%1RM、60%1RM、80%1RMに対するジャンプ・スクワット・パワーの体重比、およびリバウンドジャンプ指数との間に有意な相関関係が認められた。また、1-4Step区間のスプリント走速度で区分した上位群と下位群とのスプリント変数と下肢筋機能の違いを比較した結果、スプリント変数ではステップ長、滞空時間が、下肢筋機能では20kg、および60%1RMのジャンプ・スクワット・パワー体重比、リバウンドジャンプ指数において上位群が有意に大きい値を示した。さらに、 接地時間と30%1RMおよび80%1RMに対するジャンプ・スクワット・パワーの体重比において有意ではないが大きな差が示され、上位群が下位群よりも接地時間が短くジャンプ・スクワット・パワーでは高値を示した。これらの結果から、1-4Stepスプリント走速度の向上には、ステップ長を高めつつも、短い接地時間を達成することが重要であると考えられた。また、1-4Stepスプリント走速度を改善するためには、軽負荷から高負荷領域までの下肢伸展パワーを増大することや、ストレッチ・ショートニング・サイクル筋活動で行われる下肢反応筋力能力を改善することが必要であると考えられた。