著者
石田 正昭 徳田 博美 波夛野 豪 石井 敦
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本とドイツの農村地域社会は大いに異なっている。ドイツには市民がいるが、日本には住民がいる。行政への依存においても態度の違いがある。われわれはこうした違いを日常生活の中から解明しようと試みる。調査結果によれば、日本よりもドイツにおいて、市民活動における3つの原則(自己統治の原則、補完性の原則、共同経済の原則)がより徹底していることが観察される。
著者
降籏 徹馬
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は研究計画に基づき研究を進めた。本年度中に採択された代表論文の概要は以下の通りである。論文「階層的目的地選択と小売集積:シミュレーション」では、現実の小売集積形成のメカニズムの解明に接近するため、従来からの小売集積形成のシミュレーション方法を再検討し、階層的目的地選択モデルに基づくシミュレーションの方法を提示した上で、埼玉県を分析対象地域として設定し、実際の人口分布を用いてシミュレーションを行い検討した。その結果、消費者空間行動モデルによる記述と現実の人口分布を用いるだけでも相当な類似度で現実の小売集積量を再現できることを確認できた。得られた知見の中で、特に興味深い点の一つは、現実の小売集積は仮想都市空間上のシミュレーションにおいて形成された王冠型小売集積の形態に近い可能性を示したことである。現実の小売集積の分布形態は王冠型ではなく、極度に集中する小売集積と人口に応じて均一に拡散して集積する形態の中間を示していると考えられる。もう一つの興味深い点は、実際の消費者空間行動の距離パラメータ値を小売集積形成のシミュレーションにより推定できる可能性を示したことである。これはシミュレーション結果において得られた各地区の店舗数と実際の店舗数との誤差を評価した場合、実際の距離パラメータ値付近で誤差が最小になっていることから明らかである。もちろん、小売集積形成のシミュレーションは多大なコンピュータ処理を要するという実践性に欠ける面も含んでいる。しかし、他の地域においても同様の性質を確認できれば、消費者動向調査等のデータが存在しない場合の代替方法の一つとして活用していくことができると考えられる。
著者
樺島 博志
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

前年度,ミュールハイム=ケアリッヒ事件の憲法判例を取り上げ,原発設置許可手続における市民の手続的参加権の保障が基本権保護義務の内容となりうることを明らかにした。本年度は,前年度の研究成果を公表し,さらに計画に従って考察を進めた。まず,憲法判例の前置手続として提起された行政裁判を検討した。この事件は,行政行為の執行差止の仮処分をもとめて争われたものであり,迅速手続であったからこそ,憲法訴願においては手続的参加権が主として争われ,実態的基本権侵害の存否について正面から判断は下されなかったものと考えられる。この行政裁判所の判決を検討したあとで,当憲法判例以降に係属したミュールハイム=ケアリッヒ原発関連の行政裁判に考察を進めた。同原発の設置に関する許可処分に対しては,複数の訴訟が提起され,下級審では,許可処分を適法と認めるものと,無効とするものとに,判断が分かれた。最終的には,連邦行政裁判所で無効が確定した。いずれの判断も,裁判所による原発設置の技術的評価にかかわっており,行政裁判において行政庁の判断を裁判所はどの程度尊重すべきか,逆に裁判所はどこまで技術的判断を下すことができるのか,という観点から判例を検討した。ドイツにおける実地調査は,本務との関係で当初の計画ほど十分に出来なかったが,年度末に近い二月に実施し,同事件に実際にたずさわったコブレンツ行政裁判所のルッツ判事にインタヴューを行うことが出来,ミュールハイム=ケアリッヒ原発問題について,事件の争点と全体状況に関して有益な知見を得ることができた。ドイツでの実地調査が遅れたこと,計画期間中に二度の転勤が重なったことから,最終的な研究報告をまとめるにはいたっていないが,判例の翻訳等,逐次Web上で公開する予定である(URL:http://www/law.tohoku.ac.jp/~kabashima/)。
著者
伏見 嘉晃
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.155-168, 2004-01-10

個人の「自由」、そして「自立」、これらは所与のものなのであろうか。近代以降、それらは個人が他者との関係のうちでみずから形成獲得してきたものである。こうしたことを考えると、各人が己の「自由」や「自立」を求めることは、他者との関係を必然的なものとして捉えることにつながると考えられる。このようにして「人間関係」、つまり個人と個人との関係(繋がり)を基礎とする社会は構築されると考えられる。すなわち、これが近代以降みられる「共同性」のあり方であると思われる。しかし、この「共同性」は漠然としたもしくは強制的な「人間関係」によるものであってはならない。諸個人が相互に尊重しあう関係を必然とする「共同性」でなくてはならないと思われる。なぜならば、「人間関係」のうちに諸個人の「自由」と「自立」が保障される必要があるからである。以上を考慮に入れると、「自由」と「自立」そして「共同性」を解明することは、諸個人がどのように他者との関係を形成するのか、ということの検証であろう。こうした理由により、諸個人間に展開される「承認」のあり方の考察の必要性が浮かび上がると思われる。以上の理由から、若きヘーゲルが本格的に検討をはじめた『イェーナ体系構想』に見られる「承認論」の考察を試みたいと思う。この考察により、「市民社会(社会一般としての)」の本性の一端も明らかになるであろう。
著者
仲澤 眞
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

プロスポーツ観戦者のセグメントマーケティング戦略の策定に有効な情報を開発するために、日本プロサッカーリーグの公式戦(平成11年、平成12年)及び第3回FIFA女子ワールドカップ大会(平成11年)の観戦者を対象とした社会調査を実施した。観戦者のセグメントファクターとして、ジェンダー、観戦動機、観戦歴、観戦頻度、組織化の有無、競技会場の立地、競技会場の収容規模などの有効性が示唆された。各々のファクターについて、マーケティングレコメンデーションを含め、論文化を進めた。一方、それらレコメンデーションのフィジビリティースタディーとして、2つのプロサッカークラブのマーケティング担当者と共同で、いくつかの試験的な事業を行った(平成12年)。日本プロサッカーリーグの観戦者調査からは、Vicarious Achievement、Drama、Community Attachement、Player Interest、Team Interestの観戦行動に関係の深い6つの社会心理的特性が抽出された。それら社会心理的特性と観戦行動の関係についての分析は、北米スポーツマネジメント学会で報告した(平成11年)。国内では、日本体育学会及び日本スポーツ産業学会において、社会心理的特性と観戦者特性との関係について報告した(平成11年)。第3回FIFA女子ワールドカップ大会のデータからは、女性アスリートの観戦者の社会心理特性について、北米スポーツマネジメント学会で報告した(平成12年)。
著者
橋本循 著
出版者
秋田屋
巻号頁・発行日
1948
著者
高橋 靖
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.69-78, 2000-11-30
参考文献数
10
被引用文献数
2

本報は複数視聴者から映画のシーン評価データを定量的に採取する標準セマンティックスコア法を提案し、その評価データから視聴者グループがとらえる物語の解釈を導くことによって提案手法の有効性を示した。評価実験セットは複雑化・解決化の評価概念を動画サンプルでわかりやすく解説した教示ビデオと冊子、シーン番号入り評価ビデオ、エピソード区切りが示された5段階評価シート、および映画鑑賞用DVDの5点からなり、評価手法に起因する誤差の極小化をはかった。視聴者データの相関係数とセマンティックグラフをもとに特異ケースを除去し、セマンティックグラフおよびシーンスコアの4指標すなわちシーンのピーク度数、ハイスコア度数、平均スコア、分散値から物語の解釈を行った結果、(1)ドラマを盛り上げる物語の演出、(2)主な登場人物への感情移入の構図を浮き彫りにすることができた。これにより物語に内包される多様な意味とそれに感応する視聴者の評価構造が明らかとなり、提案手法が映画のグループ評価・解釈に有効であることが示された。
著者
設楽 佑子 石川 善美
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究. 研究発表大会概要集 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
no.48, pp.154-155, 2001-10-15

For the dwelling in Tohoku district, it is important to consider how to prevent hot in the summer as well as cold in the winter, though the northern portion in Japan. This paper describes the actual condition of the indoor thermal environment during the summer by field measurement using eight houses in Sendai area. Secondly, this paper reports the results of the computer simulation on the indoor environmental improvement in the summer. The influence of three factors, which are the sunshade of window, the night ventilation and the use of thermal mass, on the summer indoor temperature is analyzed.
著者
諸岡 晴美 北村 潔和 鳥海 清司 諸岡 英雄 眞鍋 郁代 中橋 美幸
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ストレス社会・高齢社会を迎え, 健康で快適な生活の遂行が希求され, "人にやさしい" 製品の開発が求められている. 本研究では, 脳波, 心電図, 筋電図, 連続血圧, 呼吸代謝, 体温, 皮膚性状, 発汗挙動などの生理生体情報を測定し, 繊維製品からの刺激と生体信号との対応関係を解析するとともに, 感性工学的手法を用いて, 諸機能(筋機能, 代謝機能, 体温調節機能, 皮膚組織の弾力など)の低下を伴う高齢者対応の繊維製品についての基礎的研究および具体的な設計指針の導出と製品開発を行った.