著者
松本 隆 Takashi MATSUMOTO 清泉女子大学 SEISEN UNIVERSITY
雑誌
清泉女子大学人文科学研究所紀要 = BULLETIN OF SEISEN UNIVERSITY RESEARCH INSTITUTE FOR CULTURAL SCIENCE (ISSN:09109234)

明治の初めから半ばにかけて、心学道話を日本語学習用に加工した教材が相次いで出版された。この時期は、上方語の威信が失墜し、それに代わり東京語に基づく標準的な日本語が形成されていく時期と重なる。小稿は『鳩翁道話』や『心学道の話』を素材とする教材5種の調査をした。両素材は講述筆録であるため話し言葉を学ぶのに向く反面、幕末の刊行で上方語の特徴が濃厚なため新時代の標準モデルにふさわしくない面もある。これら要注意な表現に対し、各教材は注釈を加えたり、上方的でない表現を本文に選ぶなどの処置をとっている。各教材の上方語に対する姿勢は刊行時期によって異なる。早い時期の教材は、東西の言語的な差異を念頭におきつつも、上方語を依然有力な同時代語と捉えている。いっぽう刊行時期が遅くなると、東京語に重心が移りそこを基軸に、距離をおいて上方語を観察する姿勢に変わる。西から東への言語規範の推移は、表面的には刷新に見えるが、根幹においては継承であることを、教材編者ら見識ある非母語話者は心得ていた。そのため旧来の素材からでも新時代に対応しうる言語形式を吸収できたのである。

1 0 0 0 OA 隠された疑問

著者
郡司 隆男
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究委員会
雑誌
トークス = Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin : 神戸松蔭女子学院大学研究紀要言語科学研究所篇 (ISSN:24352918)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.11-27, 2020-03-05

いわゆる「潜伏疑問」(concealed question) と称される表現は、名詞句でありながら、その意味が埋め込み疑問文に相当するものである。これは、特定の動詞、例えば「知っている」のような語と共起したときに、疑問文補文と同様の解釈を得る。本稿の目的は、このような表現について、基本的に存在量化子を含む意味論を仮定すれば、疑問文の解釈が得られることを示し、同時に、量化詞としての性質を示すことである。郡司(2017) で論じた、疑問文埋め込み文をとる「知っている」のような動詞の意味論と埋め込み疑問文の意味論を拡張し、それと存在量化の名詞句の意味論との相互作用で、「潜伏疑問」の解釈が導かれることを明らかにする。
著者
川端 博子
出版者
埼玉大学総合研究機構
雑誌
総合研究機構研究プロジェクト研究成果報告書
巻号頁・発行日
vol.第5号(18年度), pp.299-300, 2007

4 若手研究及び基礎研究
著者
瀧田 航平 鈴木 奨 呉 健朗 堀越 和 中辻 真 宮田 章裕
雑誌
ワークショップ2017 (GN Workshop 2017) 論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.1-6, 2017-11-09

発展を続ける情報分野を支える技術の 1 つである対話型エージェントは,今後もより多くの場面で活躍が期待されている.一方でエージェントとの無機質な対話に親しみを感じないユーザには,このような対話型エージェントは受け入れてもらえない可能性が懸念される.この問題を解決するために我々は,ユーザの発言の一部をわざと間違えて聞き返す,ボケて返す対話型エージェントを提案してきた.我々は,このエージェントに適切なキャラクタ性を付与することで,ユーザが感じる親しみを増加させることができると考えている.この仮説を検証するため,本稿では,特定のカテゴリに属する単語のみを返答させることによって,エージェントにキャラクタ性を付与するアプローチを提案し,この概念をプロトタイプシステムとして実装した.検証実験の結果,現時点では,ユーザが感じる親しみの有意な向上は認められなかったが,エージェントにキャラクタ性を持たせることには成功したことが確認できた.
著者
小島 俊輔 藤本 洋一 岩本 舞
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構 熊本高等専門学校
雑誌
熊本高等専門学校 研究紀要 = RESEARCH REPORTS OF KUMAMOTO NATIONAL COLLEGE OF TECHNOLOGY (ISSN:18846734)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.27-32, 2020-01

In order to detect cyber security threat at NIT Kumamoto, Yatsushiro Campus, we construct and operate an Intrusion Detection System (IDS) in our computer network since December, 2017. IDS has based on a predetermined signature and it can detect intrusions, attacks and other signs by monitoring packet-flow through the computer network. In this paper, we report introduction, construction and operation of this system.
著者
CHEN HONG
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2020-03-25

グラフは複雑なシステムを記述する強力なツールとして,ソーシャルネットワーク分析,生物情報科学,化学情報科学などの多くの分野で幅広く使用されている.例えば,分子の生物活性を予測するなどのパターン認識がグラフ分類問題に帰着できる.しかし,グラフに適用する数学ツールが少ないため,グラフ分類問題は伝統的な機械学習のベクトル分類問題より難しい.そこで,グラフデータを既存の機械学習アルゴリズムに適用するために,グラフデータを数値特徴ベクトルに変換する技術が注目されいる.特に近年,ニューラルネットワークを用いたグラフの特徴ベクトル(分散表現とも呼ばれる)を学習する課題が盛んである. 近年提案されたニューラルネットワークを用いて,グラフの分散表現を獲得する手法ではノード特徴のみを活用し.エッジ特徴を扱えない手法が多い.そこで, 本研究では,エッジ特徴を用いてグラフの特徴ベクトルを改良することを目指す. 提案手法では,まずライングラフを用いて,元のグラフのエッジをノードに変換する.この操作により,元のグラフのエッジ特徴がライングラフのノード特徴となるため,ノード特徴しか取り扱えない手法を利用して,元のグラフのエッジ特徴を反映したグラフ分散表現を獲得する. この方針に基づき,ノード特徴のみを使う既存の2つのグラフ分散表現学習手法を改良した. 1つ目はGraph2vec である.Graph2vec はノードラベル付きのグラフ集合から,教師なしでグラフの分散表現を獲得する手法である.本論文では,まず従来手法Graph2vec の(1)エッジラベル情報を扱えないことと,(2)グラフ間構造の類似性が適切に表現できないという欠点を指摘して,それを対処するため,ライングラフを利用して補う手法 GL2vec を提案した. 2つ目は GIN(Graph Isomorphism Network)である.GIN はノード属性付きのグラフ集合から,教師ありでグラフの分散表現を獲得する.GIN はノード間で情報伝搬することによって,End-to-End で特徴ベクトル及び分類器を一気に学習させる.しかし,GIN もエッジの属性情報を使用していない.本論文では,ライングラフを用いて,GIN が生成するグラフの特徴ベクトルにエッジの特徴を補完できる手法GLIN を提案した. 実験によって,エッジ特徴とノード特徴両方とも考慮した提案法が従来法よりもグラフ分類性能を改善することを示した.上記の二つ改良例から,ノード属性しか扱えないグラフ分散表現学習のモデルの一族に対し,ライングラフはエッジ属性を活用できる有効なツールであることを確認できた.なお,エッジ特徴がグラフ分類タスクに役に立つことも確認できた.
著者
中島 精也
出版者
中央大学経済学研究会
雑誌
経済学論纂 (ISSN:04534778)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3-4, pp.273-288, 2019-01-15
著者
安達 修介 下城 陽介
出版者
オープンアクセスリポジトリ推進協会
巻号頁・発行日
2020-01-30

第17回 群馬県図書館大会 第2分科会於:群馬県立図書館
著者
飯島 貴政 串田 高幸
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2020-DPS-182, no.57, pp.1-7, 2020-03-05

自然災害が発生した場合のデータセンターへの影響は地震や台風の直接的な損害に加え,電力供給会社による計画停電,土砂崩れによる電線の切断の間接的な損害が考えられる.この手法では 1 分ごとに災害の種類名を SNS 上で検索し,最新の情報のモデル,過去に災害が発生した時刻の前後で前述したデータのモデルをピアソンの相関関数によって類似率を計算し自動で構成とデータを複製することで耐障害性を実現する分散バックアップ手法を提案する.既存のバックアップ手法と比較してバックアップが完了するまでの時間の削減を目的とした.既存のバックアップ手法と提案手法での災害発生からバックアップが完了するまでの時間面と費用面での比較を行うことで評価を行った.結果,既存の手法に比べ災害発生からバックアップ開始から終了までの作業時間が約 51.8% 削減された.また,期間を設定し評価を行った際に約 49.9% コストが削減できた.
著者
今田 高俊
雑誌
情報処理学会研究報告知能と複雑系(ICS)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.51(1997-ICS-108), pp.19-26, 1997-05-26

本稿の目的は、ラグビー日本選手権で7連覇を遂げた神戸製鋼ラグビーチームを事例にして、非管理型の自己組織化がどのような条件の下になされるかを分析することにある。自己組織化の条件として、1)個の発想を優先すること、2)ゆらぎを秩序の源泉とみなすこと、3)不均衡ないし混沌を排除しないこと、4)コントロール・センターを認めないこと、の4つがとりあげられる。これらの条件にかんし、既存の資料を用いて、神戸製鋼チームがどのように取り組んできたかを明らかし、非管理型の自己組織化を実証的にあとづけることで、スポーツ界だけでなく一般の組織ひいては社会システムにおける自己変革過程の具体像を探求する。