- 著者
-
山元 孝広
- 出版者
- 日本地球惑星科学連合
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2016年大会
- 巻号頁・発行日
- 2016-03-10
島根県西部の大山火山は,約1Maから活動を開始したアダカイト質の複成火山である.噴火履歴の大枠は津久井(1984)により明らかにされているものの,その定量化にまでは至っていない.特に,大山火山では約5万年前に国内で最大規模のプリニー式噴火である大山倉吉降下火砕物が噴出したが,この噴火が大山火山の長期的な火山活動の中でどのように起きたものかまでは理解されていなかった.そこで大山火山の過去約20万年間の噴火履歴の見直しと放射性炭素年代測定,マグマ噴出量の再計測を行い,新たに積算マグマ噴出量階段図を作成した.噴火履歴の見直しで重要な点は,津久井(1984)の弥山火砕流が,本質物の化学組成の異なる北麓の清水原火砕流と西〜南西麓の桝水原火砕流に分けられることである.前者からは18,960-18,740 calBC,後者からは26,570-26,280 calBCの暦年代が得られた.分布と岩質から,前者は三鈷峰溶岩ドーム起源,後者は弥山溶岩ドーム起源と判断され,大山火山の最新期噴火は約2万年前の三鈷峰溶岩ドームの形成であることが明らかとなった.大山火山起源のテフラについても等層厚線図を書き直し,Legros (2000)法で噴出量を計測し直した.従来値よりも噴出量が大幅に大きくなったものは計測し直した約8万年前の大山生竹降下火砕物で,その最小体積は2 km3DREである.更新した階段図からは,大山火山では約10万年前から噴出率が高い状態が続いていたことを示しており,大山倉吉噴火は大山火山のこの時期の活動の中で特異的に大きいわけではない.