雑誌
商学論究 (ISSN:02872552)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.231-239, 2017-03-10
著者
岡部 光明

コーポレート・ガバナンスとは、企業がその「本来的な機能」を十分に果たすために「関係者」相互の関係を規定する「仕組み」が構築され、それが機能している状態を指す。しかし、この場合、企業の本来的な機能、関係者、仕組みをそれぞれどう考えるかによって多様な見方がある。本稿では、コーポレート・ガバナンスのあり方(手法)に関する従来の考え方を示すとともに、それらとは全く異なる一つの新しい視点からのアプローチとその可能性、必要性、そのための課題、を提示することを意図している。その結果、(1)従来の視点とは経済学(ファイナンス論)アプローチ、法学(法令コンプライアンス)アプローチの二つである、(2)これに対して倫理学アプローチという発想もありうる、(3)その場合の中心的な概念はインテグリティ(integrity)でありそれは一貫性、道徳性(誠実)、説明責任によって構成される、(4)企業関係者がその意義と価値を体得するとともに組織としてもそれを重視するようになればコーポレート・ガバナンスの手法として新しい次元(法律ベースのハード統治に加えてソフト統治)を追加する意味を持つ、(5)これは理論的にも妥当性を持つ(シェリングの自己管理モデルで説明可能である)、(6)日本社会では今後インテグリティという概念の理解とその普及が課題であり、それは教育(特に大学教育)の大きな役割の一つでもある、などを主張した。
著者
阿部 勝征
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.51-69, 1989-06-30

津波マグニチュードMtの決定式と地震断層パラメターの相似則に基づいて,地震のマグニチュードから津波の高さを予測する方法を導く.その際にマグニチュードや津波高の基本的性質および津波励起の地域性を適当に考慮することによって予測の精度を高める.特異な津波地震を除いて,関係式log Ht=Mw-log Δ-5.55+Cから得られる予測高Ht(m)は津波の伝播距離Δ(km)付近での区間平均高を近似し,2Htはその付近での最高値を近似する.区間平均高の最大値は簡単な関係式logHr=0.5Mw-3.3+Cから得られる予測高Hr(m)で見積られる.ここにMwは地震のモーメント・マグニチュード,Cは定数であり,太平洋側の津波にはC=0,日本海側の津波にはC=0.2がそれぞれ適用される.適切な考慮のもとではMwの代わりに表面波マグニチュードや気象庁マグニチュードを利用することができる.地震直後の迅速な予測に利用できるようにこれらの関係式を一枚の予測ダイアグラムにまとめることができる.一方,遠地津波に対する予測式はlog Ht=Mw-Bによって与えられる.定数Bの値として,南米からの津波にはB=8.8,アラスカやアリューシャンからの津波にはB=9.1,カムチャッカや千島からの津波にはB=8.6がそれぞれ適用される.予測法の信頼性を検討するために,過去の津波について実測高と推定値とを統計的に比較してみると,大局的にみる限り,両者間のばらつきの程度は津波数値シミュレーションの場合とそれほど違わない.
著者
塩谷 亨
出版者
北海道言語研究会
雑誌
北海道言語文化研究 = Journal of language and culture of Hokkaido (ISSN:18826296)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.93-118, 2016-03-31

本稿では、青森県地方において方言名として認識されている魚種等の名称のリストを提示し、それについてのいくつかの特徴を明らかにした。方言名としてリストされていた名称には、標準和名と全く異なるもの、標準和名と部分的に共通部分を含むもの、標準和名に方言特有の音変化が生じたと思われるもの、標準和名を短縮した形のもの、標準和名と同一形であるが方言名リストに加えられているものが含まれていた。標準和名と全く異なる方言色が濃い名称は、全国的に広く流通していない、地元以外の一般家庭にはあまり馴染みがないような魚に多く見られる傾向があった。一方で、全国的に広く流通し地元以外の一般家庭でもおなじみの食材で商業上も重要と思われる魚の中には、標準和名では一つの魚種となっているのが何らかの基準で細分化され、それぞれに名称が付与されているものが見られた。これは、地元の人達のそれらの魚に対する関心の高さを反映していると思われる。また、大きさや収穫時期を表す<その魚の特徴を表すキーワード>+<その魚が属するグループを指す一般的な名称>という複合的な形式で下位分類を表すものについては、特に大きさや収穫時期(旬の時期と関連)は商品価値にも影響することから、商業上の重要性が大きく関与していると思われる。
著者
森 光三 岡田 粂ニ
出版者
富山大学工学部
雑誌
富山大学工学部紀要 (ISSN:03871339)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1/2, pp.1-4, 1965-03

The mechanism of the inverter commutation is studied. The circuit is composed of two resistances instead of a transformer. Gate voltage is 2 V, and gate current 3 mA. Capacity of the commutation condenser is 20μF. The voltage of the commutation condenser is calculated and it is shown that the anode voltage of SCR becomes negative, then it cuts the anode current of SCR. When we use as a inverter, a transformer is used instead of two resistances. The transformer has three windings whose number of tums is 300 respectively. The range of the output altemating current is 0--4 A, and the maximum efficiency of the inverter, which converts DC energy to AC energy, reaches 75%. The range of the frequency of AC could bechanged from 20 to 300 c/s in our experiments.
著者
吉田 如子
出版者
京都産業大学社会安全・警察学研究所
雑誌
社会安全・警察学 = CRIMINAL JUSTICE AND POLICING (ISSN:21885680)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.127-135, 2018-03

0.はじめに1.DV、児童虐待に関する通報・相談件数の増加2.日本の警察官に対するDV、児童虐待事案への介入に関する統制3.DV、児童虐待事案に関する警察官の経験と意識3.1.法箴言等の影響およびその影響の減少について3.1.1.家族観の変化3.1.2.警察官の社会的現実3.1.3.警察官の職務に関する規範意識3.2.通達の影響、特に被害届についての姿勢3.2.1.暴行事案への積極的な対処3.2.2.被害の届出がない場合でも強制捜査を含め立件を検討3.3.組織、人員など資源の拡充について4.結びに代えて
著者
薬袋 秀樹
出版者
日本図書館学会
雑誌
図書館学会年報 (ISSN:00409650)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.63-78, 1997-06

図書館法弟4条,弟5条,第13条は公立図書館の専門的職員の職務,資格,配置について規定している。本稿の目的は,これらの条文の趣旨と問題占lを,関係文献の検討と学芸員,社会教育王事等との比較によって明らかにすることてある。結果として次の5占が明らかになった。巾司書・司書補の職務内容,等級と職務分担,資格の要件と取得方法,配置のいすれの 点にも不十分な点が見られる。(2)資格取得に必要な学歴水準が低いにもかかわらす,取得方法が弾力性に欠ける。(3)判断を要しない職務を担当する職員に関する有効な規定がない。(4)重要な文書てある「司書およひ司書袖の職務内容」が取り上けられてこなかった。(5)社会教育主事,学芸員等の他の専門的職員との比較が行われてこなかった。