著者
今村 義臣 木藤 恒夫 Yoshiomi Imamura
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.16-23, 2010-03-31

3名の女性共感覚者(F,K,Y)について,現象学的な調査と心理物理学的な実験を行った。3名に共通するのは,特定の数字や文字を見ることによって色の知覚が生じるという書記素・色共感覚である。ただし,3名には現象学的な違いがある。内省報告によれば,Fは「実際に色がついて見える」であり,Kは「頭に色のイメージが浮かぶ」であるという。心理物理学的な実験としては,ストループ課題とRamachandran & Hubbardが用いたポップアウト課題を実施し,一般の知覚者と比較した。ストループ課題では,FとYは逆ストループ干渉において,Kはストループ干渉において対照群との違いが見られた。ポップアウト課題では,共感覚者の正答率は一般知覚者のものより有意に高かった。これら2つの課題のパフォーマンスにより,両者における共感覚的な知覚が実証された。
著者
外川 一子
出版者
東京女医学会
雑誌
東京女医学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.243-246, 1937-07
著者
堀 雅彦
出版者
北海道大学宗教学インド哲学研究室
雑誌
北大宗教学年報 (ISSN:24343617)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.26-32, 2019-08-31

本稿は、2018年12月に東京大学で行われた研究会―「宗教学生成期における哲学の位置」―での発表をもとにしたものである。堀の発表は、ウィリアム・ジェイムズ(William James 1842-1910)の哲学的(かつ神学的)営みとしての「宗教の科学」に注目し、その対象と方法の側面から、彼が描き出そうとした「宗教」の姿の再構成を試みるものであった。後日の考察を加えて行った北大宗教学研究会(2019年2月18日)での報告内容も含めて、以下、その概要を研究ノートとして記す。
著者
出口 拓彦
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-59, 2019-03-31

「授業中の私語」の伝播過程に着目しつつ,規範逸脱行動について考えるための授業案を作成した。さらに,大学生を対象に授業を実施し,その効果を実証的に検討した。授業案は,主として心理学に関する知見を基にしたものであった。また,個人間の相互作用が集団全体に及ぼす影響についての理解を深めるために,研究で用いられたシミュレーション用のプログラムも教材として利用した。受講者は心理学関係の専修に所属する学生と教員であった。授業の途中と最後に計2 回質問紙を実施し,受講者28名から質問紙を回収した。分析の結果,授業後の規範意識の方が高かったことから,本授業によって規範意識を向上させうる可能性があることが示された。ただし,授業を「難しい」と感じている者の規範意識はさほど変化せず,規範意識が向上するのは「普通」と考えている者のみである傾向も示唆された。また,自由記述の回答から,シミュレーションに関する事項について興味・関心を持った受講者がいた一方で,その詳細に関する理解が困難であった者もいた可能性が示された。これらのことから,「個人間の相互作用に着目して規範逸脱行動について考える」という授業内容自体は変えずに,その難易度を下げる方法を検討する必要性が考えられた。